魔法先生ネギま!~消えたもう一人の御子~   作:香坂美幸希

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このペースを守って投稿していきたいけど難しいんだよねぇ
なんせストックがないもの。

それでもがんばって投稿していきます。どうぞ


8時間目「露見」

今日の授業も終わり千雨さんと変える支度をしているとき和美さんが近づいてきた。

 

「あ、瑞樹。食券なんだけど今週中には渡すから、ちょっとまってて」

 

「いえいえ、払えないことを分かっててやってるのですから構いませんよ。

それより、もっと困った顔してくださいよ。困った顔が一番ふぎゃ!?」

 

「それ以上喋るんじゃねえガチユリクソビッチ。」

 

「何気にその言葉気に入ってない?千雨さん」

 

女の子にあるまじき顔をしていると後ろから殴られた瑞樹は殴ってきた千雨にジト目で見返しながら呟いた

 

「それと、今日先生の歓迎会するんだけど瑞樹さ、明日菜と一緒に買い出しと先生呼んできてくれない?長谷川さんは飾りつけを手伝ってほしいし。」

 

「姉さんと?良いけど姉さん買い物のリスト渡してる?覚えきれてないんじゃない?」

 

「なんで私まで参加する流れになってるんだ!?」

 

「さすがの明日菜でもそれくらい覚えられるんじゃない?」

 

「まぁその点は私が行けば済むことなのでおいておいて。千雨さん参加しないのですか?」

 

「するか!!あんな連中とずっといると体力もたねぇよ」

 

あまり大きな声を出さずに怒鳴るという器用なことをする千雨さんに感心しながら今日の配信の事を隠しながら伝える。

 

「そっか、わかったよ。今日は私は参加しない方向で説明してて。」

 

「了解。気ぃ付けろよ。」

 

そう言葉を残して千雨さんは寮へと帰って行った。

 

「長谷川さん、何か用事でもあったの?」

 

「うーん…。一応私もあるにはあるけど別に今日じゃなくてもいいものだから。今回はこっちに混ざるよ。子供先生は不安だしね。」

 

「にゃるほど、子供先生に気があるのかなぁ?」

 

「馬鹿言ってると襲っちゃうぞ♪」

 

子供先生の事で茶化してくる和美さんに冗談交じりにすり寄ると本気で避けられ五メートルほど距離が空いた。

 

「……避けすぎじゃない?さすがに傷つくよ?」

 

「あんたの冗談はホントにされそうだから!避けるに決まってるでしょ!!」

 

「身から出た錆とは正にこのことか…。

まぁ、買い出しの件、了解しました。向かってるだろう姉さんと合流するからリスト頂戴な」

 

「あぁごめんごめん。はいこれ。かなりの量買って大丈夫だけど領収はしっかりもらってきてね。私がまとめてみんなから徴収するから。」

 

「了解。じゃぁ飾りつけよろしくね。」

 

和美さんからリストをもらって先に行ったであろう姉さんを追いかけるため小走りで校外にある小売店へ急いだ。

 

 

 

 

「いやー、意外と量があるね。姉さん」

 

「ホントよ、まったく…。体力に自信のある私たちだからいいけど、本屋ちゃんとかだったら階段とかでこけて大怪我するわよ」

 

私たちは校舎の近くにある中庭を通るために中央広場に来ていた。買い物も無事に終わり、物を運んだあとは先生を呼びに行くだけである。

 

「それにしても、やっぱり姉さん、リストの中身忘れてたね。」

 

「しょうがないじゃない、種類も量も多かったんだから!」

 

「私はすぐに覚えられたよ。もう…そんなんじゃ高畑先生に嫌われるよ?」

 

「えぇ!!そんなの駄目よ!」

 

「当たり前でしょ?テストの成績も悪いし物覚えも悪い。おまけに短絡的で短気で…。嫌われる要素しかないんじゃない?」

 

「うぐっ…確かに…。っていうかミズキ、高畑先生との恋は絶望的って言ってなかった?」

 

「そうだけど、譲る気がないのに諦めろの一点張りじゃ気分はよくないでしょ?直せるとこは全部直して努力して頑張って、それでも駄目じゃないと諦めつかない。姉さんはそんな人だから。

努力の方向性と直す場所の指摘。そうゆうサポートをするのも妹であり、友達である私の役目なんじゃないかな?恋に関しては私のほうが先輩だしね♪」

 

「ミズキ……。」

 

「差し当たって…まずは英語の勉強から始めようか。」

 

「……えっ?」

 

