救世主の贖罪   作:Yama@0083

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1月に投稿するとか言っておいて、結局遅れて4月に投稿するとか笑えないんですけど(真顔)

皆様、大変長らくお待たせ致しました・・・最新話、ようやく完成しました。


ここで、前回のあらすじを説明します。

1. 福音討伐へ向かったリボンズ達は、福音を撃墜寸前まで追い詰めるも、福音が二次移行(セカンド・シフト)をしたことにより撤退
2. 専用機持ち達が、独断で福音討伐作戦を決行。リボンズとクロエもそれに加わる。
3. 苦戦するも、一夏の復帰もあり、福音は沈黙。
4. 帰還しようとした時、ガンダムエクシア乱入。

この様な感じです。分かりにくければ、お手数ですが前の話を軽く読み直していただけると幸いです。
いや、本当にお手数おかけします・・・


それでは、最新話スタートです。どうぞ。


28. 舞い降りし因縁 〜堕ちた能天使〜

『初めまして、リボンズ・アルマーク・・・出来損ないのイノベイドさん?』

 

妖艶な声と共に、雲の合間よりガンダムエクシアが舞い降りた。

 

 

「あれは・・・ガンダム?まさか、篠ノ之博士の差し金か?」

「いえ・・・束様は、あの様な機体の開発はしておられませんでした。それにあの粒子は、束様のGNドライヴから発せられる粒子とは色が違います。」

皆が混乱する中、リボンズが只ならぬ声色で、皆に呼びかけた。

「・・・ラウラ、そしてクロエを除く全員は、撤退してくれ。あの機体は、僕達のISと同じガンダムタイプ・・・専用機に乗っているとは言え、先程の戦闘で疲弊している君達に、あの機体と優位に立ち回る事が出来るとは思えない。」

彼等にそう指示するリボンズに、一夏は確認する様に問いかけた。

「そのくらい・・・アイツは危険だって事なんだよな?」

「そうだ。君達には一度帰還して、千冬達にこの事態を報告してほしい。」

「・・・分かった。皆、いいな?」

本当は、一夏も共に戦いたかったが、リボンズのその真剣な声色から、事態の深刻さは十分に伝わっていた。

「・・・リボンズさんも、昨日から出撃しっ放しなんだからさ・・・無理するなよ。」

「心配には及ばないさ。さあ、早く行きたまえ。」

そうして、皆を引き連れ撤退した一夏だったが、彼はどうしても不安が拭えずにいた。

 

 

彼等が戦場から離脱してから、リボンズは目の前の相手に問いかけた。

「・・・君は、何者だい?いや、そんな事は今は良い・・・何故君の様な者が、その機体に乗っている!?」

彼はGNビームライフルをエクシアに向けた。それに対してエクシアのパイロットは、変わらず飄々としている。

『もう、そんなに声を荒げちゃって・・・押しが強過ぎる男は嫌われるわよ?』

彼はその言葉を無視し、敵意を剥き出しにして強引に話を続ける。

「僕の問いに答えろ・・・それに、それは本来君が乗るべき機体ではない。」

『あら、ISは兵器なのよ?誰が使おうと、変わりは無いと思うのだけど。』

「君から見ればそうだろう。しかし、中には使用者によって、違う意味合いを持つ兵器も存在する・・・特に、君が今装着している『それ』は。」

そう言いながら、彼は思い返した。自分を「歪み」と断じ、最後まで相互理解を訴えていた、あの青年を。

『ふぅん・・・随分この機体に思い入れがあるみたいけど、何かあった訳?そうねぇ・・・例えば、この機体と戦って負けた、とか?』

その言葉に、リボンズは少しの反応を見せる。

『ああ、図星だったの?それは失礼。・・・けど、これだけは聞かせてくれる?』

彼女はそう言って、小馬鹿にする様な声で続けた。

『ねえ、どんな気分?「対話」なんていう漠然とした目的の為に、世界に喧嘩を売るような馬鹿げた奴等に負けるのって。』

「・・・ッ!!」

その言葉が、彼の逆鱗に触れた。彼は視認出来ない程の速度でGNビームサーベルを展開し、即座にエクシアに斬りかかった。

「その言葉、撤回して貰えるかな!?」

相手はそれを容易く受け止め、更に煽る様な口調で言い放った。

『ふふふっ・・・悔しかったら、私を倒してみせなさいな!!』

 

