大変遅れて、申し訳ありませんでしたァ!!!
リアルの方が色々と忙しくなってきていたので、かなり遅れてしまいました・・・
というわけで、今は絶賛冬なのに、真夏の話を投稿する羽目になってしまった次第です。
これまでの話は、簡単に説明すると、福音倒した後に現れたエクシアに事実上敗北して、リボンズが落ち込んでしまった感じですね。
今回は、他オリキャラ達をメインとした日常回です。リボンズは最後にちゃんと出てきます。原作でいうと、ちょうど4巻の内容ですね。
というか、間空きすぎて皆様オリキャラ達を忘れてしまっているのでは・・・
とにかく、7ヶ月越しの最新話です。どうぞ。
トラブルの続いた臨海学校も終わり、生徒達が落ち着きを徐々に取り戻した頃。時期は8月となり、夏真っ盛りであった。太陽はぎらぎらと照りつけ、地上のあちこちから、人々が苦しむ声が聞こえる。
そして、彼女もまた。
「・・・あっづぅ・・・」
彼女、凰鈴音もまた、その暑さに苦しめられていた。
(ほんっと・・・この国の夏は嫌いだわ。幾らなんでも暑すぎるのよ!大気圏に生身で突入してるんじゃないかって位!!)
勿論、そこまで温度が高いわけがない。本当にそうなら、今頃人類はとっくに宇宙へと逃げ出している。しかし、この様な軽い冗談でも考えていないとやっていけない位に、彼女にとって日本の夏は辛かった。
「・・・でも今だけは、この暑っ苦しい気候に感謝したい気分ね!」
彼女はそう言って、目の前の机に置かれた、2枚のチケットを見た。
(友達がキャンセルしたのを引き取って手に入れた、最近オープンしたばっかのウォーターワールドの前売り券・・・一夏と二人きりになれるチャンスを、逃す手はないわ!)
「そうよ、これが成功した暁には・・・一夏なんて、あっという間に落としてみせるんだから!!」
悪い笑みを浮かべながら、彼女はそのチケットを手に取り、一夏を探しに行こうと部屋のドアを開ける。すると幸か不幸か、部屋を出た瞬間に、彼女は一夏と遭遇した。
「ひゃあっ!?」
「うお!?・・・って、鈴じゃねえか。どうしたんだ、急に大声出して?」
いきなりの事に、鈴はパニックになってしまっていた。
「なな、なんでアンタがここにいるのよぉ!?」
「え・・・いや、偶然通りかかっただけだぞ?」
「・・・そ、そうよね!偶然よね!あはは・・・」
(少しでも『鈴に会いに来た』なんて、回答を期待したあたしが馬鹿だったわ・・・)
先程からころころ表情を変える彼女を、一夏が訝しげな顔で見る。
「ったく、鈴・・・大丈夫か?なんか怪しい顔しながら出てきたもんだから、てっきりまた襲われるのかと思ったぞ。その内、すれ違いざまに『お前を殺す』とか言い出すんじゃ・・・」
「い、言わないわよバカっ!」
結局二人は、またいつもの様な夫婦漫才を繰り出すのであった。
「ところで・・・アンタ、どっかに遊びに行く予定とか無いの?こんなにいい天気なのに。」
「あー、天気はいいっちゃいいんだけど・・・暑くねぇか?ここまで暑いと、何かする気も失せるっていうか・・・」
「ったく、情けないわねぇ。そんなアンタに良いもの、持ってきてあげたわよ?」
「良いもの・・・なんだ?」
鈴は緊張しているのか、チケットを持つ手をきゅっと握り締めていた。
(うう・・・ええい、ままよ!)
「ほ、ほらこれ!ありがたく受け取りなさい!」
一夏は言われるがままにそれを受け取り、まじまじと見つめた。
「これって・・・新しいウォーターワールドのチケットじゃねえか?よく手に入れたもんだな。」
「そうよ、あたしに十分感謝しなさいよね!」
「へえ、大したもんだな。んで、いくら払えばいいんだ?どーせ多少は金取るんだろ?」
「えっ・・・」
鈴はしばし思考した。別に自分は金を要求する気などないが、下手にそう言うと、逆に怪しまれるのではないかと。
(あー、でも・・・ここで印象良くしておくってのも・・・いや、でもあからさま過ぎるかな・・・)
「・・・あ、当たり前じゃない。流石にそんな上手い話は無いわよ。」
「そうだろうと思ったよ。ま、ありがたく買わせて頂きます、ってな。んじゃ早速、いつ行くか決めようぜ。」
「あー・・・また後で連絡するわ。その時に決めましょ。」
「そうか、分かった。じゃ、また後でな。」
立ち去っていく一夏の背中を見つつ、彼女はため息を吐いた。
「あー、ホント・・・まだまだ奥手ねぇ、あたし・・・」
そして、当日。
ウォーターワールドのゲート前にて、鈴は一夏を待っていた。その様子はすこぶるご機嫌である。
(ふふん。今日の日のために、服も新調したんだから。一夏の奴、腰を抜かせてやるわ!)
彼女が意気揚々と一夏を待っていると、そこに見知った顔が現れた。
「え、セシリア?」
「あら・・・鈴さん?こんな所でどうしたのですか?」
「あー・・・ちょっとね。人を待ってんのよ。」
「それは・・・奇遇ですわね。私も、ここで待ち合わせの約束をしておりますの。」
「ふーん、そっかあ・・・」
それきり二人はすっかり黙って、互いの待ち人を待ち続けた。
(・・・遅い!!アイツ、何処で油売ってんのよ!?)
