救世主の贖罪   作:Yama@0083

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皆様、お待たせ致しました!今回はお待ちかねの、臨海学校です!

さて、今回でラウラの新機体が判明致します。少しオリジナル要素も入っていますが、基本的には元の機体と一緒ですので、ご安心下さい。


あと、ここで悲しいお知らせがございます。
この小説で・・・





前回登場したあの花屋の店長は、グラハム・エーカー上級大尉ではございません。あくまで、彼に似た別人という設定です。ですので、彼はこの世界に転生しておりません・・・


では、お知らせもこの位にして、本編です。あと、今回も戦闘シーンはございません。ご了承下さい。


26. ウェルカム・サマー 〜揺らぐ思いは、陽炎の様に〜

臨海学校当日。生徒達は皆水着に着替え、ビーチサイドに集まっていた。

「みなさーん!では、16時までは自由時間としますが、常に安全を心掛けていて下さいねー!」

「「「「「はーい!!!」」」」」

真耶の一声と共に、皆一斉に駆け出した。早速海で泳ぎ始める者もいれば、水辺で遊ぶ者、砂に埋もれる者等、各々が好きな事をしている。

「うーん、海かぁ。なんか、無性にうずうずしちゃうかも!」

「はっちゃんも、ひと潜りしようかな。」

「素潜りするの?じゃああたし、ゴーグルもらってくるね!」

そう話している彩季奈と華は、学園指定のスクール水着に身を包んでいるが、妙に似合っている。

 

その中リボンズは、ビーチパラソルの下で冷えたレモンティーを飲んでいた。そんな彼に、やけに色気のある水着を装着した千冬が近づく。

「なんだ、お前は泳がないのか?普段着のままじゃないか。」

「正直、あまり気は進まないな。それに、僕の目的は海で遊びに興じる事ではないしね。」

「成程、お前らしい。・・・おや、あそこにいるのはラウラではないか?」

「なんだって?一体どこに・・・」

千冬が指さした方向を見ると、そこにはタオルで体を覆い隠しているラウラがいた。

「・・・ラウラ、何をしているんだい?」

「きょ、教官!?いえ、お気になさらないで下さい・・・」

(・・・ほほう?)

