では、どうぞ。
久方ぶりの再開を果たした彼等は、学生寮に移動していた。
「ここが君の部屋だよ。入りたまえ。」
「は。案内して頂き、恐縮です。」
部屋に入ったリボンズは、ラウラをベッドに座らせた後、部屋にあったコーヒーメーカーを使い珈琲を煎れた。
「君の分だ、飲むと良い。」
「ありがとうございます。」
彼女は珈琲を一口飲み、一息ついた。
「・・・懐かしい。」
「うん?」
「私が、貴方にIS操縦のノウハウをご指導頂いていた頃・・・貴方は訓練の後、時たまこうして、私に珈琲を注いで下さいました。それがどうも懐かしく思え・・・とにかく、またこうして教官が注いで下さった珈琲を飲む事が出来るとは、喜ばしい限りです。」
「そうだね。僕も、こんな所で君に会うとは思ってもみなかった。まさか、君がシュバルツェ・ハーゼ隊の隊長にまで登りつめていたとは・・・僕がいない間、何があったんだい?」
「貴方が任期を終えた後・・・私は、織斑教官とレーヴェ隊長より直接ご指導を受けました。あれは中々ハードな物でしたよ。今思えば隊長は、あの頃から私を次期隊長にするつもりだったのでしょう。一体何度意識を飛ばされた事か・・・」
「それはご愁傷様、としか言いようがない。それで、隊長としての仕事はどうだい?」
「そうですね・・・日々の訓練メニューを考案、会議への出席、それに隊員達のメンタルケアなど、かなり多忙な日々を送っています。」
「成程、さぞかし大変みたいだね。では隊員との仲はどうかな?」
「コミュニケーションはしっかりとっておけ、と隊長に言われていましたので・・・努力しております。」
「それはいい心掛けだ。まあ、これからも精進する事だね。」
「はい。そしてこれからもご指導ご鞭撻、宜しくお願い致します!」
それを聞くと、リボンズの表情が困った様な表情に変わった。
「? どうされましたか、教官?」
「・・・ラウラ。残念ながら、ここで僕は君を指導する事は出来ない。僕がISを使えるということを隠しているからね。」
それを聞いたラウラは、少し残念そうな表情をした。
「む、そうでしたか・・・それは残念です。」
「あと、人前で僕を本名で呼ぶのは避けてほしい。一応、ここではリヴァイブ・C・スタビティという名で通っているからね。それに、教官とも付けないでくれ。」
「なっ!?お名前の方はまだ理解出来ます。しかし、教官と呼ぶなというのは承認しかねます!私の恩師で、最も敬愛するお方を、呼び捨て又はさん付けで呼べと!?」
「落ち着きたまえ。僕は織斑 一夏の護衛をする為ここにいる、言うなれば裏方さ。しかし、君の余計な発言により、僕の素性が勘づかれてしまっては、どうなるか分かった物ではない。分かるだろう?」
「うぐ・・・分かり、ました。」
彼女は苦悶の表情をしながらも、渋々それを承諾した。
「物分りが良くて助かる。それでは、僕はこれで失礼させてもらおう。それではまた明日、ラウラ。」
彼はラウラの肩を軽く撫で、彼女の部屋を去っていった。
「・・・ふふ。全く、本当にお変わりない。」
彼女はリボンズが手を置いた箇所に、その感触を確かめる様に、自らの手を置いた。
翌日。学年別トーナメントが近づいている事もあり、多くの生徒達がアリーナで自主訓練をしていた。
そんな中に、3人の少女より指導を受けている少年、織斑 一夏はいた。
「いいか?こう、シュバーッとやって、ガキッとした後、ズバン、だ!」
「そうねえ・・・感覚よ、感覚。何となく分かるでしょ。え、分かんないですって?なんで分かんないのよ、このバカ!」
「いいですか?防御の時は、右半身を斜め上前方へ五度傾けますの。そして回避の時は、後方へ二十度反転ですわ。宜しくて?」
「・・・本音を言っていいか?お前らが何を言いたいのか全く分からん!箒は説明に擬音語ばかり使うから、結局何が言いたいのか分かんねえ!鈴は何でもかんでも感覚で済ませようとするな!そんでセシリアは、丁寧に教えてくれるのは良いけど、理論ばかりでやっぱり分からん!」
一夏の的を得ている主張に、3人はすっかり黙り込んでしまった。
「ねえ、一夏。一度白式と戦ってみたいんだけど、良いかな?」
するとそこに、シャルルがやって来た。彼は己の機体である『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』を展開していた。
