お待たせしました! 宣言の一週間は少し越してしまいましたが、無事完成しましたよ!
今回も宣言通り、ゴリゴリの戦闘回となっております。ガンダム同士の対決も本格化しますので、どうぞお楽しみ下さい!
戦場と化したアリーナに突如現れたのは、彼らが以前臨海学校で出くわした、黒いガンダムであった。
「あらまあ、皆さんお揃いで。私が来る前から、随分と盛り上がっていたみたいじゃない?」
呆然とそれを見つめる彼らに、操縦者の女は軽い調子で話しかける。ただそれだけで、彼女はその場の流れを一気に支配した。
(間違いない...姿は違うが、奴は以前の! 何が変わった? どう仕掛けてくる?)
ラウラは注意深く、再び姿を現したガンダムの姿を観察する。最初の会敵から顕著に変化している点は、何よりその外見であった。
カラーリングこそ似通ってはいるが、スマートだった前回とは違い、上半身を中心に全体がマッシブになっている。特に肩に増設された装甲は、武士が羽織る甲冑を彷彿とさせた。
(それに、あの"剣"が無い? 両腕には、砲身が長いライフルの様な武装が搭載されている...アレで一夏を狙ったか)
見た目から推測される情報を整理した彼女は、冷静に新たな脅威に対処する。
「貴様、先日の敵性ガンダム・・・何故ここに来た? 何が目的だ。」
「そんなこと、教えるわけないじゃない。でも、貴方なら察しはつくんじゃないかしら。ねえ? お人形さん。」
女の相変わらずの物言いに、彼女は不快感を覚えながらも毅然と皮肉を返す。
「言いたいことはそれだけか? 機体のナリは変わったようだが、語彙はまるで増えていないじゃないか。
「あら、貴方に『人形』以外の言葉は必要? それとも、『
最早語る言葉はない、と答えるかのように、ラウラは無言で両手のビーム・サーベルを展開する。その様子に、相手は少し楽しそうな声色で応えた。
「へえ...前はお姉さんにおんぶにだっこの有様だったけど、今回はまだ面白そうじゃない。」
相手の背部に搭載されていた一対の三角形のユニットが、サブアームにより稼働し、両腕のライフルの下部に接続される。それが銃身と合体することで、全体がまるで歪な鉈の様な形状になった。
(あの武装...形状こそ違うが、以前GNフィールドを切り裂いた"剣"か? 留意しておかねば)
そうして彼女が臨戦態勢を整えると、シャルロットもその隣に立ち、敵のガンダムへと相対した。その両手には、銃火器の代わりとしてブレードが握られている。
「手伝うよ。弾薬はほぼ残ってないけど、斬り合いをする位は・・・」
「感謝する。だが、決して深追いはするな。奴の剣を実体剣で受けるのはリスクが高い。」
「分かった。なるべく受け流すようにするね」
二人が情報を共有する中、相手は興味深そうにシャルロットのラファールを見つめていた。
「貴方はフランスの...なら、丁度いいわね。彼の前に、イラプトの肩慣らしに付き合って貰うわよ」
彼女がそう言い放つと共に、戦闘の火蓋は切って落とされた。
※※※※※※※※
(...なんだ、この状況は? 一体、何がどうなっている)
亡国機業の少女は、目の前で繰り広げられている状況に唖然としていた。敗北が目前にまで迫っていた彼女だったが、突如として現れた正体不明のISによって、結果的に窮地を救われる形となっていた。
(あの機体は、奴等を攻撃対象としている・・・こちらの増援か? いや。あの
彼女は思考を巡らせるが、ついぞ思いつくことはなかった。そして、彼女にとって深刻なある事実が、再び頭の中を支配した。
(負けていた、あのままでは。奴が割って入ってこなければ、私は織斑 一夏に・・・!)
「
『M、状況を教えて頂戴。そっちで何が起きているの?』
「...乱入者だ。恐らく、我々とは全く別の目的で動いている。」
『乱入・・・? そう、分かったわ。こうも場が混沌としていると、これ以上は厳しそうね。作戦は中断よ、直ちに撤退なさい』
彼女の指令に、"M" と呼ばれた少女は歯噛みし、不快感を露わにする。しかし引き際を見誤るほど、彼女は未熟ではなかった。
「了解した・・・クソッ」
※※※※※※※※
更なる敵襲により場が混沌としている中、亡国機業の少女がどさくさに紛れてアリーナから去っていく姿を、セシリアは目撃していた。
(ラウラさんとシャルロットさんは、例の敵で手一杯。箒さんも、一夏さんが撃墜されてそれどころではないでしょう......私が!!)