 

 

一方旅館では、千冬と束達が、その状況をモニターで確認していた。

「これは・・・かなり厄介な事が起きたな。束、お前はこうなる事を予測していたのか?」

千冬の問に、束は冷や汗を流しつつ答えた。

「確かに、ヤバい事が起きるとは言ったよ?けどまさか、ガンダムが敵として現れるなんて・・・リっくん達、大丈夫かな・・・」

そう答えた束は、いつにもなく不安を感じていた。

 

 

 

 

リボンズは、中距離での射撃戦に徹していた。福音との戦闘でかなり消費した粒子残量をカバーする為、バインダーを右肩に寄せる・・・「アタックモード」に換装させ、粒子コントロール効率を良くした状態で、GNビームライフルを連射する。

『大方、エクシアに接近戦を仕掛けられるのを避ける為、こうしてるんだろうけど・・・この機体にもビームライフルが搭載されている事、忘れたの?』

相手はGNソードをライフルモードに換装し、オレンジ色のビームを複数放った。

「その程度の攻撃!」

彼は攻撃を避けつつ、再びビームライフルの引き金を引いた。しかしビームは発射されず、カチッ、という気の抜けた音が鳴るだけだった。

(弾切れ!?僕がこんな初歩的なミスを・・・!)

ビームの連射が途切れるや否や、相手はGNビームダガーをリボンズに投げつけ、彼が右手に持つGNビームライフルを破壊した。

「くっ・・・」

彼は即座にそれを手放し、ビームサーベルに持ち替える。しかしその一瞬の隙に、エクシアは彼の懐に飛び込んでいた。

『まずは一撃、頂くわね?』

ジャキン、と音を立て、エクシアの右腕に装着されたGNソードが展開される。

(まずい、反応が遅れて・・・!?)

その切っ先が彼を切り裂く寸前、1.5ガンダムに砲弾が直撃し、機体を大きく吹き飛ばした。エクシアはそれを追おうとするが、彼等の間にラウラが割り込み、それを牽制する。

「・・・何のつもりだい?クロエ。」

彼の鬼気迫る声色に動じず、クロエは淡々と答えた。

「・・・これならば手早く、貴方の頭を冷やす事が出来るかと判断したまでです。」

そして彼女もまた真剣な声で、次の言葉を続けた。

「リボンズ、退いて下さい。貴方とあの機体にどんな関係があるのかは知りませんが・・・今の貴方の精神状態では、本来の実力を出し切る事は難しいでしょう。それに、彼から言われた事をもう忘れたのですか?」

彼女にそう言われた瞬間、彼のヒートアップしていた頭が一気に冷めた。

「・・・確かに、君の言う通りだ。一時の感情に任せて我武者羅に力を振るっては、勝てる勝負にも勝てない。」

「ええ、その通りです。今は敗走してしまっても、帰ればまた、いつかはあの機体と相見える事が出来ます。ですから・・・撤退を。」

彼女の懇願する様な声に、リボンズは少し沈黙した後、ポツリと答えた。

「・・・了解。これより撤退行動に移るよ。」

彼の返答を聞いて、クロエは安堵した様子を見せた。

「あの機体は・・・私と彼女で応戦します。その隙に撤退して下さい。」

リボンズは頷き、踵を返して旅館の方向へ向かった。

 

 