「ん?ああ、勿論だよ。じゃあ、早速やろうぜ。」
「うん、ありがとう。」
一夏とシャルルの勝負は、シャルルの圧勝で終わった。
「くそっ、何で勝てねえんだ?」
「う〜ん、一夏が勝てない理由は、ただ単に射撃武器の特性を理解していないからじゃないかな?」
「一応、分かってるつもりだったけど・・・本来はどんな物なんだ?」
「そうだなあ・・・うん、口で説明するだけじゃあれだし、試しに僕の銃を撃ってみなよ。」
そう言われて武器を受け取った一夏だったが、再び疑問の声をあげた。
「あれ、他人の武器は使えないんじゃなかったのか?」
「普通はそうだね。でも、その武器の使用者がアンロックすれば使えるんだよ。」
「へえ。なんか、シャルルの説明って分かりやすいな。」
一夏はシャルルの助けを借りながら、銃を構えた。その様子を見ていた女子三人は仏頂面だった。
「ねえ、あの二人仲良すぎない?」
「フン、私の説明は聞かなかったがな。」
「何故私の理論的指導が・・・」
そんな女子達を尻目に、二人は射撃演習を続けていた。すると、フィールドの一角からどよめきが聞こえた。
「嘘、あれってドイツの第三世代じゃない?」
「未だ本国ではトライアル段階って聞いたけど・・・」
そこにいたのは、先日転校してきた少女、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。彼女はドイツの第三世代型ISである、『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏っていた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・」
「ああ、アイツなの?ドイツの代表候補生って。」
ラウラはフィールドを見渡す素振りを見せ、そして一夏の方向を向いた。
「織斑 一夏、貴様も専用機を持っている様だな。ならば丁度いい、 私と戦ってもらう。」
「別に良いけど・・・なんで今なんだ?もうすぐクラスリーグ戦なんだから、その時にやればいいだろ。」
一夏は昨日の件で少し彼女に警戒心の様な物を抱いており、また彼女から発せられるただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
「そうか・・・強引な手は使いたくなかったのだが、それならばっ!」
そう言うなり彼女は、肩に装着されたレールカノンを構え、一夏に向け発射した。
「なっ!?」
「っ!」
一夏に当たるかと思われた弾丸は、シャルルによって防がれた。
「いきなり攻撃するなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね!」
ラウラはシャルルを一瞥し、呆れたような表情を見せた。
「フランスの第二世代型如きで、この私に盾突くとはな。」
「未だ量産化の目処も立たない、ドイツの第三世代型よりかは動けると思うけどね。」
二人の間には、一触即発の空気が流れていた。しかし、その空気を打ち消すかの如く、二人の間を何かが高速で通り過ぎ、そして壁に激突した。彼らが驚いてそれが飛んできた方向を見ると、そこにはISを展開した彩季奈がいた。
「ごめーん、試作段階の大艇ちゃんが急に暴走しちゃったかも!怪我とかしてないー!?」
ひたすら謝る彼女をラウラは一瞥し、そしてISを待機状態にした。
「戦いの空気ではないな・・・仕方が無い、今日の所は退くとしよう。それでは、また別の機会にな。」
そう言い残し、彼女は去っていった。
「二人共、大丈夫?なんかちょっとした不具合があったみたいで、急発進しちゃたの。」
「幸い僕らには突撃してこなかったから、大丈夫だよ。それより彩季奈のその機体、もしかしてラファールなの?」
「うん。作った武器を目一杯積んで運用出来るように、色んな改造をしたかも。ラファールとかの量産機は元がよく出来てるから、改造もしやすいし。」
「そっかぁ・・・えへへ、なんか嬉しいな。僕の機体も、ラファールを改造した物なんだ。そうだ、後で模擬戦してみない?」
「OK!同じ改造ラファール使いとして、シャルルの機体にも結構興味あるかも!」
「ありがとう!じゃあ一夏、取り敢えず練習を続けようか。」
「あ、おう・・・でも、ホント何なんだよアイツ・・・」