一向に現れない一夏に、彼女は苛立ちを隠せないでいた。ふと横を見ると、セシリアもどこかそわそわしていた。
(あっちもあっちで、中々来ないみたいね・・・お互い大変だわ、ホントに。)
彼女がそんなことを考えていると、ポケットの中の端末が震えた。鈴は慌ててそれを取り出し、通話を始めた。
「一夏!?アンタ、今どこにいるのよ!?」
彼女がそうまくし立てると、一夏は申し訳なさそうな口調で答えた。
『鈴、悪い・・・今日、俺は行けそうにないんだ・・・』
「・・・は?」
あまりに突然のことに、鈴は思わず素っ頓狂な声を出した。
「・・・いや、いやいやいや、待って。それ、どういう事よ?」
『それがだな・・・つい昨日、山田先生に今日は学校にいるよう言われたんだ。なんでも、この前進化した白式のデータを、計測しなきゃいけないみたいでさ・・・』
「なっ・・・んの馬鹿ァ!!なんでもっと先に言わないのよ!?」
『いやいや、俺もそうしようとしたぞ!?でもお前、電話には出ないし、部屋に行ってみても、ルームメイトの子に寝てるって言われたからさぁ・・・』
「・・・あ」
彼女は前日、今日の日の為に早く就寝し、ルームメイトには緊急時以外起こさないよう釘を指していた事を思い出した。
(これこそ緊急事態じゃないのよ!?あぁもう、やっぱり彩季奈に頼んで、一夏接近警報的な物を作ってもらうべきだったわ・・・)
そう悔やんだ彼女だったが、時すでに遅しであった。
『そういう事で・・・悪い!今日はセシリアと一緒に行ってきてくれ・・・』
「ハァ!?ちょ、嘘よね!?シャレになんないわよそれ!!」
『え、もう始める?分かりました、すぐ行きます!・・・ってな訳だ。鈴、本当にすまん!セシリアにもよろしく言っておいてくれ!』
「ちょ、ちょっと!待ちなさいったら!待っ・・・」
彼女の静止も虚しく、通話はぶつり、と切られてしまった。
「あ、あ、あんの馬鹿・・・!」
ぷるぷると、端末を怒りのあまり握りしめる鈴だったが、不意にふっとその力を緩めた。その変わりようを心配したセシリアが、彼女に声をかける。
「あ、あの、鈴さん・・・大丈夫ですか?お顔が怖いですわよ?」
「アイツを殺す」
「!?」
園内に入った二人は、取り敢えずカフェに行き、 今の状況を整理することにした。
「・・・事情は分かりました。つまり一夏さんは、自分の代わりとして、私をここに寄越した、という訳ですわね?」
「ま、端的に言えばそうなるわね。」
その鈴の返答に、セシリアはため息をついた。
「もう・・・一夏さんには、毎度振り回されてばかりですわ・・・」
「全くよ・・・乙女の純情は、おもちゃじゃないってのに・・・」
注文したジュースを飲みつつ、二人は再び重いため息を吐く。
「・・・で。どうするのよ、これから?」
「そうですね・・・正直、もう泳ぐ気分ではありませんわ・・・」
「そうよねぇ、あたしも帰るかな・・・」
彼女らが気を落として帰ろうとした時、あるアナウンスが放送された。
『えっと・・・イベントのお知らせをします!水上ペア障害物レースの受付は、12時までです!優勝商品はペアの旅行券なので、皆こぞって参加して下さいって!』
「「これだっ!!!!」」
その頃、厳弥は彩季奈の工廠に赴いていた。
「ふぅん、それが今作ってる奴なんだ。」
「うん!リボンズさんから預かったまま、ほったらかしちゃってたからね。丁度大艇ちゃんも一段落ついた事だし、次はこれの改造をやってみるかも!」
目の前に広げられた『アサルトシュラウド』の図面を、厳弥はまじまじと眺める。
「・・・スラスターと兵装を内蔵した追加装甲でISを覆い、ISの火力と機動性を向上させる、ねぇ・・・このままでも、中々良い代物だとは思うけど?」
「まあね。追加装甲、内蔵兵器、スラスターの増加・・・皆の心をくすぐる、ロマンが詰まった良いプランだと思うかも。でも・・・」
彼女はわなわなと震える拳を握りしめ、きっぱりと言い放った。
「まだまだ、あたしからしたらロマンが足りないかも!もっと装備を増やしたり、装甲を付け足したりとか・・・そう、盛り合わせは正義だよ!!」
そう言ってやる気に燃える彩季奈を、厳弥はたしなめる。
「んー・・・程々にしなさいよ?詰め込みすぎて、際限なく巨大化していくなんてオチはゴメンだからね。」
「分かってるよ!うーん、まずは打鉄みたく、シールドを付けてみようかな?それで、右肩のレールガンを盾の裏に移して、空いた所に別の武器を仕込んでみるのも面白そうかも!」
「あーあ・・・こりゃ駄目ね。」
厳弥はため息をつき、自分の端末に目を向ける。するとそこへ、芽遠が急いだ様子でやって来た。
「あ、先輩!ここにいたんですか。探しましたよ〜!」
「芽遠?どしたの、私に何か用?」
厳弥がそう尋ねると、彼女は首を横に振った。
「いえいえ、今回は私じゃないんです。なんでも一年の子が、先輩に会いたいらしくて・・・」
「一年生が?珍しいわね。まあ取り敢えず、話を聞くわ。その子は今どこにいるの?」
「今は、この部屋の入口で待機してもらってます。じゃあ私、その子を呼んで来ますね!」
芽遠が部屋を出てから少しすると、一人の生徒が姿を現した。その相手を見た厳弥は、思わず目を丸くした。
「これは・・・予想外ってもんじゃないわね。」
「・・・こうして会うのは二度目になるな。改めて、自己紹介をしよう。私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。伊東 厳弥、今日は貴女に頼みがあってきた。」
「頼み・・・?」
厳弥が目を丸くしていると、ラウラは彼女に頭を下げ、懇願した。
「頼む。私と、一戦交えてはもらえないだろうか?」
「・・・へぇ」
彼女の目つきは一転して、鋭いものになった。
その後、厳弥とラウラは、アリーナにて対峙していた。
「・・・模擬戦の相手を引き受けてくれた事、感謝する。」
「いいわよ、この位。それにしても、随分と急なお願いだったわね。最近、何かあったの?」
そう彼女は問いかけたが、ラウラは何も答えなかった。
「・・・そう。ま、理由は後で聞くわ。」
そう言うと厳弥は、自身のISFを展開した。スクール水着を模した装甲を身に纏い、その手には浮き輪形のタクティカルアームズが握られている。
それを確認したラウラは、ガルムガンダムを展開した。それを見た厳弥は、感嘆の声を上げる。
「わお・・・ISを乗り換えたって噂は聞いてたけど、まさかそれなんてね。これは、油断は禁物かな・・・」
彼女はタクティカルアームズを構え、臨戦態勢に入った。ラウラはそれを見て、彼女の戦法を今一度確認する。
(・・・織斑教官が提示して下さったデータによると、奴の得意とする距離は主に接近戦。特に、魚雷の爆発によって生じた煙や砂埃に紛れて奇襲、という戦術を用いる。前回は、この戦法の前に、私は為す術もなかった・・・できるのか、私に?)
