救世主の贖罪   作:Yama@0083

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に、二カ月以上お待たせしてしまい申し訳ありませんでした・・・今回は多少オリジナル展開も織り交ぜた事もあって、かなり文章にするのに苦労しました。



では、長らくお待たせしました。最新話です、どうぞ。


21. クラス代表戦 ~伊号、出撃~

クラス代表戦当日。アリーナには三人の生徒がそれぞれのISを展開し、試合開始を待っていた。

 

「鈴、俺が勝ったらあれがどういう意味だったのか教えてくれよな。」

「・・・良いわよ、まあアンタが『勝ったら』の場合だけどね!!」

謎にお互い火花を散らしている二人を他所に、残りの一人は気怠そうにしていた。

「はーあぁぁぁ・・・何であたしがこんな事しなきゃなんないのー?正直面倒かも・・・」

彼女が身に付けている機体は学園から支給された『ラファール・リヴァイブ』。だが、彼女はラファールの拡張領域(バススロット)を二、三倍まで追加しており、そこに彼女の発明品をぶっ込んでいる。更に、安定した武装の運用を行う為に、各部にスラスターの追加やら装甲強化措置を施しているので、実質彼女の専用機と化していた。

「むー、これは専用機じゃなくて技術試験用の機体だって何度も言ってるのに・・・」

と、そこまで文句を言った所で一旦言葉を切り、拡張領域から『成層圏を墜す者(ストラトスブレイカー)』を取り出し、笑みを浮かべた。

「まっ、こうなったからにはあたしの発明品達の性能実験、ついでにやっちゃうかも!」

その瞬間、試合が始まった。

「先手必勝!避けなきゃ当たるよ!」

彼女は連結状態のそれを構え、目の前の二人に向け散弾を発射した。

不意をつかれた二人はそれを紙一重で避け、それぞれの敵を見据えた。

「ちょっと彩季奈、あたしはコイツと白黒はっきりさせなきゃなんないんだから邪魔しないでよ!」

「どうぞご自由に!あたしはそんなお二人を適当に攻撃するかも!」

際限なく降り注ぐ散弾を避け、鈴は恨めしげに彩季奈を見た。と、その時。

「うおおおおおお!!」

一夏が雪片弐型を構え、彼女に突進してきた。

「このっ・・・見え見えなのよ!!」

振り下ろされたその一撃を双天牙月で受け止め、逆に弾き飛ばす。

「おっ、一夏とかいうのも入って来た。これは好都合かも!」

彼女は一度『成層圏を墜す者(ストラトスブレイカー)』の連結を解き、そして先程とは前後逆に二つの長銃を連結させた。

「よーし、いっくかもー!」

彼女はそれのトリガーを引いた。するとそこから太い黄色のレーザーが飛び出した。それは明後日の方向に飛んで行ったが、彼女は銃身を動かし、丁度薙ぎ払う様に一夏達の方向にレーザーを向けた。

「うわっ!?あ、危ねえ・・・」

「ホントにうざったいわね!良いわよ、そっちがその気なら!」

鈴は両肩にある砲身の無い衝撃砲『龍咆』を彩季奈に連射した。

「ちょ、耐久力はあんまり無いかも!」

その攻撃を、大きく横に移動して何とか避ける彩季奈。

「あぁんもう、ちょこちょこと!鬱陶しいのよ!・・・それに、アンタも!」

彼女は『龍咆』を撃ちながら双天牙月を背後に向けて振りかざし、一夏の攻撃を再び受け止めた。

「くっ・・・マジかよ!?」

「ふん、少しは気付かれないように攻撃したらどう?」

戦闘において素人ではあるものの、一度に二人を手玉に取られているという状況に、彩季奈は焦りを感じていた。

(これは・・・不味いかも。あたし達が素人だという点を踏まえても、こうも好きにやられるなんて・・・勝つ事にはこだわらないけど、このまま何もせずに終わるのは癪かも。・・・よし!)