一夏はそうボヤきながらも、シャルルとの訓練を続けた。
時は流れ夕方。ラウラは自分の部屋で、今日の事を思い返していた。
「あのラファール使い・・・奴は少々腕が立ちそうだな。だが、肝心の織斑 一夏とは一戦も出来なかった・・・残念だ。まあ、元々そこまで期待はしていないが・・・」
ラウラー、シャワーアイタヨ-
「む、そうか。今行く!」
「うん?これは・・・生徒手帳?持ち主は・・・彩季奈か。全く、仕方がない。」
その頃、寮の見回りをしていたリボンズは、彩季奈が落としたのであろう生徒手帳を見つけていた。彼は軽いため息を吐き、彼女に届けるべく歩みを進めた。
同時刻、一夏は自分の部屋にいた。シャルルは只今シャワーを浴びている最中である。
「あ、そういやボディーソープがもう切れてたな・・・」
彼は戸棚に置いてあったそれを手に取り、シャルルに渡す為バスルームの扉を開いた。
「おーいシャルル、これボディーソープの替え・・・だぞ・・・」
しかし、彼の言葉は途中で途切れた。目の前には、同時にシャワー室の扉を開けたのであろう丸裸のシャルルがいた。二人はしばしの間、互いに、顔を赤らめながら見つめあっていた。
「あ、えーっと・・・これ、ボディーソープ・・・」
「うっ、うわあああああ!!?」
羞恥心に耐えきれなくなったのか、シャルルは 胸部を腕で隠して叫び声を上げた。しかし、その行動が更なる悲劇を呼ぶ。
「大丈夫かい!?今しがた君の部屋から悲鳴が聞こえたのだが、まさか敵襲・・・では・・・」
なんと、その悲鳴を聞いて異常事態と勘違いしたリボンズが、部屋に入ってきてしまったのだ。胸部を隠しながら赤面しているシャルルを彼は二・三度見て、自分を落ち着かせるかの様に息を吐いた。
「・・・どうやら、お取り込み中だった様だね。僕はこれで失礼するよ。」
「待ってくれリヴァイブさん!?これは誤解だ、誤解なんだーッ!!!!」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
シャルルがシャワーを済ませた後、3人はベッドに腰を下ろした。
「・・・確認しよう。君がシャルル・デュノアで間違いないね?」
「うん・・・でも、それは男性の格好をしていた時の名前で、本当はシャルロット、って言うんだ。」
「シャルル・・・なんで、変装なんてしてたんだ?」
「これは・・・実の父、言うなれば社長からの命令でね。ああ、でも僕は父の本妻の子供じゃないんだ。」
「なっ・・・」
それを聞いた一夏は、驚愕の表情を見せた。
「僕のお母さん・・・父の愛人が亡くなった後、デュノア社の人が迎えに来た。父と本妻の間には子供が生まれなかったから、だから僕をデュノア社の次期跡取りにしようって思ったんだろうね。そして色々と調べていく内に、僕のIS適性が高いことが分かったんだ。それから僕は、非公式のテストパイロットをしていてね。でも、それから・・・会社が経営危機に陥ったんだ。」
「経営危機?でも、デュノア社製の量産機は世界シェア率が第三位の筈じゃなかったか?」
「それはそうだけど・・・でも、結局リヴァイブは第二世代型だから・・・今のISの開発主流は第三世代型になって来てるし。」
「・・・ふむ。 会社の抱えている問題から見るに、君が男装までしてここに潜入した理由は・・・成程、予想は出来たよ。」
「え、リヴァイブさんはもう分かったのか?俺はまだ分からないんだが・・・」
「簡単な事さ。彼女がこの学園に派遣された理由・・・さしずめ、自社から二人目の男性操縦者が出たと発表し、世間の注目を再び向けさせる事と、君の機体データの入手。同じ男として接すれば、それがやりやすいと考えたんだろう。」
「凄いね、リヴァイブさん・・・そこまで分かるんだ。そう、僕に課せられた指示は、まさにその二つだったんだ。だけど・・・」
彼女は更に俯き、暗い表情を無理矢理歪ませる様に自嘲をした。
「こうしてバレちゃったから・・・その内僕は、本国に強制送還になる。そこから後は・・・多分、無事では済まないかな。良くても牢屋入りは免れないかも。ごめんね一夏、今まで騙してて・・・」
それを聞いた一夏は黙り込んだが、突如として立ち上がった。
「本当に・・・本当にそれで良いのか、シャルル!?」
「い、一夏?どうしたのさ急に・・・」
「親がいなきゃ子供は生まれない、それはそうだ!けど、だからと言って子供の運命まで決めて良い訳じゃない!!お前はそれで良いのか!?」
