魔法少女リリカルなのは~白い冥王の妹、天翼の朱里~ 作:天翼
刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)によって心臓を貫かれた後、何処かわからない場所を漂っていく。数々の魂のような光が流れる大きな川。
そこはまるで美味しそうな源泉……星の源潮流。そんな所に来た私がする事など決まっています。
「頂きます」
精霊廻廊のような場所なのですから、取り込んでしまえば戻る時の力を得られるでしょう。何せ私は半死半生なのですから。シュヴィとジブリールが生きている限り、私が死ぬことはありません。
「なんだ貴様はっ⁉」
「おや?」
星の源潮流の中にいきなり鎧を着た金髪の美少女が現れ、私に剣を向けてきました。
「なんだと言われても、ただの8歳の魔法少女です」
「なにを言っているっ⁉」
もちろん、彼女と話しながらも機械の翼を広げて大量の精霊をくみ取り、エネルギーへと変換して高めています。
「ああ、これですか? これはただの食事ですのでお気になさらず」
「召喚の途中だが、仕方あるまい。ここで倒す!」
「おや、戦うのですか? 構いませんよ」
「行くぞっ!」
少女が見えない何かで襲い掛かってきました。私は何もせずにその攻撃を受け止めます。
「なんだとっ!?」
「形は西洋剣ですか。ほら、抜剣しないとダメージが一切通りませんよ?」
「くっ」
少女は本気になったようで全力の一撃を入れてきました。私は避けて軽く腕だけ当たってあげました。腕は溶けたのですが、アムリタを飲んで再生させます。
「さて、貴方の力をご教授願いましょう」
「ばかな……」
私は彼女が使っている剣を解析して作り上げた剣へと、ルシフェリオンを変形させて戦っていきます。彼女の剣技を解析して自身のモノへと吸収する為に。
数分後、もう用はなくなったのでトドメをさしてあげました。彼女自身も精霊みたいなもののようなので、美味しく頂きました。
「さて、多少の暇つぶしにはなりましたか。ここは読書でもして待ちましょう」
そう思ったのですが、なにやら変な流れに掴まってしまいました。まるで世界が私を排除するように……まあ、自業自得ですよね。
視界が開けた瞬間。蔵のような場所に私は立っていました。目の前には座り込んでいる赤毛の小年。背後から迫りくる槍を持った青い青年。その真ん中に現れたスカートタイプのサンタコスチュームの私。カオスですね。当然、槍は素手で受け止めています。
「あぁ?」
「きっ、君は……?」
「えっと……」
改めて回りを見渡した私は片手を顎にあてて、肘を開いている片手で握りながら、考えて……変に付与されていた知識から決めました。
「問いましょう。お兄さんが私を拉致したロリコンのマスターですか?」
「らっ、拉致ってそんな事してないって! だいたい俺はロリコンじゃねえっ!」
「いえ、ですが強制的に連れてこられましたし。小学三年生の少女を拉致するのはロリコンでしょう」
「坊主、いくらなんでもそれはどうかと思うぞ」
槍を持って襲い掛かってきている青年からも色々言われています。可哀想ですね。
「なんでさ! ていうか、だいたいマスターって!?」
「マスター、主人、ご主人様……主に隷属している人が主人にたいしてする呼称です。つまり、幼女にそのような呼び名を強要しているお兄さんは鬼畜外道な変態ロリコン野郎という事ですね」
そんな会話をしながらも、青い人から放たれる槍を手で弾いていきます。
「何時までも乳繰り合ってんじゃねえよ。こっちの質問に答えてもらおうか。てめぇは何もんだ」
私は振り返って正々堂々と宣言します。
「私は高町朱里。聖祥小学校三年生でどこにでも居る天翼機械系魔砲少女です」
「魔法少女がどこにでもいてたまるかっ!」
「失礼ですね。ここに居るじゃないですか」
「ふざけた嬢ちゃんだが、サーヴァントとして召喚されるだけあって実力は確かなようだな」
「ええ、もちろん。それよりもこちらに居るロリコンのお兄さんよりもそちらに挨拶をせねばなりませんね」
小首を傾げながら青年へと振り返って対峙します。同時に球体になっていたルシフェリオンを起動します。
「杖、か。ってことはキャスターか?」
「いいえ、違います。私はアヴェンジャー。私を殺してくれた貴方に復讐する為に限界致しました」
「ああ? つまり、俺の知り合いか? いや、でも見た事ねえし……」
「それはそうでしょう。別世界のようですから。しかし、そんな事は関係ありません」
「はっ、そうだな。しかし、アヴェンジャー、復讐者か……エクストラクラスじゃねえか」
「ええ、私がたった今、そう決めました」
「おい」
「貴方の相手には相応しいでしょう。前は不意打ちでやられましたが、今度はそうはいきません。ルシフェリオン、モード・ランス」
『イエス、マイロード』
剣へとルシフェリオンを変化させ、ついでとばかりに先程喰らった少女が使っていた風王結界(インビジブル・エア)も使用します。
「参ります」
「はっ、おもしれぇっ!」
相手が放ってくる槍を防ぎ、槍に変化させて切り払います。モードの変更など容易いですから、どんどん変更していきます。
「はっ、そんな身体から出る力なんて楽に……ぐはぁぁぁっ‼‼」
私の槍をまともに受けたランサーは吹き飛んで壁に激突しました。
「おやおや、ケルトの大英雄たるクー・フーリンもその程度ですか?」
「てめぇっ、なんで俺の真名を知ってやがる!」
「言ったではないですか。私は貴方に殺されたと。ですから、私は知っていますよ」