彼女は不安を覚えたが、すぐにそれを振り払った。
(この機体も、接近戦に強く調整されている・・・恐れるな。勝てずとも良い、一撃でも奴に反撃できれば・・・!)
腕部のGNビームサーベルを展開し、彼女もまた戦闘態勢に入った。
「・・・準備は整った?」
「ああ、いつでも良い。」
「オーケイ。じゃ、こっちから行くわね。」
厳弥はまず、魚雷を二本発射した。ラウラはそれを難なく避け、右肩のGNパーティクル・カノンを展開した。
(接近戦に持ち込まれるのは危険だ・・・なるべく遠距離からの攻撃に徹し、奴の領域から離れる!)
砲身から、粒子を纏った砲弾が次々と射出される。厳弥はそれを、地を走りながらすいすいと回避した。
「ただドカドカ撃ってるだけじゃ、当たらないわよ!」
砲撃の合間を縫って近付いていた厳弥は、ここぞとばかりにラウラの目の前に踊り出た。
(先日の敵性ガンダム程ではないが、やはり素早い・・・だが!)
ラウラはGNフィールドを展開し、厳弥の攻撃を防御した。
「これって・・・前の金ピカのバリアと一緒!?」
「貰った!!」
彼女はこれを好機と見て、すかさず腕部のビームサーベルを厳弥に突き出した。
「っ!!!」
咄嗟にタクティカルアームズをクロスさせ、彼女はその一撃を受け止めた。そして彼女は衝撃に身を任せ、ラウラから離れた場所に着地した。
「・・・少しの間に随分変わったわね、貴方。反応速度も上がってるし、思い切りが良くなった気がする。」
「・・・貴方程の使い手にそう言われるとは、光栄な事だ。」
「ここまで成長してるんじゃ、手加減なんてしてられないな・・・じゃ、これから本格的に攻めさせてもらうからね。」
厳弥は再び、ラウラに向かって一直線に走り出した。ラウラは再び砲撃を行うが、それはタクティカルアームズに防がれる。
(まずいな・・・一度上昇して、体勢を立て直す!)
ラウラは機体高度を上げ、上空で再び砲撃体勢に入った。
「成程ね・・・確かに、私の機体は飛行は出来ない。だから、そうするのは妥当な判断よ。」
けどね、と厳弥は笑う。
「それに対する対策を、考えてないなんて思わないでよね!!」
ラウラが砲撃を放つと共に、彼女は魚雷を砲弾に向け投げ付けた。小規模の爆発が起き、厳弥の体が煙に包まれる。それと同時に、彼女の反応がレーダーから消失した。
(消えた!?やはりあれが、奴の機体の
しかし、と彼女は続けて思考する。
(あれでは、いつもの奇襲戦法は使えない。なのに、奴は反応を消した。一体何を考えている・・・?)
すると、彼女の思考をかき消すように、接近警報が鳴り響いた。
「くっ、魚雷か!?」
レーダーが捉えた数は2つ。彼女は撃墜しようかと考えたが、それでは煙が発生してしまう為、回避する事を選んだ。
すると突如として、レーダーにもう一つの反応が現れた。
(奴の反応!・・・後ろだと!?)
彼女が反撃するより前に、厳弥はタクティカルアームズを容赦なく振り下ろし、ラウラを地面に向けて叩き落とした。
「相手の思考を縛り付けて、予想もされなかった方向から攻撃。奇襲ってのはそういう物よ!」
(このまま落下すれば、奴に多くの隙を与えてしまう・・・そうはいくか!!)
なんとか機体のバランスを取り戻し、地面に激突する事を免れたラウラに、厳弥は息付く間もなく攻撃を仕掛ける。
(砲撃をする暇はない・・・やらざるを得んか!)
彼女はやむなく、近接戦闘に持ち込む事を選択した。もう目と鼻の先にまで迫っている厳弥に、彼女は警戒を強める。
しかし次の瞬間、厳弥はバンと地を蹴り、ラウラの頭上を飛び越えた。
「な・・・!?」
すると、彼女は空中でハンドガンを展開し、それを構えた。その銃口の向く先には・・・
彼女が故意的に落としたのであろう、一本の魚雷があった。
「相手を、自分のテリトリーに引き摺り込むの・・・多少強引にでもね。」
彼女が、いくつかの弾丸を魚雷に撃ち込んだ直後。激しい爆発が起こり、辺りを爆煙が覆い尽くした。
(くっ、読みが甘かったか・・・まさか、あんな手段をとってくるとは。下手をすれば、自身をも巻き込みかねなかったというのに・・・)
もうもうと立ち込める煙を見、彼女は厳弥の大胆な行動に驚いた。
(しかし、まんまと相手の策に嵌ってしまった。これで、ここら一体は奴の領域・・・狩場だ。もう、反撃は不可能に近いか・・・?)
ネガティブな思考に陥りかけた彼女は、我に返って深呼吸をした。
(何を弱気になっている・・・何も相手は、存在自体を消している訳ではない。)
彼女は、目の前でもうもうと立ち込める煙を注視した。
(幾ら潜水艦をモチーフにした機体といえど、その隠密性は完璧ではない筈だ。動いた時に、必ず何か痕跡を残す筈。探せ、奴の『航跡』を・・・!)
彼女はモニターを駆使し、全方位をくまなく観察した。すると、突如として接近警報が表示される。彼女は一瞬、厳弥が姿を現したのかと考えたが、即座にその可能性を否定した。
(違う、あれは恐らくダミー。私がそれに対応している隙に乗じて、攻撃を仕掛ける・・・さっきと同じ、奴の常套手段だ。なら、何か変化が起きる筈・・・!)
ラウラは更に監視の目を強める。
そしてついに、彼女は目にした。煙の中のある一点が、不自然に動いているところを。
「っ、そこォ!」
彼女は迷わず、カノン砲を発射した。砲弾の弾道の部分の煙が晴れていき、そしてその先に、彼女へと向かっていた厳弥の姿があった。
「嘘っ・・・気付かれた!?でもね!」
厳弥はすんでのところで砲弾を回避し、そして武器を収納し勢いよくスライディングした。彼女はそのまま滑り続け、ラウラの股下を潜り抜けた。
「何・・・!?」
その時、ラウラは感じた。厳弥が自分の背後で、再びタクティカルアームズを展開し、振り上げている姿を。
「く・・・させるかァ!!」
彼女はその感覚のままに、振り向いて腕部ビームサーベルを思い切り突き出した。
「ッ!?」
厳弥はその時、戦慄を覚えた。今度こそ後ろを取った、と確信していたら、次の瞬間には、眼前に鮮やかに光るビームサーベルを突き付けられていたのだから。
(な・・・避け、切れない!?)