千冬はもじもじしているラウラを見て、悪い笑みを浮かべた。

「ラウラ、少し失礼するぞ?」

「お、織斑教官!?タオルを掴んでどうなさるおつもりですか!?」

「なぁに、心配するな。すぐに終わる。」

そう言うなり彼女は、ラウラの体からタオルを剥ぎ取った。すると、彼女がその下に妙に可愛らしい水着を着ている事が発覚した。

「ほう、やけに気合が入っているじゃないか。リボンズに見せる為に買ったのか?」

「は、はい。あの・・・おかしくは、ないでしょうか・・・?」

ラウラはそう言いながら、不安げな目でリボンズを見つめる。

「・・・まさか。良く似合っているよ。」

リボンズからの言葉に、ラウラは嬉しそうに顔を綻ばせる。すると、彼等の所にシャルが近づいて来た。

「あ、ラウラ。もうリボンズさんに水着を見せたんだね。」

そう言ったシャルに、千冬が声をかけた。

「デュノアか。織斑はどうした?」

「一夏は今、セシリアと用事がありまして・・・それより、リボンズさん。ラウラの水着はもう見てるよね。 可愛かったでしょ?」

「勿論さ。しかも、髪型まで変えて・・・かなり力を入れている事が分かったよ。」

「そうそう!ラウラったら、もうすぐ臨海学校だって事を思い出した瞬間に・・・」

「シャ、シャルロット!?それ以上は言うな!!」

裏話を口走りそうになったシャルを、ラウラは必死で止めた。

「ふふふ、ごめんごめん。そうだ、これから布仏さん達がビーチバレーをするらしいんだけど、一緒にやらない?よければ、リボンズさん達も。」

その誘いに、ラウラと千冬は首を縦に振ったが、リボンズはあまり乗り気ではなさそうだった。

「おいおい、お前は参加しないのか?つまらん奴だな。」

「なんとでも言いたまえ。こうして海をじっと眺める機会は滅多にないんだ、邪魔をしないで貰えないかな?」

これはてこでも動かなそうだな、と推測した千冬は、別の作戦に出た。

「ほう・・・つまりお前は、私と対局するのが怖い、という訳だな?」

その言葉に、彼はピクリと反応する。そんな彼に、千冬は更に畳み掛けた。

「まあ、確かにそうか。いくらなんでも、花壇弄りばかりしているお前のもやしの様な体では、私に到底かなう筈もない。」

すると、唐突に彼は立ち上がった。

「・・・言ってくれるじゃないか。用務員の仕事で鍛えられた持久力を、君に見せつけてあげるよ。」

性格が軟化しても、負けず嫌いな点は変わらない彼であった。

 

 

そしてビーチバレーが始まったのだが、千冬の圧倒的なパワーを持つスマッシュに、早速リボンズのチームの何人かが吹き飛んだ。

「良いか貴様等!織斑教官の球は爆弾と思え!扱いを間違えれば死ぬぞ、いいな!?」

ラウラはチームメイトに必死にそう呼びかけるが、仲間は千冬の猛攻により次々と減っていった。

 

結局、千冬とまともな戦いを繰り広げる事が出来たのは、神がかった瞬発力を持つリボンズとラウラの二人だけだった。

 

 

 

日もすっかり沈んだ頃。彼等は旅館で豪勢な日本料理を堪能していた。

「ふむ、美味いな。流石本わさ、と言うべきか。この蕎麦も、良い酒の肴になる。」

「本当ですねぇ。と言うより、臨海学校にこんな高級旅館を借り切ってしまう学園も、流石と言いますか・・・」

「確かに。それはそうと、千冬・・・君はそんなに呑んで、明日に響かないのかい?」

「案ずるな。この程度、まだまだ序の口だ。」

そうあっけらかんと答える千冬の顔は、ほんのり赤く染まっているが、酔っている様子は見られない。

「焼酎を二本も呑んで、まだ序の口なんですか!?凄いですね・・・」

「別に、褒められる物ではない。・・・突然なんだが、明日は7月7日・・・篠ノ之の誕生日だ。」

彼女はお猪口に注がれた焼酎を飲み干し、少し真面目な表情になった。

「えらく唐突な話題だね。まあ確かに、その日は彼女の誕生日だと、束からも聞いているが・・・」

「身内に異常な程甘いアイツの事だ、何かするかもしれん。まあお前がいるから、そこまで大きな事はしでかさんと思うが・・・一応、 気にかけておいてくれ。」

「分かった、心に留めておくよ。」

彼等がしばらく飲み交わしていると、丁度隣にある生徒達の部屋が急に騒がしくなり始めた。

「・・・全く、奴等め。こんな所でも相変わらず騒がしい。どれ、奴等を一喝してくるか。」

「お手柔らかにね。なにせ、今まで待ち望んでいた臨海学校だ。恐らく、皆気が浮ついているのだろう。」

「分かっている。あくまでも、注意をするだけだ。」

彼女が部屋を出ていって少しすると、旅館が震える程の怒号が響き渡り、やっぱり分かっていないじゃないか、とリボンズは苦笑した。

 

 

 

食後、一夏が自室に戻ると、そこでは箒を始めとした五人のヒロインズが、千冬の前に正座させられていた。

「え・・・お前ら、どうしたんだよ?また器物破損とか暴力事件とかか?」

その言葉に、一部の者がギクリと肩を震わせるが、彼女達の前に座る千冬の表情から、説教ではなさそうだと彼は推測した。

「おお、織斑か。すまんが今から売店に行って、この小娘達に飲み物を買ってきてやってくれんか?」

「おう、別に良いけど・・・なんか、希望とかはないのか?」

「その辺は、適当に見繕ってくれ。あまり急がなくてもいいぞ、私達はこれより、少しガールズトークをするからな。」

「ああ、そういう事か。分かった。それなら、少しゆっくり選んで来るよ。」

そう言って一夏は部屋を後にした。千冬はそれを確認すると、再び彼女達に向き直った。

 