「まだ使った事が無かったけど、この際使ってやるかも!いでよ虎の子、タクティカルアームズ!」

拡張領域(バススロット)からタクティカルアームズを取り出した彼女は、その強固な刀身を盾にして、鈴への突撃を開始しようとした。

 

しかし、その時。

 

 

 

突如、アリーナを覆うバリアーを太いビームが突き破り、アリーナの中心に爆煙が立ち上った。

 

 

 

「な、何が起こったのよ・・・」

「ッ!鈴、アイツだ!」

一夏が指した方向には、全身装甲(フルスキン)の巨大なISが佇んでいた。馬鹿でかい腕部をだらりと垂らし、静かに彼等の方向を見ている。この異常を観客席の人々も確認したのか、アリーナ内がざわめき始めた。

 

『試合は中止!織斑、凰、それに平賀の三人は即刻戻ってこい!他の生徒も、今すぐ避難を開始しろ!言っておくが、これは訓練ではない!非常事態と言えば分かりやすいか!』

アリーナに響き渡ったそのアナウンスにより、全員が今起こっている事を理解したらしく、あちこちから悲鳴やどよめきが聞こえ始めた。すると何故か観客席のシャッターが次々と降り始め、ついには先程の喧騒も聞こえなくなっていた。

 

「何あれ・・・全身装甲(フルスキン)?今時珍しいわね。しかも識別不明・・・」

「どっかの国が秘密裏に開発したって可能性もあるけどな。鈴、そういう情報聞いたことないか?」

「あたしはまだ代表候補生だから、知ることが出来る情報は限られてくるけど・・・少なくとも、そんな計画があったなんて事は聞いてないわね。っていうかアンタ達、早く逃げなさいよ!あたしが時間を稼ぐから、早く!」

「馬鹿、お前だけを置いて逃げる訳にいくかよ!」

「そもそも、話が通じる相手かどうか確認する必要があるかも。さっきのは間違えて撃った可能性も無くはないし。」

彩季奈がそれに声をかけようとした時、そのISは不意に両腕を前に構えた。よく見るとそこには何かの発射口らしきものがあり、そこに少しづつエネルギーが集まっている。

「・・・前言撤回。攻撃来るかも!じゃあなかった、来るよ!」

彼等が左右に分かれた瞬間、ついさっきまで彼等が居た場所を太いビームが通過していった。

「ビーム兵器!?しかも、セシリアのライフルより出力が上だぞ!」

「どうやら、逃がしてくれる感じじゃなさそうね・・・仕方ない、こうなったらあたし達でアイツを倒すわよ!一度散開した後、彩季奈は援護射撃をお願い!あたしと一夏は合流して切り込むわ!」

「分かった!」

「りょーかい!本当はアレをじっくり観察といきたいけど、ここは素直に従うかも!」

そう言葉を交わした後、彼等はバラバラの方向に飛翔した。

 

 

 

 

 

その頃、管制室では真耶が必死にアリーナに居る三人に通信を試みていた。

「もしもし織斑君!?織斑君聞いてます!?鳳さんも、聞いてます!?平賀さんに至っては通信切っちゃってる!?」

彼女が慌てふためく一方で、千冬は澄ました顔をしていた。

「まあ落ち着け、山田先生。あの様子を見るとどうやら、奴等がアレを倒すつもりらしい。ならばやらせてみるのも良いだろう。」

「織斑先生、なに呑気なこと言ってるんですか!?」

「そう焦るな。珈琲でも飲むか?糖分が足りないから苛々する。」

そう言って珈琲をマグカップに注いだ千冬だったが、何を血迷ったのかそこに大量の塩を入れた。

「あの、織斑先生・・・それ、塩ですけど・・・」

「・・・何、少し新しい組み合わせに挑戦しようとしただけだ。」

絶対嘘だ、と言いたかった真耶だったが、千冬の虎をも殺しそうな眼光を受けて黙り込んだ。

緊迫感が再び管制室に充満し始めた時、千冬の端末に一件の通信が入った。その相手を確認した彼女は、管制室の隅に移動してそれに応じた。

「私だ。どうした?」

『千冬、出撃許可をくれ。1ガンダムを使って未確認機を撃退する。彼等を危険な目に合わせる訳にはいかない。』

「・・・それは分かる。が、今アリーナ遮断フィールドが、何者かによってレベル4に設定されていてな。更に、外へ出る為の扉は全てロックされている。現在三年の精鋭達がシステムクラックを実行しているが、今直ぐあそこに救援に行くのは難しいだろう。」

『その位、フィールドに繋がるドアなりシャッターなりを破壊すればどうとでもなるさ。』

「それに、だ。確かに生徒の安全を考えるのは最もだが、お前のISもまた、奴等から見ると未確認の機体。奴等を更なる混乱に陥れさせかねん。平賀にもまだ、お前の機体を見せていないのだろう?」

