そんなわけで十三話です。
今回、話はそんなに進みません。
拙い文ですが、どうぞよろしく!
■
――――――学生寮 創&加々美の部屋――――――
「むぅー・・・」
加々美は不機嫌そうに唸り声を上げていた。
「・・・・・・」
創は何やら考え込んでいる様子だ。
部屋の空気はあまりいいとは言えない。
「・・・やっぱりおかしいよ!いきなり黒鉄先輩が査問会に連れていかれるなんてさ!」
加々美が不機嫌な理由は、一輝が『赤座』と名乗る男に半ば無理やり連れ去られたことが原因だった。
――――――
つい数十分前、創たちが生徒会メンバーと別れ、学園に戻ってくると、アリスと珠雫が駆け寄ってきた。
そして手渡されたのは、一輝とステラのキスシーンが一面に載っている新聞だった。
さらにその新聞には、一輝の悪評が―――おそらくでっち上げられたものであろうが―――多く載っていた。
いわゆるスキャンダルというものだ。
そして、タイミングを見計ったかのように、黒塗りの車が学園の前に停まり、中から『赤座』と名乗る男が出てきた。
『赤座』とは、黒鉄家の分家の人間であり、『倫理委員会』の委員長をしている人物らしい。
『新聞の件のことで黒鉄一輝を『査問会』にかけることになった。同行を求める』
このような旨のことを赤座は言ってきた。
それは、ほぼ強制的なものだった。
もちろん、ステラは強く反対した。
しかし、当事者である一輝が、同行することを了承した。
一輝はただ『大丈夫』とだけ言って、赤座と共に車に乗って去っていった―――。
――――――
そして現在の状況に至る。
不機嫌なオーラをまき散らす加々美と、沈黙し続ける創。
「あの新聞記事だって、ほとんど捏造だし!黒鉄先輩があんなことするわけないじゃん!」
「・・・・・・」
創は沈黙している。
「いくらなんでも『倫理委員会』が来るタイミングが良すぎるし・・・、絶対裏に何かあるね、これは」
「・・・・・・」
創は沈黙している。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
創は(ry
「聞いてるの創先輩ッ!?」
言葉を発さない創に対してついに加々美がキレた。
「黒鉄先輩が連れ去られたんだよ!?
友人として何か言うことはないわけっ!?」
そう言って創に詰め寄る加々美。
そこまでされてようやく、創は口を開いた。
「・・・今回に限って言えば、完全に一輝とステラ嬢の落ち度だ。
油断しきってあんな写真を撮られたのが悪い」
創の言葉は一輝とステラの注意力のなさを批判するものだった。
「そんな言い方―――」
「それに」
創の言葉に反感を覚えた加々美の言葉は、創の言葉によって遮られた。
「わかっていたことだ。いつかはこういうことが起こると」
「・・・どういうこと?」
創の言葉の真意がわからず、聞き返す加々美。
「加々美。一輝が落第したのは何故だ?」
「そんなの、黒鉄家が学園に圧力を・・・ってまさか・・・!」
「そのまさかだ。おそらく今回の一連のことは黒鉄家の仕業だ。
一輝が七星剣武祭に出るのは許さない、って考えだろう」
「そんな・・・」
「だが」
「?」
「この程度のことは、一輝も予想できていただろう。
だからこそ、あいつは素直に付いていった。
―――いや、ステラ嬢との関係を下卑た思惑で穢されたことが許せない、ってのもあったのかね?
なんにせよ、これは一輝にとって『乗り越えられる試練』でしかないと思う。
だから心配なんてしてない」
「――――――」
加々美が呆然としている。
「・・・どうした?」
「いや・・・、黒鉄先輩のこと、よっぽど信頼してるんだな、って」
創は加々美の言葉にため息をこぼす。
「当たり前だ。あいつは俺の憧れだぜ?
この程度の試練、乗り越えてもらわなきゃ困る。
それに、俺も他人を心配できるほど余裕があるわけじゃない」
「・・・?なんで?」
加々美が創に聞き返す。
「・・・明後日の俺の対戦相手、誰だか知ってるだろ?」
加々美はつい数時間前のことを思い出し、返答する。
「貴徳原・・・カナタさんだよね・・・?」
「そうだ。
・・・俺は俺の『目的』のために負けるわけにはいかない。
なのに相手は学園のナンバー2ときたもんだ。
正直、かなりきつい戦いになると思う」
「で、でも幼馴染なんだし、弱点の一つや二つくらい、知ってるんじゃないの?」
「・・・あいつの能力の天敵は『
・・・まぁ、ほとんどの伐刀者の天敵ともいえるがな。
残念ながら、俺はそれ系統の手札を持っていない。
さらに言うならば、俺の知ってるあいつとは戦い方なんかも違ってるだろうな。なにせ俺は『
幼馴染だったことによるアドバンテージはほぼないといってもいいだろう」
「そう、なんだ・・・」
落ち込む加々美。
「だけどな」
「?」
「負けるつもりはない。
今だって勝つ方法を模索していたところだ。
・・・俺が負けると思うか?」
自信満々に言い放つ創。
「・・・ふふっ、創先輩らしいね」
創の言葉に笑みをこぼす加々美。
「一輝の件は今の俺たちにできることはないし、俺たちは俺たちのできることをしようぜ?」
加々美を諭すように言う創。
「・・・うん。そうだよね!何事も切り替えが大事だもんね!