「さて、ではボーデヴィッヒを除く四人。お前達は、一夏の何処に惚れた?」

「「「「えっ!?」」」」

彼女のいきなりの発言に、四人は顔を赤くした。

「確かに、アイツは使える男だ。性格も良いし、家事も出来るし、マッサージの腕もある。・・・どうだ、欲しいか?」

「「「「くれるんですか!?」」」」

四人が期待を込めた目で見る中、千冬はいたずらっぽい表情を浮かべ、告げた。

「やるか、バカが。」

ええ〜っ、と落胆の声をあげる彼女達に、千冬は笑って言った。

「まぁ、この私から奪い取る位の気構えでいけよ、小娘共。それに、その位ガツガツ行かんと、奴にその気持ちは伝わらんぞ。良いな?」

「「「「はい!!!」」」」

彼女達の元気よい返事を聞いて、千冬はさて、とラウラの方に体を向けた。

「では最後にお前だ、ボーデヴィッヒ。お前は何故、奴が・・・リボンズが好きなんだ?」

千冬の言葉を受け、ラウラは考える。

「理由・・・ですか。好意を抱くにまで至った様々な要因は、ある程度予想はつきますが・・・明確な理由は、私にもよく分からないのです。ただいつの間にか、あの方を一人の男性として慕っていたとしか・・・」

「ああ、今はそれで構わん。正直今重要なのは、理由などではない。お前が奴を好いているという事実さえあれば、それでいい。」

「は、はあ・・・」

困惑する彼女を前に、千冬は真剣な表情をして、話を続けた。

「ボーデヴィッヒ、お前に伝えておかなければならん事がある。奴は・・・恐らく、相当な業を背に抱え生きている。それこそ、そこらの殺人犯など比べ物にならん程の物をな。」

「業・・・ですか?」

「そうだ。奴は今も、それに縛られて生きているんだろう。ではボーデヴィッヒ、お前に問う。お前に覚悟はあるか?奴の抱える業を共に背負い、支え続けていく覚悟はあるのか?」

「それは・・・」

「よく考えろよ、これは今急いで決めるべき問題でははない。時間をかけて熟考し、そして答えが出たら・・・本人に、お前の思いを包み隠さず伝えろ。分かったか?」

「・・・了解しました。」

ラウラとの話が一段落着いたその時、外から一夏の声が聞こえてきた。

「タイミングが良いな。よし、ではこの話は終わりだ。上手くやれよ、小娘共。私は応援する。」

彼女は笑ってそう言い、ふすまを開けて一夏を迎え入れた。

 

 

 

 

 

 

翌朝。一夏が旅館を歩いていると、箒が何かをじっと見ているのを見つけた。

「おはよう箒。何見てるんだ?」

「ああ一夏か、おはよう。いや、これなんだが・・・」

彼女が指さした先には、何やら機械的なウサ耳がひょっこりと顔を出していた。

「な、なあ箒。これってもしかして・・・」

「・・・私が知るか。」

何やら苦い顔をした彼女は、どこかへ歩いて行ってしまった。

「・・・どうすっかなあ、これ・・・」

彼が反応に悩んでいると、そこにセシリアがやって来た。

「あら。おはようございます、一夏さん。何をしていらっしゃいますの?」

「ああ、おはようセシリア。いや、ちょっとな・・・」

一夏は少し迷ったが、最終的にそれを抜いてみようと決意した。

「せー・・・のっ!」

一夏はそれを引っこ抜いたが、その下から何かが出てくるという事はなかった。が、代わりに地響きの様な音が聞こえ始めた。

「おや、君達も随分と起きるのが早いね・・・ん?この音は・・・」

「リボンズさん!?なんかヤバい感じがする、来ちゃ駄目だ!!」

すると次の瞬間、空から巨大な物体が隕石の如く落下し、地面に激突した。その際に発生した衝撃波と土埃が彼等を襲う。そして土埃が消え去ると、その物体は真っ二つに開き、中から一人の人物が飛び出した。

