ISから出てきたのが「男」だった事に対する混乱が収まった後、一人の隊員・・・ラウラ・ボーデヴィッヒがリボンズに質問を投げかけた。
「その・・・何だ、『天使』を操縦していた者が男だったのは正直まだ信じられんがそれは後だ。問題は、何故お前が織斑教官と共に私達を指導するのか、だ。別にお前には何のメリットも無い筈。むしろ捕らえられる可能性の方が高い。それなのに何故だ?」
その質問に、隊員達が一斉にリボンズを見た。
「簡単な事さ。昨日のテロリストの様な輩が再び現れたら、正直今の君達の実力では対処は難しいだろう。」
その言葉に、クラリッサは少し憤りを感じた。しかし、彼の言っている事は事実。実際、クラリッサもそれは薄々感じていた事だ。今は良くても、いずれは限界が来る。
「くっ・・・ああ、その通りだ。」
「そこで、織斑教官と併用して君達を指導する事にしたのさ。そうすれば織斑教官の負担も減るし、君達もちゃんと実力が上がる。まさに一石二鳥だろう?」
そのどこか上から目線の言葉に、クラリッサは言い返した。
「待ってくれ、その我々を指導する云々の前に、君は実力はあるのか?君が指導する以上、我々よりも強くなくては話にならんぞ。」
「その点なら心配ないよ。今からそれを証明してみせるさ。という事で、僕と模擬戦をしてもらってもいいかな、クラリッサ副隊長。」
その挑発的な口調に、クラリッサは若干苛立ちながら、こう答えた。
「良いだろう。その代わり、両者手加減は無しだ。」
その答えに、リボンズは満足そうに頷いた。
「副隊長、何故あんな事を言ったのですか?」
ラウラは、先程の発言の真意をクラリッサに問い質していた。
「ラウラか・・・いや、もし彼が本物の実力者ならば、私如き倒すのは容易だろうと思ってな。」
「成程、副隊長自らあの男を試すのですか。」
「ああ、そういう事だ。隊長は今留守だが、まぁ問題は無いだろう。さて、私はツヴァイクの準備をするとしよう。お前はフィールドに戻っておけ。」
「はっ、了解しました。」
そして、勝負の時。
リボンズは、カタパルトで既に準備をしていた。
(クラリッサ・ハルフォーフ・・・この隊の副隊長。おそらく中々の手練れだろう。それに、彼女の専用機・・・シュヴァルツェア・ツヴァイクだったか。あれはおそらく第三世代。僕の0ガンダムは第二世代のISだ。性能も若干あちらが上だろう。だが・・・)
「機体の性能が、強さの決定的差ではないのさ。この勝負・・・必ず勝たせてもらうよ。」
その時、アナウンスが鳴った。
『クラリッサ副隊長、そしてリボンズ・アルマークの両者は発進準備をして下さい。まもなく模擬戦開始です。』
リボンズはGNドライヴを起動した。
『それでは、始めてください!』
「よし。リボンズ・アルマーク、0ガンダム、行く!」
カタパルトが火花を散らしながら押し出され、リボンズはフィールドへ出る。すると、前方に黒を基調としたISが佇んでいた。
「天使・・・いざ対峙してみると、やはり凄まじい程のプレッシャーを感じるな。」
「そうかい?僕としては、その黒い機体の方がよっぽど威圧感があると思うけどね。」
「フッ、そうか・・・そういえば、自己紹介がまだだったな。私は『シュバルツェ・ハーゼ』隊の副隊長を務めているクラリッサ・ハルフォーフだ。そしてこの機体は『シュヴァルツェア・ツヴァイク』。お互いに良い勝負をしよう。」
「丁寧な自己紹介感謝するよ。僕はリボンズ・アルマーク。この機体は『0ガンダム』だ。君達は『天使』と呼んでいるようだけどね。」
「そうか・・・それでは、そろそろ・・・」
「ああ、始めようか!」
先手を取ったのはクラリッサ。彼女は手に持ったサブマシンガンを構え、それをリボンズに向け発射した。リボンズは、それを流れる様に避けた。しかし、彼女はそれを分かっていたかのように再び銃口を構えた。
「させないよ!」
リボンズはその隙を見て、ビームガンのトリガーをクラリッサに向け、引いた。突如、桃色の閃光がクラリッサに向け放たれる。
「ビーム兵器だと!?くっ!」
彼女にとって予想外だった、光学兵器の使用。一瞬驚いた彼女だったが、すぐに持ち直してそのビームを回避した。
(くっ・・・まさかビーム兵器を搭載しているとは・・・だが、今の所近接武装は見当たらないな。まだ出していないのか、それとも
彼女は手首からプラズマ手刀を展開し、リボンズに斬りかかった。対する彼は背中にある筒の様な物を握り、それを引き抜いた。すると、その筒から桃色の光が発生し、それが剣の様な形状になった。
「ビーム・サーベルか、面白いッ!」
プラズマ手刀とビーム・サーベルがぶつかり合い、激しい火花が散る。両者はしばらく鍔競り合いの接戦を演じた。しかし、不意にクラリッサがプラズマ手刀を解除し、リボンズのバランスが大きく崩れた。その隙を突いて、クラリッサは近距離からサブマシンガンを連射した。多くの弾丸が0ガンダムの装甲を削り、火花が散る。
「これ以上は!」
リボンズはビームガンを連射し、クラリッサを遠ざけた。
(くっ、中々やるじゃないか・・・シールドエネルギーは今ので4割持っていかれたか。これは痛いね。だが、彼女があの武装を解除し僕のビーム・サーベルが空振った瞬間、僅かだが手応えがあった。おそらく相手も多少はダメージを受けているだろう。)
リボンズの予想通り、ビーム・サーベルは僅かにクラリッサを掠っていた。
(・・・掠っただけで2割減っただと!?これが光学兵器の力か・・・だが!)