「そうだね、目標は80点越えだね」

 

「いやいやいや、ミズキ?」

 

「英語で80点越えてから高畑先生のところに行って

『高畑先生!見てください、今度のテストこんなに頑張りました!高畑先生に褒められたくて頑張ったんです。だから褒めてくださりませんか?』

とこういうの。」

 

「無理無理無理!そんなの出来る訳ないじゃない!!?」

 

「何事もチャレンジです。幸いこのクラスには超さんをはじめ学年トップクラスが多数在籍してますから。私も含めてね。」

 

「いやよ!それに出来る訳ないでしょう!!?」

 

「考えてみてください。」

 

「何よ」

 

「もし姉さんが80点取ったとして、先生にさっきの言葉を言えたとして、バカレンジャーを大切にしていた高畑先生がにべもない態度をとると思いますか?むしろ

『僕に褒められるためにっていうのがいただけないけどこんなに頑張ったんだ褒めるくらいはしてあげないとね』

とか何とか言って頭を撫でてくれたり何処かに外食に連れて行ってくれたりするかもしれないよ」

「…してくれそうね、ていうかしてほしい。」

 

「でしょう!?だったら一度頑張ってみましょう?やらずに諦めるよりもやって駄目かを確認してからでよくない?姉さんは成績が悪くても頭は悪くないんだし」

 

「……そうね。やる前から諦めてたら何もできないもんね。うん、頑張ってみるわ。その代り、ミズキに相当頼るからね」

 

「任せてよ。私も勉強には五年しか使ってないから姉さんの方がアドバンテージあるからすぐだよ。」

 

「よーし、やるわよぉ!…あれ?あの小さいのガキンチョじゃない?」

 

「そこはせめて先生って言ってあげなよ…、でもそうだね。それに階段から大量の本を抱えてる宮崎さんが……。嫌な予感がする、姉さんこれ持ってて!!」

 

「あ、ちょ、ミズキ!」

 

そう言って駆け出してすぐに段差で足を踏み外した宮崎さんが宙に投げ出された。

ネギ先生もそれに気付いたのか背中の杖を構え何らかの魔法を発動しようとしている。

 

(いやいやいやちょっと待て!!せっかく魔法の秘匿に助力したのにこんなところで使おうとしないでよ!少しは考えて行動を…した結果が魔法を使って助ける。何だろうな…はぁ…)

 

宮崎さんが地面に落ちそうなところでふわりと一瞬停滞した。

その隙に私が間に合って無事にキャッチ。宮崎さんに怪我がなくてよかった良かった。で終わらないのが現実だよね。

 

「あ…、あんた…」

 

「あ…いや…あの…その…」

 

「姉さん」

 

「う…風鳴さん…?」

 

「あんた!」

「ストップ!!!」

 

姉さんが先生を掴んだところで私の声が響く。

 

「宮崎さん、ネギ先生が階段から落ちたあなたを助けてくれました。」

 

「そうなんですか…あ、ありがとうございます、ネギ先生。」

 

「い、いえ。怪我がなくてよかったです。次からは気を付けてください。」

 

「は、はい。失礼します。」

 

そう言って宮崎さんは散らばった本を片づけ去って行った。

残されたのは涙目になっているネギ先生とネギ先生を睨み付ける姉さんと沈黙する私

 

「とりあえず、場所を移しましょう。」

 

 

 

中央広場に脇にある林の中で三人で顔を突き合わせる。

 

「さて、説明してもらうわよ。」

 

「はい、でも姉さん。先にこれを言わせてください。」

 

「何よ」

 

説明を求める姉さんに私は説明するために必要な説明を始める。

 

「まず、今の姉さんには選択肢が3つあります。」

 

「はぁ?説明を受ける意外になにがあるっていうのよ!?」

 

「1つ目、これは私が一番選んでほしい選択肢ですが。

このまま、姉さんは何も見ていないことにして、荷物を持って教室に向かう。」

 

「そんなの出来るはずないでしょう!?私は朝にも不思議な現象に巻き込まれたんだから!!」

 

「先生…」

 

「す、すみません…」

 

怒鳴ったように喰い気味に言葉をかぶせてきた姉さんをよそに不思議な現象の張本人をジト目で見やる。

 

「はぁ。二つ目、説明を受けるがこのことに今後一切関わらないように努めて日常を謳歌する。」

 

「…話の内容にもよるわね」

 

「三つ目、出来ればこの選択肢を選んでほしくはないですが。」

 

「良いからさっさと言いなさいよ」

 

