あの副大統領のクーデターから10年。今度は日本の平和が死んだ。
白騎士事件の勃発である。2000を超える制御不能のミサイルを前に、日本の運命は風前の灯と思われた。だが、友好国日本の危機を救うため、駆けつけた男達がいた。
アメリカ合衆国大統領直属部隊、プレジデントフォース。そして、合衆国大統領本人だ。

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にじファンから移転しました。
一部改訂済み。


白騎士と鋼鉄の狼

 21世紀に入り四半世紀が過ぎ去った後――日本の平和は死んだ。

 

 日本に向けて発射された2000発以上のミサイル。

 世界12ヶ国に対する同時ハッキングにより、各国のミサイル施設が掌握された為だ。

 このミサイル攻撃を前に、日本政府は最早風前の灯と思われた。

 だが、そのミサイルに対応するため日本に向けて飛ぶ、最後の希望は残されていた。

 

 合衆国大統領直属のプレジデントフォースと、そして――

 

 

――合衆国大統領だ。

 

 

 

 

 

IS インフィニットストラトス×メタルウルフカオス

短編 vol.1 「白騎士と鋼鉄の狼」

 

 

 

 

 

 第47代アメリカ合衆国大統領マイケル・ウィルソンJrは10年前の副大統領(リチャード)によるクーデターで装着した

 特殊機動重装甲(SMA)を再び身に纏い、各国のミサイルの目標が日本と分かると同時にエアフォース・ワンでホワイトハウスから飛び立った。

 10年前から黙々とマイナーチェンジを続けた愛機“メタルウルフ・プレジデント”と、完成したばかりのその正式量産型“メタルレイヴン”と共に。

 友好国日本の平和を取り戻す為に……。

 

 

 

 日本の首都、東京。15年前に発生した謎の怪生物騒動などまるでなかったかのように発展を遂げるこの地は、今現在ミサイルの脅威に脅かされていた。

 首都東京は避難命令を受けて閑散としており、ミサイル迎撃として陸上自衛隊のパトリオットが配備され、E-2D早期警戒機を始めとしてF-15J、アメリカ艦隊のF-35C、超巨大強襲重攻撃ヘリ“オラジワンⅡ”が日本の領空を舞う異常事態となっていた。

 

大統領(ミスタープレジデント)。これから派手なパーティが始まるのですね。こんな規模のパーティは久しぶりです』

 

 その日本上空、約25000フィートを青と白の配色がなされた旅客機、大統領専用機である“エアフォース・ワン”が飛行していた。

 眼下の艦艇の大半は既に砲塔を斬り裂かれる、舵が壊れるなどの損害で戦闘能力を失っており、航空機も白騎士の高機動性に振り回された揚句弾切れに陥り、帰艦したところで主翼を折られるなどで既に無力化されつつあった。

 

『大統領。目標25000フィート下方、あと1分で目標上空を通過します。

 パーティ会場での“注文(オーダー)”の用意をしてください』

 

 機内の後部格納庫。貨物扱いされている5機の特殊機動重装甲。その5機の中心に立つ機が、“大統領”という呼びかけに対し、紅い単眼を点滅させた。

 

「その心配はない。ジョディ。“注文(オーダー)”は既に決めてある」

『まぁ、流石です! 大統領! こんなパーティは早く参加しないと損ですからね!』

 

 エアフォース・ワンの後部ハッチが重々しい音と共に開き、特殊機動重装甲を着込んだ5人の集団が重力に従い落ちていく。

 

『ご武運を、大統領! ちなみに今回の作戦名は“I'll Be Back! 帰ってきたメタルウルフ作戦 ”です!』

「オーケェェィ! レッツ、パァァァリィィィィ!」

 

 下方の東京湾では、日本へ向け発射されたミサイルは既になく、白騎士とアメリカ艦隊による砲火と閃光で彩られたパーティが始まっている。

 戦闘機と艦隊でごった返すパーティ会場で、特殊機動重装甲を着た全員がパーティの無粋なお客様へショットガンを構えた。

 

「オードブルをたらふく食らいな!」

 

 パーティと言えば食事。 

 食事におけるマナーなど今更確認するまでもなく、食事で最初に出されるのは前菜(オードブル)だと相場が決まっている。

 鉛玉の前菜を――グレネード弾の前菜も混ざってはいるが――残さず食らったお客様(白騎士)の装甲で火花が爆ぜていく。

 