「そうこなくてはな!」
クラリッサはサブマシンガンを投げ捨て、両腕のプラズマ手刀を展開した。そして、スラスターを全開にして一気にリボンズの前に躍り出た。対するリボンズも、ビームガンを投げ捨てビーム・サーベルを構えた。そして、再び両者は激突した。一撃、また一撃と、両者にダメージが加わる。
「久しぶりだ、これ程私を苦戦させた者は!」
「ああ、それはこちらもさ!」
しかし、リボンズがビーム・サーベル一本なのに対し、クラリッサはプラズマ手刀2対。徐々にリボンズが押され初めていた。しかし、突如ビーム・サーベルの刀身が消えた。
(なっ!?まさか、こんな時に粒子切れと言うのか!?)
「どうした?胴体が丸空きだぞ!」
その隙を見逃さず、リボンズをプラズマ手刀で斬り裂くクラリッサ。0ガンダムの装甲には、X字の傷が刻まれていた。
(不味い、残りシールドエネルギー3割・・・どうする?粒子が切れたからビーム・サーベルは使えないし、ビームガンも・・・ん?あれは・・・!)
彼の目には、先程投げ捨てたビームガンが、こちらに銃口を向ける形で落ちていた。
(この状況を覆すには、この方法しかない・・・だが、それが実現できる可能性はほぼ0だ。)
すると、クラリッサがゆっくりと彼に近づいて来た。
「ここまでか?リボンズ・アルマーク。確かに、あれだけの事を言える程の実力はあるが・・・」
彼女は再びプラズマ手刀を構えた。
(このままでは敗北してしまう・・・!仕方ない、成功するかは分からないが・・・!)
「これで・・・!」
彼女がプラズマ手刀を振り下ろすと同時に、彼は手に持っていたビーム・サーベルの柄を放り投げた。
「終わりだッ!」
プラズマ手刀がリボンズに振り下ろされ、皆がクラリッサの勝利を確信していた。しかし、
ズキュウウウウン!!
「な・・・んだと・・・?」
どこからか撃たれたビームが、クラリッサの背を直撃した。そして、シュヴァルツェア・ツヴァイクのシールドエネルギーが0になった。今、この勝負でビーム兵器を使う者など一人しか居ない。
「ま・・・まさか・・・?」
クラリッサはリボンズの顔を見た。そこで見た彼の表情は、どことなくいたずらに成功した子供の様な顔だった。
「フフフ・・・まさか、本当に成功するとはね・・・」
「貴様・・・一体何を・・・?」
「簡単さ・・・ビーム・サーベルの筒を、あそこに転がっているビームガンのトリガーに向けて投げた。それだけさ。」
クラリッサは、彼の言葉に絶句した。そんな芸当は、言うなれば数キロ離れた針穴に糸を通す位の事なのだ。それ程、精密な技術がなければ出来ないだろう。
「成程な・・・貴様には確かに、この隊を指導する実力はあると見た。・・・悔しいが、合格だな。これから宜しく頼む、リボンズ『教官』。」
「ああ、こちらこそ宜しく頼むよ。クラリッサ副隊長。」
この日、シュバルツェ・ハーゼ隊に異例の男性教官が着任した。
リボンズが魅せた、イノベイドでも難しいかもしれない芸当。一体これは何なのか・・・後、シュバルツェ・ハーゼ隊の隊長は次くらいに登場させる予定です。