「待っ・・・逃がしませんわよ!!」
思考が終わる頃には、彼女の体は既に動いていた。飛び去っていった少女を追い、ブーストを吹かして上空からフィールドの外へ躍り出る。
自分が、やらなければ。
決着を、つけなければ。
皆の尽力を、無駄にしない為にも。
心の中で反芻しながらも、自分を動かしているのはもっと単純な感情であることに、彼女は気付いていた。
(一夏さん...ごめんなさい。貴方をお慕いする身でありながら、今は貴方の下へ駆け寄る事よりも、こんな醜い感情を優先してしまいます)
(そして、リボンズさん...諭して下さった貴方にも、私は泥を塗ってしまう。本当に、申し訳ありません)
※※※※※※※※
その頃箒は、少女の後を追うようにフィールドから飛び去ったセシリアを確認した。
「セシリア!? く、たった一人で行かせる訳には......」
『・・・ってえ...なんなんだよ、アイツは』
「あ...一夏っ!!」
その声を聞いた箒は、攻撃を受け墜落した一夏の下へ駆け寄った。彼は苦しそうではあったものの、ISの絶対防御機能が働いたらしく、なんとか身体への影響は免れていた。
「一夏、一夏! 大丈夫か!?」
「なんとか・・・けど、シールドエネルギーがもう残ってねえんだ。『絢爛舞踏』を頼む、いけるか?」
圧倒的に格上の相手と戦った後だというのに、今度は規格外の存在を相手にするつもりか。箒は目をつりあげて怒り、一夏の両肩を掴む。
「馬鹿者! あれだけの戦闘をして、まだ動くつもりか!?」
「相手はリボンズさんを倒した奴だぞ!? そんなのを、ラウラとシャル二人に任せっきりにはできねえよ! それにセシリアだって・・・」
「確かに、そうだが...しかし!!」
「迷ってる暇なんかない、リボンズさんがまだ来れない以上、俺たちしかアイツを止められねえだろ! 繋ぐんだよ、今の俺の全部を使って、リボンズさんに!」
今の自分にできることを、という使命感に突き動かされる一夏と、ただ一心に彼の身を案じる箒の間では、議論は平行線に進むだけだった。
新たな一つの声が、彼らの間に介入するまでは。
「───いや、それには及ばない。君たちは、既に素晴らしい働きをしてくれた」
その声に、二人は一斉に振り向く。するとそこには、既に1.5ガンダムをその身に纏うリボンズの姿があった。
「リボンズさん、待ち侘びたぞ! 」
「リボンズさん! 皆は!? リボンズさんも...怪我とか、してないよな?」
「心配は無用さ。君たちの尽力あって、無事避難は完了したよ。ありがとう...そして、もう大丈夫だ。」
彼の答えに、一夏は安心し体の力を抜く。そして、彼らの現状を簡潔に説明した。
「亡国機業の奴は倒せそうだった。でも、今度はアイツが・・・あのガンダムが、急に乱入してきたんだ。」
「その様だ。箒、君は一夏と共に撤退を。これ以上、君たちが無理を重ねることはない。」
「分かった。一夏、良いな?」
「・・・ああ。今回も、リボンズさんの力になれねえのは悔しいけど...正直、これ以上雪片を振れそうにない。こんなんじゃ、足でまといにしかならないしな」
口惜しそうにする一夏だったが、その代わり、と次の言葉を続ける。
「今度は、勝ってくれよな。アイツに、あの時のリボンズさんとは違うって、目にもの見せてやってくれ!」
そう言ってニッと笑った一夏は、リボンズへ拳を突き出した。その意図を瞬時に把握した彼は、装甲に覆われた自身の拳をそっと合わせる。
「任せてくれたまえ。君は安心して、悠々と体を休めるといい。今日は千冬を存分にこき使っても文句は言うまいさ」
「へへ...かもな。じゃ、箒。」
一夏の目配せを確認し、箒は彼を抱き抱え、撤退の体勢に入った。
「了解した。ではリボンズさん、後は頼む」
そうして二人は、アリーナと施設を繋ぐ扉から姿を消した。その後ろ姿を、リボンズは慈しみを込めた目で見送る。
(...全く、君という人間は。君は既に、ここまで皆の力になっているというのに・・・周囲の者に恵まれ過ぎるというのも考え物だ)
後ほど一夏を労うことを心に決め、彼はラウラとシャルロットが戦っている仇敵へと目を向けた。
(やはり、あの突き刺さる様な情念は彼女の・・・全く、悪い勘はよく当たる)
※※※※※※※※
一方、ラウラはシャルロットと共に、ガンダムと戦闘を始めていた。主となって敵と斬り結ぶラウラは、何か有力な情報を引き出すべく、口を開いた。
「貴様の機体、随分と装備も変わっているな。
「そう言う貴方は、てんで代わり映えしないじゃないの。それに、こうなったからこその使い方もある。」
その物言いに疑問を覚える彼女だったが、直感的に鍔迫り合いを解き、その場から退避する。すると、先程まで斬り合っていた相手の得物から、粒子ビームが勢いよく放たれた。
「あら残念、もう少しで当たったのに」
「...
ラウラは、以前のGNソードはライフルを使用する際、刀身を折り畳んでいた事を思い返していた。
(あの予備動作が無くなったということは、格闘戦の際にいつでもライフルで虚をつける、ということか。成程、これは些か分が悪い・・・だが!)
それでも彼女は、あえて接近戦で勝負を挑む。それは相手の間合いが長く、小回りが効きにくい武器であることから、懐に潜り込む事ができれば付け入る隙がある、と考えた為だった。
(貴様を倒すのは、あくまで私である必要はない。今、貴様の手札を一つでも多く暴いてみせる! 曝け出せ、その鎧に隠すものを全て!)