彼女も思わず、自分の得物を全力で前に突き出していた。
互いの得物が互いの体をかすめ、それと同時に、ラウラに厳弥が先程放っていた魚雷が直撃した。
「ハーッ、ハーッ、ハーッ・・・」
ラウラは息を切らし、その場にへたりこんだ。その身に纏っていたISは、解除されてしまっている。
(ISを維持出来ない程、脳の消耗が激しいという事か・・・っ、頭痛が・・・)
ラウラの状態を見て、厳弥は彼女を抱きかかえ、アリーナの隅の壁に持たれ掛けさせた。
「ちょ・・・大丈夫!?保健室行く!?」
「い、いや・・・大丈夫だ。」
彼女は壁に背を預け、深呼吸をして呼吸を整えた。
「ふぅ・・・ハハッ。今回も、負けてしまったな。完敗だ・・・」
彼女は苦笑いし、改めて実力差を痛感している様だった。
「いやいや・・・貴方、凄く成長してるわよ。さっきも言ったけど、反射神経は上がってるし、動きのキレも良くなってる。しかも、私の居場所を見抜いてみせたじゃない。」
「いや、あれは運が良かっただけさ・・・あれすらも私を欺く罠だったとしたら、私は負けていた。確実にな。目とカメラの性能の良さが、あわや命取りになる可能性もあったわけだ。」
彼女の言葉に、謙遜しちゃって、と厳弥は呟く。
(ラウラちゃんが最後に見せた、あの人間離れした反応。 あれ、なんだったのかな・・・)
それが気になったものの、彼女はまず、目の前のラウラを優先する事にした。
「取り敢えず、何か飲み物買って来てあげるから。帰ってくるまで、そこで休んでて。」
「あ、ああ。すまない・・・」
「いいのよ、お礼なんて。じゃ、すぐに戻るから!」
そう言い残し、厳弥は走って最寄りの自販機へと向かった。残されたラウラは、一人呟く。
「ハァ・・・やはり、とんでもない奴だった。かつての船乗り達の気持ちが、今なら分かる・・・居場所の分からない敵が、こうも恐ろしいとはな。ISに慣れてしまった今では、そう味わえん感覚だ。」
厳弥との戦いを思い返していた彼女は、ふとある事に気づいた。
「何だ?左目に、違和感が・・・?」
そう感じた彼女は、一度眼帯を外してみた。しかし何かが分かる訳もなく、ラウラは気のせいだろうと思う事にした。
しかし、彼女は気付いていなかった。彼女の左目の虹彩が、ほんの一瞬、微弱に輝いていた事に。
一方、厳弥を除いた伊東姉妹達は、鈴達と同じくウォーターワールドにいた。
「わぁ・・・すごいのね!あちこちに色んなプールがあるの!」
辺りを見回し目を輝かせる幾に、恵は苦笑した。
「そりゃあ、ウォーターワールドだし?むしろプールが無きゃおかしいでち。」
「人、多いね・・・恵がここのバイトじゃなかったら、来られなかったかも。」
「うーん、こんな水の楽園みたいな所で働けるなんて、夢みたいなのね・・・あれ?じゃあ、恵の仕事はいつからなの?」
「心配しなくても、シフトの時間はまだ先でち。」
そうして三人が園内を回っていると、アスレチックと思しきものが多く設置されている、一際大きなプールに辿り着いた。
「あれ?ここ、女の人しかいないのね。他のプールには男の人もいたのに。」
幾の疑問に、恵はそういえば、と答えた。
「そういや今日は、ここで何かの大会をやってる筈でち。にしても、この状態は・・・大方、スタッフさんが睨みを利かせたんでしょ。野郎の水着姿なんか見せるなってさ。」
「・・・ちょっと可哀想なの・・・」
「まあ、しょうがないよ。皆が見たいのは、華やかな女の子の水着姿なんだし。」
そう話しながら、三人はそこを通り過ぎようとした。しかしその時、会場はどよめきに包まれ、実況者は興奮と困惑が混じりあった様な声で叫び始めた。三人が何事かと目を向けると、そこにあったのは・・・
セシリアと鈴が、ISを纏っていがみ合っている姿だった。
「何やってんのアイツら?」
ISを用いた喧嘩を目の当たりにした恵は、静かに自分のISFを展開し、パーク内スタッフである事を示すタグを、首からぶら下げた。
「ちょ、恵・・・何する気なの!?」
「別に、ちょっと早めからシフトに入るだけでち。悪いけど、二人でどっか回っといて。」
そう言って、彼女は手すりを飛び越え、会場のプールへと飛び込んだ。
会場では、互いのISを装着した鈴とセシリアがにらみ合っていた。すると、両者間の緊張を打ち消す様に、どっぱーん、と大きな音を立てて何かが着水した。二人が驚いてその方向を見ると、恵が水中から顔を出し、支給されていたホイッスルをピーと吹いた。
「はいそこの二人ー。他のお客様のご迷惑になりますのでー、園内での戦闘行為はお控え願いまーす。」
「め、恵!?なんでここにいるのよ!?」
「いや、なんかここら辺歩いてたら、偶然このアホみたいな喧嘩に遭遇したわけで。んで、何がどうしてこうなったんでちか?」
彼女の問いかけに、二人は思い出した様に言い合いを再開した。
「あたしはただ、向こうから仕掛けてきた喧嘩を買ってやっただけよ!!」
「なっ!?元はと言えば、鈴さんが私を踏み台にしたのが悪いのではなくて!?」
未だ張り合おうとする二人を、彼女は呆れたような口調で窘める。
「あのさぁ・・・自分たちのやってること、ちゃんと理解してるの?非殺傷設定だとしても、戦闘の流れ弾が当たっただけで、一般人は怪我しちまうんでちよ?」
彼女の言葉に、二人はハッとして、ISを収納した。
「いい判断。んじゃ、詳しいことは中で聞くから、大人しく付いて来て。」
「とにかく!!今回の事はしっかりと反省して、今後絶ッッ対、こういう事はしない事!!良い!?」
「「はい、申し訳ありませんでした・・・」」
謝罪の言葉を聞いた従業員の女性は、ひとまず怒りを収めた。
「よろしい。伊東さん、貴方もISを使ってはいたけど・・・武装を使わずに仲裁をしてくれたし、私からは何も言わないわ。でも、次は無いわよ?」
「了解でーす。じゃあ二人とも、さっさとおいとまするでち。」