「・・・その通りだ。全く、あの時潔く見せるのを渋ったツケを、この様な形で払う事になるとは・・・」

彼の口調には、自分に対する苛立ちが込められていた。

「まあ、万が一奴等に命の危機が訪れた時は出撃してくれ。それまでは・・・遺憾だが、見ている事しか出来んな。」

そう言って通信を切った千冬の表情は、険しい物に変わっていた。

 

 

 

 

 

フィールドでは、一進一退の状況が続いていた。初めは上手く連携出来ていたのだが、予想以上に相手の動きが早く、また時たま攻撃を受けていた為、たびたび連携を崩されていたのだ。そんな中、彩季奈は謎の敵に対しある疑問を抱いていた。

(うーん・・・さっきから思ってたんだけど、あれって本当に人間?さっきから体の負担を考えていないような動きを連発してる気がするかも。それこそ、千冬先生並の身体能力が無いと失神しちゃうレベルだし。まさか、人が乗ってないとか?・・・確かめてやるかも。)

すると彼女は、自ら謎のISに向かって突撃を開始した。

「ちょっと彩季奈!?何やってんの、正気!?」

「少し確かめたい事があるの!援護宜しくかも!」

「ええ!?・・・ったくもう、仕方ないわね!」

射撃役が突如前に出た事に面食らいながらも、鈴はすぐさま『龍咆』を未確認機に向かって連射し、その注意を彩季奈から外させようとした。 その甲斐あってか、今まで彩季奈を凝視していたそれは再び鈴達の方向に腕を向けた。

「っ!一夏、来るわよ!」

「おう!」

次の瞬間、小さなビーム弾が彼等に向かって連射された。彼等はそれを避け続け、少しでも長く未確認機をこちらに釘付けにしようと試みた。そして、それがビーム砲の斉射を止めた瞬間、彩季奈が敵の背後を取った。その顔にはいつの間にかゴーグルの様な物が付いている。

「ふっふーん。さぁーて、喰らうといいかも!彩季奈特製スタングレネード、投下!」

彼女は未確認機の顔面目掛けてそれを投合した。

「スタングレネード!? 目ぇ閉じなさい一夏!」

そう言われて一夏が目を閉じた瞬間、通常のスタングレネードよりも激しい閃光が発生した。

「・・・やっぱり、思った通りだったかも。」

ゴーグル越しに未確認機を見つめていた彩季奈は、不意にタクティカルアームズを全力で振り回し、それの腕に叩きつけた。それの左腕は肩から下がスパッと切れ、地面に落下した。

「ちょっと彩季奈!?何やってんのよ、パイロットの腕が・・・!」

「いや、断面を良く見て欲しいかも。」

そう言われた彼女が敵の左腕をズームして確認すると、そこからは血が一滴も出ておらず、あるのは時折飛び散る火花とだらりと垂れたコードだけだった。

「な・・・何よあれ、あれじゃまるで・・・!」

「アイツは無人機。人が乗ってないかも。」

「でも・・・でも、もし人が入ってたらどうするつもりだったのよ?」

「さっきのフラッシュバンはアイツが人間か否かを確認するためだったの。あれだけの光を至近距離で見て、人間が只で済む筈がないかも。いくら屈強な兵士でも、心を無くした機械みたいな人間でも、顔を背けるなり手で目を覆うなり何かしらの反応を示す筈。ここまで言えば分かるでしょ?」

「つまり・・・アレには、それが無かったって事?」

鈴の言葉に、彩季奈は軽く頷いた。

「それがどうしたとばかりに、あたしを見てた。それで確信したかも。コイツは人間じゃないって。もしそれで何か反応したら、あんな真似しないよ。」

そこまで語った彩季奈に続き、一夏も付け足す様に語り始めた。

「あと、この際だから言っとく。俺も、少し前からそんな気はしてた。ほら、アイツ俺達が話をしてる時には攻撃して来なかっただろ?普通はその隙に何らかのアクションを仕掛けて来る筈だ。そんで、話が終わってまた俺達が動いたら、アイツも動き始めた。流石にこれはおかしいと思わないか?」