「え・・・?」
「親の命令でこんな事させられて、挙句の果てには牢屋行きなんて・・・シャルルは、本当にこのままで良いのかよ!?納得してんのかよ!?」
そう言われたシャルロットは、苦しげな表情を浮かべた。
「っ・・・納得してるわけ、ないじゃないか。出来る事なら、もっと皆と・・・一夏と、一緒に居たいよ!!でも、それは多分父が許さない。それに僕は今まで、皆を騙して来たんだ。今更そんな事・・・」
再び俯いてしまった彼女に、リボンズが声をかけた。
「・・・では、この際決断してしまえば良い。このまま自分の理不尽な運命に、悲観しながらも従うか、それとも抗うかをね。別に君がどちらを選ぼうと、僕は責めはしないよ。」
横にいる一夏から少し非難する様な視線を受けたが、それを気にせず彼は少し間を置き、再び口を開いた。
「さあ選びたまえ、決めたまえ。その自由は君だけの物だ。君の親も生まれも関係なく、君自身のみにある。」
「・・・僕、ここにいても良いの?」
「先程も言った様に、これは君の気持ちの問題だ。善し悪しの問題ではない。・・・それに」
彼は一度一夏に視線を向け、言葉を続けた。
「君の目の前にいる彼は、君が何であっても受け入れると思うけどね。」
シャルロットが驚いた様に顔を上げると、そこにいる一夏は少し照れ臭そうに笑っていた。
「えーと・・・シャルル、お前はここに居たいんだろ?だったら居れば良いじゃないか。お前がIS学園にいる内は、親父さんは手出しが出来ない。IS学園における生徒者は在学中において、あらゆる国家・団体・組織に帰属しない。特記事項にもそう書いてある。」
一夏はシャルロットの肩に手を置いた。
「つまりここにいる三年間は、シャルルの身の安全は保証されてるってわけだ。その間に、どう問題を解決するか考えれば良い。だから・・・ここにいてくれ。こんな形で別れるだなんて、言うなよな。」
そう言った一夏の姿は、シャルロットの目にはどの様に映っていたのだろうか。だが少なくとも、一夏の言葉を聞いた彼女の表情は、今までとはまるで違う、晴れやかな笑顔に変わっていた。
「本当に・・・本当にありがとう、一夏!!」
「おう!じゃあこれからも宜しくな、シャルル!」
すると、彼女の表情が少し不機嫌な物になった。
「・・・シャル。せっかくだからシャルって呼んでよ。本名を明かした以上、偽名を使う意味も無いんだから。」
「ああ、それもそうだな。んじゃ改めて、宜しくな、シャル。」
「うん!宜しくね、一夏!」
この問題はこれにて一件落着かと思われた。が、唐突に部屋のドアがノックされ、彼等に緊張が奔った。
「一夏さん、いらして?」
「せ、セシリア!?」
「シャル、隠れてろ!」
「う、うん。でも、どこに隠れれば・・・」
「仮病を使うんだ、シャルロット・デュノア。その場凌ぎにはなるだろう。」
「一夏さん?入りますわよ。」
リボンズの指示通りにシャルが布団にくるまった瞬間に、ドアが開いた。
「あら一夏さん、いらしたのですね。しかし、リヴァイブさんもいらしたの?」
「僕はシャルル・デュノアの調子が宜しくないと聞いたから、様子を見に来た所さ。」
「まあ、そうでしたの。シャルルさんは大丈夫でして?」
「う、うん・・・ちょっとだるいけど、大丈夫かな・・・」
「それはなによりですわ。お体は大事になさって下さいな。」
「そういや、セシリアの用事はなんなんだ?」
「いえ、折角ですから、ご一緒に夕食でも、と思っていたのですが・・・」
「ああー・・・行きたいんだけど、シャルルを看なきゃなんないからなぁ。」
「ですわよね・・・まあ、仕方ありませんわ。」
彼女が口では軽く言っているものの、実際にはかなり残念そうな表情をしている事にリボンズは気付いた。
「・・・では、彼はその間僕が看ておこう。君達は食堂に行って来るといい。」
「リヴァイブさん!でも、良いのかよ?」
「何、たかが数十分程待つだけだ。ついでに、彼に食べさせる物を持ってきてくれ。」
「分かった!シャルルの事、宜しくな!じゃあ行くか、セシリア。」
「はい!」
セシリアは部屋を出る際、リボンズに対して深くお辞儀をして出ていった。
「・・・もう出てきても構わないよ、シャルロット・デュノア。」
それを聞き、シャルロットはベッドの中からのそのそと這い出てきた。