ラウラはライフルから次々と放たれるビームを回避しながら、着実に相手との距離を詰めていく。そして、再び自分の間合いに持ち込むことに成功した。
「ハアッ!!」
彼女は相手のライフルを押し退け、がら空きになった胴体めがけてサーベルを叩き込もうとした。
しかしそれより前に、唐突に現れた2本の光が彼女を貫く。
「脚部に、サーベルだと...ッ!?」
「おめでとう、一つ見つけられたわね。でも、これ以上はくれてあげない」
思わず怯んだ彼女に、相手は容赦無く剣を振り下ろす。そこへ、共に戦っていたシャルロットが無理矢理に割り込んだ。
「ラウラ!!」
不意打ちにより痛手を負ったラウラを庇い、相手の剣をシャルロットが受ける。だが、彼女はすぐさま機体の性能差を思い知ることとなった。
「ぐっ、うぅ・・・!」
(なんてパワー...! ラファールはもちろん、さっきの機体とも訳が違う! こんなヤツを、リボンズさん達は相手にしてたの!?)
サイレント・ゼフィルスをも凌駕する、その圧倒的な力に彼女は戦慄する。万全の状態ではないことを加味しても、彼女のラファール・リヴァイヴが敵う相手では到底なかった。
「フランスの候補生さん、いいISに乗ってるわね。量産機であるラファール・リヴァイヴのカスタム機...なんともロマンに溢れた機体だわ」
女はシャルロットの機体を称えながら、GNドライヴの出力を上昇させる。背部から排出されるオレンジ色の粒子が増えると共に、剣はジワジワとラファールのブレードに食い込み、ヒビを生じさせた。
「でも、お生憎様。ロマンは現実に押し潰されるものよ」
そしてとうとう、彼女の得物は砕かれてしまった。その勢いのまま、剣はシャルロット本人を容赦なく切り裂く。
「ああっ!!」
「シャルロット!! これ以上は危険だ、退け!」
ラウラの警告も虚しく、シャルロットがもう一撃を食らいそうになったその時。どこからか放たれたピンク色のビームが、女に直撃した。
「チッ・・・セキュリティを色々と弄っておいたんだけど、思ったより早かったじゃない」
相手が一旦引き下がると同時に、リボンズが二人の所へ駆けつけ、武器を構えた。
「教官!」
「待たせたね、ラウラ。シャルロット、君もよく持ち堪えてくれた。後は僕が引き継ごう」
「全然、このくらいへっちゃらだよ...なーんて、口が裂けても言えないかな。ふふっ・・・」
ビームライフルを敵に向けて牽制をしつつ、彼は二人に激励の言葉を送った。二人は笑みを浮かべながらも、同時に悔しそうな声色で、彼に話しかける。
「教官、遺憾ですが...我々は、ここまでです。お力になれず、申し訳ありません」
「僕は臨海学校の時に戦っていないから、比較はできないけど・・・あの機体、もの凄いパワーを持ってるよ。気を付けてね」
二人がそのまま撤退しようとする時、ラウラは去り際に補足する形で、彼に自らの身をもって得た情報を伝えた。
「彼奴の両腕の武装は、銃剣の様な機構になっている模様です。また両足には、ビーム・サーベルが隠されていました。接近戦に持ち込む際は、お気を付けて。」
「隠し腕か・・・ありがとう、留意するよ」
そして、この瞬間。アリーナにおいて、ガンダム二機が再び対峙した。
※※※※※※※※
「真打ち登場ね。お久しぶり、リボンズ・アルマーク。あれから息災だった?」
「...ああ、お陰様でね。あれから自分を見つめ直すことができたのは、君が僕を打ちのめしてくれたからとも言える。その点では、君に『ありがとう』とでも言うべきかな?」
「あら、随分と素直じゃない? なら、一皮剥けた貴方にお願いがあるのだけど。」
エクシアはグンと彼に接近し、ライフルに接続された剣を構える。
「今一度、負けてくれるかしら?貴方の輝かしい進歩と、私が望む未来の為に」
彼女の言葉と共に振り下ろされた剣を、リボンズはビーム・サーベルで受け流す。いきなりの接近戦の最中、彼は敵のガンダムの情報を分析していた。
(彼女のエクシア...見た目は違うが、あの肩の形状からして、恐らく『アヴァランチエクシア』。粒子を解放すれば、トランザムを使わずとも驚異的な速度を引き出すことができる・・・厄介な物を引っ張り出してきたものだ)
彼は警戒しつつ、敵のエクシアから一旦距離を取る。それは大仰なライフルが増えているとは言え、彼女の機体がエクシアを元にしている以上、格闘戦を得手としている筈だと考えた為だった。