『大統領、入場券のないお客様に丁重なおもてなしをしてください。

 改めて見ると変なものですね。また宇宙人が乗っているかもしれませんよ』

 

 ミサイルで、ショットガンで、大統領はパーティ会場へ侵入したお客様をもてなす。かつて大統領が撃墜したUFOさながらの素早い回避運動を取った白騎士がアメリカ艦隊へと接近。

 その直後、海上で一隻の巨大戦艦が火を噴いた。

 

『おや。大統領のダディ、太平洋艦隊旗艦の戦艦M・ウィルソンが戦闘不能、戦線離脱です』

「ダディ……」

 

 白騎士が手にした剣で戦艦の砲塔を切り落とし、光線が迎撃ミサイルを撃ち落とす。

 艦首に設置されていた先代大統領、マイケル・ウィルソンの銅像もついでに剣で切り払われ、たった一撃で銅像の上半身が斬り飛ばされた。

 

――おお、マイケル……。私の愛するアメリカと、日本を頼んだぞ――

「ダディィィ!」

 

 戦闘能力を失ったM・ウィルソンは回頭。白騎士からの追撃はない。

 先程まで白騎士の周囲で一撃離脱を繰り返していた戦闘機部隊はプレジデントフォースの降下に合わせ、巻き込まれることを避けて後退していった。

 

「着艦!」

 

 メタルウルフが国会議事堂の屋根に着地。ブースターで国会の屋根が崩落しない程度に粉砕した。既に中に人などいない。

 

『大統領らしい紳士的な着地ですね』

 

 その支援を務めるメタルレイヴン、メタルウルフ型の正式量産型にして短時間の空中戦を可能とする特殊機動重装甲が国会周辺の住宅地に布陣。両手にマルチミサイルとレールガンを構えた。

 どう見ても背面コンテナに収まらないように見えるが、そんなものは「大統領魂」と「アメリカ魂」の前では些細なことである。

 

 ――ちなみにこのメタルウルフとメタルレイヴン、両機が装備する同型の背面コンテナは常に先進的な雰囲気を求める「フロントムーディ社」、通称「フロム社」が自重を投げ捨てた力作で、数多のロマンと最先端技術、そしてプレジデントフォースの協力により一つ一つ大統領魂とアメリカ魂を注入した完全受注生産制(フルオーダーメイド)にして渾身の問題作である。

 

『どうやら間にあったようです。親愛なるアメリカ市民の皆さんこんばんは。

 DNNリポーター、ピーター・マクドナルドです。

 上空より我らが親愛なる大統領と、凶悪犯罪者“ホワイトデビル”をとらえています。

 奴は日本を守るべく集結したアメリカ太平洋艦隊、及び在日アメリカ艦隊を殲滅する気です。

 このDNN独占スクープの模様を生中継でお送りいたします』

『またこんなところに出てきましたね』

「どうやらお仕置きが足りなかったようだ」

 

 10年前、大統領に散々な発言を繰り返したピーター・マクドナルド。

 報道ヘリごと墜落してもすぐ空に舞い戻る執念の男である。

 

『ご覧ください!

 世界各国がテロリスト“ホワイトデビル”のハッキングを受けて発射されたミサイル! これがその全てを撃墜した日米連合軍を壊滅に追い込みつつある“ホワイトデビル”です!

 なんと凶悪な面構えでしょう!』

 

 DNNヘリのカメラが白騎士の姿を捉え、それをアップで放映している。

 そして今も変わらず出鱈目を全世界の電波に乗せて発信するピーター・マクドナルド。

 白騎士も怒ったのか、荷電粒子砲が報道ヘリを掠め、巨大ヘリを貫いた。

 実のところ報道ヘリの方から光線に近づいたことにこのリポーターは触れない。

 

『大変です! 残虐非道な“ホワイトデビル”は報道ヘリにまで攻撃を仕掛けてきました!

 そしてなんと! あの空に浮かぶ要塞“オラジワンⅡ”が、アメリカが誇る超大型強襲重攻撃ヘリ“オラジワンⅡ”が火を噴いています!