「ありがとう、リヴァイブさん。上手く口を効かせてくれて。」
「礼には及ばないさ。それより、謝るのは僕の方かもしれないな。」
それを聞いたシャルロットは、不思議そうな顔をした。
「どうして?リヴァイブさんは僕に対して何もしてないし、むしろ一夏と一緒に僕を助けてくれたのに?」
「いや、折角の彼と君の二人きりの時間を潰してしまったか、と思ってね。君は彼に対して好意を抱いているのだろう?」
意地悪い笑みを浮かべながら問う彼に対し、シャルロットは赤面した。
「そっ、そんな事・・・ないよ!?」
「素直になりたまえ。君が彼を少なからずは好いているのは一目瞭然だ。」
「う、うう・・・そんなに分かりやすいかなぁ・・・」
「少し鋭い者なら分かるくらいにはね。それより、君は本当にこれで良かったのかい?・・・まあ、答えは分かりきっているがね。」
「うん。僕は一夏や皆と、もっと一緒に居たい。もっと皆と喋ったり、遊びに行ったりしてみたいんだ。」
「それは良い。今の内しか味わえない青春を満喫しておきたまえ。」
「うん・・・ありがとう。」
その後、一夏が来るまで少し今後について語り合った二人であった。
次の日の朝、学校中ではとある噂が流れ、生徒達を賑わせていた。
「ねえ恵、聞いた聞いた?」
「ん?聞いたって、何をでち?」
「学年別トーナメントで優勝したら、織斑君やデュノアくん、あとリヴァイブさんの内誰か一人と付き合えるんだって!!」
そのあまりにも突拍子もない話に、恵は目を見張った。
「・・・は?いや、流石にそれは・・・てか、なんでリヴァイブさんまで巻き込まれてるんでちか・・・」
「さあ?でも可能性があるなら、私も頑張っちゃおうかな!」
「はぁ・・・まぁ、頑張って。」
「うん!恵も頑張りなよ!」
そう言って他の所に行った級友を見送り、彼女は軽くため息を吐いた。
「そもそも、私達とは学年が違うんだけど・・・ま、どーせろくな事にならないでち。」
鈴は学年別トーナメントの為、アリーナへ自主練をしに来ていた。
「ふぅ、私が一番乗りか。」
「あら、鈴さんではありませんの。」
すると、同じくアリーナに来たセシリアより声をかけられた。
「アンタも、トーナメントに向けた特訓?」
「ええ。そういう鈴さんもですか?」
「当ったり前よ、優勝に向けてね。」
「私も全く同じですわ。」
「むっ・・・そうねぇ、この際どっちが上か、この場ではっきりさせるってのも悪くないんじゃない?」
「ふふっ、宜しくってよ。どちらがより強く優雅であるか、この場で決着をつけて差し上げますわ。」
「まっ、私が勝つのは目に見えてるけどね!」
「弱い犬程よく吠えると言いますけど、本当ですわね。自分が上とわざわざ大きく見せようとする、典型的な例ですもの。」
「なっ・・・その言葉、そっくりそのまま返してやるわよ!!!」
両者はISを展開し、互いに睨み合った。そして鈴は双天牙月を構えて突撃しようとした。が、
ドッ!
突如、二人の間に砲撃が撃ち込まれ、爆発が起きた。二人が弾丸が飛んできた方向を見ると、そこには黒いISを纏った少女が佇んでいた。
「ふむ。イギリスのブルー・ティアーズ、そして中国の甲龍か。データ上の情報で見た方が強そうに見えるな。」
カチンと来た二人は、思わず言い返した。
「何、アンタ?馬鹿にしてるわけ?」
「鈴さん、この方は共通言語が通じない様ですわよ。あまり虐めるのも可哀想ではなくて?」
そんな二人を見て、ラウラは冷笑を浮かべた。
「ふん、数だけしか取り柄が無い国と、只の骨董品に有り余る程の価値を見出す国は、どうやら余程人材不足と見える。」
その挑発に、更に額に青筋を浮かべる二人は、今にも怒りが爆発しそうな状態にある。
「ほう、やるか?良いぞ、私は一向に構わん。まあ、私はあんな腑抜けを取り合う様な女には負けんがな。」
その瞬間、二人の中で何かが切れた。
「祖国のみならず、この場にいない人に対する侮辱まで・・・!許せませんわ!!」
「コイツッ・・・!ぶっ飛ばす!!」
こちらへ突撃してくる二人に対し、余裕そうな表情をラウラは見せた。
「良いだろう。我がドイツの力を見せつけてやる、歌の様にな!!」
ネエネエ、イマアリーナデ、ダイヒョウコウホセイガモギセンシテルラシイヨ。シカモ、ニタイイチデ。
ホント!?ハヤクシナイトオワッチャウカモシレナイシ、イコ!