しかし。
相手はその先入観を、いとも容易く打ち砕く。
彼女は待ってましたと言わんばかりに、一切の躊躇なく右手のライフルを構える。そしてそこから放たれたのは、一夏を撃ち落とした時とは比べ物にならない程、野太いビームの砲撃であった。
(エクシアに、これ程の射撃兵装を? 一体何を考えて・・・)
エクシアとは不釣り合いな程の威力のビームに、彼は疑問を抱きつつも回避する。それを確認した相手は頭部装甲の奥で不気味に笑い、合わせてグンと右腕を振りかぶる。
するとその動きに合わせ、照射されているビームが鞭のようにしなり、リボンズを襲った。
「何...!?」
彼は咄嗟にシールドを構え、直撃を避ける。しかし、ビームはまるでサーベルの如く継続的にダメージを与え、照射が一旦の終わりを向かえた頃には、盾は見るも無惨な姿に変わり果てていた。
(GNフィールドを纏わせたシールドでも、ここまでの損壊を? それに、先程のビームの動きは......粒子の圧縮率や指向性を、自在にコントロールしている? だがあれ程の制御となると、相応のクラビカルアンテナが必要な筈だ。・・・まさか)
彼は信じられないといった表情で、敵の得物を見つめる。そんな彼の様子を察したのか、彼女は上機嫌で彼の抱いている疑念に答えた。
「気付いたみたいね。このライフルから放たれるビームは、下に接続されたクラビカルアンテナによって制御されている。更にアンテナ自体にも粒子を供給することで、耐久性を底上げさせて近接戦闘にも対応できるって仕組みよ。まあ、脳筋戦法と言われても仕方ないけれど。」
(・・・ならばあの武装は、最早ビームライフルという枠には収まらない。規模こそ比較にならないが、簡易的な『ライザーソード』と言ってもいい。アヴァランチユニットを素体に選んだ理由は速度ではなく、大型コンデンサーによる圧倒的な粒子保有量、という訳か...成程、一杯食わされたよ)
彼はその武装のコンセプトに、心の中で驚嘆する。だがそれを悟られぬ様、外面は冷静さを崩さぬ様に、感情を抑えて相手に話しかけた。
「やはり、か。それにしても、粒子の制御を司るアンテナを、まさか武器にしてしまうとは・・・随分と思い切った真似をするじゃないか。」
「フフ、何も初めてって訳じゃないでしょう? なんて言ったかしら......アクウオス、でしたっけ。アレにも、アンテナの機能を有した武器が搭載される予定だったんでしょ? 粒子のコントロールという訳ではなかったみたいだけど。」
「...その情報をどこから手に入れた、とは最早聞かないさ。そのエクシアも、『アヴァランチ』を元にしているんだろう? 君は一体何者なんだ。いやに僕らの世界・・・いや、『ガンダム』に関わる事象について知り過ぎている。」
例えば、リボンズが以前出会った、ミスター・ブシドーに酷似した花屋の店主。初めて見た時には度肝を抜かれたが、彼も結局は「よく似た他人」であり、単なるこの世界の住人であった。
だが、目の前の女はどうか。ガンダムに隠されたその姿を推し量る事はできないが、彼女は『あの世界』について、やけに詳細な知識を持っている。
(彼女は『イノベイド』という言葉を知っていて、前回僕をそう呼んだ。それに、ソレスタルビーイングの存在や、僕の慢心の結末までも。まさか、彼女も?)
彼は記憶を辿るが、ソレスタルビーイングにもアロウズにも、彼女の様な人物は存在していなかった。そして彼のそんな考えを見透かしたか、彼女はふっと軽く笑う。
「そんなに警戒しなくても、私はあくまでただの研究者よ。この世界で生を受けて、この世界で死ぬ運命にある、ちっぽけな存在に過ぎない。ただ───」
「ある日、運命的な『天啓』を受けた...そこだけは、違うかもね」
彼女は威風堂々と両腕を大きく振り上げ、再び野太いビームを銃口から放った。そこからリボンズに叩きつけるかの様に、勢いよく振り下ろす。
「くっ・・・」
シールドが使い物にならなくなった今、彼は二つのビームの奔流を掻い潜りながら、反撃の機会を伺う。暴れ回る大蛇の如く変則的なうねりを見せるそれらは、いつ気まぐれに彼の体を呑み込んでもおかしくはない。
「ふふふっ。ほぉら、避けてるだけじゃ終わらないわ、よッ!」
彼女の笑い声と共に、突如として砲撃が中断される。粒子の不足かと思われた次の瞬間、彼女の右側の銃口が激しく瞬いた。
(────ッ!!!)