『あらあら、逃げちゃった・・・じゃあ、次は貴方達の番?』

クロエ達をエクシアのツインアイが捉えるが、彼女達に臆した様子は見られない。

「ここから先に行かせる訳にはいきませんので・・・貴方が何者かは存じませんが、撤退を要求します。」

『断る・・・と言ったら?』

「力ずくで、という事になるな。」

彼女達の言葉を聞いたエクシアのパイロットは、心底愉快そうな笑い声を上げた。

『ふふふふ・・・一方は、ガンダムに搭乗して日も経っていない。そして慣れている貴方も、操っているのは数年前の型落ち機体。こんな状況で、貴方達に私の相手が務まるのかしら?』

「・・・確かに、この機体は数年前から運用されています。しかしいくら型落ちとて、これは『ガンダム』なのです。そう簡単に撃墜される程、やわに作られてはおりません。」

そう答えたクロエの声には、僅かながら怒りの色があった。

『そう?なら良いのだけれど。さて、じゃあ・・・行かせてもらうわ。』

そう言うなり、相手はギュン!と二人に急接近し、GNソードを振り下ろした。

「させん!」

それを、ラウラがGNビームサーベルで受け止める。そして彼女は肩部のカノン砲を稼動させ、眼前のエクシアに向け発射した。

『遅いのよ!』

相手はGNソードを収納し、鍔迫り合いを止めて弾頭を回避した。更にお返しとばかりに、腰部マウントからGNビームサーベルを取り出し、一閃した。

「ッ!」

ラウラはカノン砲を放った反動が残っていたものの、辛うじてそれを躱した。

『へぇ・・・今のを避けるなんて、反応は良いみたいね。』

「舐めてもらっては困る!」

彼女はエクシアの腹部を蹴り飛ばし、一度距離を離す。するとそこに、クロエがプライベート・チャンネルを用いて話し掛けてきた。

「大丈夫でしたか?」

「貴様か。ああ、先程の攻撃はなんとか回避した。それよりも、あのガンダムに酷似した機体、どうするか・・・」

「装備から見て、敵機は近接戦闘に秀でている様ですね・・・では、私は後方支援に当たります。貴方は前衛を務めて下さい。」

「了解した。私としても、そちらの方がやりやすい。」

「ありがとうございます。では、ご武運を。」

「ああ、互いにな。」

二人は通信を切り、前方の敵を見据えた。

『作戦会議は終わった?じゃあ、再開しましょうか。』

それと同時に、両者は再びぶつかった。

 

 

 

「・・・リボンズさんが、負けた・・・!?」

未確認機の乱入。その情報を伝える為、急いで帰還した彼等に告げられたのは、この信じ難い事実だった。

「ああ。正確に言うなれば、撤退を余儀なくされた、と言ったところか。」

千冬のその言葉に、一夏とシャルが疑問を投げ掛ける。

「そんな・・・なんで、リボンズさんは負けちまったんだ!?」

「うん・・・あの人程の操縦者が、そう簡単に負けてしまうなんて思えない。先生、リボンズさんは戦っている間、どの様な状態だったんですか?」

千冬は少し考えた後、口を開いた。

「端的に言うと・・・いつもの奴らしくはなかったな。先程の奴の動きは、何処か感情的だった。」

「ちーちゃんの言う通りだよ。いつものリっくんなら、もっと理性的に事を進めてる。でも、さっきはまるで後先考えてない動きをしてたね。」

それを聞いて、セシリアが思い出した様に言った。

「そういえば・・・リボンズさんが私達に帰還を促した時、何か・・・あの未確認機を見て、怒っていらした様でしたわ。」

「・・・どうやら、あのガンダムタイプと思しき機体と関係がありそうだな。」

「今敵と戦ってるの、ラウラさん達なんでしょ?大丈夫かな・・・」

華の呟きに、束が何時もとは違う調子で答える。

「だいじょぶだいじょぶ、ラウラちゃんとクーちゃんなら万事オッケーさ!・・・って、普段なら言ってるだろうね。残念だけど、今回はそう簡単にいかないかな・・・」

「奴等の能力は決して低くない。数の利も奴等にある・・・が、相手は本調子ではなかったとは言え、あのリボンズを追い詰める程の実力者だ。そう易々とやられるとは思えん・・・束、もしもの時には、お前にここを任せる事になる。頼めるか?」