その言葉に、鈴はそういえば・・・と今までの敵の動向を思い返していた。

「ま、アイツの腕の断面から血の一滴も出ないのが何よりの証拠かも。よーし、これで遠慮なくやれるね!」

「でも、無人機と分かってもアイツの脅威は変わらないわ。まだビーム砲も一つ残ってるし、あの馬鹿でかい腕で殴られたらひとたまりもないわね。」

「どうする?アイツは無人機だから疲れも感じない筈だ。数ではこっちが勝ってるけど、このまま長引けばこっちの疲れが溜まるばかりで不利になるぞ。」

二人がどのようにして倒すか話し始めた時、今まで何かを考えていた様だった彩季奈が突如口を開いた。

「二人共・・・ちょっと作戦を考えたかも。聞いてくれない?」

「作戦?どんな奴か言ってみなさいよ。」

「役割としては、鈴はまた囮になってもらうかも。その衝撃砲を撃ちまくって、なんとかアイツの注意をそっちに引き付けて。」

「分かったわ、やってやろうじゃない。んで、アンタや一夏はどうすんのよ?」

「あたしと・・・ええと一夏は、アイツに突っ込むかも。でも、この作戦の要となるのは一夏だよ。その刀、雪片の系譜でしょ?だったら、零落白夜もあるはずかも。」

「ああ。確かにコイツは雪片だし、単一仕様能力(ワンオブアビリティー)として零落白夜もある。」

「オッケー、それじゃあ話は早いね。あたしがアイツにもう一度接近して拘束するから、一夏はその隙に零落白夜を叩き込んで欲しいかも。」

「分かった。でも、どうやってアイツを拘束するつもりなんだ?あの図体の割に結構素早いぞ。」

「これを使うかも。」

そう言って彼女が取り出したのはタクティカルアームズ。するとその先端が二つに割れ、レンチの様になった。

「これでアイツを挟み込んで動けなくする。そこを突いて欲しいかも。」

「了解、そういう事なら任せてくれ。」

二人の答えを聞いた彩季奈は、満足気に頷いた。

「よし。時刻はヒトサンマルマル、これより作戦決行するかも!」

その掛け声と同時に、鈴が再び前に飛び出し『龍咆』を連射した。

「ほらほら、鬼さんこちらよ!」

雨霰の如く降り注ぐ衝撃の弾丸が未確認機を襲うが、それはその機動力でほぼ全てを回避した。しかし彩季奈の目論見通り、それは鈴のみに視線を注いでいる様だった。

「かかった!今よ、行きなさい!」

「分かってるかも!」

彼女はタクティカルアームズを前に構えて突撃を始めたが、未確認機は鈴の攻撃を受けながらも、腕のビーム砲を彩季奈に向けた。

「っ、させるもんですか!!」

鈴は咄嗟に双天牙月を敵に向かって投合した。それは寸分の狂いも無くその腕に直撃し、今まさに彩季奈を撃たんとしていたビームは明後日の方向に飛んで行った。

「ナイス支援!このまま・・・!」

そして、彼女はそのまま弾丸の如く未確認機に突っ込み、レンチ状になったタクティカルアームズの先端をその胴体にねじ込んだ。

「拘束するかも!」

メキッ、という金属が軋む音と共に、タクティカルアームズは未確認機の胴体をガッチリと掴んでいた。

「やった!じゃあ一夏、早く止めを!」

「ああ!」

とその時、予想外の事態が起きた。未確認機は何とか拘束から逃れようと、不意に彩季奈の体をむんずと掴んだのだ。

「きゃっ!?このぉ・・・!」

彩季奈はそれに驚愕したものの、咄嗟に柄にあるガトリング砲のトリガーを引いた。

ガガガガガ!と弾丸が至近距離で発射され、未確認機の胸部装甲がズタボロになっていく。それでもそれはその手を話さず、むしろ彩季奈を掴む力をギリギリと強めていた。

「ぁっ・・・一夏、早く!このままじゃこっちもヤバいかも!」

彼も零落白夜を使用するためのエネルギーがまだ十分に溜まっていないため、迂闊に手出し出来ない状況にあった。しかし、彼は何かを思いついたのか、鈴にこんな事を要求した。

「鈴、今すぐ衝撃砲を撃ってくれ。最大威力で頼む。」

「はぁ!?何言ってんのよ、あんな密着してる状態じゃ撃てないでしょ!」

「別にアイツに当てろとは言ってないだろ!とにかく、今すぐやってくれ!」

鈴はかなり困惑していたが、一夏の真剣な表情から渋々『龍咆』のチャージを開始した。チャージは直ぐに完了し、鈴はそれを放とうとしたが、何故か一夏が鈴の目の前に出た為出来なかった。

「ちょっと一夏、何やってんのよ!そこ退きなさい!」

「いいから、このまま撃て!」

「っ・・・ああんもう、どうなっても知らないわよーッ!」

ドッ!と鈴の両肩から衝撃砲が発射され、一夏の背に直撃した。

「ぐっ・・・!」

すると、白式がその衝撃砲をエネルギーへと転換していく。そして・・・

 