 私は大丈夫ですが視聴者の皆さんは心から合衆国軍を応援しましょう』

 

 メタルウルフが跳躍し、白騎士に向けて飛びかかる。

 その遥か先では、被弾して左前面が吹き飛んだオラジワンⅡが引火しかけている爆弾をギリギリのタイミングで投棄しつつも、熟練パイロットの操縦で大型ヘリ(オラジワン)専用空母“ビル・J・クリントン”へとなんとか着艦しようとしていた。

 本来オラジワンⅡは対空ミサイルなど問題としない、A-10サンダーボルトⅡすら凌ぐ規格外の装甲を持ってはいたが、荷電粒子砲の前では勝手が違ったようだ。

 オラジワンⅡの無事だった右側のユニットには未だ虎の子の“超大型対空気化弾搭載ミサイル”が搭載されてはいたものの、海上を漂うボート諸共低空を飛行する白騎士を吹き飛ばすわけにもいかず結局爆弾と一緒に投棄された。

 

「Yeah!ミサイルパンチを食らいな!」

 

 投棄した爆弾が空母のすぐそばの水中へと没し、巻き上げられた海水が土砂降りのように漂う救命ボートに降り注ぐ。

 いくつかの救命ボートが波でひっくり返され、兵士が海に投げ出されながらも、日米両軍が助け合うことで奇跡的にも死者こそ出ていなかった。

 ボートから、海面から、そして救助活動に当たる艦艇から数多の兵士の声援を受け、僅かに反応の遅れた白騎士を流星の如き勢いでブーストタックルしたメタルウルフの拳が捉え、その拳が仕込み機構で伸びると同時に爆発する。

 

『――っ!?』

 

 爆発を食らった白騎士は流石に堪えたのか吹き飛ばされ、ビルに埋まった。

 粉塵が晴れ、メタルウルフの左腕によってビルの壁面に叩きつけられた状態で動けなくなった白騎士へチクチクとメタルレイヴンのミサイルとレールガン、ついでに赤い塗料の通称ケチャップ弾が命中する。

 

「私は負けん!何故なら私はアメリカ合衆国大統領だからだ!」

 

 10年前と比べて推力が上がったメタルウルフが白騎士に再度ブーストタックル。

 ビルは粉微塵に粉砕され、白騎士が地面を転がる。

 そこにメタルレイヴンから撃ちこまれる野球ボールと木の矢。別にふざけているわけではない。れっきとした砲弾と機関銃の弾丸である。

 ビルの残骸に埋もれた白騎士が、頭だけを出して動かなくなった。

 

「ビリーヴ ユア ジャスティス!」

 

 メタルレイヴンの合唱が東京に、日本とアメリカの将兵の大歓声が東京湾に木霊し、メタルウルフがパーティクラッカー(ショットガン)を鳴らす。

 しかし、まだ日本を襲った白い悪魔、白騎士は倒れていなかった。ミサイルパンチの衝撃で気を失っていた白騎士の操縦者の意識が覚醒し、再び動き始める。

 

『敵も粘りますね。まるで、大統領が毎年年始に食べている餅のようです。

 そういえば知っていますか大統領?今年も餅を喉に詰まらせて死亡する事故が起きて、そろそろ餅を“無差別対人兵器”として取り締まるべきではないかという運動が起きているんですよ』

「餅をアメリカンサイズで食べようとするからそうなる。ダディの部下だったNINJA達はそんなことはしなかったぞ」

『――っ!』

 

 非常にノイズの混じった声の為に何を叫んでいるかは分からないが、白騎士が再び飛翔した。

 荷電粒子砲の乱れ撃ちがメタルレイヴンを襲い、メタルレイヴンは蜘蛛の子を散らすように散開する。

 

『ご覧ください!

 凶悪テロリスト“ホワイトデビル”が住宅街を攻撃しています!

 これはアメリカはおろか世界でも許されないことです!

 もうアメリカンジョークではすみません』

 

 白騎士が低空飛行でメタルウルフに接近し、手にしたブレードで切り払う。

 メタルウルフはそのまま一刀両断……されるかに見えたが、弾き飛ばされ、国会議事堂を粉砕しただけだった。

 メタルウルフのシールドこそ減ってはいるが、大統領魂の前にはブレードなど些細なものである。

 

「やってくれるじゃないか! そろそろメインディッシュだ!」

 

 崩落した国会議事堂の瓦礫を吹き飛ばしながら跳躍したメタルウルフ。

 前菜(オードブル)の次は主菜(メインディッシュ)だ。

 メタルウルフの背面コンテナの武器が全門展開。白騎士を正面に捉える。

 

これが大統領魂だ(ハウドゥユーライクミーナウ)!」

 

