魔法先生ネギま!~消えたもう一人の御子~   作:香坂美幸希

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5時間目「歓迎」

起立、礼

ありがとうございました

 

「瑞樹、授業一日どうだった?」

 

「うん、楽しかったよ、いつもは母さんが一人で教えてくれてただけだったから、皆と一緒に学ぶっていうのがこんなにも違うんだなって思えた。」

 

「それなら良かったかな、これから学園内を案内するよ、まだあんまし見回れてないだろ?」

 

「ほんとに?

それならお願いしちゃおっかな?」

 

「おう、まずは図書館島からだな」

 

私と千雨さんは二人で並んで校舎を出て行く。そのまま図書館島と呼ばれる湖の真ん中にある湖島を目指して進んでいく。

 

「ここが図書館島だ、見た目は普通だが奥の方に行くと罠とか侵入者撃退用の装置が多数あるらしいな。」

 

「へぇ~、怖いところだね、今この大ホールみたいな所は平気なの?」

 

「一般公開されている所は問題ないらしい。それと図書館島に纏わる話があってな、あまり奥の方まで行き過ぎるとローブを着た謎の優男が出てきて変態的なことを言って近づけないとかなんとか」

 

「(ローブの優男で変態…アルさん?……考え過ぎか…)思ったより近づきたくないところだね…」

 

でもあの人も半不老不死に近いから有り得ない訳ではない…かな

 

「そんじゃ、次に行くか。次は龍宮神社だな、休日に時々クラスメイトの龍宮さんが巫女さんやってる」

 

「龍宮…龍宮……あぁ、肌が少し黒くて絶対に中学生じゃないと思われるような背の高いキリッとした人だ」

 

「説明的な思い出し方ありがとな。そう、その龍宮さんだ。全然似合ってないけどな」

 

巫女さんってことは巫女服だよね…うん、外国人のコスプレみたいになりそうだなぁ

 

「…よし、いい時間だな、悪いけど教室に忘れ物したみたいだ…一緒に来てくれないか?」

 

「…この場合どう答えたらいい?」

 

「どうって?」

 

「本当に忘れ物をしてしまった千雨さんを笑いながらいいよって応えるのか、時間を気にしてたから裏がありそうと読んで嫌だって応えるのか、地味で目立たないと評価されていた千雨さんの可愛そぶりに涙しながらしょうがないなぁって応えるの」

 

「どれも余計なお世話だ!瑞樹は黙っていいよって言えばいいんだよ!」

 

「うんうん、素直でよろしい」

 

「何様だ!」

 

私たちは笑いながら校舎に向かって歩を進めていく

 

「話が変わるんだけど、千雨さんコスプレの服とか持ってないよね?」

 

「うぐっ、いきなりどうしたんだよ、ホントに」

 

「コスプレって聞いてちょっとやってみたいなって思って、ほら、わたして素材がいいから」

 

「自分で言うなよ、認めるけど」

 

「それで、持ってる?」

 

「…持ってるよ…」

 

「ほんとに!?着てみたいんだけど大丈夫かな?」

 

「サイズ…合うかわかんねぇぞ…」

 

「身長、千雨さんとあんまり変わらないから大丈夫でしょ?」

 

「その胸回りの無駄な脂肪が大丈夫じゃねぇんだよ!!」

 

昇降口から上がり靴を履き替えて教室に向かう。

 

なんでかな…千雨さんといるといつも胸が熱くなる…。Fと居た時だってこんな風になったことなんてなかったのに……。

 

 

これが…友達ってことなのかな……。

 

 

教室の前までたどり着いた時、ふと思ったことが言葉に出てしまった

 

「私、千雨さんのこと好きみたい…」

 

「んなっ!!?」

ガラッ

 

『『瑞樹ちゃん、麻帆良学園にようこそ!!』』

 

「……え?」

 

「ほぉら、主役は真ん中の席だよ!」

 

「え?…え?」

 

「何を呆けてるのよ…瑞樹のために皆で歓迎会をやろうってこうなったんだからもっと堂々としてなさい」

 

「あ、ね…アスナさん…」

 

呆けている私のもとに姉さんが来て説明してくれた

そっか、歓迎会か…私が来た…初日にこんなこと…してくれるなんて…

 

「皆だいすきだぁ~ああぁぁぁ…」

 

突然のことで驚いたけど、それ以上に私が居ても迷惑じゃなくて、来たことに喜んでくれてる…たとえ形だけでも…それが嬉しくて、溢れてくる涙が堪えられない

 

「ちょっ、始まったばかりで第位一声に泣きながらとかどんだけよ!?」

「泣くの早いよ!?」

 

「だって…だってぇ…。私、どこに居たって…疎まれたことしか…なかったから…。私が居て…喜ばれたこと…全然…なかったからぁ…。」

 

私の言葉で教室の中が静まり返る

 

「(この言葉…どこかで…)…大丈夫だよ、瑞樹が居て迷惑になることはここでは絶対に有り得ないから」

 

姉さんが静かになった中で声を掛けてくれる

 

「世界から拒絶された私たちは…祝福されたら…ダメだって…」

 

 

 

『この地から即刻立ち去れ!化け物ども!!』 

『あんたたちなんていなくなればいいのに!』

『君たちは世界から拒絶されたからその力を手に入れたんだろう?』

 