『エネルギー転換率90%以上。零落白夜、使用可能』

その言葉がディスプレイに表示された瞬間、一夏は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使用して一気に未確認機に肉薄した。

「うおおおおおおおお!!」

一夏はまず、彩季奈を掴んでいた腕を切り飛ばした。

「俺は守る!俺が関わる人達、俺の手が届く範囲の人達を、全て!そう、決めたんだ!!」

更に、勢いを利用して胴体を一閃した。その一撃がコアをも破壊したのか、未確認機は地面に倒れたまま動かなくなった。

「終わった・・・のか?」

「周囲に他のISの反応は無し・・・って事は、作戦成功じゃない?ったく、アンタ達二人共無茶するんだから。見ているこっちがヒヤヒヤしたわよ。」

すると、彩季奈が唐突に地面に仰向けに倒れた。その表情はとても晴れやかな物だった。

「この強度、この性能、予想以上かも!まさかここまで凄いなんて、やっぱりあたしは有能かも!」

「彩季奈、アンタいきなりどうしたのよ・・・」

鈴がそんな彩季奈を見て呆れていると、管制室から通信が入った。

『あっ!やっと繋がりました・・・皆、怪我はありませんか!?』

「山田先生?はい、俺達は大丈夫です。」

『そうですか・・・大事に至らなくて良かった。それはそうと、今すぐ退避して下さい!』

「え?」

『別の未確認ISの反応が・・・かく・・・ださい・・・』

真耶からの通信に何故かノイズが入り、ついには何も聞こえなくなった。

「どうしたんだ、一体・・・」

「それよりも、別のISがどうとか言ってたわよね?全く、次から次へと・・・!」

「とにかく、やるしかないだろ。」

三人は、再びそれぞれの武器を構えた。

 

 

 

 

「二体目が来てるみたいだよ。どうするの?」

「先生達からの情報によれば、一夏君はもうシールドエネルギーが残り少ないらしいわ。他の二人もあまり期待しない方が良いわね。」

「じゃあ、私達の出番って訳なの?でも、フィールドに出るにもシャッターが閉まってるのね。」

「そこなのよね・・・これ、壊しちゃっても良いのか分からないし・・・」

三人がどうやって外に出るか話し合っている中、恵がうんざりした様な表情で声を上げた。

「全く・・・皆思い切り悪過ぎでち。結局、こうする方が一番手っ取り早いでち。」

すると、彼女は自分のISFを起動した。そして周りの者が止める間も無く、魚雷をシャッターに向けて複数発射した。派手な爆発音と共に強固なシャッターは吹き飛び、真ん中にぽっかりと穴が開いていた。

 

「恵、アンタねえ・・・」

「まあ、これで進めるようになったから、良いんじゃない?」

「ったく、仕方ない・・・先生には私が上手く言っておいてあげるから、後は自分で何とかしなさいよ。」

「恩に着るでち。」

「よーし、それじゃ出撃するの!腕が鳴るのね!」

そして、彼女達は各々の機体を展開し、フィールドに飛び降りた。

 

 

三人は困惑していた。謎の敵を倒したと思えば二体目が来るとの情報が入り、それで気を引き締め直した途端にフィールドを囲うシャッターの一つが爆発。そしてそこから出てきたのはスクール水着らしき物を着た女子生徒集団。そんなもの誰でも不審に思うだろう。しかし、彩季奈はその正体にいち早く気付き歓声を上げた。

「あっ、あれ厳弥さん達かも!おーい!」

「あ、あれって彩季奈なの?それに鈴と今話題の男性操縦者もいるの!」

「い、幾に恵!?アンタ達なんでそんな格好なのよ!?」

「なんでって、これが恵達の機体だからでち。」

それぞれがお互いに様々な反応をする中、一夏は混乱していた。

「え、えっと・・・多分先輩達、だよな?何でここに?」

「あ、貴方が一夏君ね。ここは自己紹介と行きたい所だけど、今はそんな時間は無いの。二体目は私達が排除するから、他の子と一緒に撤退しなさい。」

「そんな!俺はまだ・・・」

戦える、と言おうとした所で彼はふと思い出した。先程の戦いで、全員が多くのシールドエネルギーを消耗してしまっていた事を。

(確かに、今の状態じゃすぐにやられる・・・でも、先輩達だけで本当に大丈夫なのか!?どんな奴が出てくるか分からないのに・・・)

