書いているときに先の展開を妄想することに夢中になって筆が止まってしまう定期。
そんなことはどうでもよくて十二話です。
想定以上に長くなってたorz
拙い文ですが、どうぞよろしく!
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――――――『若葉の家』 野外キッチン――――――
「―――それではこれより、『第五十回スピードクッキング対決』を始めますわ。
現在、創さんが24勝24敗1分け、刀華ちゃんが24勝24敗1分け、全くの同点です」
「誰かさんのせいで決着がつかずじまいでしたからね」
創を睨みながら言う刀華。
創はそれをスルーし、カナタに問う。
「それで今回ってわけか」
「ええ」
カナタは創の言葉に返事をして、ルールを説明する。
「今回作っていただきますのは『カレー』。
第一回と同じ料理で、決着の品にはふさわしいといえますわ。
食材は第一回と一緒。
より早く料理を完成させた方が勝者となります。
『能力』の使用は認めます。が、
あくまでも『能力』は補助程度にとどめてください。
―――よろしいですか?」
「ああ、オーケーだ」
「いいですよ」
カナタの言葉に二人が肯定する。
「では、―――スタート!!」
両者にとって負けられない戦いが始まった―――。
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「―――ってわけさ」
創と刀華が料理対決を開始したとき、泡沫は三人に事情を説明していた。
「へー、二人が料理で対決ねぇ・・・」
「というか創先輩、料理できたんだ・・・」
「日下部さんは知らなかったのかい?新谷君が料理できること」
「創先輩と私は、いつも新聞部の仕事してるせいで作業しながらでも食べられる簡単なものしか食べてなくて・・・」
アハハ、と苦笑いする加々美。
「っていうか、フツウ料理勝負っておいしさを競うものじゃないの?」
ステラが問う。
「ああ、それね・・・。
きっかけは、二人のどちらがご飯を作る係になるかの話だったらしいんだ。
二人の料理の腕はほとんど同じ。
だからトウカは交代交代にしようって言ってたんだけど、ハジメが『俺の方が早く作れる。なら俺が作った方がいい』って言っちゃったらしくて・・・。
二人とも負けず嫌いだからね、はやさを競う料理対決に発展したのさ」
(((く、くだらない・・・!)))
三人とも同じ感想だった。
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――――――『若葉の家』 野外キッチン――――――
「そこまで!」
両者がカレーを作り終えたのを見て、カナタが言う。
「すごいですわ二人とも!
全くの同着です!」
二人に対して称賛の声をかけるカナタ。
しかし、
「まだだ、まだ勝負は終わってねぇ!」
「え?」
「・・・料理はデザートまでで『一食』。そうでしょうカナちゃん?」
二人は自分の足元にある段ボールを台の上に置いて宣言する。
「「『リンゴ早剥き対決』!!」」
「これで決着をつける!」
「望むところ!」
「え、えー・・・?」
二人のテンションについていけないカナタが困惑している。
「「カナタ(カナちゃん)!コールを!」」
「わ、わかりましたわ。では、スタート!!」
両者にとって負けられない戦いが始まった(二回目)。
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「結果―――、
創さんのタイム、4分32秒11。
刀華ちゃんのタイム、4分32秒10。
よってこの勝負、刀華ちゃんの勝利です!」
「・・・ゼェ、ハァ・・・」
「ハァ・・・、ハァ・・・」
勝負の結果を聞いた二人は互いに歩み寄る。
「・・・・・・お前の勝ちだ、刀華」
「・・・うん!」
ガシッ!!
二人は固い握手を交わし、決着はついた―――。
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自身と刀華が作った昼食を食べ終えた創は一人、施設の周りを散歩していた。
創はある場所で立ち止まる。
そこは、創が生まれ育った孤児院の建物だった。
「・・・変わってねぇなぁ、ここは」
建物を見上げながら懐かしそうに呟く創。
「お前もそう思うだろう?
