落第騎士の英雄譚 ~無銘の騎士~   作:カイダー

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第3話です。

8000字・・・、なんでこんなに書いちゃったんだろう・・・。

主人公が能力を発動します。勘のいい人ならこの話で主人公の大体の能力が分かると思います。

拙い文ですがどうぞよろしく!


第3話 ショッピングモールの悪夢

―――休日の朝―――

 

俺、加々美、一輝、ステラ嬢の四人は正門で珠雫嬢と有栖院(ありすいん)を待っていた。

これから六人でショッピングモールに映画を見に行くらしい。

最初は一輝と珠雫嬢のみの約束だったらしいのだが、ステラ嬢が『自分もついていく!』と言い出した結果、

 

『なら、新谷君たちもどうだい?』

 

と、一輝が提案してきたのだ。最初は断ろうと思った、思ったんだけど・・・

 

 

 

 

 

 

―――昨日 学生寮 創・加々美の部屋―――

 

「行きましょう!」

 

 

一輝からの誘いを断る旨を言うと加々美が即座に言葉を返してきた。

 

「え、いやだから断るって―――」

 

「先輩」

 

 

俺の言葉を遮って、加々美はこちらに寄ってきて上目遣いでこちらを見てきた。

相変わらず距離が近い。

 

「先輩、私――もっとみんなと仲良くなりたいんです・・・。黒鉄先輩からのお誘いはその絶好の機会だと思ったんですが・・・、先輩がどうしてもって言うなら・・・」

 

 

そういって彼女は俯いてしまった。

俯く寸前に見た彼女の目尻には・・・、涙が溜まっているように見えた。

 

―――そんな考えがあったのか。

 

てっきり『ノリだけで行こうとしているのでは』と思っていた俺は、自分のルームメイトが普段見せない姿に戸惑っていた。

 

―――理由はどうあれ、男が女の子を泣かせるわけにはいかないよな・・・。

 

そう思った俺は、

 

「・・・・・・分かった。行く、行くよ、行けばいいんだろ」

 

 

と、一輝の誘いを受けることにした。すると―――

 

「ありがとうございます♪では早速明日の準備をしましょう」

 

 

さっきまでのしおらしさはどこへやら、満面の笑みでそんなことを言ってきた。

 

「くふふ・・・、これはどんな面白いネタが舞い込んでくることでしょうか・・・!」

 

 

俺から離れ、不気味なオーラを出しながら笑っている彼女を見て悟った。

 

―――ハメられた、と。

 

「てめっ、騙しやがったな!?」

 

 

すぐに非難の声をあげるが―――

 

「ふっふっふ!泣き落としで情報を引き出すのは記者の基本ですよ?騙されるほうが悪いんですっ♪」

 

 

ニヤニヤした顔でそんなことを言われた。

悔しい。何が悔しいって、こいつの演技にまんまと騙されたことが、とてつもなく悔しい。

 

「く、くそっ・・・!」

 

「それに―――」

 

「?」

 

「全部が全部ウソ、ってわけじゃないですよ。仲良くなりたいのは本当ですし」

 

 

そう言って笑った彼女を見て俺は思った。

 

―――まぁ、結果オーライってやつ・・・なのか?

 

「ったく・・・明日の朝、正門に集合だそうだ」

 

「はーい♪」

 

 

伝えるべきことを伝えたので寝るために、俺はニ段ベッドの上に登る梯子に足をかけた。

 

「あ、ところで先輩」

 

 

―――しかし、加々美に呼び止められた。

 

「ん?」

 

「先輩は、明日何を着ていくおつもりで?」

 

「ジャージ」

 

「即答ですか・・・」

 

当たり前だ。

 

―――ジャージは至高の服だ。

 

厚すぎず、薄すぎず、

 

それでいて動きやすい。

 

さらには寝間着としても機能させることができる。

 

これほど完璧な服が他にあるだろうか?いや、ない。(反語)

 

ゆえに―――

 

「俺に、それ以外の選択肢はない」

 