背筋を奔った、電撃の様な悪寒に身を任せ、彼は全神経を回避に集中させた。すると一拍もしない内に、高密度の粒子ビームが、光の尾を引いて1.5ガンダムの背部バインダーを穿っていった。
「へえ・・・あの一撃を避けるなんて、大したものね。」
(今の速度は、狙撃・・・そうか、あの出力と粒子制御能力の高さならば、あんな芸当も可能な筈だ。そこに思考が及ばなかったとは......失態だね)
そう分析しながら、彼は自身の機体の現状を確認する。本体は無傷だが、身を守る盾は既にボロボロになり、バインダーは先程の攻撃でお釈迦となった。元々ライフルとサーベルだけのシンプルな武装構成だとは言え、あれ程の火力を誇る機体と対峙するには、今の状況は心許なく思えた。
「理解したでしょう? これはもう、
まるで勝ち誇る様に、彼女は高らかに声を上げる。それと対比して、リボンズは静かにその様子を見つめていた。
(彼女は、僕の機体の詳細な情報を既に持っている。だが『イラプト』と呼ばれるあのエクシアは、未知の部分があまりにも多い・・・馬鹿げた火力と言い、こちらの不利は歴然だ)
しかし、彼に負ける気などは毛頭無い。
かつてソレスタルビーイングのガンダムとして、戦争根絶の為にその力を振るい・・・最後には、
そのエクシアが、行動に何の意志も見出せない、破壊の徒の道具と成り果ててしまっていることに、彼は静かに憤りを覚えていた。
「・・・ならば、その機体は返してもらおう。君が何を言おうと、僕の考えは変わることはない。そのガンダムは『彼』にとって、変革の意志の象徴......君がそこに介在することは、僕が認めない」
「・・・へぇ、まだ言うのね。なら、やってみせなさいな!」
冷ややかな声と共に、再び砲撃が再開される。リボンズは機体を操作しつつ、なんとか逆転の糸口はないかと考えていた。
(彼女は恐らく僕の機体と、それで取り得るあらゆる戦法を把握している。ここから流れを変えるには、彼女の意表を突ける一手が必要だ。何か方法は・・・)
そこで彼はふと、この機体に残された
(そういえば・・・束から送られたフィン・ファングの試作品を、装備したままにしていたような。バインダーの機能が利用できなくなるからと、
その時。彼の脳内に、付随してある記憶が蘇る。それは初めてプロト・フィン・ファングを扱った時、セシリアとの会話の中での物だった。
BT兵器を
かつて平然とファングを扱い、マイスター達を苦しめたリボンズ一人では、行き着くことはなかったであろう考えだった。
(セシリア...あの時、君と話をしていて正解だった。あのアイデアを、早速使わせてもらうよ)
彼はほんの数秒間、口元を緩め彼女に思いを馳せる。そして瞬時に思考を切り替えると、先程とは打って変わって攻勢へ出た。砲撃を大振りに躱すと、相手の頭上から一息に突撃をかける。
「離れたと思ったら近付いて、忙しないわね! 」
彼女はアンテナをGNフィールドで覆い、接近戦用の剣として取り扱う。二人の得物がぶつかり合い、一進一退の攻防が続く。するとその最中、リボンズはあろうことか、残された数少ない武装であるビームライフルを投げ捨てたのだった。相手は思わず目を疑うが、その真意をすぐに知ることになる。
彼は自分の手から離れたライフルを、そのままビーム・サーベルで真っ二つに切り裂いた。次弾がチャージされていたのか、限界まで溜め込まれ圧縮された粒子が、爆発と共に一気に解放される。その膨大な粒子の嵐に、両者のレーダーが瞬間的に異常をきたした。
「何よ...ステルスフィールドのつもり? この程度じゃ、すぐに計器は回復──ッ!?」
彼女の言葉を遮る様に、リボンズは黒煙を突っ切り攻撃を仕掛ける。その一撃を難なく受け止めた彼女であったが、表情は困惑に染まっていた。
一方で彼の勢いは止まらず、遂にビーム・サーベルだけに留まらず、もう片方の腕のマニピュレーターをも用いて、格闘戦へと持ち込んだ。サーベルで相手の剣を牽制する傍ら、強く拳を握り締め、躊躇なくエクシアの顔を殴り付ける。装甲と装甲が幾度も激しくぶつかり合い、鈍い金属音がアリーナに響き渡った。
「ぐっ・・・何のつもり。 やけっぱちにでもなったの?」
彼がその言葉に応える代わりに、1.5ガンダムの背部スラスターから、急激に粒子が放出される。まるで翼の様に粒子が広がっていくそれは、GNフェザーと呼ばれる物であった。
「だから、意味が無いと言ってるの! そんなこけおどし、何の意図があって・・・」
それは、彼女の心の底からの疑問の言葉だった。彼女には彼の一連の行動の目的が、てんで掴めなかった。するとそこで、彼がようやく口を開く。
「意図、と言ったかい? ああ、確かに対ガンダム戦では、そこまで大きな意味を持たない。しかも今は、君と僕の一騎打ちだ。レーダーに影響を与えたからと言って、嫌がらせにもなりようがない」
リボンズは飄々とした様子で、彼女の言葉に応える。しかし彼の目線は、彼女の背後の空間にあった。
彼女の至近距離に展開された二基のフィン・ファングが、バレルの間で粒子を圧縮していく。最大出力で稼働するそれらは眩い光を発しているが、展開されているGNフェザーの輝きとジャミング効果により、彼女がそれに気付くことはなかった。
「簡単な話さ。君もまた、『あの世界』の情報に囚われている。お互い、もっと視野を広く持たねばね」
そして、その言葉と共に。
圧縮された粒子は遂に水風船の様に弾け、相手の全身を背後から焼き尽くした。
「な...あッ・・・!?」
彼女の目の前が、機体の損傷を知らせるアラートで埋めつくされる。それらはまるで血反吐の様に、べっとりと彼女の顔を赤く照らした。
「認めよう、君のガンダムは手強い。今の僕とこの機体では、勝つことは難しいだろう...だから、策を弄させてもらったよ」
「ぐッ・・・そう。貴方も隠し玉を持ってたって訳。確かに、予想もしなかったわ...でも、まだよ。私にだって、まだ奥の手はある!」
すると、エクシアの擬似太陽炉が出力を増し、同時に装甲が赤みを帯びていく。その機体の発光現象に、彼はよく覚えがあった。
「まさか......トランザムを!?」
「爆発させなさい、エクシア。どの世界でも変わることのない、人間達への怒りを、熱へと変えてッ!!」
彼女が吼え、エクシアの全身が真紅に染まる。機体はキイイイ、という悲鳴の様な甲高い音を立てながら、ツインアイを鋭く輝かせた。
(あの粒子放出量...間違いない。彼女は擬似太陽炉を暴走させることで、トランザムを実現させている。全く、無茶な真似を・・・!)