後ろを振り向きながら、背後にいる人物に問いかける創。
「―――あら、気づいてましたの・・・?」
自身が背後にいることに気づかれていたことに動揺するカナタ。
「大方、俺を驚かせるつもりだったんだろう?お前がいたずら好きなのは、昔からだからな」
「・・・ふふっ、かないませんわね」
「当然だ。俺はかくれんぼじゃ負けなしだぜ?」
ドヤ顔になる創。
「むっ、それは違いますわ。わたくし一度創さんに勝ってますもの」
創の発言に反論するカナタ。
「あれはお前が俺を見つけられなくて泣きそうになってたから、仕方なく見つかってやっただけだっつーの。ノーカンだノーカン」
「な、泣きそうになんかなってませんわ!創さんこそ、そんな風に言っても、負け惜しみにしか聞こえませんわ!」
「なんだと?」
「なんですか!」
「「・・・・・・」」
無言で睨み合う二人。
「「ぷっ」」
突然、どちらとも吹き出し、笑った。
「ハハハ、このやり取りも久しぶりだな・・・」
「・・・ええ。また、こんな風なやり取りができるなんて思いませんでしたわ・・・」
そう言うカナタの目尻には、笑い疲れたのか涙が浮かんでいた。
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「―――創さん」
「ん?」
「創さんの『目的』、聞かせてはいただけないでしょうか?」
ひとしきり笑いあった後、カナタは真剣な表情で創に問う。
「・・・それを聞いて、どうする?」
カナタの言葉を聞いた創が聞き返す。
「―――わたくしも、刀華ちゃんも、御祓くんも、創くんがここを出て行った理由を知りたいのです。
生まれ育った家を出てまで、果たしたい目的とは何なのか。
そして、できることならば力になりたい
そう、思っていますわ・・・」
そう言うカナタの表情は泣きそうに、悔しそうに歪んでいた。
「・・・・・・」
創は沈黙を保ったまま動かない。
「・・・っ!」
カナタはその沈黙を『否定』と受け取った。
「・・・わたくしたちでは、力になれませんか?!」
カナタの声が悲痛を帯びる。
「何年も一緒に過ごしてきたのに・・・!
わたくしたちは所詮、赤の他人ということですか!?」
「それは違う」
カナタの言葉を即座に否定する創。
「え・・・?」
「お前らは『大切な家族』だ。
決して『赤の他人』なんかじゃない」
創の言葉に呆然とするカナタ。
しかし即座に我に返り、問う。
「なら・・・なぜですの?」
『大切な家族』ならば、話してくれるはず―――。
そんな風にカナタは思っていた。
「『大切な家族』だからこそ、力を借りるわけにはいかない。
これは、俺の問題だ」
そう言って創はカナタの横を通り抜ける。
創とカナタが背中合わせの形になる。
「・・・あー、あとはあれだ」
「・・・?」
カナタは創の方を振り向く。
後ろ髪を手で掻きながら照れくさそうに創は言う。
「なんつーか・・・、『意地』ってやつだよ。
お前らの前で情けない姿を見せたくないっていう、俺の個人的な『意地』だ」
「・・・・・・」
その言葉を聞いたカナタはしばらく呆然として、
「・・・ぷっ、ふ・・・ふふっ・・・!」
吹き出して笑い出した。
「・・・笑うなよ」
不機嫌そうな顔で創が言う。
「ふふっ・・・!ごめんなさい♪
でも、安心しましたわ」
「安心?なんでだ?」
「創さんは昔から変わってない、ということですわ♪
何でも一人で背負い込んで、決して弱いところをわたくしたちに見せない。
それでいて、自分は誰よりも元気に振る舞う。
あのころから全く変わっていませんわ」
口元に笑みをこぼしながらカナタは言う。
「でも、あのころと変わったところが一つだけ―――」
カナタは創の背中に向けて言う。
「―――あのころよりも少し、素直になってくれましたわ♪」
「・・・・・・」
創は沈黙している。
カナタの方から創の表情は見えないが、照れていることだけは分かった。
創が自身のほほを指で掻いていたからだ。
それは幼いころからの創の癖であった。
(そういうところも、変わっていませんのね・・・)
カナタは懐かしそうに微笑む。
「ま、まぁそういうわけだ!お前らの手は借りん、以上!」
「ふふっ、そういうことなら、わかりましたわ♪
でも、本当に困ったときは、わたくし共を頼ってくださいね?」
「・・・ああ、わかってるよ」
創は庭のある方へ歩き出す。
話はここで終わり、ということだろう。
カナタはもう少しこの場に残っていることにした。
もう少し、思い出を感じていたかったのだ。
■
――――――創とカナタが話していたのと同時刻――――――
黒鉄一輝は、子供たちにカレーをよそってあげている東堂刀華に見惚れていた。
「どうしたんだい後輩クン?
