魔法先生ネギま!~消えたもう一人の御子~   作:香坂美幸希

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3時間目「移動」

「さあ、着いたよ、ようこそ麻帆良学園へ」

 

電車を降りて駅のホームを潜るとそこには魔法世界の都市と似通った街並みが見える。山の中では見る事の出来なかった世界。

ここに来るまででも世界は変わったように感じていたがまた変わった気がした。

 

「これから学園長がいるところまで案内するよ。」

 

「はい。」

 

タカミチさんのものだろう箱型の乗り物…おそらく車であろうそれに乗り中心部を目指していく

 

「ここでは車より速く走れる生徒がいるんですね?

何かやってるようには見えませんが…」

 

「それを含めて着いたときに説明するよ」

 

タカミチさんは苦笑いしつつ応えた

良かった、この乗り物は車で会ってたか…

 

「着いたよ、ここが麻帆良学園女子中等部の校舎だよ。ここに学園長がいらっしゃる。」

 

「…男子生徒が学園長を訪ねた際は奇異の視線を浴びそうですね?」

 

「…そこは関係ないから言明は避けておこうかな。」

 

そんな会話をしつつ何の問題もなく『学園長室』と書かれた部屋に辿り着く

 

コンコンコン

「高畑です、件の少女をお連れしました。」

 

「入ってよいぞ。」

 

「失礼します。」

 

声をそろえて言いタカミチさんはドアを開ける

 

「ふぉっふぉっふぉ、待っておったぞい」

 

声をかけられているがそんな事が気にならない程に私は驚愕する…

何故…

 

「何故ここにぬらりひょんがいる!?」

「「……」」

 

くぅっ!流石に私でも当てられるかわからない!!

 

「動くな!動けば斬るッ!」

「ふぉ!?ま、待つんじゃ瑞樹君」

 

「忠告はしたぞ!はぁ!!」

 

そして学園長の後ろに回り抜刀一閃

 

「ふぉ?」

 

「くっ…やはり外したか…すばしっこい奴め…」

 

「み、瑞樹君…今のは?」

 

タカミチさんと学園長が呆けたようにこちらを見ている

 

「…あぁ、山の中で時々現れる妖怪を狩っていたんです、鍛錬の要領ですね。

中級程度ならば狩れるのですが流石に最上級となると当てる事さえ難しいですね」

 

「そうか…てっきりわしの事かと…」

 

「?学園長が?

失礼ですが後頭部以外に似ている要素は無いですよ?

妖気もないですし」

 

「そうじゃったか…」

 

私は他にも妖怪がいないか警戒していたが他に感じないのでもういないだろうと刀をしまう

 

「失礼しました、話しを戻しましょう」

 

「そうじゃな、瑞樹君じゃが高畑君の担当クラスに通ってもらうことになるが構わんかの?」

 

「はい。学校に通う事が初めてなので緊張しますが見知った人がいるなら薄れるでしょう」

 

「そうかそうか、ではまた明日ここに8時に来てくれるかの?」

 

「分かりました」

 

「うむ、今日の宿じゃが、女子寮の管理人室を一時的ではあるが使いなさい」

 

「ここに来るときに一度寄ったから分かるよね?

管理人室は入ってすぐ左の扉だよ」

 

「わかりました、それでは失礼します」

 

「うむ」

 

私は一人で学園長室を出て、街の詮索をする

(帰ってもする事は無いし詮索して地理を把握しておくことも大事だろう…)

 

 

 

夕暮れ前、女子寮前

 

「それにしても不思議なところだな…あの木も大きいし…」

 

そう呟いて寮に入ろうとする私の手を誰かが後ろから掴む

私は反射的に振りほどき掴んだものの姿を確認した後、首を掴み貫き手を鳩尾に添える

 

「何者だ?」

 

「ぐっ!?がっ!」

 

「え?あ、ごめんなさい!普通の人だったの!?」

 

気も何も感じないし何かをやっているような体じゃないと分かり直ぐに手を離す

 

「ごほっごほっ!