 景気よく大量の銃弾が発射された。

 龍のようなエネルギー弾(ドラゴンレールガン)が曲がったように見えても、それを突っ込んではいけない。

 何故なら彼は大統領。不可能も可能にする大統領魂の持ち主だからだ。

 

 そしてメタルレイヴンからも全門展開による攻撃が殺到する。

 彼らもまた、メタルレイヴンに乗ることを許されたアメリカ魂の持ち主である。

 どうみても背面コンテナより武装が大きいことなど、彼らの前ではミジンコ程度の問題だ。

 

『うわぁぁぁぁっ!』

「ビンゴォ!」

 

 レールガンの流れ弾がヘリを直撃。ヘリはきりもみ回転をしながら墜落、市街地で大爆発を起こした。

 だが、どんなマジックを使ったのかすぐに新たなDNN社のヘリが舞い上がる。ジョディの舌打ちが聞こえた。

 

『視聴者の皆さん、御心配おかけしました。なんとか脱出に成功しました。

 新たなヘリで復帰します』

『彼もしぶといですね』

 

 爆炎の中から白騎士が姿を現す。

 熱く燃える大統領魂とアメリカ魂、ついでに重火器の前に煤けた白騎士。

 最早満身創痍のように見える。

 

「そろそろトドメのデザートと行こうじゃないか!」

 

 食事は遂に最終局面、最後には美味しいデザートが待っている。

 一斉に飛びかかる1機の大統領魂と4機のアメリカ魂。

 その手には特殊機動重装甲(SMA)サイズの「デザートイーグル(・・・・・・・・)」が2丁ずつ。

 

「もう“おやすみ”の時間――」

 

 その瞬間。

 白騎士が振るったブレードが5機を同時に弾き飛ばした。

 無論、5機は大統領魂とアメリカ魂で無事である。彼らの魂の装甲の前にブレードなどただの鉄塊にすぎない。

 だが、問題はそこではない。

 

――白騎士がいる場所。ここは空中であり、海上なのだ。弾かれた5機が東京湾の海面へ、同時に吸い込まれた。

 

「ノォォォォゥ!」

 

 5機の声が一つに重なる。ドボンという音と共に巨大な水柱が5つ立った。

 

大統領(ミスタープレジデント)!?』

『大変です!我らが親愛なる大統領が水没してしまいました!

 空飛ぶ要塞、オラジワンⅡが回収に向かっています!

 我らが大統領なき今、このまま日本は悪に屈してしまうのでしょうか……』

 

 ピーター・マクドナルドの沈痛な声が東京湾上空に響く。

 応急処置を受けたオラジワンⅡが空母から緊急発進し、特殊機動重装甲の水没地点へと急行する。

 白騎士はこれを好機と見たのか、大量の救命ボートで溢れる東京湾を離脱していった。

 

『……しかし私は希望を失わない。

 希望が暴力に屈することなどあってはなりません。

 私はこれからもアメリカの正義と、自分の信念を貫きます。

 我々DNNはこれからも“ホワイトデビル”を追い続けます。

 何故ならば、“ペンは銃より強し”

 今も昔もDNN、ピーター・マクドナルドがお伝えしました』

 

 

 

――異常だった。

 世界最強の性能を誇ると説明されたISが。

 何者をも突き離す、世界最強のパワードスーツだと束に聞かされていた「白騎士」が、撃墜寸前まで追い込まれたのだ。

 

 確かに、最初は言われた通りだった。

 シールドエネルギー10万を持つ白騎士は日本に迫るミサイルを全て撃墜し、

 更には集結した在日米軍と航空自衛隊、太平洋艦隊を相手に獅子奮迅の活躍をしてのけた。

 私はモニターの数字に目をやる。

 

――残エネルギー:86。

 

 妙なパワードスーツが乱入するまで5万はあったエネルギーが、たったのこれだけ。

 今は飛行もどこか不安定だ。

 

「こんなはずでは……!」

 

 フラフラと揺れる白騎士を纏い、私はISの開発者、篠ノ之束の下に舞い戻る。

――もう、あんな妙なパワードスーツの相手は御免だ。

 

 

 

「親愛なるアメリカ市民の皆さん、こんばんは。

 合言葉は“ノー・モア・ホワイトデビル”政府政策推進部からのお知らせです。

 本日は皆さんに非常に残念なお知らせをしなければなりません。

 先日、突如として出現した“ホワイトデビル”により、東京の街は甚大な被害を被りました。

 極悪テロリストは住宅街をエネルギー兵器で焼き払った上で革命を宣言したとされています。

 第2次世界大戦以来、日本で稀に見る大惨事と言えます」

 

 涙ぐむような嗚咽が聞こえた後、しばらく画面にはコロラド川を進む船の映像が流れた。

 10年前、“血と硝煙のアリゾナ作戦”でグランドキャニオンの軍事基地を破壊した際、コロラド川を流された大量の瓦礫がフーバーダムに引っかかり、ダムが決壊しかけるという出来事もあったが、現在は映像のように元の風景を取り戻している。

 

「――“ホワイトデビル”のパイロットは卑劣極まりない悪魔です!