スタッフの女性にこってりと絞られ、心がズタボロの彼女達二人を引き連れ、恵はスタッフルームを後にした。
「あ、恵おかえり・・・って、後ろの二人がすっごくどんよりしてるのね・・・」
「・・・ジュースとか、買ってきてあげようか・・・?」
華の申し出を、恵はきっぱりと跳ね除ける。
「ダメだよ華。今回は完全に、この二人の自業自得でちからね。ましてや、あんな下らん事にISを使うとか・・・言語道断でち。」
彼女のごもっともな言葉に、鈴とセシリアは更に縮み上がる。
「ったく・・・取り敢えず、帰るよ。次からは気をつけることでちね。」
「「はい・・・」」
そうして、彼女たちは帰路についた。しかし、彼女たちから発せられるもんもんとした空気に、恵は内心うんざりしていた。
(・・・うーん、このテンションのまま帰るってのも、なんだかなぁ・・・あ、そういや今日って・・・よし)
その鬱屈とした雰囲気に耐えられなくなった恵は、あることを思いついた。
「ねえ、そこのバカ二人。浴衣とか持ってたりする?」
「え?・・・あたしは、一応持ってるわよ。」
「申し訳ありません・・・私は、持ち合わせておりませんわ。」
「なら、私か幾のお古を貸してやるでち。とにかく皆、寮に帰ったらソッコーで準備を始めること。いい?」
「任務了解なの!」
「ふふ。今宵は宴、だね。」
恵の意を察した二人は、元気の良い返事をする。一方で、状況が呑み込めない鈴とセシリアは、ただただ困惑していた。
「ちょ、ちょっと待って。展開が読めないんだけど・・・」
そんな彼女たちに、恵は朗らかな笑みを向けた。
「いーから、黙って準備して。傷心中のお二人の為に、ちょっといい所に連れてってやるでち。」
模擬戦の後、ラウラは厳弥に連れられ、保健室で診察を受けた。異常は無しとの事だったが万一のことを考え、少し保健室で休んだあと、二人は帰路についた。
「いやー、良かったわ。何も悪い所は無くて。」
「だから言っただろう。何も保健室に行かなくとも、私は大丈夫だと。」
「何言ってんの。ラウラちゃんみたいな真面目な人の『大丈夫』程、危なっかしい物はないんだから。」
「う・・・」
確かにその通りだ、と、ラウラは押し黙る。
「それより・・・何でまた、私に模擬戦を申し込んで来たの?」
「理由・・・単純だよ。私はただ、更なる力を求めた。それだけだ。」
彼女は歩きながら、毅然として話していく。
「私は、教官にはなれない。ならばせめて、あの方の力になれればと思った。だからこそ・・・教官が私に、あの機体を託して下さったことが、嬉しかった。」
「だが、結果はあのザマだ。私にはまだ、あれを完璧に乗りこなす技量が無かったのだ。」
「・・・しかし、いつまでもそんな事は言ってられん。未知の敵に対して、我々は常に牙を研いでおく必要がある。そこで今の私が、何をすべきなのか・・・考えた結果が、先程の模擬戦だ。」
ラウラはそこで立ち止まり、厳弥の方を向いた。
「我々は恐らく、これからあの敵と何度も対峙する事になるだろう・・・私はその時に、これ以上教官に気を使わせる訳にはいかん。奴とも対等、少なくとも足に喰らいつける位には、更に実力をつけなければならない。・・・その為には」
ラウラは、厳弥の目を真っ直ぐに見据えた。
「無礼な事を言うようだが・・・貴方如き、倒せるようにならなければならない。」
彼女の言葉に、厳弥は楽しそうに笑った。
「・・・ふふ、言ってくれるじゃない。ま、今回の模擬戦で、私の戦い方もまだまだ穴がある事が分かったしね。おかげさまで、こっちも良い勉強になったわ。言ってくれれば、いつでも相手してあげるわよ。」
「本当か!?それはありがたい・・・また、よろしく頼む。」
「勿論よ。何度でもどんと来い、ってね。」
笑ってそう言う厳弥につられて、ラウラもまた自然と笑顔を零した。
「そうだ!ラウラちゃん、この後なんか予定ある?」
「いや、特には無いが・・・それがどうした?」
厳弥は、にこりと微笑んで言った。
「今日の夜、近くの神社でお祭りがあるんだけど・・・折角だし、一緒に行かない?」
夜になり、日も暮れた頃。厳弥とラウラは浴衣を着て、お祭りが開催されている神社に訪れていた。
「わお、結構人がいるわねぇ・・・ラウラちゃん、離れちゃダメよ。」
「了解した。・・・それにしても、これが日本の祭りか・・・そこら中に露店が並んでいるな。」
「そ。こんな感じで、色んなお店があるのよ。じゃあ、どこから行きたい?」
「そうだな・・・では、まずはあそこだ。」
一方、恵たちもまた、そのお祭りに来ていた。
「おお〜・・・こっちもこっちで、 人が一杯なの!」
「はぐれちゃダメだよ、幾。」
「ったく、アイツはいつも元気なんだから・・・おーい1年。そっちもはぐれないでよ。」
「は、はい!鈴さん、よそ見をしてないで行きますわよ。 」
「え?・・・ああ、うん!」
そう答えた鈴だったが、彼女の目線は道行くカップル達の方に向いていた。
「どーしたのね、鈴?さっきからぼーっとしてるけど。」
「べ、別に、何も無いわよ・・・」
彼女の目線の先を見た幾は、ニンマリと笑みを浮かべた。
「はは〜ん・・・さては、あの人たちが羨ましいの?」
「ハ、ハァ?別に羨ましくなんかないし!」
「コラ幾、あんまり一年弄るのはよしなよ。」
「んもう、恵ったら人聞きが悪いのね。恋バナはガールズトークの鉄板なの!」
幾はいたずらっぽく笑い、悪びれもなく答える。恵はその態度に、お手上げといった様子で両手を上げた。
「全く・・・好きにするといいでち。」
「さっすが恵、分かってるのね!」
恵のお許しを得た彼女は、嬉々とした顔で鈴の方を向いた。
「ねぇねぇ、やっぱり鈴も、そういう展開に憧れちゃうの?」
「別に、そんな事ないし!ほら、こういうのは同性の友達と行った方が楽しいってよく言うでしょ!?」