無数の残像と共に、エクシアはアリーナを縦横無尽に飛び回る。それと同時に、両腕のライフルから赤黒いビームを放ち、無茶苦茶に振り回した。
超速で移動するビームの光柱が、会場の地面を、防護シールドを無惨に溶かしていく。
(く...こうも滅茶苦茶だと、彼女の動きを読む所の問題ではない。バインダーさえ生きていれば、あの速度にも追い縋ることはできたかもしれないが・・・今は、時間切れを待つ他ないか)
彼はそう判断するも、そんな悠長な策を取っている暇は無いことを理解した。
彼女の移動に合わせて、大小の破片が上空から飛来してきている。リボンズの不意打ちにより大打撃を与えられた事に加え、無理なトランザムがエクシアをひっ迫し、機体が所々爆発を起こしていたのだった。
(不味い...あの様子では、機体が自爆を起こしかねない。 せめてエクシアだけは回収を・・・!)
決断したリボンズは、意を決して閃光の様に動き続ける彼女の下へ飛び立った。エクシアは依然として砲撃を続けており、地上は地獄絵図と化している。時折自身にも向けられるビームを回避しながら、彼は全速力で上へ上へと駆けた。
「ハァッ、ハァッ、ハッ......リ、ボンズゥゥッッッ!!!」
のこのこと近付いてくる彼の姿を確認した彼女は、激情に任せて自ら彼の方へと出向く。そうして機体同士の距離がぐんぐんと近付くことで、リボンズはより鮮明に、相手の状態を確認することができた。
その装甲は焦げ、トランザムによる加速と爆発により弾け飛び。
各部のスラスターからは、機体の稼働に合わせて炎が吹き上がり。
背部からは、暴走する擬似太陽炉より生み出される粒子が、際限無しに溢れ続けていた。
相手の顔が見えない
(───まるで、猛り爆ぜる火山の様だ)
エクシアの紅い一撃を、彼はサーベル一本で受ける。その強い衝撃に機体の各部が悲鳴を上げ、目の前に点々と赤いアラートが増えていく中でも、彼は一歩も譲らなかった。
一方相手は脚部の隠し腕を展開し、ビーム・サーベルを不意打ちでけしかけた。ラウラによりその存在を知らされていた彼は、紙一重でそれを回避し、カウンターでアームを両断する。だが、これによりサーベルでの防御はがら空きとなってしまった。
「これでぇッッ!!!」
「させないよ」
彼は半壊しているシールドを再び展開し、全力で振り下ろされた剣を防いだ。ミシミシという音が響き、盾は今にも決壊しそうな勢いにある。しかし、彼の表情に迷いはなかった。
「腕はくれてやるさ。君のその力の源を、絶たせてもらう!!」
盾が砕かれ、腕からスパークが奔るのもお構い無しに、彼は片腕で相手の攻撃を受け止める。そしてそのまま懐に潜り込み、粒子を吐き出し続けるエクシアの背中のスラスターに、勢いよくサーベルを突き立てた。
「・・・あ」
スラスターが激しい爆発を起こし、二人は勢いよく吹き飛ばされる。両者は激しくアリーナに叩き付けられ、息も絶え絶えになるも、ゆっくりと自らその身を起こした。
「・・・つ、ぎは。次こそは、貴方を斃してみせる。必ず......ッ!!」
爆心地となった彼女のエクシアは、酷い有様だった。
「...次があると思うのかい? もう、まともに飛ぶことすら難しい筈だ。」
彼の言葉に何も返さず、彼女は満身創痍の機体を浮上させ、雲の合間へと姿を消した。GN粒子を使用せずに、どうやって...と思ったのも束の間、彼は根本的なISの仕組みに気が付いた。
(そうか...機体の動力を、
彼はその機転を敵ながら賞賛し、先程彼女から感じた強いプレッシャーのことを思い返していた。彼にとってそれは、何らかの「強い意志」を持つ人物が発する物であり、あのエクシアの使い手は、本来ならそれに当てはまらない筈だった。しかし───
(あの気迫は...厳弥のそれに、似通っているものがあった。ただの戦闘狂かと思っていたが・・・君は何のために、
※※※※※※※※
(く・・・やはり、当たらない...!)