アスナは唐突に流れてくる記憶という名の奔流に意識を割かれる

 

「(なに…これ…)…大丈夫…ここなら、大丈夫だよ…ミズキ」

 

「でも、でも!…私達が居たら…」

 

なおも続く記憶の中に比較的新しい記憶が脳裏をよぎる

 

(これから…君をあんな柵から開放するために…あの世界から出て静かに暮らすから…もう、気にしなくても大丈夫だから…僕といっしょに平和に暮らしていこう)

 

「そんなこと、こっちでは関係ないでしょ?あそことは違うから。大丈夫、大丈夫だよ。ミズキ…」

 

姉さんが背中側から私を抱きしめてくれる…温かい…

 

「ね、アスナさん…記憶が?」

 

周りに聞こえないように小さな声で呟く

 

「ううん、全然…。でも、ミズキが泣く原因はちょこっと視えた。私達がなんなのかは全然」

 

「……。よし!!皆さんご迷惑をお掛けしました!風鳴瑞樹復活です!!」

 

「よ、よーし、そんじゃ瑞樹ちゃんがここに来たことを祝して…」

 

『『かんぱーーい!!』』

 

ガラガラ

「お?始まったところかい?間に合ってよかったよ」

 

「そうですね、この子たちはホントにいきなりなんですもの…」

 

タカミチとしずな先生が教室に顔を出してくれた

 

「高畑先生にしずな先生!来てくれたんですか!?」

 

「もちろんだよ、彼女は僕がここに呼んだんだからね」

 

「風鳴さんはとても不器用な子なので心配してきたのよ」

 

 

「ね?ここでは、過去のこと気にすることなんて無いから。このクラスの皆、何かしらあるみたいだから詮索しないことが暗黙の了解になってるのよ…もちろん私もね?」

 

「アスナさん…」

 

「それと、私の事。無理してそう呼ばなくてもいいのよ?最初みたいに姉さんって呼んで。私は記憶が無いから、また最初から…この場所で、ホントの最初を始めようよ、ミズキ」

 

「うん、姉さん」

 

私達で小さく笑い合う、昔みたいな感情の落ちた頃とは違う、心から笑顔になれる笑顔で

 

「よーし、お二人さんの仲直りも済んだところで騒ぐぞー!」

 

「はい!1番、風鳴瑞樹!歌います!」

 

「お、いいぞ!」

「歌え歌え~!」

 

 

 

この小さくも楽しい歓迎会は、暗くなるまで続いた。私の記憶に残る1ページとなっていつまでも残るだろう

 

 

 

 

 

 

 

「瑞樹くん、ちょっといいかい?」

 

歓迎会も終わり、片付けて千雨さんと帰る間際、タカミチさんに呼び止められた

 

「どうかしましたか?タカミチさん」

 

「君の寮での部屋なんだけど、長谷川くんと一緒の部屋になったからそれを伝えにね」

 

「ホントですか!?」

 

「待ってくださいよ、私の部屋は小部屋で既に葉加瀬さんと一緒です」

 

「そうなんだけど、葉加瀬君があまり寮に戻らないと聞いて学園長が、ね…」

 

「はぁ…分かりました」

 

千雨さんと一緒に暮らせるのか、楽しみだ

そんなことを話しながら私たちは寮に戻っていった

 

寮につくと最初に管理人室においてあった私の荷物を纏めて千雨さんの部屋に行く。千雨さんは私が荷物の整理をしている間に部屋を片付けるから着いたらそのまま入っていいと言っていたので部屋に上がる。

 

「着いたよ、片付けはどう?」

 

「な!?はや!も、もうちょっとだから外で待っててくれ!」

 

千雨さんの言うとおり少し本が残っていた、それをしまうのだろう

 

「うん、わかった……?これ、なんの本?」

 

「ん?あ!バカやめろ!」

 

落ちていた本を半ばから開く。どうやら漫画のようで絵とセリフが書いてある。そのまま捲っていくと男の人二人がソファーのうえで裸でアレしている絵が見えた。数秒その絵を見つめていると千雨さんから本を取り上げられたが気付かずに硬直している私を千雨さんが不安そうに見つめていた。

 

「…どうしたんだ?瑞樹」

 

「…。」

 

問いかけにも気づかず私はただただ呆然としていた

 

「(あれはやっぱりアレだよね…翼さんにやられていた私みたいな感じで同姓でアレしてたんだよね?待って…性別が変わるだけでこんなにも気持ち悪くなるの?それとも翼さんに感化されすぎて女の人じゃないとそういう感情にならないとか?待て待て待て、それはダメだ。なにがダメかわからないけど人として終わりな気がする。もはや考えるなミズキ)…。」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「(それにしても男の人同士って気持ち悪!なんかものすごい不快感が…)…うぇっ」

 

「ちょ!!?待て待て!ほんとに大丈夫なのか!?」

 

「…だいじょばない…」

 

口元を抑えたまま私は答えた

 

「わぁぁ!!待て、早まるな!こっち来い!」

 

千雨さんは私の肩を抱いてトイレまで連れて行った…後に聞こえてきた音は水音とトイレを流す荒っぽい音だけだった…

 

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