「代表候補生?て事は、セシリアと鈴か?」
「でも三人って事は・・・ボーデヴィッヒさんも?」
「・・・なんか、嫌な予感がする。俺達も行こう。」
彼等は少し急いでアリーナへ向かった。
「どうした、その程度か!?これではドイツの人間である私が、英国人である貴様を嘲笑う事になるぞ!」
その頃アリーナでは、一方的な展開が続いていた。いや、最早これは蹂躙と言った方が正しいのかもしれない。彼女はワイヤーブレードやAICを巧みに使用して、二人に攻撃を加え続けている。しかし、相手には攻撃させる暇を与えないでいた。
「・・・ふん、本当に不甲斐ない。まさかここまで弱いとはな。一応私と同じ代表候補生なのだから、少しは楽しめると思ったのだが・・・期待外れだな。貴様等、それでも代表候補生か?恥を知れ。」
しばらく続けた後、最早彼女等には興味が失せたのか、ラウラから闘争心は完全に消えていた。彼女は早く戦いを終わらせようと、肩にあるレールカノンを彼女達に対して構えた。だが、それが発射される事はなかった。何故なら・・・
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
激昂した一夏が白式を用いてアリーナのシールドを破り、ラウラに向かって突撃して来たのだ。
「織斑 一夏・・・?まさか、貴様自ら来てくれるとはな!正直予想外だったが、丁度いい。貴様の実力を測ってやる!!」
ラウラは二人を乱雑に投げ捨て、一夏の方に体を向けた。
「どうしてここまで!?二人にはもう戦う力は残ってなかっただろ!?」
「奴等には代表候補生の座に伴う実力が無かった。それを奴等に思い知らせただけだ!!」
「ッ、この野郎ォ!」
一夏はラウラに斬りかかった。が、ラウラのAICにより、その行動を妨げられた。
「クソ、体が!?」
「感情的で、直線的な動き。成程、使い時によっては良い結果になるかもしれん。が、今の貴様が使っても的になるだけだ!!」
そう言うなり彼女は、肩のレールカノンを稼動させ、一夏に向けた。
「結局は貴様も、私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では有象無象の一つにしか過ぎなかったか・・・ならもう用は無い、消えろ。」
しかし、彼等の間に弾丸の雨が降り注いだ。それがラウラの集中を乱した事で、一夏はなんとかAICの拘束から逃れる事が出来た。
「チッ、デュノアか。」
ラウラは降り注ぐ弾丸を、右へ左へと移動して避けた。
ラウラがシャルの相手をしている間に、一夏は横たわっている二人を回収した。
「おいお前等、大丈夫か!?」
「い、一夏・・・」
「無様な姿をお見せしました・・・」
「良かった、意識はあるみたいだな。」
その頃、ラウラはワイヤーブレードを用いてシャルを捕らえる事に成功していた。
「フ。ようやく捕まえたぞ、カトンボが。」
シャルはそれでも、諦めずにアサルトライフルをラウラに向け連射する 。だが、それもAICによって防がれてしまった。
「面白い。貴様に世代差という物を見せつけてやろう。」
ラウラはプラズマ手刀を展開し、シャルに斬りかかった。しかし、
ガン!ガン!ガン!
「何!?くっ・・・!」
突如、ラウラに向け三発の弾丸が放たれた。彼女はそれを避けるため、AICを解除する事を余儀なくされた。
「初めまして、ね。 私も一応、日本の代表候補生なんだけど・・・やり合ってみる?現役軍人の候補生さん。」
その声の主を見たラウラは、ほんの一瞬だが戦慄を覚えた。
(これ程の殺気・・・一般人に出せる物なのか!?)
「・・・貴様、何者だ?」
「私?私は伊東 厳弥。そういう貴方はラウラ・ボーデヴィッヒちゃんだっけ?」
(・・・コイツは、強い!!)