刀華に見惚れちゃって。
まさか、惚れたかい?」
一輝の様子を見た泡沫が追及する。
「い、いえ。違いますよ!」
一輝は必死に否定する。
「なんというか、今の東堂さんには、なにか・・・見逃してはならないものがあるような、そんな気がしたんです」
「ふぅん・・・」
一輝の返答に興味深そうに唸る泡沫。
「後輩クンはやっぱり鋭いね」
不意に、泡沫が一輝に向けて言う。
「え?」
「刀華のあの姿に見逃しちゃならないものを感じたんだろう?その感覚は正しい、ってことさ
あの姿こそが刀華の強さの源泉みたいなものだからね」
「強さの源泉?」
「ああ、昔から刀華を見てきたボクは、それをよく知っている」
「・・・・・・」
一輝は少し悩むそぶりを見せてから泡沫に尋ねる。
「あの、よければ教えてくれませんか。御祓さんの言う東堂さんの『強さの源泉』が何なのかを」
「・・・・・・いいよ」
一輝の問いに泡沫はしばし考え込んでから、言葉を紡ぐ。
「後輩クンは、生徒会室でハジメの話を聞いていたよね?」
「ええ、まぁ・・・。
四人がここの出身で幼馴染だ、という話ですよね」
「その通り。では後輩クンに問題だ!」
一輝をビシッと指差す泡沫。
「―――養護施設とは、どんなところ?」
「ええと、身寄りのない子供たちが暮らす場所、ですよね?」
「大正解!
だけどね、『身寄りのなくし方』にもいろいろあるのさ。
災害や事故で親を亡くした子供、親に捨てられた子供、・・・最悪なのは親に殺されかけて院政に引き離された子供、とかね」
「親に・・・ですか」
「そう。で、ここは当時、そんな複雑な事情を持った子供たちがいたこともあって、雰囲気が悪くなりかけていたんだ。
子供たち同士で、些細なことで傷付け合ったり、罵り合ったり、ね」
「悪くなりかけていた、って?」
「悪くなる前にあの二人が何とかしたのさ。
―――そう、ハジメと刀華さ。
二人は、二人なりの方法で雰囲気をよくしようとしていた。
刀華は、子供たちを笑顔にしようと頑張っていた。
子供たちに絵本を読み聞かせたり、院長先生の代わりにおいしいごはんを作ったりね。
院長先生は優しかったけど、料理だけはまずくてたまらなかったからねぇ」
「面倒見のいい人だったんですね」
「昔からね。人の世話を焼かずにはいられない
それはハジメも一緒さ。なんたって、刀華が作っていたと思っていた料理の半分はハジメが作っていたものだったんだからね。後で聞いたときに驚いたよ」
「・・・新谷君はどんな方法で雰囲気を良くしようとしていたんですか?」
「ハジメは・・・、子供たち同士で傷付け合わないように子供たちの怒りを自分に向けさせていた」
「え、それって・・・」
「そうさ。ハジメは自分から子供たちに嫌われるように振る舞っていたのさ。
子供たちの間で何らかのトラブルがあったとき、子供たちを叱り付け、怒鳴りつけ、子供たち同士で争うことをさせないようにしていた。
子供たちを怒鳴りつけているときのハジメは、鬼のようだったね・・・。言って聞かないような奴には暴力を振るったりもしていたよ。もちろん、手加減していただろうけどね」
「でもそれじゃ、新谷君と子供たちの仲は険悪なままじゃ・・・」
「それがそうでもないのさ。
ハジメに怒鳴られたり、殴られた子供たちはハジメを恐がる。
そして、刀華の優しさに触れるのさ。刀華の優しさに触れた子供たちはみんな、どうしようもなく『家族のぬくもり』というものを感じる。そして、笑顔を見せるんだ。
笑顔を取り戻した子供たちは、心に余裕ができる。心に余裕のできた子供たちは周りを見ることができるようになるのさ。
今まで自分の世界しか見れてなかった分、余計にね。
そして気づく。
今まで自分が何気なく使っていた部屋や、食器類などがきちんと整理されていて、床なんかもちゃんと掃除されていることに。
刀華は子供たちの世話で手が離せない。
ならば誰が?