黒鉄先輩のことは心配だけど・・・、創先輩が言うんだし、何とかなるよね!」
そう言いながら勢いよく立ち上がる加々美。
「じゃあ早速、明日の壁新聞を作っちゃおう!
もちろん手伝ってくれるよね?」
「はいはい・・・」
もはやその強引さにも慣れたのか、呆れながらも了承する創。
(・・・やっぱ
元気な加々美を見て、創は心の中でそう思う。
その顔には、笑みが浮かんでいた。
「えーっと・・・、【『
っと・・・」
「それはやめろっつったろお!?」
この後めちゃくちゃいつも通りに過ごした。
■
――――――深夜 創&加々美の部屋 二段ベッド 上段にて――――――
天井を見つめる創。
その思考は、カナタへ勝つ方法と、今日の一輝の件へと向いていた。
(・・・加々美に言ったことは本心だ。だが不安材料がないわけじゃない。
一輝の父親、黒鉄厳。その二つ名の『鉄血』・・・、もしそいつが秩序を重んじる人間だとしたら―――、
一輝にとって、最悪の展開になるかもしれない・・・。
・・・ま、そうならないことを願うしかないか)
創の予想は見事的中してしまうことになるのだが、創がそれを知ることはなかった・・・。
■
――――――選抜戦第15戦 第6訓練場――――――
『えーそれでは、お待たせしました!これより本日の第6訓練場・第一試合を開始いたしまーす!実況は私、月夜見が、解説は折木有里先生が担当します!
それでは選手の入場を行います!学生の身でありながら何度も『特例招集』で実践に参加し、様々な能力犯罪者組織の拠点を壊滅させた実績を持ち、ついた二つ名は『
アナウンスと同時に会場に姿を現すカナタ。
カナタが会場に姿を現すと決して少なくはない歓声が起こる。
『そして彼女に対するのは、『コピー能力』により数多の固有霊装を自在に操る異色の騎士!今までの試合をその変則的な戦い方で勝ち上がってきました!ついた二つ名は『
カナタに続いて会場に姿を現す創。
『折木先生はこの試合をどう見ますか?』
『ん~・・・新谷君にとっては今回の戦いが正念場かな』
『というと?』
『学園二位が相手だからね~・・・。新谷君がどんな手札を持っているのかはまだ分からないけど、貴徳原さんの『能力』もかなり厄介だからね~・・・。気づいたら会場が血まみれなんてことに・・・ゲホォッ!!』
『先生!会場の前に実況席が血まみれになってます!!
え、えー、そうこうしているうちに両選手が開始線につきました!』
二十メートルほど間合いを開けて、リング中央で向かい合う二人。
「参りますよ。―――『フランチェスカ』」
カナタは右手に自身の固有霊装を顕現させる。
「・・・・・・」
対する創は、固有霊装を顕現させることなく、そのまま立っている。
――――――『変幻自在』は試合開始直後まで、固有霊装を顕現しない。
これは周知の事実であった。
創は二回戦以降の試合では、試合開始直後まで固有霊装を顕現させていない。
普通の伐刀者ならば、スタートダッシュを早くするために試合開始前に固有霊装を顕現させておく。
本来ならば、試合開始直後まで固有霊装を顕現しないというのはデメリットにしかならない。
『能力』など、勝ち上がっていけば自然と判明してしまうのだから隠しておく必要もない。
だが創は違う。
創の『能力』は『コピー能力』。
それは複数の『能力』を持っているのと同義である。
つまり『何が出てくるのか分からない』、それこそが『変幻自在』の戦闘スタイルである。
これまでの対戦相手はその戦闘スタイルについていけず、裏をかかれ敗北していた。
しかし今回の相手は学園序列二位の圧倒的強者。
『変幻自在』が学園二位相手にどのように立ち振る舞うのか、それを見に来た観客も少なくはない。
『それでは皆さんご唱和ください。―――LET’s GO AHEAD!!』
そして今、戦いの火蓋が切られた―――。
いかがでしたでしょうか。
最初は解説役を西京先生にしようとしたんです・・・。
でもあの人書きづらいんだもん!それに比べてユリちゃんの書きやすさと言ったら・・・。
次回は創VSカナタで一話使う予定。
誤字・脱字・質問等待ってます。