「あっははは!!引っかかったねぇ、いっくん!あ、リっくんもいるじゃ〜ん!ぶいぶい!」

そう言って現れたのは、天下の天才科学者、篠ノ之 束だった。

「・・・束、何をしているんだい?」

彼女が巻き上げた土埃により、少し汚れてしまったリボンズが、不穏な空気を纏いながら問う。

「いやあ、普通に登場しても面白くないから、どうせならインパクトのある奴を、って思ってね!少しドッキリにかかって貰ったわけだよ!」

満面の笑みで答える彼女を前に、彼は静かに1ガンダムの右腕を部分展開した。

「はははは・・・え、ちょっとリっくん、なんでガンダムを部分展開してるのかなー・・・?」

「・・・少し、お仕置きが必要な様だね。」

彼はGNビームサーベルを展開し、彼女に斬りかかった。

「わーっ!?ちょ、ちょっとリっくん、タンマタンマ!!ちゃんと言われてた作業はやっておいたし、 ドッキリも、周りに被害が出ない程度でやったからぁ!?」

ビームサーベルを避けながら、彼女は自らの行いを後悔した。

 

 

 

その後、千冬から集合命令が出されていた一夏・箒・セシリア・鈴・シャル・ラウラ、そして彩季奈と華は、海岸に集合していた。

「先生、なんで箒がここにいるんですか?箒は専用機を持ってないでしょ?」

「その理由は、今説明する。篠ノ之には、本日より専用機が・・・」

千冬がそこまで言うと、どこからか聞こえてくる地響きが、それを遮った。

「ちぃぃぃぃちゃぁぁぁぁん!!!」

その声が聞こえるや否や、リボンズと千冬の表情が引き攣った。猛スピードで飛びかかってきた彼女を千冬は掴もうとするが、一度失敗した。

「何・・・!?」

「残像だよ、ちーちゃん。」

しかし、千冬は神がかった反射速度で、束の頭を掴むことに成功した。

「全く・・・リボンズと過ごす事で少しは良くなった様だが、こういう面は相変わらずだな、束。」

「ありがと、ちーちゃん!そういうちーちゃんこそ、相変わらずすんごいゴッドフィンガー・・・あ、ちょっと待って、ヒートエンドまではしないで!?流石の束さんでも死んじゃう!!」