「う〜ん・・・でも、ほんとは織斑君と一緒に来たかったんじゃない?」
「ちょっ・・・なんでアイツなのよ!?そんなの、絶対ゴメンだわ!!!」
ニヤニヤと笑う幾に対し、鈴は必死に反論する。
「あんなテンプレなツンデレ見せ付けてたら、誰でも分かるのね。」
「つ、ツンデレって・・・デレてなんかないわよ!?」
「ツインテ、そういうとこでちよ。」
「〜ッ!!ああもう、とにかく!あたしはこれっぽっちも、アイツの事なんか好きじゃないんだから!!」
(((((だからそういうところだって・・・)))))
皆が暖かい目で鈴を見つめる中、彼女は恥ずかしさがピークになって、軽く興奮状態になっているようだった。そして、こんな人が密集している場所で暴れるとなると、結末は一つしかない。
「おい、ちょっとツインテ!後ろ後ろ!」
「アイツ、今回は一発引っぱたいて・・・きゃっ!?」
「ふむ。先程購入したこの仮面、中々悪くない。店でこれを着けて接客でも・・・ぬおっ!?」
案の定、鈴は仮面を着けた金髪の男性と激突し、転倒してしまった。
「あいたた・・・す、すみません・・・」
「いや、こちらこそ申し訳ない。久々の祭りに、少々気が浮わついていたようだ。立てるかな?手を貸そう。」
「ありがとうございます・・・ん?その声、なんか聞き覚えが・・・ああっ!?」
立ち上がりながらいきなり大声を出した鈴に、その男性はビクついた。
「アンタ、この前の花屋のむさ苦しい店長じゃないの!?」
「如何にも、私は花屋を営んでいるが・・・む、そう言われると、私も君たちに見覚えがあるな・・・」
彼は鈴をまじまじと見つめ、それからセシリアに目を移した。
「おお、思い出したぞ!君たちは先日、あの銀髪の少女と共に来店していたな!まさか、この様な形で出会えようとは!」
そう言って喜ぶ彼に、鈴はいやいや、と突っ込む。
「いや、また会えたのは嬉しいんだけど・・・なんなのよ、そのダッサイ仮面?」
「随分な言われようだな!この仮面は先程、露店で売っていたのを購入したのだ!」
「はあ・・・でも、どうしてよりにもよって、その様な仮面を選んだのですか?」
セシリアの質問に、彼は笑って答える。
「うむ、良い質問だ。私がこれを手に取った時、脳に電流が奔ってな。これしかないと感じたのだよ。これぞまさに、私の武士道に対する愛の成せる業と言えよう!!」
そう豪語する彼に、恵は少し引いた様子で幾に話しかけた。
(あのおっさん、絶対武士の事を間違って認識してるでち)
(まあ、海外の人たちは結構勘違いしてるのね)
(着地の隙を誤魔化す為に、ステップしてクナイ投げるのが忍者、みたいな?)
(流石にそこまでのは無いと思うの)
彼女たちがひそひそ話していると、彼がスススッと二人に迫った。
「君たち!私は他にも仮面を買ったのだが・・・よければ如何かな?」
彼はそう言って、懐から複数の仮面を取り出した。
「寄るな変態」
「流石に、そんな仮面は趣味じゃないのね・・・」
「フッ・・・振られたな。」
彼の態度にイラっときた恵を、皆は必死に引き止めた。
「「「「あっ」」」」
そして、彼女たちは偶然にも、人混みの中ばったりと遭遇した。
「恵、アンタ達も来てたの?」
「うん、ちょっとね。色々事情があって、この一年二人を連れてきたんでち。」
「うんうん、今日の恵はいつもより気が利くのね!」
「おい幾、そりゃどーいう意味でちか?」
「いつもこうだったら、良いのにね。」
「いやいやあんた達、恵が普段からいい子ちゃんっていう姿を想像してみなさいよ。私は軽く鳥肌立ったわ。」
「うーん・・・あー、確かに似合わないの。」
「やっぱり恵は、いつもみたいにガサツな方が良いね。」
「よし。あとでじっくり話をしようね、お前ら。」
彼女たちが会場を歩き回っていると、射的の店を発見した。
「あ、射的があるのね。」
「セシリア、あんた狙撃得意でしょ?やってみなさいよ。」
「そうですわね・・・では、折角ですし。」
「むむっ!じゃあこっちからは、対抗馬として厳弥を出すの!」
「ほら厳弥、ご指名でちよ。」
「えー・・・私、射的苦手なのよねぇ・・・」
渋々引き受けた厳弥は、お金を払って銃を手に取った。
「いいかな?じゃあ、二人同時に撃つのね!」
「華、掛け声は頼んだ。」
「お任せあれ。ふふ、それでは・・・Feuer!」
それと同時に、二人は銃の引き金を引いた。一方の放った弾は見事景品を落とし、もう一方は虚しく景品をかすめていった。
「やりましたわ!」
「ほらぁ、やっぱ私には無理だって・・・」
弱音を吐く厳弥に、恵たちは激励を飛ばす。
「おーい、諦めたらそこで夜戦終了でちよ?」
「銃身が焼け付くまで撃ち続けるのね!」
「無茶言ってくれるわね・・・ま、いいわ。やってやろうじゃない!」
そう言って闘志を燃やす彼女だったが、その後も次々と、見事に外してしまうのだった。
そして、残すところは、最後の一発となった。
「うう・・・私、こんなに下手だったっけ・・・?」
「厳弥・・・代わろうか?はっちゃん、厳弥よりは出来ると思うけど・・・」
彼女はしばし考えたが、結局首を横に振った。
「・・・いや、決着は私の手でつけるわ。皆は手を貸さないで。」
「なかなか強情でちね・・・」
「てか、決着つける程の問題じゃないと思うのね。」
「う、うるさい!気持ちの問題よ、気持ちの。」
そう言った厳弥は、再び銃を構え直した。
(落ち着け私・・・この程度、アンタならいける筈でしょ?)
ア、オジチャン!イクモイッカイオネガイスルノ!
オーライ!ヨクネライウチナ、ジョウチャン!
(集中よ、集中・・・精神を統一・・・)
オイイク、オメーナニタクランデルンデチカ?
イヒヒ。シー、ナノネ♪
幾が何やらよからぬ事を考えている事など知らずに、彼女は目の前の目標に集中していた。そして・・・
(見えたっ!?水のひと雫!!)