「その身体能力にこっちの真名がばれてるんじゃ、出し惜しみしてもしゃあねえな。行くぜっ、刺し穿つ死棘の……っ!!」
「それはもう見て受けました」
転移(シフト)で相手の背後へと移動し、掌を背中に当てて天撃を放つ。放たれた光の奔流はクー・フーリンを貫いて屋根の一部を消し飛ばし、空へと消えていく。残ったのは身体の大部分が消し飛んだクー・フーリンのみ。
「ちっ、ここまでか……化け物めっ。だが、次は……」
「褒め言葉として受け取っておきましょう。そして貴方に次はありません」
「なにっ!?」
そのまま身体を掴み、小聖杯に吸い取られる前にその魂を吸収して私の糧とします。
「さて、これで復讐は終了ですね。では、改めてお話をしましょうか、マスター?」
「あっ、あぁ……だが、なにも殺す事は……」
「なにを言っているのですか、殺さなければ殺さていましたよ。それにアレは私の敵です」
「それに殺されたって……生きてるだろ」
「まあ、それはおいおい。別の招かれざる客が来て居ますからそちらを先に処理しましょう」
空に浮かび上がり、私は外へとでます。先程からこちらを伺っているサーヴァントとそのマスターが居ますからね。
「浮いたっ!?」
満月を背景にしながら、見つけた赤いマスターとその近くに霊体化しているであろう赤い弓兵に空から槍を構えます。
「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)」
「凛っ!? 熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)っ‼」
花弁のような巨大な盾が現れ、私の攻撃を最後の2枚で防いでしまいました。やはり、オリジナルよりは威力が下がりますか。
「アーチャーっ!」
「上からだ。下がっていろ」
「ええ」
しかし、それは投擲に対して絶対的な防御を持つだけでしょう? なら、砲撃はどうなのでしょうか?
「ルシフェリオン、カノンモード」
『イエス、マイロード』
「集え赤星、すべてを焼き消す焔となれ!」
「ちぃっ⁉」
「ちょっとちょっとっ、しゃれになってない魔力量なんだけど!」
翼を展開し、精霊回廊に接続を行い精霊を殺して膨大な魔力を得ます。それを収束して炎へと変換して、放つ。威力はなのはのスターライトブレイカーよりも精霊を殺している分、強力です。
「ルシフェリオン……」
「まったまったぁぁぁぁっ‼」
「衛宮君!?」
「どいてください、マスター。そいつらを殺せません」
「待て待て、殺すってなんだよ! そんな事していいわけないだろ!?」
「ちょっと、衛宮君がマスターってどういう事っ!」
「これは好都合だ」
そう言って、赤い弓兵はマスターこと衛宮士郎の背後に回り、首筋に短剣をあてました。
「なっ、何をするんだ!?」
「マスターを殺されたくなければおとなしくするんだな」
「ちょっとっ、アーチャー!?」
「凛、状況が悪すぎるのだ」
「離せ、離せよ!」
「さあ、どうする?」
「仕方ありません。こうなればマスターごと消し飛ばしましょう」
「「え!?」」
「おおい、ちょっと待ちなさい! あんた、衛宮君のサーヴァントでしょ!」
「その通りです。しかし、幼女を誘拐して使役するお兄さんをここで消しておくのも世の為です」
ここで数々の女性を泣かせるお兄さんを殺しておくのも、世の女性の為になるでしょう。
「……それはそうね」
「違うっ、俺はやってない! 無実だ!」
「犯罪者は皆、そう言うのです」
「待ちたまえ。君はマスターが居なくなれば現界する魔力もなくなるのではないのかね?」
「いえいえ、私は自ら星を喰らって魔力をほぼ無尽蔵に生み出せますので、マスターなど必要ありません」
「なんつー出鱈目な」
「それってもう、魔法の領域じゃないっ!」
「ああ、名乗っていませんでしたね。私は小学三年生の魔砲少女高町朱里です。今回の聖杯戦争にて……アルターエゴ、複合英霊のクラスで現界致しました。以後、お見知りおきを……いえ、ここで死ぬのですから必要ありませんね」
「ちょっとっ、マジでピンチじゃない!」
「そうだな」
「どうすれば……どうすればロリコン疑惑が……」
「そっちっ!? そっちなの!?」
「俺にとっては重要な事だ!」
「馬鹿な事を言ってないで、彼女がサーヴァントであるのならば、君の令呪を使えば問題ないのではないかね」
「それよ!」
「令呪ってなんだ?」
「令呪はその手の甲の事よ。それに意識をしながら命令するの! サーヴァントに対する絶対命令権だから、有効なはずよ」
「わかった。令呪を持って命ずる」
「具体的に言わないと駄目よ! 私もそれで失敗したんだから!」
「俺達への攻撃を禁じる!」
そう宣言すると、繋がっているラインから私の中へと魔力が流れ込んで来る。身体が勝手に動いて、用意していた魔法を霧散させました。ですが、私は内心大喜びです。何故なら……
「解析終了……」
「ん?」
地上に降りた私は杖をペンダントに戻して、首にかけます。
「身体の中を搔き回されてお兄さんに穢されました。謝罪と賠償を求めます」
「ちょっ!?」
「事実よね」
「とんだ変態だな」
「なんでさっ!?」
「というか、それはブーメランですよ」
「え?」
「何を言っているんだ?」
「おや、わからないのですか。衛宮士郎」
「??」
「っ」
「私が名乗ったのですから、貴方の真名を言っただけです。ねえ、未来の英雄、衛宮士郎お兄さん」
「「えええええええええええぇぇぇぇぇっ!!」」
お兄さんと凛の叫びが夜の住宅街に木霊します。迷惑ですよ、二人共。夜は静かにしましょう。