「別に良いけど・・・っ、ちーちゃん、まさか・・・!?」

束は千冬の真意に気付き、思わず息を呑む。そんな彼女に、千冬はこくりと頷いた。

「奴等の勝ち筋は最早無いと判断した時・・・私と山田先生で、救出に向かう。」

 

 

 

「はあっ!」

ラウラは両腕のビームサーベルを展開し、エクシアと接近戦に持ち込んだ。

『さっきから突っ込んでばかりで、芸がないわね!』

「フン、言っていろ!貴様も同じだろうに!」

両者は拮抗状態に陥った。互いにビームサーベルを押し付け合い、閃光を奔らせる。

「・・・貴様、つい先程芸がないと言ったな?では望み通り、少し趣を変えてやる!」

『? 何を・・・』

ラウラはガンダムフェイスの奥で不敵な笑みを浮かべ、ビームサーベルの出力を急激に上昇させた。

「これならば、出力はこちらが上だ!」

彼女はそう言って、ビームサーベルを力任せに振り回す。相手はそれに対抗しようとしたが、力で負けて片方のビームサーベルを手放してしまった。

『な・・・!?』

相手の意識が、一瞬そちらへ移る。その隙を見逃さず、ラウラは次の行動に出た。

「今だ、放て!」

ラウラの合図と共に、彼女の後ろについていたクロエが、ラウラの肩越しにロケット砲を放った。

『・・・!』

砲弾が相手に着弾すると、ラウラの目の前で大きな爆発が起き、激しく煙が舞い上がった。

「・・・どうだ?」

彼女は、すぐ側にいるクロエに問い掛ける。

「反応は消えています・・・しかし、この程度で倒したとは、とても・・・」

目の前でもうもうと立ち込める爆煙を眺めつつ、彼女は考えを巡らせていた。

(・・・おかしい。直撃したとはいえ、こんなにも派手に爆発する物なのか?それにこの状況、既視感がある・・・故意的に、煙をまかれた?・・・まさか!?)

と、彼女の思考がそこまで行き着いた時、煙の中より傷一つ無いエクシアが、GNソードを展開しつつラウラに迫った。

『盾で残念だったわね!』

「ちぃッ・・・!?」

(盾の内部に、起爆剤とスモーク弾を仕込んでいたのか・・・!)

彼女は咄嗟にGNフィールドを展開する。しかし、それは間違った選択だった。

『勉強不足ね。この剣は・・・』

振りかざされたGNソードは、そのままGNフィールドを切り裂いた。

『それごと敵を叩き斬る為にあるのよ?』

いとも容易くGNフィールドを突破された事に、彼女は驚愕した。

(馬鹿な・・・!?エネルギーの塊に等しい福音の翼をも防いだバリアが、こうも簡単に・・・!?)

『驚いている暇があるのかしら!』

表面を赤く光らせたGNソードは、ラウラの機体の胴体に深い傷を刻む。

「ぐっ・・・」

「不味い・・・!一旦その機体から離れて下さい!」

クロエは2連装GNビームライフルとロケット砲をエクシアに向け連射する。相手は目標をクロエに移し、迫るビームと実弾の雨をものともせず、彼女に斬りかかった。

『そんな射撃じゃ、このエクシアは捉えられないわよ!』

「くっ・・・分かってはいましたが、やはり速い・・・!」

クロエはなんとかビームサーベルを展開し、攻撃を受け止めた。しかし、機体出力の差か、徐々に押されていく。

『へぇ、よく耐えるじゃない。けど、胴体ががら空きよ!』

相手はそのままクロエを押し飛ばし、バランスを崩した彼女に容赦なくGNソードを叩き込んだ。

「ッ・・・!」

損傷を受けながらもなんとか後退する彼女を見て、相手は彼女らを侮蔑の目で見つめた。

『あーあ・・・もう少しはやれると思ってたんだけど、期待外れね。所詮は人に作られた紛い物・・・哀れなお人形ってことかしら? 』

「戯れ言を・・・!」

『だったら何?戦闘用に生み出された癖して、貴方達は私本体に、まだこれといった損傷を与えられていないじゃない。使命を果たすことすら出来ない人形は・・・ガラクタでしかないわ。』

