魔法少女リリカルなのは~白い冥王の妹、天翼の朱里~ 作:天翼
さて、温泉旅行を堪能した私達はいつもの日常に戻りました。なのはは学校に向かい、私はメディアさんから頂いた傘を差しながら山にやって来ました。この山は海鳴市の中でも特に神殿化しています。森の中に隠してある魔法陣から山の内部に作られた神殿へと入ります。
「こんばんはです」
「ええ、こんばんは」
女性バージョンのメディアさんに挨拶しながら、鞄を置いて蓋を開け持ってきたデザートを取り出して置きます。今日はプリンです。
「それで、彼はどうなっていますか?」
「順調よ。餌としてもね」
「そうですか」
乱入して来た管理局と名乗る侵略者の少年をここに閉じ込め、彼を助ける為にやって来た者達を捕らえて解析している。その過程で闇の書、ううん、夜天の書に魔力を蒐集しています。
「情報は何か吐きましたか?」
「いえ、一辺倒の事よ。自分は正義の味方だの、危険物を管理する為だのなんだのと酷い内容よ。それに幼い子供を騙して働かせているようなのよ」
「酷いですね。来た人達は子供ではないんでしょう?」
「そうよ。そっちは実験台にしていますわ」
「いえ、それは止めておいた方がいいのではないですか?」
「そうよ。まあ、冗談なのだけれど、彼等から情報を脳から直接引き抜いているわ」
「なるほど」
「それは楽そうですね」
ソファーに座りながら魔導書を読んでいきます。この魔導書は英雄王モドキから頂いた物です。私は使えませんが色々と為になります。フリューゲルとエクスマキナの技術なら再現は可能です。
「あら、来たわね」
「侵入者ですか」
「ええ」
メディアさんが開いたスクリーンを見ると、アニメで見た事ある大きな船が降りてきています。そこから沢山の人達が山へと降りてきてました。
「あれがアースラね」
「船ごと乗り込んできましたか」
「その為にわざわざサーチャーを潰していないのだからね」
「そうですか。私が出ましょうか?」
「いらないわ。歓迎の準備は出来ているもの」
山の表面には即座に無数の骨の怪物が召喚されていきます。それに加えて機械で出来た機神兵もいます。これは傀儡兵を元に作り上げた物です。ええ、私が作り上げました。私の可愛い同胞達です。
「機神兵ね。凄いわね」
「他世界とはいえ最強の武神が作り上げた神造兵器と機械の融合兵器です。つまり、私ですね。強いですよ」
フリューゲルの細胞と具現化技術でエクスマキナの機械技術を再現して同胞を生み出しました。まだ観測体(ゼーア)と解析体(プリューファ)しかいませんけれど。
「敵としてはどうかしらね」
「そうですね」
「果たしてどうなるか楽しみね」
「そうですね」
視線を本に戻しながら報告を待ちます。
リンディ
クロノが捕らえられて数日。救出する為に武装局員を派遣したのだけれど、彼等も骸骨の化物の物量に押されて撤退するしかありませんでした。逃げられなかった局員も捕まえられたかどうかも分かりません。ですから、今回は計画を変更しています。
「話すらできないとは……」
彼等はこちらに会話すらしてくれない。彼等曰くテロリストとは交渉しないとの事だ。アースラを見せたりしても無駄だった。今度は侵略者もしくは地球外生命体とは交渉しないと言ってきたわ。
「見たこともない者がいます」
「観測を行ってください。それと観測したデータは間違いはありませんか?」
「ええ、ありません。作戦は大丈夫です」
「そう。では、作戦通りにいきましょう」
武装局員が山へと攻め込んで少しすると周りには大量の骸骨で埋まっていったわ。
「提督」
「ええ。撤収させて」
「はい! 皆、一次撤収!」
「撤収次第、主砲を放ちます。張られている結界は大丈夫よね?」
「ええ、恐ろしいほどの強度です。結界の外にも中にも殆ど影響がないと思います。ですが、確実に壊せます」