「三つ目、事情を聴きすべて受け入れたうえでこのことに関わり生きていく。これは大変危険で命に係わることもあります。」

 

「何よそれ。なんで今回の説明を受けるのにその選択肢が要るのよ?」

 

混乱したような声色でそれでも気丈に振る舞っている姉さんには説明したくはないけれど納得してくれないのだろうな…。

 

「これの説明には必ず選んでいただきます。これは絶対に。私だってこのことに関わっているから命の危険は両手の指で数えきれないほどありましたからね。」

 

「風鳴さん、何もこんな形で迫られても答えなんて出せる訳ないじゃないですか。せめて最低限の説明をしないと…。」

 

「いえ、必ず答えていただきます。質問は受け付けます。答えられるものに限りますが全て正直に嘘偽りなく答えます。」

 

「…ホントよね?だったら質問。ミズキが関わってるのはいつからで具体的にはどんな危険があったの」

 

「私が関わったのは生まれてからです。どんな危険があったのかといえば兵器としてたくさんの人を殺すための道具として取り合われたし、壊されそうになりました。封印と言って巨大な棺に閉じ込められたし、最近ではここに来る前に殺し合いをしてましたよ。」

 

「「っっ!!!???」」

 

「たくさんの人を殺したし、たくさんの希望を打ち砕いてきました。ネギ先生、これはあなたにも言えることです。この力は人助けのための力だけじゃなく人を害するためにも働きます。努々忘れないでください。ほかに質問は?」

 

「な、なら、この選択肢の意味は何?」

 

「簡単ですよ。二度とあなたにこのことに関わってほしくないだけです。記憶喪失なのも好都合ですから。」

 

「……最後に私が関わった場合、どんな危険なことが起こるの?」

 

「…具体的なことは何もわかりません。けれど、わかっていることだけで述べるとするならば…」

 

 

 

 

 

「ほぼ確実にまず間違いなくこの世の絶望を一身に引き受けたあなたと私の過去を追体験、もしくはさらに酷い事になって襲いかかるでしょう。」

 

「…………。」

 

「ネギ先生、あなたはその絶望を打ち砕く希望となるように仕向けられていることを覚えておいてください。どんなに悪い事でも相手は同じ人間です。相手もやっていることを望んでいないのかもしれませんし自分には自分の、相手には相手の正義があることを理解しておいてください。そしてこの修業期間中にでもあなたの目標を決めてください。この力で何を成し、どのような結末を経たいのかを。」

 

「……はい。」

 

この力のあり方と自分自身のあり方に葛藤する様子を見せながらも力強く、しかしはっきりと頷いた。

 

「姉さん、もう一度聞きます。三つの選択肢のうち、どれを選びますか?」

 

「……少し、考えさせて。そんなすぐには決められないもの。

だから今回は何も聞かない。でも、いろんな質問はすると思う。」

 

「構いません。いっぱい聞いていっぱい悩んでください。その間は今の日常を楽しんで過ごしていきましょう。」

 

「わかったわ。…よし!悩み事終了。ついでだからガキ…いや、ネギ!ついてきなさい。教室まで」

 

「え?あの、どういうことですか?それに名前も…」

 

「良いから。それに、あんたと一緒の部屋になるってことはいろんなことが起こるかもだから、何時までもガキンチョのままじゃいられないでしょ。どんな事情があるかは聞かないけど事情があるのはわかったんだしね。」

 

「明日菜さん…ありがとうございます!」

 

「さ、いくわよ!ほらミズキも!」

 

「…まったく、強引なんですから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔も今も引っ張って行ってくれるところは変わってない。

でも、それでも変わったのは新しい人格だからか、昔のことが心のどこかに住み着いているからか、悪い方に考えがいきそうになった時、思考を切り替えて明るい方向に持っていこうとする。

そんな雰囲気に充てられて周りも明るくなる。

ほら、やっぱり。姉さんは奥手の人間のほうがイイよ。タカミチさんは引っ張る側だろうしその手は真っ赤な血に塗れていることだろう。そんなことが頭の片隅にあるからか幸せを掴もうとはしてないみたいだし…。

姉さんはその手を取って引っ張って幸せになってくださいっていうんだろうな。だって姉さんだもの。

自分を身代りに私を助けてくれた姉さんだもの。

わかるよ、例え血は繋がって無くても二人で寄り添って生きてきたんだもの。

だからこそ、姉さんだけはあの世界の事は知らなくていい。

 

 

 

知らない方が幸せなんだから…………

 


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