彼女の言葉に、ラウラは酷く動揺した。

(そう、だ・・・私は元々、戦う為に作られ、兵器となるべく生きてきた・・・では、今の私は何だ?目の前の敵一人倒せない・・・戦えない。・・・私は、何の為に生きている!?)

彼女の心を、混乱と恐怖が埋め尽くす。その言葉は、良くも悪くも愚直なラウラにとって、彼女を悩ませるには十分だった。

 

「・・・それが、何だと言うのですか?」

 

その時、ラウラの体の震えが、ピタリと止まる。

「私達は、貴方達人間に作り出された存在・・・そこは認めましょう。しかし、私達を作り出したのは貴方ではない。使命だの何だのと、私達の生き方に口出しされる義理はありません。」

『あら、中々言うじゃない。けど「・・・それに」・・・まだ何か?』

「それに・・・勝った気でいるには、少し早すぎるのではないですか?」

その瞬間、彼女の機体に変化が起きる。装甲が徐々に赤みを帯びていき、ついには全身が赤く光り輝いた。

『この機体の発光現象・・・まさか!?』

驚愕するエクシアのパイロットとは逆に、クロエは懐かしい感覚と共に笑みを零していた。

「お久しぶりですね、暴れ馬・・・今は存分に、あの時の様な力を発揮して下さい!」

 

 

その身を真紅に煌めかせるクロエのガンダムは、通常の3倍以上のスピードでエクシアに迫る。

『っ・・・たかが速くなっただけで、何が変わるって言うのよ!』

彼女は接近して来るクロエに、取り回しの良いビームサーベルで対応しようとする。しかし、クロエはトランザムによる圧倒的なスピードをもって、エクシアの周りを縦横無尽に飛び回った。

「貰います!」

クロエは不意に、エクシアへ上空からの強襲を仕掛けた。

『! 幾ら速くても、動きは直線的ね!』

彼女はクロエの一撃を受け止めてみせたが、直ぐに出力で押されていった。

『エクシアの出力を、上回って・・・!?こん・・・のッ!』

彼女は押し通される前に、ビームサーベルを振り払う事で力を受け流した。

「まだ・・・終わりません!」

クロエは再び攻撃を開始した。彼女は急ブレーキと突進を連続し、反応を許さない程の動きで相手を翻弄する。

『このっ・・・!』

上から、下から、左から、右から。様々な方向から繰り出されるクロエの連撃に、相手は対応に追われていた。

(何なのよ、この動き・・・!無茶苦茶だけど、まるで先が読めない!?)

クロエは突撃しては離脱し、ビームライフルを放って別方向から接近という動きを繰り返す。 それは相手にとって、多方向からの絶え間ない攻撃に対し、即座に判断して対処しなければならないという事だった。

(先程は失敗しましたが、相手が混乱している今なら!)

彼女は今度こそと、エクシアに背後からの奇襲を図った。ぐんと迫るエクシアの無防備な背中に、彼女はビームサーベルを振り上げた。だが・・・

『後ろ!?』

相手はおもむろに振り向き、ビームサーベルを彼女の顔面目掛けて突き出した。

「ッ!!?」

クロエは直感的に、首を左に逸らした。それにより直撃は免れたが、右肩のロケット砲は破壊されてしまう。だが、彼女はそれに構うことなく、ビームサーベルを振り下ろした。

『ぐぅぅッ!!!』

しかし、相手もそう簡単にはやられず、GNソードを展開してそれを防いだ。激しく火花が散り、力が拮抗した両者を明るく照らす。

「くっ・・・では、これならば!」

クロエはもう一本のビームサーベルも展開し、 思い切り相手のGNソードに叩きつけた。すると、二つのビームサーベルがGNソードの出力を上回り、徐々にGNソードの刀身に食い込んでいく。