彼女はすぐさま、引き金に当てた指に力を込めた。が、彼女が引き金を引く寸前に、目の前の標的が倒れた。
「え・・・」
「ふふーん、百発百中なの!」
厳弥が横を見ると、こっそりと参加していた幾が銃を構えていた。
「・・・幾、アンタ・・・人の獲物に何してくれちゃってんのよ!?」
「まあまあ、落ち着くのね。これは厳弥に贈呈しちゃうから。」
「別に、特段それが欲しかった訳じゃないわよ!一撃で仕留めちゃって・・・私のこれまでの努力はなんだったの!?」
「悲しいけど、これって早いもの勝ちなんだよね。」
「遅かったなぁ!って感じでちね。」
「いひひっ、これじゃあ道化なのね!」
「黙らっしゃい!さっさと500円返却しなさいな!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ伊東四姉妹と、それを見て笑う一年組の笑い声は、祭りの喧騒の中に響いた。
彼女たちが、お祭りを楽しんでいた頃。IS学園内の食堂に、千冬はリボンズを引き連れ訪れていた。
「あ、お二人共!今日も一日お疲れ様です!」
「ああ、お前もな。カレーを二つ頼む。一つは少なめにしてくれ。」
「分かりました!じゃあ、少し待ってて下さいね。」
衣恵が厨房の奥に姿を消すと、リボンズは千冬に声をかけた。
「・・・先に席を見つけておくよ、千冬。」
「すまんな、宜しく頼む。」
彼が席に向かった時と同じくして 、衣恵がカレーを持って厨房から戻った。
「お待たせしました!・・・って、あれ?リボンズさんはどうしたんです?」
「奴ならついさっき、席を取りに行ったぞ。ほら、あそこだ。」
千冬はそう言って、歩くリボンズの背を指差した。
「・・・最近元気無いですよね、リボンズさん。臨海学校の時に何かあったんですか?」
彼女は力無く歩くリボンズの背中を見て、心配そうな表情を浮かべた。
「心当たりはある・・・が、私も何度か聞いてはいるのだが、一向に答えてくれんのだ。衣恵、お前も聞いてみてはくれないか?」
「・・・分かりました、やってみます。」
衣恵は他に注文が無いことを確認すると、持ち場を一時的に他の者に任せ、食堂の隅の方に座るリボンズに声をかけに行った。
「こんばんは。ご一緒してもいいですか?」
「・・・衣恵か。ああ、別に構わないよ。」
「ありがとうございます!じゃあ、遠慮なく・・・」
彼からの了承を得た衣恵は、彼の正面に腰を下ろした。
「いやぁ、最近暑くなって来ましたねぇ。」
「そうだね・・・こうも暑くては、気が滅入る。」
「警備の仕事の時とか、もう暑くて暑くて・・・用務員の仕事はもっと大変だと思うんですけど、大丈夫ですか?」
「今の所は問題ないさ。しかし、水分補給を怠ると、すぐに倒れてしまいそうでもあるがね。今程用務員にならなければ良かったと思う時は無いよ・・・」
一見、普通にやりとりは出来ている様に見える。しかし衣恵は、いつもと明らかに違う点を見つけ出していた。
「・・・やっぱり。少しおかしいですよ、リボンズさん。」
「・・・何がだい?」
「リボンズさんって・・・私たちと話す時、大抵笑ってるんですよ。なんか余裕そうな笑顔ですけど・・・それが、リボンズさんのチャームポイントでもあるんですけどね。」
でも、と衣恵は続ける。
「最近・・・今だってそう。リボンズさん、まるで笑ってません。」
「・・・」
「何か、あったんでしょう?話してみてくれませんか?」
彼女の真剣な目つきに、とうとうリボンズは折れた。
「・・・分かったよ。全く、君にはかなわないな。」
「お節介な性分でして。それで、何があったんです?」
「成程・・・あの時、そんなことがあったんですか・・・」
彼女の言葉に、リボンズは静かに頷く。
「結局僕は、『自分なら出来る、アレに勝てる』という思いを、まだ捨てきれていなかったのさ。あれだけ、今度は変わってみせると思っていたのにね・・・」
彼がそう言って落ち込む一方で、衣恵は目をぱちくりさせながら、恐る恐る答えた。
「・・・あの、個人的な意見なんですけど・・・リボンズさん、少し考え過ぎだと思いますよ?」
「・・・何?」
リボンズは怪訝な表情をし、彼女を見た。
「その時感情に呑まれてたと言っても、リボンズさんは二人をその場に残したんでしょう?それって無意識に、二人の事を信じていたって事じゃないんですか?」
「・・・しかし、それは彼女らの実力ではなく、ガンダムの性能を信じていた、ともとれないかい?」
「いくら機体が高性能でも、それを操縦する人がダメでは、何も出来ません。使いこなすには、それ相応の実力が伴います。リボンズさんもそれを理解した上で、ラウラさん達に託したんでしょう?」
「それは・・・」
言い淀む彼に、衣恵は更に畳み掛ける。
「それに、ですけど・・・個人的に、傲慢さって、人間には必要な物だと思いますよ。」
「・・・何だと?」
その言葉に、彼は驚いた顔をした。
「えっと・・・傲慢ってつまり言うと、自信の延長線上の物じゃないですか。他人を見下しちゃうから、悪い意味にとられているだけで。勿論、自信過剰過ぎるのは駄目なことですよ?行き過ぎた自信は、視野を狭くしちゃいますから。でも、何をするにおいても、自信は必要だと思います。」
思わぬ事を聞かされた彼は、思わず頭を抱えた。
「・・・じゃあ、どうすればいい?僕は今まで、傲慢だった頃の自分を憎み、それを抹消しようと心掛けていた・・・しかし、それが人間に必要な物となると・・・僕は、一体どうすればいいんだ?」
「そうですねぇ・・・あ!じゃあ、こんなのはどうですか?」
何か思いついたらしい衣恵を、リボンズは藁にもすがるといったように見る。
「その傲慢さを、少し過剰程度の『自信』に戻しちゃえばいいんですよ。自分の力は信じてるけど、不安に感じたら、他の人の力もちゃんと信じて頼るって感じで。多分、それが理想形なんだと思います。」
「傲慢を、自信に・・・?」
「はい。馬鹿と天才は紙一重って言うでしょ?この場合、他人を信じるか否かが、その紙一重の差なんですよ。」
彼女はリボンズの目を見据え、真面目な様子で続ける。
「不安かもしれません。本当に信じて、任せてしまってもいいのか。自分が全部やった方が、皆は安全なんじゃないか・・・そう、思うかもしれません。」