「なら、お願いね。エイミィ」
「任せてください。一緒にクロノ君を助け出しましょう!」
「そうね。あの人との子をここで失う訳にはいかないわ」
あの人の忘れ形見である大切なクロノをなんとしてでも助け出さないと。それにしても、もしもの為に持ってきておいて良かったわ。事前に通報があったお陰で危険性に気づけたのだし。
「撤収完了! アルカンシェル、いつでもいけます!」
「アルカンシェル、発射!!」
主砲であるアルカンシェルのキーを回して発射させる。アルカンシェルは着弾後一定時間の経過によって発生する空間歪曲と反応消滅で対象を数十キロに渡って殲滅する。ですが、ここに張られている結界は強固すぎるわね。それほど恐ろしい技術を持っているという事ですが。
神殿を激しい衝撃が襲います。お陰で私は飲んでいた紅茶を魔導書に零してしまいました。
『指揮体(ベフェール)へ、データリンクを開始』
『敵による攻撃の模倣を完了。名称未設定』
『迎撃に出した機体の消滅を確認。指揮体(ベフェール)、予備機の投入を』
「必要ありません。ええ、ありません」
「あら、どうしたの? 何時も通りの無表情だけど、心なしか怒っているわね」
「いいえ、怒っていません。ええ、読書を邪魔された挙句に貴重な神代の魔導書を汚させられたとしても、怒っていません」
「そう」
「ただ、五月蝿いハエを退治するついでに少し運動してきます」
「わかったわ。結界の維持だけに集中しているわ」
「ありがとうございます」
服を脱ぎ捨てて、シュテルの服装に着替えます。同時に両手と両足を機械の腕へと変化させ、背中に精霊回廊接続神経で出来た翼を展開します。翼は霧や闇色の炎のようなもので微かな霊骸を撒き散らかしていきます。
「待ちなさい。さっさと転移させてあげるから外でやりなさい。その処理は大変なのよ」
「わかりました。申し訳ございません」
「ええ、わかればいいわ。頑張ってきなさい」
「はい。叩き落としてきます。いえ、船は確保の方がいいですか?」
「そうね。確保の方がありがたいわ」
「承りました」
「それじゃあ、いってらっしゃい」
「行って来ます。いえ、ここはシュテル・ザ・デストラクター、出陣します」
私はガンダムっぽく言ってから転移しました。眼前に広がるはえぐれた山と歪む景色。
「……吸収……」
翼によって周りに残留する膨大なエネルギーを吸収してよりいっそう翼を広げます。頭上にある巨大な船に大して私は掌を向けます。
「典開、アルカンシェル」
先程の攻撃を解析して作り上げたアルカンシェルを即座に典開し、小さくされた砲塔を握ります。これは私のイメージのせいか、大型のビームランチャーみたいな感じです。それも私の翼からエネルギーを送っているのでディスティニーガンダムみたいです
「落ないでくださいよ? まだ遊び足りません」
引き金を引いて砲撃を行います。
アルカンシェルを放った後、改めて武装局員を派遣しようとしたら急激に煙などで覆われていた視界がクリアになり、その中心に禍々しい深紅の炎で出来た翼を広げている幼い少女の姿が見えました。
「高エネルギー反応感知! っ!? これはアルカンシェルです!!」
「急速回避!!」
その少女が持つ細長い筒から放たれたのは規模こそ違いますが、アルカンシェルそのものでした。
「左舷被弾! 高度が維持出来ません! 火災も発生しています!」
「左舷ブロックは切り離して! 不時着準備!」
「少女がこちらに突っ込んできます」
「艦内戦闘配備! 来るわよ! 同時に対空迎撃を行いなさい!」
対空迎撃によって大量の魔力弾が空中に散蒔かれますが、彼女は気にせず回避して艦橋につくや砲塔をこちらに向けてエネルギーを収束させていきました。そして、彼女が何かをつぶやきました。私はそれを読唇術でよみました。
『紅茶と魔導書の恨み、思い知りなさい』
とても理不尽な理由でした。