『嘘!?GNソードが、たかがビームサーベルに・・・!?』

そして、ビームサーベルはGNソードを真っ二つに叩き斬った。

『・・・エクシアの剣が、斬られた・・・これが、トランザムシステムの力だって言うの!?』

その圧倒的な力に驚愕するエクシアのパイロットに、クロエは淡々と告げる。

「お得意の接近戦に必要な兵装は、全て無くなってしまいました・・・これでもまだ、続けますか?」

彼女の言葉を受け、相手は思考する。

(まだGNビームライフルは残ってる・・・けど、接近戦を重視したこの機体で、射撃戦を展開するのは無謀過ぎるわね。癪だけど・・・ここは退くしかないか。)

『・・・分かった、今回は私の負け。彼を諦めて、大人しく帰る。でも、そのシステムの原理は大体把握した・・・次はこうはいかないわよ。』

そう吐き捨てると、エクシアは高度を上げ、オレンジ色の粒子を撒き散らしつつ、雲の向こうへと消えていった。

「旧式だからと、この束様が作り、リボンズから受け継いだ機体を甘く見た事が・・・貴方の敗因ですよ。」

そう呟いたクロエは、唐突にフラ、とバランスを崩す。それを見たラウラが、慌てて彼女の体を支えた。

「大丈夫か!?すまない。私は終盤になって、何も出来なかった・・・」

「いえ、貴方は良くやってくれました・・・でも少し、お互い無理をし過ぎましたね。帰りましょう、私たちにも休息が必要です。」

 

 

 

戦闘が終わって、少しした頃。リボンズは千冬に呼ばれ、報告を受けていた。

「・・・そうか。彼女達は、敵を撃退する事に成功したのか・・・」

「ああ。どうやら、例の機体が赤く変色するシステムが発動したらしい。あれのお陰で、私が出るまでの事態になる事は避けられたのだが・・・あれが無ければ、奴等は負けていただろうな。」

「成程・・・今回は運が味方した、と見ていいだろうね。」

彼は黙り込み、自分の部屋に戻ろうとした。しかし、そんな彼を千冬が呼び止めた。

「待て、こいつを受け取れ。先程の戦闘を、映像として記録してある。どうせ部屋に戻るのなら、よく見ておく事だ。」

「・・・すまない、恩に着るよ。」

彼は端末を受け取り、今度こそ自室へと向かった。

 

 

 