一方、単騎で襲撃者を追跡していたセシリアは、会場の外で空中戦を繰り広げていた。彼女は手負いの相手を仕留めるべく、次々とライフルを放つが、その尽くが回避されていた。
(絶対に、逃がしません。皆さんが...一夏さんが、死力を尽くしてここまで追い詰めた。それを無駄にさせる訳には!!)
かくなる上はと、彼女は唯一の近接武器である小型ブレードを展開し、相手に慣れない接近戦を仕掛ける。そこにはどんな手を使ってでも、相手に食らいつかねばという彼女の焦りが見て取れた。
「待ちな、さいっ!!」
勢いよく迫り来るセシリアに対し、少女もそれに応えてナイフを展開する。
「...何の真似だ。お前が得意とするのは長距離戦で、こんな
少女の悪意が再び自分一人に向けられ、セシリアは思わず体を硬くする。しかし、なんとか言葉を紡ぎ出そうと、己を必死に鼓舞し続けた。
(喋って。喋りなさい、セシリア! あの者の意識を、私に縫い付けるのよ!)
「っ...ええ、まさしく。貴方の飛び方が、あまりにもお上品で・・・まるで、可憐な蝶。さしずめ子猫の様に、悪戯をして差し上げたくなってしまいまして」
彼女は自分がイギリスに生を受けてよかったと、心の底から思った。
こんな危機的状況の中でも、皮肉を返せる胆力が残っていたのだから。
「・・・気が変わった。せめて貴様だけは、ここで終わらせてやる!!」
そして、それは幸か不幸か、一夏に実質的な敗北を喫した相手を強く刺激した。今の彼女には「弱者の強がり」こそが、屈辱を想起させる最大の地雷と化していたのだった。
「ハアッ!!」
「このぉっっ!!」
二人は機体の速度を上げながら、激しく己の得物をぶつけ合う。激しい音と火花をまき散らしながら、いつしか両者は《キャノンボール・ファスト》のレースを超える速度を叩き出していた。
「死ね! 所詮貴様は、
「あら、随分と必死ではありませんの!? そんなに恐ろしいものでしたか、弱者の意地は...私たちの、一夏さんは!!」
「〜〜〜ッッ! 黙れ、黙れぇッ!!!」
彼女は激昂し、修羅の如き様相で一斉にビットを放った。無数のレーザーが不規則な軌跡を描き、セシリアへと迫る。
(あんな精神状態でも、変わらず
彼女はバレルロールを繰り返し、追尾してくるレーザーを回避していく。だが相手はそれで止まらず、自らセシリアに急接近し、ナイフでの連続攻撃を与えた。
「ああっ...!!」
その攻撃により、セシリアのシールドエネルギーは危険な領域にまで迫っていた。もう猶予はない事を自覚した彼女は、あることを決断する。
(もう後は無い・・・覚悟を、決めなさい!!)
彼女は腹を括って、高速戦闘用にスラスターへと回していたビットを展開する。そして、それら全てを最大出力で稼働させ始めた。
「ティアーズ! フル・バーストッッ!!!」
閉じられていた砲門をレーザーでこじ開け、自壊すらも厭わない全開同時発射。
「それが貴様の切り札だと? 下らん!!」
とうとうISの防御を突き破り、相手の凶刃が彼女の肉体を襲う。ナイフにより切り裂かれた腕からは、どくどくと熱い血が流れていた。
「ぐっ...あああッ!!」
腕から全身へと広がる、突き刺された痛みと嫌な熱。頭が様々な感情でぐちゃぐちゃになる中、彼女はふと鈴との会話を思い出していた。
『ふーん、ビームを曲げる、ねぇ・・・それって、そこまでがむしゃらになってまで習得すべきなもんな訳?』
『え? ・・・ええ、当たり前ですわ』
『でもさぁ。射撃演習の記録、あたし達の中ではアンタが一番じゃない。そりゃあ、機体の特性上って言っちゃえばそれまでだけど。でもそんだけ当てられるんだから、わざわざ
その時はあまり納得がいっていなかった、彼女の言葉。それが今この時に、初めてセシリアに気付きを与えた。
(そう......でした。私はただ、「曲げる」ことを目的に、訓練を重ねて。目的と手段を、いつの間にか取り違えていた)
一夏や箒曰く、『明鏡止水』という言葉があるらしい。曇り一つない鏡の様に、澄み切っている水たまりの様に、余計な己の中の雑念を取り除く。そうすれば、落ち着き払った純粋な心で、事に臨むことができる...という意味であるそうだ。
それを聞いた時、セシリアは今一つその意味を理解し切れていなかった。「いつでも冷静でいるべし」程度の認識しか、持ち合わせていなかったのだ。
だが、今は────
(ああ...そういう事でしたの。ようやく理解できましたわ。『
彼女はもう、撃ち出したレーザーの行方に目を向ける事はない。その目はただまっすぐに、目の前の討つべき相手だけを見据えていた。
(
すると、彼女の無傷の左腕が、無意識に相手の方へ伸びる。その手はピストルを形作っており、人差し指の銃口は少女へと向けられている。
「は......?」
唐突に静まり返った彼女の行動の意図が掴めないのか、少女は間の抜けた声を出してしまう。
それに対しセシリアは、無邪気な子供の様な声で、たった一言を呟いた。
「ぱんっ」
その瞬間。
過ぎ去ったレーザーがまるで魔弾の如く、少女の体を背後から貫いた。
「ぐ、ガあっ・・・っ!?」
「ふふ・・・ご機嫌はいかが?