 このようなことは決して許されません!

 しかし、世界の警察である我々アメリカ市民は、あのような悪に決して屈しないでしょう。

 アメリカ市民の皆さん、共に闘いましょう。

 それではここで勇敢に戦い、最も早く退院したプレジデントフォース副隊長、ロバート・ファイルス中尉にインタビューです」

 

 眼鏡をかけたどこか神経質そうな青年、いや壮年と言っても差し支えない中肉中背の男性が学生と思しき娘を抱き寄せたまま、本当にたった今退院したばかりの病院を背にして口を開いた。

 

「……ええ。あれはまさに“ホワイトデビル”でした。

 空高く飛び、高空から一方的に攻撃を受け、我々が布陣していた住宅街はエネルギー兵器の直撃を受け一瞬で火の海と化しました。

 しかし、我がアメリカには“ホワイトデビル”を追い詰めた大統領(メタルウルフ)、メタルレイヴンを始め、世界に誇れる兵器があります。

 次は、負けませんよ」

「以上、自由と正義がモットー、政府政策推進部からのお知らせでした」

 

 

 

 それから1年後。

 その日、大統領は怒り心頭であった。

 1年前の白騎士事件。

 彼を冷たい東京湾に沈めたそれは、その名をIS、インフィニットストラトスと言った。

 やっと正式量産が開始され、今まさに莫大な利益を生み落とそうとしていたメタルレイヴン。

 その矢先にこれの発表、あの事件だったのだ。あの後プレジデントフォースもフロム社も大赤字となった。

 この大赤字が後にアメリカが特殊機動重装甲に拘りISの発展が遅れた原因となるのだが、それはもう少し未来の話だ。

 

『エアフォース・ワン、アラスカ上空に到達しました。

 本日の予定を再確認します。

 30分後から始まるIS運用協定会議、いわゆるアラスカ会議で世界各国へのISコアの分配が話し合われます。

 構わないのでこのISを開発し、大統領を水底に沈めた日本を“歓迎”してあげてください』

「オーケィ。ジョディ、行ってくる」

 

 大統領が高度2万フィートからメタルウルフで降下する。

 今も昔も、お決まりの言葉と共に。

 

「レッツ、パァァァリィィィィ!」

 

 

 

――その日、アラスカ会議は大混乱に陥った。

 屋根を、壁をぶち破りメタルウルフで会議に出席した第47代アメリカ大統領、マイケル・ウィルソンJrがパーティクラッカー(ショットガン)を突きつけ、こう要求したのだ。

 

・ISの出現で世界(アメリカ)が混乱した為、日本は責任を取って人材管理と育成を行う機関を設立する。

・IS技術を世界に提供する。

・設立した機関の運営資金は日本が自分で出すこと。

・ISコアの分配はアメリカの数を最も多くすること。

・これに日本が従わない場合、今から“大歓迎”すること。

 

 このとてつもない要求に日本は屈した。

 かくして、後にアメリカは世界初の男性IS操縦者から「ヤクザの某A国」と呼ばれることになるのであった。

 

 

 

 IS以外の兵器が時代遅れとされた今も、彼らのようにアメリカ魂溢れる男達は特殊機動重装甲(SMA)を操っている。

 

 ISが空を舞う世界で、特殊機動重装甲(SMA)はアメリカ陸軍の主力を務めている。

 今も昔も、そして――きっと、これからも。

 

 

「自由と信念と愛すべき隣人を守るために、我々は“自らの正義”を信じ続け、戦うことを諦めない。

 なぜなら我々は、アメリカ合衆国市民だからだ!

 そして貴方たちが許す限り、私はその戦いの最前線で戦うだろう。

 なぜなら私は――」

 

「アメリカ合衆国大統領だからだ!」




機械人形(ゴーレム)と鋼鉄の狼に続く。


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