そんな彼の心中を察したのか、厳弥は朗らかな笑みを浮かべた。

「大丈夫だって、私達に任せときなさい。こう見えても結構強いんだから。」

その笑みは柔らかく、どこか人を安心させる力があった。

「そう、ですか・・・それじゃ、後は任せました。二人共、ここは一旦退こう。」

「了解!幾に恵、負けたら駄目なんだからね!」

「いっひひ、私達の実力を見て恐れおののくがいいのね!」

「心配しなくても、一年に後れは取らないでち。」

鈴達から少し離れた場所で、彩季奈と華の二人も声をかけ合っていた。

「おお・・・先輩達やる気まんまんかも。あの調子なら心配無さそうだね。じゃ、華も頑張って。」

「うん。はっちゃん、頑張るね。」

そして、三人が撤退した直後。空から一機の金色のISがゆっくりと降りてきた。

「来たわね・・・!伊東四姉妹の力、見せつけてやるわよ!」

「「「おー!」」」

 

 

 

 

 

『また別のISだと?しかも、未確認の?』

「ああ。先程の三人は撤退した。その代わりに、伊東姉妹達が迎撃に向かっている。」

『厳弥達か・・・彼女は日本の代表候補生らしいから、そこまで問題は無いと思うが・・・その妹達はどうなんだい?』

「そうだな。四番目はまだ分からんが、二番目と三番目はそれなりに実力はある。それに、奴等は個々の実力よりも連携を重視しているからな。それぞれの足りない部分を、それぞれが補い合っている。例え一人が多少劣っていても、奴等は何とかするだろう。」

『ほう、君がそこまで評価するとはね。分かった、そう言う事なら彼女達に任せてみよう。』

「ああ。ところで、先程少し妙な事が起きた。山田先生が奴等三人と通信をしていたのだが、そのISが学園の丁度上まで到達した時、何故か通信が途絶えてしまってな。余程高性能なジャミング装置でも搭載されているのか・・・?」

『通信が途絶える?千冬、そのISの特徴は?』

「ふむ・・・全身装甲(フルスキン)で、体全体が金色に塗装されている。そして大きな一対の翼のような物が背中にあるな・・・」

取り敢えず千冬は、見たままの感想をリボンズに伝えた。それを聞いた瞬間、モニターの中の彼の表情は驚愕に染まった。

『・・・千冬、今すぐにそのISを拡大し、よく観察してくれ。僕の予想が正しければ、それは・・・』

千冬は言われた通りに、映像を拡大して観察してみた。すると彼女の目にある物が映り、彼女もまた目を見開いた。何故なら、そのISの背部辺りからオレンジ色の光が排出されていたからだ。それは彼女にとって、良くも悪くも見覚えのある物だった。

「・・・なあ。私の目がおかしくなければ、あの機体はGN粒子と酷似している物を、背中から発生させているのだが・・・」

彼女の言葉に、リボンズはやはりか、と呟いた。

『その機体の名はアルヴァアロン・・・かなりの火力を誇る機体だ。しかも、GN粒子を使用しているようだね。恐らく、一筋縄ではいかないだろう。』

 

 

 

 

 

 

「うわっ・・・何よあのIS、全身キラッキラじゃない。」

「アレを設計した奴は、絶対ナルシストでち。うん、間違いない。」

「全部金色にする為に、どれだけのお金を使ったのか気になるのね。」

「生体反応無し・・・という事は、無人機?」

四人がそれぞれの反応を示す中、そのISは只突っ立っているだけだった。

「さて、じゃあ仕掛けましょうか。まずは小手調べとして・・・華、魚雷撃ってくれる?」

「種類は、普通の物でいい?」

「うん、只の威嚇射撃みたいな物だからそれでいいわよ。」

その答えを聞いた華は、拡張領域から一冊の厚い本を取り出した。表紙に『Torpedo』と書かれてあるそれを、彼女は広げた。

「了解・・・Fire!」

すると、その本から魚雷が数本飛び出した。それらはそのまま金色のISに突き進み、そして着弾した。しかし、その魚雷は膜の様な物に阻まれ、そのISにダメージを与える事は出来なかった。

「ちょっと、バリアとか狡くない!?」

「下々の野郎共には触らせねーよって事でちか?益々ナルシストに磨きがかかってるでち。」

「あのバリア、私のライフルの弾も防いじゃうのね。」

「じゃあ、魚雷の種類を変えてみるね。大型推進魚雷(トルピード・ブースター)、Fire!」

次に、彼女は通常の物よりも一回り大きな魚雷を射出した。それは金色のISを覆う膜に当たると推力を増し、まるでドリルの様に膜を突き破ろうとしていたが、やはり貫通は出来ずに終わった。