『姉』。
同じ親から生まれた、年上の女性を指す言葉。
その何の変哲もない言葉は、何故か少女の琴線に触れた。
「───ッ!! 私の、前で」
彼女は残った力を振り絞り、ナイフを握りしめセシリアに突撃した。
「
セシリアにはもう、それを回避する力は残っていない。彼女は静かに微笑み、潔く痛みを受け入れようとする。しかし、それが彼女を襲うことはなかった。
ナイフを突きつける敵の背後で、紅い髪をたなびかせた女が、まるで水着そのままのISを身にまとい、巨大な武器を振り上げていたのだ。
「セシリアちゃん、お待たせ。あんまり速く飛ぶもんだから、追いつくのに時間かかっちゃったわ」
背後から響いた声に少女は勢い良く振り向き、その姿を捉えて戦慄した。
「貴様は...ッ!?」
「言ったでしょ? 次は絶対に潰す、って」
淡々とした声と共に、彼女は容赦なくタクティクスアームズを振り下ろした。ドオッ、という鈍い破裂音と共に、少女の体は一瞬で遥か下の大地へと叩き落とされる。その圧倒的な一撃により、彼女はそこで気を失った。
※※※※※※※※
激しい連戦と負傷により、セシリアは力を使い果たし、ISを維持する気力すら失っていた。機体が待機状態へと戻る粒子と共に落ちていく彼女を、厳弥がすんでの所で受け止める。
「セシリアちゃん、大丈夫!? ......って、酷い怪我してるじゃない!! 早く看てもらわないと...」
「あ・・・いえ。問題、ありま...ううっ」
「その出血は大丈夫じゃないでしょ!? 待ってて、簡易医療キット持ってきてるから!
生身の状態となったセシリアを寝かせ、厳弥は医療キットを取り出すと、手早く傷口の処置に移った。医療用ナノマシンの塗布をする下準備の為の消毒に、彼女の口から苦悶の声が漏れる。それを聞いて、厳弥は申し訳なさそうに目線を下に向けた。
「ごめんね、セシリアちゃん...また、アイツの相手をさせちゃって。それにこんな怪我まで・・・」
救援が遅れてしまった事に責任を感じているであろう彼女に、セシリアは毅然としてそれを否定した。
「厳弥さん、どうか謝らないで下さい。私は自分の下らない意地の為、己を...皆さんを危険に晒した、ただの愚か者ですわ。実に愚かで、とっても未熟な小娘。勝ちはしたものの、これは皆さんの力のお陰・・・喜んでいい筈がありません」
「...そうね、そうかもしれない。それでも貴方たちのお陰で、こうしてアイツを倒すことができた。言わせてもらうわ、本当にお手柄よ。セシリアちゃん、皆」
その労いの言葉に、セシリアはようやく緊張が解け、表情を緩めた。そうして彼女の応急処置が終わると、厳弥はすっくと立ち上がり、倒れている少女の下へ近付いた。
「さて、と。それじゃあ一足先に、アイツの顔を拝んでやろうじゃない。ほんとはもっとぶん殴ってやりたい所だけど・・・流石に、派手な私刑はマズイしね。セシリアちゃんもそれでいい?」
「え...ええ、構いませんわ。私は、彼女に一矢報いただけでも十分ですから」
その過激な発言に戸惑いながらも、セシリアは彼女の案に賛同した。少女が狸寝入りをしている可能性を考え、厳弥が先んじて彼女の横に立ち、顔を隠すバイザーに手をかける。そして、それをゆっくりと外すと、そこにあったのは────
「・・・え?」
彼女の口から、あまりにも呆けた声が漏れる。
「う、そ? 何で? 何が、どうして、こんな...ッ!!?」
「厳弥さん? 一体何が・・・っ!?」
その狼狽えようを見て、セシリアも続いて少女の顔を覗き込む。次いで彼女もまた、衝撃のあまり言葉を失った。
「何で
というわけで、最新話でございました。如何でしたでしょうか。
自分の中では、ここまで長くなるとは思っていませんでしたが...いつの間にやら、ここまでになっておりました。これを見ると、前回と今回を連続2話投稿にしなかったのは正解でしたね・・・
今回登場したオリジナル機体である、「ガンダムエクシアイラプト」の解説は、次回の後書きに回そうかと思います。今回の文字数がだいぶ多くなってしまったので...ご了承ください。
次回は恐らく、戦闘の無い回になると思います。少しでも早く皆様にお届けできるよう頑張ります!