彼女はシャルを遠くに投げ捨てると、肩のレールカノンを、彼女に向け発射した。
「攻撃してきたって事は、勝負を受けるって事で良いのよね?だったら・・・」
彼女はハンドガンを拡張領域に収納し、タクティカルアームズ0を展開した。
「精一杯、相手してあげる!!」
そして、高速で向かって来た弾丸を、虫を叩くかの様に振り払った。
「ほう・・・!ならば、これならどうだ?」
彼女は全てのワイヤーブレードを、厳弥に向け射出した。
「ふぅん、これでセシリアちゃんや鈴ちゃんをボコしてたってわけね。確かに、厄介な武装だけど・・・」
彼女は再びハンドガンを展開した。そしてワイヤーブレードの猛攻を掻い潜りつつ、それらを一つ一つ破壊していった。
「軌道さえ読んでしまえば、こっちのもんよ!」
やがて全てのワイヤーブレードを破壊した彼女は、ラウラに向かって走り出した。
「まさか、全て破壊するとはな・・・しかし!」
ラウラは真っ直ぐ向かってくる彼女に、レールカノンを次々と発射した。
「そんな物、避けるまでもないわ!」
タクティカルアームズ0を展開した彼女は、それをX時にクロスさせ、目の前に構えた。それが盾として機能し、彼女は砲撃をものともせず走り続けた。
「そこよっ!」
すると彼女は、何を思ったのか片方のタクティカルアームズを投合した。
「武器を投げ付けるとは、血迷ったか!」
ラウラはそれをプラズマ手刀を用いて弾いた。しかし、その隙に厳弥はすぐそこまで近づいていた。
「はぁぁぁぁ!!」
残った片方のタクティカルアームズで、厳弥は斬りかかる。しかし、そこはAICの間合いでもあった。
「フッ、馬鹿め!!」
にやりと笑ったラウラは、即座にAICを展開した。厳弥の腕が、あと数センチの所で止まる。
「あー・・・これの存在すっかり忘れてたわ。」
ラウラはレールカノンの砲塔を改めて厳弥に向けた。
「確かに、貴様は他の有象無象とはかなり違う様だ・・・しかし、やはりこの停止結界の前では無力も同然だ!」
「う、撃たないで・・・なーんちゃって。」
「何・・・ッ!?」
レールカノンを放とうとしたラウラだったが、それは彼女の背後から迫る魚雷によって阻まれた。彼女は投げつけたタクティカルアームズにラウラが気を取られている隙に、ホーミング魚雷をラウラの背後から襲い掛かるように投げていたのだ。
「くっ、当たるか!!」
ラウラは機体の高度を上げ、魚雷の追撃を躱した。魚雷はそのまま地面に着弾し、爆発を起こした。
「・・・煙に紛れたか。奴は何処にいる・・・?」
煙が薄れつつある中、彼女は静かに警戒していた。すると、後ろから接近してくる物体がレーダーに映った。ラウラはそれをAICで止めたが、それは厳弥ではなかった。
「また魚雷・・・ッ、まさか!?」
ラウラが後ろを振り向くと、タクティカルアームズを振り上げた厳弥がいた。
「知らなかった?奇襲は潜水艦の十八番なのよ。」
「く・・・おのれぇぇぇ!!」
急ぎプラズマ手刀を展開し、彼女は反撃を試みた。だが、
ガギィン!!
「全く・・・これだから、餓鬼の相手は疲れる。」
そこには、両手に1本ずつ持つ打鉄の刀で、二人の武器を受け止めている千冬がいた。
「お、織斑教官!?」
「織斑先生、相変わらず凄い事しますねぇ・・・ISの武器を生身で二本持つとか、人間じゃないでしょ?」
「何か言ったか、伊東長女?」
「イエ、何デモナイデス。」
ギロと睨まれた厳弥は、思わず片言になってしまった。
両者が武器を収めたのを確認した千冬は、再び口を開いた。
「模擬戦をやるのは結構だ。だが、アリーナのバリアまで破壊される事態になられては、教師として黙認しかねる。・・・織斑、貴様の事だぞ?」
「あ、ああ。すみません・・・」
一夏の返答を聞いた千冬は、一先ず表情を元に戻した。
「この決着は、学年別トーナメントでつけてもらう。まあ、伊東長女とボーデヴィッヒは学年に差がある故、戦う事は出来んが・・・異論は無いな?」
「・・・織斑教官がそう仰るなら。」
「まあ、私は半分勢いで乱入しただけだしね。私もOKです。」
「よし。織斑・デュノアもそれで良いな?」
「あ、はい。」
「僕も、それで構いません。」
「よろしい。では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」
ラウラと千冬が去った後、厳弥はふぅと息を吐いた。
「取り敢えず、そこの子達を保健室に運ばないとね。私が一人運ぼうか?」
「いやいや、大丈夫ですって。今回ばかりは俺達に任せて下さい。」
保健室
「別に、助けてくれなくても良かったのに・・・」
「あのまま続けていれば、間違いなく勝っていましたわ。」
「なーに強がっちゃってるの。貴方達、ISが強制解除される位ボッコボコにされてたじゃない。 」
「そうだよ。あれだけ無理しちゃって・・・二人共、好きな人の前で負けちゃったから恥ずかしいんだよね?」ボソッ
シャルがそう囁いた瞬間、二人の顔がポッと赤くなった。