決まってる、ハジメだ。
ハジメは、子供たちにも、刀華にも見えない場所で気を遣っていた。
子供たちがいい環境で暮らせるようにと、誰にも言わず一人で・・・。
一人が気付けば、あとは勝手に拡がって行く。
ハジメの気づかないうちに、子供たちにハジメの優しさは知られていた。
そこからさ、子供たちがハジメを慕うようになったのは。
―――見事に噛み合っていたのさ。ハジメと刀華、二人のやり方は。
後から聞いた話だと、二人とも、お互いのやり方を示し合わせたりなんかはしていなかったらしい。
刀華は本気で子供たちを笑顔にさせようとしていただけだし、ハジメは本気で子供たちに嫌われようとしていただけ。なのに、結果どちらも子供たちに慕われることになった。
だから、ハジメと子供たちの仲はとても良好なのさ」
「そんな・・・ことが」
一輝は泡沫の話を聞いてただ呆然とするしかなかった。
「親に殺されかけたっていうやつだってそうだ。そいつはどうしようもなく『壊れて』て、なんどもなんども暴れまわった。でも二人は決して見捨てなかった。二人のおかげで、そいつは人間らしい感情を取り戻すことができた。だからそいつは今でも二人に感謝しているし、二人のことが大好きなんだ」
その話口調は所々が一人称になっている。
先ほども『世話になった』と言っていたし、おそらく・・・その子供とは、泡沫自身のことなのだろう。
「そんなそいつがさ、いつだったか二人に尋ねたことがある。どうして二人はそんなに強いのかって。どうしても気になったんだ。二人とも―――ハジメはちょっと特殊かもしれないけど―――自分たちと同じ、親をなくした、親のいない境遇であるはずなのに、どうしてそこまで他人を愛せるのか。どうしてそこまで、他人に尽くせるのか。
ハジメはこう言った。
『俺は俺のやるべきことをしているだけだ。尽くしているつもりなんてないし、愛しているつもりもない。ただ、俺がやらねばならないことをこなしているだけ。それ以上でもそれ以下でもない』・・・とね。
全く素直じゃないよ。だったら、子供たちなんてほっとけばいいのに、自分から子供たちに絡みに行ってるんだからさ・・・。
刀華はこう言ったよ。
『自分はたくさん両親に愛してもらった。その思い出は今でも自分を支えてくれている。だから自分もみんなを笑顔にしたい。みんなの支えとなるような思い出を作ってあげたい。自分の両親が自分にそうしてくれたように。創くんが、ここに来たばかりの私にそうしてくれたように。人を愛することは、とても大切で大好きなことだから』・・・とね
そして、その言葉の通り、刀華は施設を出た今もずっと『若葉の家』のみんなに笑顔と勇気を与えている。
『雷切』として活躍し続けることで、親なしの自分たちでもすごい人間になれるんだ、ということをその身をもって示し続けている」
そこまで聞いて一輝も理解した。
東堂刀華の『強さの源泉』がなんなのか。
それは、『善意』だ。
自分のためではなく、第三者のために力を発揮する。
東堂刀華は、そういう少女なのだ。
「後輩クン、君は強い。正直予想以上さ。でも、刀華は別格だ。あの子と君では、『背負っているものの重み』が違うんだよ」
「・・・・・・」
一輝は泡沫の言葉に返答できなかった。
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カナタとの話を終え、庭に歩き出した創は、木の裏に人影を見た。
その人影を見ながら創は言う。
「・・・盗み聞きはいいが、対象にばれないようにしないとな?」