「お前が死ぬだと?笑わせるな。」

そう言いながらも、彼女は掴む手を離した。

「もう、痛いなぁ・・・っとと、じゃあそろそろ本題に入ろっか。」

「待て、その前に自己紹介をしろ。」

「ええ?うーん・・・やっほー、天災であり皆のアイドル、束さんだよー! よっろしくぅ!ぶいぶい!」

「・・・という訳で、コイツが篠ノ之 束、篠ノ之の姉だ。」

千冬の言葉に、一夏とセシリアを除く全員がどよめいた。

「束って・・・ISの開発者じゃない!?なんでそんな人がここにいるのよ!?」

「えーと・・・鈴ちゃん・・・だっけ?それを聞くなんて愚問だよ!今日束さんは、凄く重要な用があって来たんだからね!さあ、ここで上空をご覧あれ!」

すると、上に待機していた輸送機から、地上に向けて二つのダイヤが落とされた。

「まずはこちらっ!これが箒ちゃん専用機こと、紅椿!!束さん自らが開発した、超スペシャルな第四世代型ISだよぉ! 」

ダイヤの中から現れたのは、まだ稼動していない状態にある、真紅の機体だった。

「第・・・四世代!?世界各国が試験的な第三世代型の開発に着手したばっかりなのに、もう四世代を作っちゃうなんて・・・やっぱり、束博士は凄いかも!」

目をキラキラと輝かせて、彩季奈は束と紅椿を見つめる。

「おっ! そのかもかも口調からするに、君は多分彩季奈ちゃんかもだね!この前のメガ・バズーカ・ランチャーは良いサンプルになったよ、ありがとね! 」

「え、あれの改造に当たってくれたの、束博士だったの?光栄かもです!」

「いいよいいよ〜、お陰ですっごい高火力の武器が出来たし!」

開発者同士で会話に花を咲かせる彼女達を、千冬が咳払いをして諌めた。

「あー・・・話の腰を折る様で悪いが、そろそろ話を続けてくれんか?」

「おっとと、そう言えばそうだね。じゃあまたお話しようね、あーちゃん!」

「はーい!待ってるかも!」

どうやらいとも簡単に打ち解けたらしい二人は、会話を一度中断した。そして束は、もう一つのダイヤに目を向けた。

「そしてもう一つ!壊れちゃったシュヴァルツ・・・なんちゃらを、束さんがその予備パーツを一部流用して改造した、 そこにいるラウラちゃん専用機!」

するとそこから出てきたのは、黒を基調とした色で、どこかシュヴァルツェア・レーゲンの面影を感じさせる機体だった。

「その名も、『ガルムガンダム』!!こっちは第三世代型だけど、その性能は圧巻の一言!今ある第三世代型なんか、簡単にふんす!って出来るよ!」

ラウラはその機体を、ゆっくりと見上げる。

「『ガンダム』・・・教官のISと、同じ名を持つ機体・・・」

「そうそう!中々ロマンを感じるでしょ?ささ、じゃあフィッティングとパーソナライズをするから、二人共ISに搭乗してくれる?」

 

 

「箒ちゃんのデータは予め入れておいたから、あとは細かい部分を設定するだけだね。ラウラちゃんのは前の機体と一緒のコアを使ってるから、適当に済ませれば・・・よし、完成!!」

束はひと仕事終えた様な表情で、目の前のモニターを収納した。

「よぉし!じゃあ二人共、試しに飛んでみてよ!ちゃんとイメージした通りに動く筈だよ!」

彼女達が軽く念じると、それぞれの機体が瞬時に反応し、大空へと舞い上がった。

「流石、スピードが段違いですわね・・・」

「これが第四世代・・・そして、篠ノ之博士自らが開発したISのスピード、って訳か・・・」

そのスピードに驚く彼女達を尻目に、二人は別々の方向に飛翔した。

 

太陽が照りつける下、ラウラの駆るガルムガンダムは、颯爽と大空を飛行していた。

「成程・・・機体出力も速度も、シュヴァルツェア・レーゲンを遥かに上回っている。流石は、博士ご本人が製作なさった機体だ。」

すると、束から通信が入った。

『二人共、良い感じじゃ〜ん。じゃあ次は、これを迎撃してみて!』

すると地上から、彼女に向かって複数のミサイルが飛来した。

「ミサイル迎撃か・・・昔を思い出すな。かつては後方援護しか出来なかったが、今は!」

彼女は、手首に搭載されたGNビームサーベルを展開し、次々とミサイルを切り刻んでいく。

「凄い・・・!なんて圧倒的な加速とパワーだ!これまでのISとは比べ物にならん・・・これが、『ガンダム』。教官と、同じ力!!」

そして彼女は、最後のミサイルを破壊した。

 

 