いや、こっちもすまん、いきなりじゃ混乱するのはあたりまえだ…

私は長谷川千雨、女子中等部二年だ」

 

「ごめんなさいね、私は風鳴瑞樹、女子中等部に編入することになってるの」

 

「そうか、いやそんな事よりだ…

あの木は……ッいや、いい…」

 

あの木、という事は私の声が聞こえたから呼びとめたのかな?

「あの木、大きいよね?いったいいつから枯れる事もなくあるのか不思議だよね?」

 

「ッッ!!…あの木は…大きいよな!?不思議だよな!?」

 

「…何をそんなに焦ってるいのか私にはわからないけど…そうだね、ここに来る前の山でもあそこまで大きいのは見たことないかな」

 

「車と並走して走る人間は…普通か?」

 

「普通じゃないんじゃないかな?

私は出来るけど、あそこまで速く走るのに瞬動もなしだとかなりかかったし」

 

「……ここは、普通とは…違うよな…?」

 

長谷川千雨さんが何を言いたいのか大体掴めてきた

自分は普通じゃないと思っているのに周りは普通と思っている。

でも本当に普通じゃないのに自分だけ意見が違うから浮いてくる。

そんな中自分と同じ事を思った人が現れた。

だからこそ自分の意見が普通だと思いたいがために私を呼びとめてしまった、と。

 

こんなところかな?

 

「何を持って普通とするのか私にはわからないけれど、少なくとも一般の人間が行うのはおかしいね」

 

「…やっと…やっと見つけた…私と同じ意見を言ってくれる人を…」

 

「そんなことで泣かないでよ…私が泣かしたみたいになってるじゃない」

 

周りの視線が痛い、見知らぬ女子が生徒を泣かしたみたいな冷やかな目をしている…

 

「…すまん、もう大丈夫だ、迷惑ついでだ、何処か出ないか?私が出すよ」

 

「そう?なら御相伴にあずかろうかな」

 

「ああ、こっちだ」

 

私と長谷川千雨さんは喫茶店に入った

「いらっしゃいませ、二名様でお間違いないでしょうか?」

 

「ああ、奥の席いいか?」

 

「はい、大丈夫です。

二名様、12番テーブルです!」

 

私達は奥の話があまり聞こえない席に着いた

 

「好きなものを頼んでくれ、お勧めはコーヒーとケーキだな」

 

「甘いものはあまり好きじゃないからコーヒーと…マフィンにしようかな」

 

「OK、すいません、コーヒー二つとケーキ1つ、マフィンを1つ」

 

「畏まりました、少々お待ちください。」

 

店員さんは仰々しくお辞儀をすると下がっていった

 

「さっきはすまなかった」

 

「ううん、大丈夫だよ、気にはしてないから。私も自分と同じ境遇の人を見つけたら泣いちゃうと思うもの…」

 

「ありがとう、それで、風鳴…さんの眼にはどう映る?」

 

「瑞樹でいいよ、学年も一緒だし

そうだね…何もかもがおかしい。この一言に限るね。」

 

「何もかも?」

 

「そう、一度私の親代わりの人の実家に行ったのだけど和風っていうのかな?木造建築が主流だったのだけれどここは石造り、田舎の外国って言っても通じるくらい日本の色が少ないの。

まるで外国風にすることで何かを隠しているみたいに」

何かを隠している、気とは違った気配を強く感じる気配…魔法の…気配…

 

「何かを隠して…」

 

会話が止まったのを見計らったように店員さんが商品を運んでくる

「お待たせいたしました!コーヒーをお2つ、ケーキとマフィンがお1つづつですね。」

 

「ありがとう」

私が微笑みながら礼を言うと店員さんは顔を赤くして去って行った

何故顔を赤くする、同姓でしょう…

 

「…話変わるけどいいか?」

 

「なに?」

 

「…なんで和服着てんだ?」

 

「私の私服ってこれしかないの」

 

「…色々ぶっ飛んでんだな」

と言った千雨さんはコーヒーにミルクと砂糖を入れていく

 