木の裏に隠れていた(つもりだった)人影はビクリとはね、おそるおそる、といった風に創の前に出てきた。
「い、いや~ははは・・・、みつかっちゃいましたねぇ・・・」
木の裏にいたのは日下部加々美であった。
「ったく、今の話聞いてもなんもネタになるようなもんはないだろうに」
「そんなことはないよ!『かくれんぼじゃ負けなし』とかいいネタになるネ!」
「やめろ。誰も得しないわそんなネタ」
くだらない話をしながら庭に向かって歩く二人。
~~~♪~~~♪
突然創の生徒手帳の、メールの着信音が鳴った。
創は生徒手帳を取り出しディスプレイを見る。
送信者は―――『選抜戦実行委員会』。
「お、次の相手が決まったか。どれどれ・・・」
創がメールを開きながらつぶやく。
「――――――!」
そしてメールの内容を見た瞬間、目を見開き、即座に後ろを振り向き、生徒手帳を加々美に渡して、歩き出した。
「ちょ、ちょっと創先輩!」
いきなりの創の行動の意味が分からずあたふたする加々美。
「え―――?」
しかし、渡された創の生徒手帳を見て凍り付く。
『新谷創様の選抜戦第十五試合の相手は、三年三組貴徳原カナタ様に決定しました』
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メールを見た創は、『相手』のもとに歩いていく。
向こうも同じようで、こちらに歩いてきている。
そして、対峙する『二人』。
「次の試合、よろしくお願いしますわ♪
そう言って右手を差し出すカナタ。
「・・・あぁ、こちらこそよろしく。
そう言って、カナタと握手する創。
―――この瞬間、二人は『幼馴染』ではなく『敵』となった。
■
――――――おまけ――――――
―――泡沫と一輝の会話 続き―――
「あ、そうだ」
泡沫が思い出したように言う。
「どうしたんですか?」
一輝は問う。
「いや、一つ思い出したことがあってね。
刀華は決してボクたちの前で泣くことはなかったんだけどね、一回だけあるのさ。刀華がボクたちの前で泣いたことが」
「そ、それはいったい・・・?」
「ハジメがいなくなった日」
「え・・・?」
「もちろん泣いたのは刀華だけじゃない。『若葉の家』にいる子供たちのほとんどが泣いたさ。院長先生ですら、目に涙を浮かべていたよ。
それだけ創は『若葉の家』の人にとって重要な存在だったのさ。
みんなその日は泣きまくってね、ご飯ものどを通らなかったほどさ。
でも次の日からは、刀華はいつも通りみんなを笑顔にするために頑張っていた。
一番つらいのは彼女だろうに・・・。
ハジメと一番長くいたのは刀華だ。
なのに、自分のことを後回しにして他のみんなを笑顔にしていた。
・・・あるいは、そうすることで悲しい気持ちを抑えていたのかもね・・・」
泡沫の顔に影が落ちる。
だがすぐにいつもの笑顔になり、語る。
「・・・今日のこれは、ハジメに『自分がどれだけみんなにとって大切な存在だったか』を実感させるためのものさ。・・・あいつがそれを、少しでも感じてくれていたらいいんだけどね」
そう言う泡沫の顔はどこか悲しそうなものだった。
「・・・さ。これでボクの話はおしまい。後輩クンも、子供たちと遊んでおいで」
「・・・はい!」
その返事に満足したのか泡沫はニカッと笑った。
いかがでしたでしょうか。
泡沫の話は入れるか迷いました。
シリアスっぽく書けているか、すごく不安です。
次回からは結構とびとびの展開で行くつもりです。
次回、「黒鉄の陰謀/創の決意」(仮)です。