「二人共、お疲れー!じゃあ試験運用も済んだ事だし、この機体は二人にあげるよ!あ、そうだラウラちゃん。一旦それを待機形態にして、返してくれる?」

「?はい、構いませんが・・・」

待機形態のガルムガンダムを受け取った束は、それをリボンズに手渡した。

(ほらリッくん、リッくんからラウラちゃんに渡してあげなよ。)ボソッ

(僕が?何故・・・いや、ありがとう。僕がやるよ。)ボソッ

彼はラウラに近づき、その手に持つガルムガンダムを、彼女の掌に握らせた。いきなりの事に、ラウラの顔がほんのりと赤く染まる。

「ラウラ、君の腕を見込んで、この機体を君に預け・・・いや、託したい。頼めるかな?」

彼が自ら、自分に新しい力を託してくれた。その事が、彼女の胸を踊らせた。

「喜ばしい限りです、教官・・・!この機体、必ずや物にしてみせます!!」

 

するとそこへ、ジャージ姿の真那が急いで走って来た。

「たっ、大変です織斑先生!!これを見て下さい!」

真那が差し出した端末には、『緊急事態発生』の文字が映し出されていた。

「・・・成程な。各員、指定する宿の一室に向かえ。お前達にやってもらいたい事がある。」

 

 

 

十分後。指定された部屋では、先程のメンバーが全員集まっていた。

「二時間前の事だ。ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型IS、『シルバリオ・ゴスペル』・・・通称、『福音』が制御下を離れて暴走し、監視空域を離脱したとの連絡があった。情報によれば、有人・無人の両方での稼動が可能な機体で、今は無人の状態だそうだ。」

皆が話に集中する中、千冬は言葉を続けた。

「その後の衛星による追跡の結果、今から五十分後、福音はここから二キロ先の空域を通過することが判明した。そして、学園上層部の通達により、我々がこの事態に対処する事となった。」

千冬は、そのISの情報を提示した。その機体は武装から見るに、セシリアのブルー・ティアーズと同じく一対多の戦闘を視野に入れた機体だろう。

「今現在も、『福音』は超音速飛行を続けている。恐らくアプローチ出来る機会は、たったの一度だけだ。」

「なら、一撃必殺の火力を持っている機体と、それを背負って飛行出来る機体のコンビが一番望ましいかも。で、一撃必殺って言ったら・・・」

全員が、一斉に一夏を見た。

「え・・・ちょ、ちょっと待て!お、俺がやるのか!?」

「あったり前でしょ。瞬発的にそれだけのダメージを与えられるのは、アンタの白式しかいないじゃない。」

「でも・・・俺なんかに、そんな重要な役を任せて良いのかよ?」

未だ不安そうな表情をしている彼を見て、当たり前かの様に作戦会議に参加していた束が話しかける。

「はーい、ちーちゃん先生!ちょっと言いたい事がありまーす!」

「・・・お前、何時からそこに居た?まあいい、話してみろ。」

すると、彼女は一夏に近付き、珍しく真面目な表情になった。

「いっくん、これは実戦なんだよ。訓練とかいう生温い物じゃない。だから、もし自分じゃ出来ないって思ってるんなら・・・この作戦を降りてくれたって良いんだよ?いっくんはまだまだ実力不足だって、みーんな分かってるんだから。それに、束さんも万が一の為に、いっくん抜きでも出来るスペアプランは考えてあるしね。」

彼女は一夏に優しくそう話した後、ただまあ・・・と付け加えた。

 

「試練無くして、人は次の段階には行けないと思うけどなー。」

 