帰還したラウラは、外に出てある場所に来ていた。彼女の目線の先には、渚の方を向いて佇むクロエの姿がある。すると、クロエがラウラに気付き、くるりと振り返った。

「おや、貴方でしたか。何か御用で?」

ラウラは、改めて彼女の顔を見る。長く伸ばした銀髪も、目や鼻といった顔のパーツの配置も、全てが同じ。ここまで容姿が一緒で、只の他人と思えと言うのは無理な話だろう。

「・・・単刀直入に聞く。貴様も、私と同じ試験管ベビーなのか?あの鉄の子宮と、人工の羊水の中で生まれた・・・」

クロエは硬直するも、やがてフッと緊張を解いた。

「・・・そうですね。もう、貴方も察しがついている様ですし・・・良いでしょう、お答えします。」

クロエは一拍置き、再び口を開いた。

「ええ、貴方の言う通りです。私と貴方は、遺伝子強化実験の被験体・・・兵器となるべく生み出された、『造られし命』ですよ。」

「・・・そうか。やはり、そうだったのか。」

俯く彼女に、クロエが問いかける。

「・・・どうかしましたか?何か気になる事でも?」

そう聞かれたラウラは、少し躊躇う素振りを見せながらも、やがてゆっくりと問を投げかけた。

「・・・何故だ。何故、お前はああも割り切れる?何故、あの事実を突きつけられても、平然としていられるんだ?」

そう聞かれたクロエは、目を丸くした。そして、『なんだ、そんな事か』というように微笑を浮かべた。

「簡単な事ですよ。私には、明確な目的があるからです。それがあるので、私は只の人形とは違う、明確な『自己』があると断言出来ます。」

「目的・・・?」

「ええ。束様を・・・いえ。リボンズ達も含めた、私の大切な『家族』を守る。 私が私自身に課した、生涯に渡って成すべきことです。」

クロエの語った「目的」に、ラウラはそれを眩しく思いながらも、同時に疑問を抱いた。

「それは・・・素晴らしい事だ。だが・・・私には、その『目的』というものが分からん。教官は、私に自分のあり方を見つけろと仰った。しかし、私達は戦闘用に作られた・・・ならば戦う事が、本来あるべき姿ではないのか?」

その問に対し、クロエは困った様な表情を浮かべたが、はっきりと答えた。

「確かに、私達は戦闘用として生み出されました。しかし何の為に、何を求めて戦うのか・・・それは、明確に示されていません。それに、作られた身とは言え、私達の体は人間です。物事を考える脳があり、何かを思う心が存在します。ですから・・・それは自分で考え、決断する事かと。」

未だ腑に落ちない表情をしているラウラに、クロエは分かりにくかったですか、と苦笑した。

「・・・では、軍人である貴方に馴染み深い言葉で言い換えましょう。ラウラ、『心』に従いなさい。他の何でもない、貴方自身の心に。選択を迫られた時には、それに選択を委ねて下さい。」

その時ラウラは、空いていたパズルのピースがストンと埋まる様な、妙に納得した気分になった。

「・・・成程。『心に従う』、か。確かに、軍人である私にもしっくり来る言葉だ。」

そう呟いたラウラの表情は、憑き物が落ちた様に晴れ晴れとしていた。

「礼を言おう。お前のお陰で、私は教官のお言葉の意味を、正しく理解する事が出来たよ。」

「恐らく、貴方は考え過ぎる癖がある様に思います。もう少し割り切ってしまった方が、貴方の為にも良いかと。」

「ハハ、耳が痛いな。だが確かに、お前の言う通りかもしれん。その忠告、ありがたく受け取っておこう。いつか、今日の日の礼は必ずさせてもらう。」

そう言って、ラウラはその場を後にした。

 

 

クロエが彼女を見送っていると、そこに束がひょっこりと現れた。

「やあやあ、クーちゃん!中々嬉しい事言ってくれるじゃ~ん!」

「・・・束様、見ておられたのですか・・・」

「うん!最初から最後まで、ぜーんぶ聞いてたよ!」

いつもの調子でそう言う束に、クロエは思わず笑みをこぼした。

「それにしても、クーちゃん・・・良かったの、あれで?」

束の問に、クロエははっきりと答える。

「はい・・・もう、隠し通すのも面倒ですから。・・・それに」

彼女は、遠ざかっていくラウラの背を見た。

「彼女は完成体・・・つまり、私よりも完璧でなければいけない。彼女のあんな事で悩んでいる姿は・・・見るに忍びないので。」

それを聞いた束は、笑顔でクロエに抱きついた。

「・・・それって結局は、ラウラちゃんの事心配してるって事だよね!ちゃんとお姉ちゃんしてるじゃん、このこの~!」

「た、束様・・・息苦しいので、離して頂けると・・・ 」

そう言いながら、クロエは歩いて行くラウラを、普段は開けないその目を開き、優しい眼差しで見送った。

 

 

 

一方、リボンズは旅館の一室に籠っていた。

(ガンダムエクシア・・・あの機体と、再び対峙する事となるなんてね。あのパイロットも、かなりの直感と技量を持ち合わせている。まさか、トランザムに初見であそこまで対応してみせるとは・・・)