「でも、信じてあげて下さい。あの子たちは・・・ラウラちゃんは、他でもないリボンズさん自身が育て上げたんでしょう?」
リボンズは黙って、彼女の言葉を噛みしめていた。
「・・・そうだね。僕も、教官と教え子という関係に、色々と甘えていたのかもしれない。彼女の実力をその目で見てもなお、僕はまだ不安だったのかもしれないな。」
「じゃあ・・・どうすればいいか、分かりますよね?」
彼女の問いかけに、彼はああ、と答える。
「今度こそ、彼女を信じてみせるよ。そろそろ・・・僕も、『弟子』離れをしなくては。」
その返答に、衣恵は嬉しそうに微笑んだ。
その後、すっかり普段の調子を取り戻したリボンズは、衣恵と談笑をしていた。
「ありがとう。君の意見はとても参考になった・・・僕がこれから、どうしていくのかを決める点においてね。」
「いえいえ、気にしないで下さい。同じ職場で働く仲なんですから。・・・ふふ。それにしても、リボンズさんにも悩む事ってあるんですね。」
「当たり前じゃないか。僕とて、結局は『人間』なんだ。悩み事の一つ二つはあるさ。」
「でもほら、リボンズさんって普段、あまり表情を変えないじゃないですか。それに、特にこれといった欠点とかも見せてなかったですし。だから私、リボンズさんって、もしかしてアンドロイドなんじゃないかって思ってたんですよ。」
それはあながち間違いではない為、リボンズはビクリと肩を震わせた。
「でも、そんな風に悩んで、自分を責めて、後悔していたなんて・・・こう言ってはなんですけど、私、少し安心しました。」
「安心?それはまた何故だい?」
「かつての自分が嫌で、何とか変わろうとするけど、それが上手くいかない。それでもなお悩み続けるって事は、それだけ真剣に、自分自身に向き合おうとしてたって事ですよね。なんだかそれって・・・とっても魅力的じゃないですか、人間くさくて。」
そう言って衣恵は、照れくさそうに笑った。
(・・・フ。かつて人間を見下していた僕が、人間くさいと言われるとは・・・昔の僕が聞いたら、激怒しかねないな。)
「人間くさい・・・か。フフ、それは褒め言葉として受け取っていいのかな?」
「ほ、褒めてますって!疑ってるんですか!?」
「ハハ、冗談さ。素直に嬉しいよ。」
「全くもう・・・自信が戻ってきたらきたで、意地悪になっちゃって・・・」
「これが本来の僕なんだ、君も素直に受け入れてくれ。」
「むう・・・まあ、良いですよ。丁度、笑顔も戻ったみたいですしね。」
そう言われた彼は初めて、自分が無意識に笑っていた事に気が付いた。
(成程・・・これか。これが仲間、というものか・・・中々いいものじゃないか。)
「あ、見て下さいあれ!花火ですよ、花火!」
「ああ。綺麗なものだね、この国の打ち上げ花火は。」
「あー、今頃あそこでは、お祭りやってるんだろうなぁ・・・リボンズさん、今からでも行きませんか?千冬さんも一緒に!」
「ふむ・・・いい考えだとは思うけど、もう遅いんじゃないかな?」
「ですよねぇ・・・ああ、行きたかったなぁ・・・」
夜空を彩る色とりどりの花火に触発される様に、彼の中の何かに火が灯る。
(刹那・F・セイエイ、ティエリア・アーデ・・・そういえば君達も、再結成された後と前では、えらく性格が変わっていたな・・・それもやはり、仲間を信じるということを覚えたからなのかい?)
彼は花火を見ながら、ふとそんなことを考えた。
(ならば、やってみせるさ。マイスターの中でも、特に人格に問題があった君達がやってのけたんだ。僕にできない筈がない。)
失礼な事を考えながら、彼は決意を胸に手を握りしめた。
おまけ
別の日。彼は千冬に勧められ、以前ラウラ達が訪れたショッピングセンターに来ていた。
「・・・情報によると、ここに良い花屋があるらしいのだが・・・まさか、コレか?まるで道場じゃないか。」
彼は疑念を抱きつつも、恐る恐る入店した。
「む、お客様か!?いらっしゃいませ、と言わせてもらおう!!」
(ブシドー!?)
・・・はい。というわけで、最新話はこのような感じです。
ではここで、今回ラウラと戦った厳弥のIS、もといISFについてもう少し詳しく説明します。
ISF-MS1 「伊168」
本来水中運用を想定していた「伊168」を、搭乗者である伊東 厳弥の要望に応え、陸上での近接戦闘を行えるよう改装した機体。本人の戦闘スタイルに合わせた調整の結果、陸上でもかなり機敏に動くことが可能となった。また、ISFの例に漏れず空を飛ぶことはできないが、その代わり跳躍力が大幅に強化されている。
武装
・タクティカルアームズ0
彩季奈が開発した多機能型兵装。普段は浮き輪の形をしているが、真ん中から分けることで、2対のブレードに変化する。強度は相当高く、盾としても機能する程。これは彼女がこれを開発する際、その形状から貫通力には期待できないと判明した時、「貫けないなら叩き壊せばいい!」との発想に至ったことから。よって、その破壊力には目を見張るものがある。
・ハンドガン
装填速度と連射性を強化したハンドガン。元は華の「伊8」に搭載された武装であったが、彼女から譲り受ける形で装備している。
・各種魚雷
用途に応じて使い分ける魚雷。
・
・ホーミング魚雷:相手を自動追尾する魚雷。操縦者に負担がかからない分、小回りはあまり利かない。
・BT魚雷:操縦者本人の意思によって操作可能な魚雷。イギリスのブルー・ティアーズの技術提供により作られている。
・BM魚雷:通常のものより、爆薬を多く搭載している魚雷。厳弥は主に、煙幕を張る際に使用している。
・
本機を始めとした全4機に搭載されており、相手のハイパーセンサーに反応されなくなる。水中にいる際は、自動的に発動する仕様となっている。厳弥はこれを要所要所で発動させ、相手を撹乱することを重点に置いて使っている為、常時の発動はしていない。
こんな感じです。
さて、これからの投稿ですが、勿論続けさせては頂くのですが、以前と違い結構不定期な更新になると思います。それでも、なるべく早く皆様にお届けできるよう善処するので、よろしくお願いします。
さて、次は学園祭の話ですかね。なるべく早く投稿できるよう、頑張ります!