その言葉に、一夏はギュッと手を握りしめる。そして、千冬の方を向いた。

「俺が・・・俺がやります。やってみせます!」

そう言った彼の目は、覚悟を決めた男の目をしていた。

「さっすがいっくん!そう言ってくれると思ってたよ!」

「織斑・・・感謝する。さて、では織斑を奴まで配達していく役を決める。この中で、現在最高速度が最も速い機体はどいつだ?」

千冬がそう問いかけると、皆はラウラと箒を見た。

「さっきのアレを見て、アンタ達二人の機体がぶっちぎりで速い、って事は分かったわ。」

そう言った鈴の後に、シャルが続ける。

「でも、第三世代と第四世代の間には、性能面で大きな差がある。ここは箒のISを使う方が良いんじゃないかな。」

シャルの言葉に、束は大きく首を縦に振った。

「うんうんうん!束さんも、今回はそれが良いと思うな!箒ちゃんの紅椿は、いっくんの白式とセットの運用を前提とした機体だしね!」

他の面々も、その意見に同意している様だった。それを確認した千冬は、再び口を開く。

「よし、メインの作戦はこれで決まった。では束、お前の言うスペアプランとやらを話して貰おうか?」

千冬がそう言うと、束は待ってましたとばかりに、元気よく立ち上がった。

「はいはいはーい!それじゃあ万が一、いっくんと箒ちゃんがしくじっちゃった時の為のプランを、ぱぱっと説明しちゃうよ〜!」

束は自分の端末をモニターに接続し、そこに複数の資料を表示させた。

「今画面に映ってるのは、毎度お馴染みリッくんの1ガンダムだね!この機体は、このままでもかなり速いスピードが出せるけど、それでも紅椿には遠く及ばない・・・そこで、束さんは今回スペシャルな追加武装を作ったんだ!それがこちら!」

すると、複数あった資料の内の一つがズームアップで表示された。皆が一斉にそれに目線を向ける。

「じゃじゃーん!これが今回、1ガンダムの性能を更に引き上げる、可変式バインダーだよ!これは様々な形態になる事が出来て、今回は高機動形態で一気に接近、って算段さ!その時のスピードは紅椿には劣るけど、第四世代に片足を突っ込んでる位には出るはずだから心配ないね!」

自信満々でそう言う束に、セシリアが問いかける。

「篠ノ之博士。質問があるのですが、宜しいでしょうか?」

「えーと、セシリアちゃんだっけ。何かな?」

「リボンズさんの機体が、『福音』に到達し得るスピードを持つ事は把握致しました。では、ダメージを与える役は、どうするのでしょうか?」

「おっ、よくぞ聞いてくれたよ!うんうん、確かに零落白夜が無いと、この作戦を成功させるのは難しいよね。だから、束さんはこういう武器も作ってみたんだ!」

次に彼女は、長い銃身が特徴的な武装のデータを表示した。

「これは、彩季奈ちゃん・・・あーちゃんのメガ・バズーカ・ランチャーを改造して、粒子ビームを放てるようにした奴だよ!チャージにかなり時間はかかるし、粒子の消費も激しいけど、威力は零落白夜に負けずとも劣らない、まさに一撃必殺の武器だね!名前は・・・無難にGNバズーカ・ランチャー、かな?」

「成程、それで『福音』を仕留める、という事だね?ならば、その役は僕が請け負うよ。」

「おっけー!じゃあ、後でバインダーを接続するから、その時に拡張領域(バススロット)に入れておくね!それと、一応援護役として、クーちゃんを連れてったらどうかな?」

「おや、クロエも来ているのかい?ならば丁度いい、彼女にも手伝ってもらおうではないか。」

「はいは〜い。じゃあクーちゃん、入っておいで〜。」

すると、ふすまを開けて一人の少女が入室した。

「なっ・・・!?」

ラウラは、その姿に驚きを隠せないようだった。何故なら、その少女の顔立ちが、彼女と瓜二つだったからだ。その少女はラウラを、ちらと目を開いて一瞥するも、すぐに顔を皆の方に向けた。