彼は千冬から借りた戦闘時の映像を見つつ、一人思う。そして映像が、ラウラとクロエがエクシアと対峙した場面に移ると、彼の表情は険しくなった。

(あのまま自分の感情に呑まれず、先に撤退させた彼等の内数人にも後方援護を任せていれば、もしかしたら・・・あのパイロットを逃がす事は無かったのかもしれない。彼女達二人も、危機的状況に陥る事は無かったのかもしれない・・・)

彼は先程の自分を思い返し、頭を抱える。

(何という、何という失態だ・・・!僕が自分の感情を・・・私情を優先してしまった事で、彼女達を危険に晒してしまうとは・・・!!何故、一人であれと戦えるなどと考えていたんだ!?)

その時、彼は何かに気が付いた。彼はそれを認めたくないかの様に、ゆっくりと思考していった。

(刹那・F・セイエイは・・・ソレスタルビーイングは、変わる事が出来た。だから武力による戦争根絶から、相互理解による平和の実現に方針を変えた・・・この世界でもそうだ。僕の周りの者達は、以前の自分から変わろうとしている・・・ならば僕は、どうなんだ?)

今まで、彼はかつての自分から少しでも変わろうと、日々頭の何処かで意識していた。しかし、今日の事件で、彼はある事に気付いてしまった。

「同じだ・・・。人間に対する意識は、大きく変わった。でも、僕の本質は何も、変わっていなかったのか・・・!」

確かに、彼が人間を見下す事はなくなった。だが、自分の力しか信じないその傲慢さは、彼の無意識下にまだ存在していた。その事に気付いた彼は、苦悶の表情を浮かべ、その場にうずくまった。

 




・・・はい。というわけで、最新話でした。いかがでしたか?今回は登場させるキャラこそ少なかったものの、久々の完全オリジナルの展開でしたので、かなり考えるのに時間をかけましたね・・・
全部自分のオリジナルで書いている投稿者さんや、実際の作家さん達は凄いなぁと、改めて思いました。


では、いつぞや言っていた通り、今回はガルムガンダムと、今回登場したエクシアの機体説明といきましょう。




ガルムガンダム

ラウラの為に、束が作った機体。学年別トーナメントで暴走し、大きなダメージを負ったシュヴェルツェア・レーゲンを、束がその予備パーツを一部流用・改造し、完成した。コアはシュヴァルツェア・レーゲンの物と変わりなく、装備も似通った物になっているので、ラウラにとって馴染みやすい機体となっている。


武装

・GNビームサーベル
両腕の手の甲に搭載されたビームサーベル。束が腕部の予備パーツを流用した時、使い慣れた形がいいだろうということで、プラズマ手刀から変更する形で搭載された。腕のGNコンデンサーに直結している為、大幅な出力の変更が可能。

・GNパーティクル・カノン
右肩に搭載された大型のカノン砲。実体弾にGN粒子を纏わせ発射することで、弾の強度と速度を上げ、着弾時の威力を高める事が可能。

・GNフィールド
GN粒子を機体周辺に展開し、球状のバリアを形成する。これを搭載するにあたって、AICはオミットされている。強度は調整可能だが、長時間の使用は不可。



ガンダムエクシア

謎の女性が搭乗していた機体。赤色と黒色が基本色になっていて、本来のエクシアとは正反対の印象を与える。確認出来た武装はGNソード、GNビームサーベル×2、GNダガー。他にも、高濃度のGN粒子を自身に纏わせ、一時的に他の太陽炉搭載機のレーダーから消失する機能がある様だ。


この様な感じですね。このエクシアは、アストレアtype-Fや、ガンダムエクシアダークマターの色合いをイメージしています。


余談ですが、「心に従え」っていう言葉、凄く好きですね・・・本来は、マリーダがジンネマンに言われた言葉ですが、ラウラはマリーダと境遇が結構似ているので、この言葉が使えるかなぁと思って、今回採用しました。


では、また次回にお会いしましょう。次は確か日常回のはずだし、ここまで遅くはならないかな・・・?
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