「千雨さん!」

「うおぁ!?何だ!?」

 

「コーヒーは最初の一口をブラックで飲んでから味を変えて楽しむものだよ!一手目から入れちゃったら意味ないでしょ!?」

 

「私はブラックは飲めないんだ…」

 

「それでもだよ!ここのお店の人が商品に合うようにブレンドしたコーヒーをそのまま味合わないなんてコーヒーが可哀想だよ!」

 

店主らしき男の人が苦笑いを浮かべているが私にはわからなかった

 

「え?あ、うん、ごめん」

 

「まったくもう…」

と怒りを抑えるためにコーヒーを啜る

そしてマフィンを一口食べてからまた啜る

 

「………。」

 

「どうした?」

 

ミルクを入れてコーヒーを口にして、マフィンをかじる

 

「……。」

 

「…。」

 

「…60点かな」

 

「は?」

 

うん、コーヒーの酸味をもう少し出したほうがマフィンには合うかな

 

「千雨さん、一口頂戴」

 

「え?お、おう…」

 

ケーキを一口に切って私にくれる

 

「あ~んっ」

 

「…あ」

 

うーん、この甘みだと今度は酸味が強いな…

女性に対してはケーキの甘みがもう少し合ったほうが人気は出ると思うし…

 

「み、瑞樹?」

 

「千雨さんは甘党?」

 

「いきなりだな、まぁいい。甘すぎるものは食べきれないが比較的好きなほうだと思うぞ?」

 

一般的な甘みは好きっかぁ…

千雨さんは1対1で入れた、ならもう少し入れてもいいと思うかな

 

「瑞樹?」

 

「千雨さん」

 

「あ、はい」

 

「コーヒーにミルクもう一つ入れたほうがいいと思うよ」

 

「え?お、おう」

実際にミルクをもう一つ足して食べ始めた

 

「え?すごく丁度いい…」

 

「でしょ?」

 

と言って私はマフィンを食べ進める

 

「なんでもう一つ入れたほうがいいと思ったんだ?」

 

「ここのケーキは若干だけど甘みを抑えてるの。甘過ぎないようにね

でも今度は甘さが足りないからコーヒーが苦く感じる人が多いの。でも千雨さんはミルクと砂糖を1つづつ入れたその選択は間違ってないけど一般女性がちょうどいいと感じるには少し足りない。

でも砂糖だと甘過ぎるから入れなくなるけど、ミルクにも甘みがあるから丁度良くなるの」

 

「…ほぇ~、すごいな瑞樹は」

 

「私が出来るのはコーヒーの裁量だけだよ」

 

少し笑った後食べ終えた私達は寮まで戻った

 

「瑞樹は最初ここに来てたけど部屋はもう決まってるのか?」

 

「ううん、決まるまでだと思うけど管理人室…入って左の部屋だって聞いたわ」

 

「ふ~ん、だったら明日一緒に行かないか?朝はかなり混むかガラガラだから」

 

「うん、いいよ。八時までに行かなきゃいけないけど」

 

「中途半端な時間だな…なら7時30分に玄関で」

 

「分かったわ。また明日ね」

 

「ああ、また明日。お休み」

 

「……お休み!」

と言って部屋に入る

…お休み…かぁ…三年…いや四年ぶりかな、こんなにも心温まる言葉だったんだ…

きっと今の私は破顔しているだろうな…頬の筋肉が下がっているのがわかる。こんな表情は久方ぶりだ…

 

千雨さんに見られてしまっただろうか…もし見られていたら少しはずかしいな…

 

 

顔を赤くしたまま小振袖、長襦袢、袴を脱ぎ、ベッドに寝そべる

……

 

「落ち着かない…」

 

立ち上がり布団を床に敷き直し寝る

「あ~お風呂入ってない……ま、いっか」

 

気で球を作り電気のスイッチに当て消す

「時間的には20年か…まだ生きてるかな…?」

 

―――F(エフ)―――

 

 

 

 

 

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