「ゴリ押しも駄目かぁ・・・となると、あれを突破するのは難しいわね。」

「接近戦を仕掛けてみたら?」

「無理無理。実弾である魚雷が防がれたんだから、多分タクティカルアームズも防がれるわ。」

「じゃあどうするの?このままじゃ埒が明かないのね。」

「そうねぇ・・・取り敢えず、あのバリアの効果が切れるのを待つしかないか。多分あれは、展開するのに相当のエネルギーが必要な筈。そのまま維持し続ける事は出来ないだろうしね。」

それを聞いた恵は、華にある要求をした。

「・・・華、BM魚雷を数本頼むでち。」

「いいけど・・・どうするの?」

「厳弥の言ってる事が正しいならば、あのバリアはエネルギーが切れれば消える。じゃあ、ありったけの攻撃を食らわせて、それを防御させる。エネルギーを沢山使わせて、バリアが切れる時間を早めた方がいいでち。」

そういう事なら、と彼女は要望通りに搭載している爆薬の量が通常の三倍であるBM魚雷を、恵に手渡した。

「よし。それじゃ、その鬱陶しいバリアをとっとと剥がしてやるでち。」

恵は、それらを一斉に相手に向けて撃ち出した。それらはバリアに接触した瞬間に大爆発を起こし、爆炎を上げた。バリアは二発目までは防げた様だったが、流石にその威力に耐えきれなかったのか、三発目には段々その色が薄くなっていき、遂には消失した。

「お手柄よ恵!こんなにも早く消えたって事は、まだ試作段階だったんでしょうね。でも、相手がどんな武装を持っているのかまだ分からないし、少し様子見を・・・って、普通はなるんでしょうけど、ここは敢えて突っ込むわよ!皆、用意はいい?」

「予め魚雷は補給しておいたから、大丈夫でち。」

「狙撃なら何時でもOKなのね!」

「はっちゃんは、後方支援に回るね。」

妹達の力強い返答に、厳弥は笑みを零した。

「よぉし・・・それじゃ、突撃よ!」

まず、厳弥と恵が金色のISに向かって駆け出した。そしてその勢いのまま、厳弥はタクティカルアームズを振りかざした。が、金色のISはそれを上に飛翔する事で回避した。

「っ、恵!」

「分かってるでち!」

彼女は自動的に相手を追尾するホーミング魚雷を射出した。だが、金色のISはライフルを右手に展開し、複数回トリガーを引いた。そこから発射されたオレンジ色のビームは、それに迫っていた魚雷を全て撃ち落とした。

「ビーム兵器か、中々良い武器持ってるじゃない!」

「撃って来るでち!」

魚雷を撃ち落とした金色のISは、次に彼女達にライフルを向けビームを発射したが、彼女達はそれをすんでのところで回避した。

「くっ・・・あのビーム、結構弾速が高いわね。それに、威力も高そう。」

「一発でも当たったらヤバそうでちね・・・っと!」

彼女は側面に回り、遠隔操作が可能なBT魚雷を三本撃ち出す。金色の機体はそれを撃ち落とすべく再びそれらに向けビームを放つが、BT魚雷は恵の操作によりそれを紙一重で避け、そして金色の機体の装甲に着弾した。

「当たった!でも、あんまり効いて無さそうでち。」

「アイツに少しでも接近出来たら、どうにかなるんだけど・・・あのライフルが厄介ね。」

「私に任せるのね!」

彼女達が声が聞こえた方向を見ると、幾が大型推進魚雷(トルピード・ブースター)に跨り彼女達の方向に向かって来ていた。

「要するに、あの銃を撃てなくしちゃえばいいのね?だったら・・・!」

すると、幾は大型推進魚雷(トルピード・ブースター)から飛び降り、先程持っていた物とは別の狙撃銃を構えた。

「ぶち抜いてあげるの!」

彼女がトリガーを引くと、銃口から一閃のビームが飛び出し、それが金色の機体の手にあるライフルを貫いた。貫かれたライフルは数秒後に爆散した。

「いひひっ、これで丸腰なのね!」

「わざわざここまで来た意味があったのかは分かんないけど、良くやったわ幾!後は私に任せて!」

武装を失った金色の機体はオレンジ色に光る剣を取り出し、厳弥に向かって斬りかかった。

「へえ・・・私に接近戦を挑むなんて、いい度胸してるわね!」

厳弥はそれを片方の剣で受け止め、もう片方の剣を胴体目掛けて勢い良く突き刺した。が、思ったより装甲の強度が高く、損傷は表面に穴が空いた程度だった。それを確認した彼女は、少し離れた所にいる華に向かって叫んだ。