「べべべ別に、そんなんじゃないんだからね!!」
「そ、そうですわ!ただ、女のプライドを侮辱されたと言いますか・・・」
「女のプライド・・・?何だそれ?」
「・・・ああ!もしかして、一夏の・・・」
と、その先を言おうとしたシャルを、二人は必死に止めに入った。
「アンタってホント一言多いわね!!」
「本当ですわ!!」
「おいおい、止めろって。二人共怪我人だろ?その癖にさっきから動き過ぎだぞ。」
一夏は鈴とセシリアの肩に手を置いた。すると二人は痛みから悶え始めた。
「ほら、やっぱり痛いんじゃないか。馬鹿だなぁ、だから休んでろって。」
「なっ、馬鹿って何よ馬鹿って!?この馬鹿ぁ!」
「一夏さんこそ、大馬鹿ですわ!」
「バーカ!バーカ!バーカ!」
「お前等、ホントなんなんだよ・・・」
すると、ゴゴゴゴと地面が震えた。何事かと彼等が思っていると、保健室のドアが勢い良く開け放たれると同時に、多数の女子生徒が一夏達の下に押し寄せた。
「な、なんなんだ?」
「み、皆・・・どうしたの?」
「「「「「「これ!!」」」」」」
女子生徒達は、一斉に一枚の紙を取り出した。
「えーと・・・今月開催される学年別トーナメントは、より実践的な模擬戦闘を行う為、二人組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた者との組み合わせとなる。締切は・・・」
「兎に角!私と組もう、織斑君!!」
「私と組んで、デュノア君!!」
困ってしまった一夏は、ある手段を思いついた。
「えーと・・・悪い!俺はシャルルと組むから、諦めてくれ!」
そう言った瞬間、それなら仕方ない・・・と女子が一斉に去っていった。ふぅ、と一夏が息を吐くのも束の間、鈴とセシリアが彼に迫った。
「あたしと組みなさいよ、一夏!幼馴染みでしょうが!」
「いえ!クラスメイトとして、ここは私と!」
すると、厳弥が思い出したかの様に口を開いた。
「あっ、そうそう。貴方達のIS、ダメージレベルがC以上だから、トーナメントの参加は許可出来ない、って山田先生が言ってたわよ。」
「そんな、あたしはまだ戦えるのに!」
「私も、納得いきませんわ!」
それを聞いた厳弥は、呆れた表情を見せた。
「はぁ・・・あのねぇ、半端な修繕でトーナメントに出たって、絶対良い結果は出ないわよ。それに、後々致命的な欠陥が出るかもしれないし。分かってんでしょ?だから今は大人しく、修繕に専念させときなさい。」
厳弥が二人を諭す様に言うと、二人は押し黙った。そして、彼女等は一夏達の方に向き直った。
「アンタ達、絶対に優勝すんのよ!!良い!?」
「私達の分まで頑張って下さいな。心から応援致しますわ!」
「お、おう!任せとけ!」
「ありがとう、二人共。気持ちに応えられるよう、頑張るよ。」
そんな彼等を尻目に、厳弥は一人しみじみと呟いた。
「うーん、青春ねぇ。」
その夜。ラウラはトーナメントの事について考えていた。
(トーナメントでは、何としても勝たねば・・・ここにリボンズ教官がいらっしゃると分かった今、あの方の前で負ける事など許されん。)
「きっと、織斑 一夏とシャルル・デュノアは勝ち進むだろう・・・手加減は出来んな。」
彼女は、トーナメントで何としても優勝する事を心に誓った。
そして、トーナメント当日。一夏とシャルは、控え室で着替えを済ませていた。
「へぇ・・・しかし、すげぇなこりゃ。」
一夏は、備えてあるモニターに映る重役達を見て言った。
「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認に、それぞれ人が来ているからね。」
「へぇ、そりゃご苦労な事だ。」
「・・・一夏は、ボーデヴィッヒさんとの対戦だけが気になるみたいだね。」
「ん?ああ・・・まあな。」
「あまり感情的になっちゃダメだよ。ボーデヴィッヒさんは恐らく、一年の中では現時点最強。下手に突っ込んだら、今までの練習の成果が無駄になっちゃうかもしれないから。」
「ああ、それは分かってるさ。」
そして、モニターにトーナメントのマッチングが表示された。
「対戦相手が決まったみたい・・・って、えぇ!?」
「どうしたんだ・・・って、マジかよ!?」
目の前のモニターには、こう記されていた。
『第一試合[織斑 一夏&シャルル・デュノア]VS[ラウラ・ボーデヴィッヒ&伊東 華]』
彩季奈がアサルトシュラウドの改造そっちのけで作ってる大艇ちゃんですが、その機能の紹介はまた後ほど紹介致します。
それと、厳弥がタクティカルアームズを使ってレールカノンを防いだ方法ですが、エクバのイフリート改の特射をイメージとしています。
そして、ラウラが言ってた歌は、「イングランドの歌」です。「イギリス掃討歌」とも言うのかな?作者的にはあの猛々しい男達の声も好きなのですが、ルナマリアの中の人が歌ってる方も好きですね。
というわけで、次回は学年別トーナメント回でございます。次は・・・なるべく早く・・・しなきゃ・・・