「お初にお目にかかります、皆様。私はクロエ・クロニクル、束様の従者・・・もとい、お目付け役をしております。以後、お見知り置きを。」

そう言ってぺこりとお辞儀をした彼女は、束の側に座った。

「じゃあスペアプランは、ガンダム2機による『福音』討伐作戦って事で。良いよね、ちーちゃん?」

リボンズはまだしも、部外者が作戦に参加する事に難色を示していた彼女だったが、少し考える素振りを見せた後に、諦めた様に溜息を吐いた。

「・・・分かった、宜しく頼む。確かに『ガンダム』が持つ力は、圧倒的の一言に尽きる。今回の場合、戦力は多いに越したことはない。では、作戦会議は以上だ。作戦開始は30分後、各員は、直ちに準備にかかれ!」

 

 

 

会議が終わった後、千冬はリボンズや束達を集めた。

「ちーちゃん、お話ってなぁに?私もとっとと、1ガンダムにバインダーをくっ付けて、1.5(アイズ)ガンダムに改装しなきゃなんないからさ。出来るだけ早くしてね!」

そんな束に、千冬は厳しい表情で問う。

「束、単刀直入に聞く。今回の『福音』暴走は・・・お前の仕業だな?」

彼女の言葉に、リボンズが同意して続けた。

「偶然だね、僕も全くの同意見だよ。『福音』はかのアメリカとイスラエルが共同で開発した、文字通り最新鋭の軍用ISだ。恐らく、相当強固なセキュリティが施されていた事だろう。それをいとも容易く破ってしまえるのは、君しかいない。」

そう言って疑惑の視線を向ける彼等に、束は参った、という様な表情をした。

「やれやれ・・・流石はリッくんにちーちゃんだね。うん、今回の件はこの束さんが、いっくんに次のステップへと踏み出してもらう為に仕組んだ事だよ。」

束の告白に、千冬は呆れた様に溜息を吐いた。

「やはりな・・・しかし、それだとしてもまだ疑問が残る。お前の目的は、一夏を『福音』と戦わせる事で、奴に成長を促す事だろう?では何故、お前の所からガンダムの増援を出す必要があった?万が一奴が失敗しても、ガンダムを追加で出すまでも無かったと思うのだが。」

「うーん・・・確かにあれは、最悪リっくんだけでも倒せるかな。まあ、少し苦労すると思うけど。でも問題はアイツじゃないんだ、ちーちゃん。」

「・・・どういう意味だ?」

束のその一言に、千冬は更に厳しい目付きをした。

「いや、虫の知らせって言うのかな?今日の朝から妙に胸騒ぎがしてたんでね。なんか、リっくんだけじゃヤバそうな事が起きる様な・・・まあ、あくまで勘なんだけど。・・・でも、」

 

「この束さんが『ヤバい』って表現するんだから、どんだけかってのは分かるよね?」

彼女の言葉に、彼等は作戦の雲行きが怪しくなっているのを感じたのだった。




・・・はい。というわけで、ラウラの新機体は「ガルムガンダム」になりました。い、一応00本編の機体ではないから、嘘はついていませんよね・・・?

ちなみに、00外伝におけるガルムガンダムと、この小説におけるガルムガンダムには、少し差異があります。一部を挙げますと、

・GNビームサーベルが手首(プラズマ手刀があった場所)に収納されている。(外伝では腰に搭載されている)
・色が黒を基調としている。(外伝では白)
・右肩に砲台が追加されている。

などです。本格的な機体説明は、次回かその次にしようかと思います。


そして、リボンズの新しい機体・・・1.5ガンダムは、今の所は元の機体との差異はありません。違う点と言えば、オリジナルの太陽炉を積んでいることと、オリジナルの武装であるGNバズーカ・ランチャーを持っていることでしょうか。形状は、スローネアインのGNランチャーを手持ち武器にした様な感じです。

最後に「福音」ですが、原作小説ではナターシャが搭乗している有人機、アニメ版では無人機とされていますが、この小説ではちょっとした事情により「両方での運用が可能」という設定にさせて頂きます。

さて、次回はいよいよ「福音」と激突します!皆様、乞うご期待下さい!
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