「華、銃貸して!出来れば連射能力が高い奴!」

それを聞いた華は、「Feuerwaffe」と表紙に書いてある本を開いた。彼女はその中から一丁のピストルを取り出し、厳弥に向かって放り投げた。

「ありがと、これで決めるわ!」

それを受け取った厳弥は、素早くそれをその穴にねじ込んだ。

「覚悟なさい!その胴体に、大穴開けてやるんだから!」

そして、トリガーを引いた。何回も、何回も。一発撃つ度に金色の機体の体は大きく跳ね上がるが、彼女は引き金を引く指を止めようとはしなかった。そして・・・

「ふう・・・こんな物かしらね。」

厳弥は引き金を引く指を止め、その機体を蹴り飛ばした。金色の機体はそのまま力無く地面に倒れ、その後動かなくなった。

「うわー・・・相変わらずやる事がエグいのね。」

「アレも無人機だったらしいから、別に問題無いでち。」

「まあ、これで任務も終わった事だし、皆でおやつ食べに行こ?」

彼女達がフィールドから去った後、襲撃してきたISの残骸は教師達が回収した。

 

 

 

 

 

 

IS学園の地下室には、先程の二機の残骸が運び込まれていた。そしてそこにはリボンズ、千冬、真耶の三人がいた。

「・・・成程、この機体は粒子貯蔵タンクを使用して稼動していたのか。」

『リっくんが送ってくれたサンプルを調査してみたけど、私が造ったGNドライヴが発する粒子とは少し違うみたい。』

「つまり、あの金色の機体はお前が寄越した訳ではない、という事か?」

『まあ、そうなるね。それに、私がちーちゃんとの約束を破るわけないじゃん!』

「とにかく、この機体は僕等が預かり、然るべき処分をするよ。それで良いね、千冬?」

「ああ、それで構わない。どうせ私達が調査しても、何一つ分からん。」

『理解が早くて助かるよちーちゃん。じゃあまた後日、受け取りに行くね。それじゃ!』

そう言って、束は通信を切った。彼等の会話が終わった後、千冬は大きく息を吐いた。

「全く、忙しい奴だ・・・まだ聞きたい事は山ほどあったと言うのに、速攻で切ってしまった。」

「まあ、彼女らしいと言えば彼女らしいさ。」

苦笑する二人に、真耶はふとした疑問を投げかけた。

「そのGN粒子?という物は、確かリボンズさん達だけが所有しているんですよね?それがどうして・・・」

その問に、リボンズは首を横に降った。

「それはまだ分からないさ。少なくとも、彼女が他者にGNドライヴを明け渡したという事は無いだろう。しかしどちらにせよ、あまり好ましく無い事態が起こっているようだ・・・僕等が知らない所でね。」

それから彼等は暫くの間、重い表情をしたままだった。




さて、今回はここで機体説明といきましょう。



ISF-MS1 「伊168」
素の「伊168」を近接戦闘向けに改装した機体。装甲や外見は他の3機とそこまで差異は無いが、水上での機動力と出力は一番高く設定されてある。

ISF-MS2 「伊58」
素の「伊58」から何も改装をしておらず、全4機ある伊号の中で唯一元の性能のままで運用されている機体。とは言え、水中ではハイパーセンサーで認識されなくなる等水中での性能は高い。が、水上でとなると使用者のセンスが求められる機体である。

ISF-MS3 「伊19」
素の「伊19」を長距離狙撃向けに改装した機体。他3機と比べハイパーセンサーが強化されており、更に大規模の範囲で敵を見つけたり、高速で動く相手をより正確に撃ち抜く事が可能となっている。

ISF-MS4 「伊8」
素の「伊8」を後方支援向けに改装した機体。拡張領域(バススロット)を追加しており、多数の武器を収納出来る。更に、これ専用に開発された本の形をした特殊な武装は、拡張領域(バススロット)と繋がっており、その状況に応じた武装を的確に取り出す事が可能。


こんな感じですかね。ちなみに、作中に登場したBM魚雷やBT魚雷とかありましたが・・・

BM魚雷→爆薬増しまし魚雷
BT魚雷→ブルー・ティアーズ魚雷

これらの略です。BM魚雷の名前は最早おふざけでしかありませんが・・・まあ、良いよね。
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