「ドヤ顔で言うことじゃありませんよ、それ」

 

「ほっとけ。」

 

「はぁ・・・、明日はちゃんとした服着てくださいね?」

 

「なぜ?」

 

「ジャージの人と一緒に街を歩きたくはないですからね」

 

「俺は気にしないが」

 

「私が気にするんですっ!」

 

「そうか。・・・いやしかし、俺、私服は()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・はぁ!?え、マジですか!?」

 

「大マジだ」

 

「確かに『いつもジャージでいるなぁ』とは思っていましたが・・・、これほどとは・・・!」

 

「そこまでいうことか?・・・まぁそういうわけで、俺は明日もジャージを着ていくからそのつもりで」

 

 

そういって、再びベッドに行こうとする。

 

「ちょっと待ったあああ!!」

 

「ぐえっ」

 

すると、後ろから思いっきり服(ジャージ)を引っ張られた。

く、首が・・・

 

「こうなったら仕方ありません、私の私物を貸します。ですからちゃんとした服を着てください!

明日は珠雫ちゃんのルームメイトの有栖院さんも来るそうです。私の調べでは、有栖院さんの服のセンスはとてつもなくいい、とのことです。このままだと先輩『皆がオシャレしてる中一人だけジャージ』ってことでかなり浮いちゃいますよ!?」

 

 

自分のバッグから男物の服を取り出しながら、加々美はすごい剣幕で捲し立ててきた。

 

「別にそんなの気にしないんだがな・・・。・・・というか待て、加々美が男物の服を持っていることもびっくりだが・・・、なんでそんなこと知ってるんだ?」

 

珠雫嬢のルームメイトが来るとかなにそれきいてない。

 

「・・・知りたいですか?」

 

そう言った加々美の表情はとても真剣なものだった。

 

「・・・・・・やっぱいいです」

 

世の中には知らないほうがいいこともある。そう思った瞬間だった。

 

「というわけで、今から私が先輩の服をコーディネートしてあげますね♪覚悟してください!!」

 

「え、そんなの聞いてな―――」

 

「問答無用!!」

 

「ちょ、やめ、服くらい自分で脱げr、アッーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

―――そして現在に至る、と。

ちなみに今の俺の服装は、赤い薄手のジャンパーに紺のジーンズ、ジャンパーの下は黒のタンクトップ、という具合である。

昨晩のことを思い出し、ふと隣にいる加々美に目を向ける。

 

「?」

 

自分を見ている俺に気づいて小首を傾げる彼女の服装は、山吹色のセーターにデニムのホットパンツ、という具合だ。

・・・女性がスカート履いているのなんかを見ていつも思うんだが、寒くないのかね?

 

 

そんなことを考えていると、二人の人影がこっちに近づいてきた。

 

一人は一輝の妹、珠雫嬢。

 

もう一人は―――

 

「んもう珠雫、ちょっと急ぎすぎよ。それで転んだらせっかくのメイクが台無しでしょ?」

 

「「「「え?」」」」

 

俺、加々美、一輝、ステラ嬢は一斉に固まった。

 

なぜなら―――

 

珠雫嬢のルームメイトと思われる人物―――有栖院は、口調こそ女性だがその容姿は完全に男だったからだ。

 

 

「うふふ、初めまして。珠雫のルームメイトの有栖院 凪(ありすいん なぎ)よ。アリスって呼んでね♪」

 

有栖院の自己紹介に対し、一輝とステラ嬢は動揺を隠せなかった。

 

「(ねぇちょっとイッキ、どういうことなのコレ)」

 

「(僕に聞かれても困るよ・・・)」

 

まぁ無理もないな。こういう人に会うのは初めてだろうし。

 

「「え、えっと・・・よろしく」」

 

ぎこちないながらも二人は有栖院と握手を交わす。

 

有栖院がこちらを向いたので、俺も自己紹介することにする。

 

「一輝の友人の新谷 創だ。ちょっと聞きたいんだが・・・」

 

「なぁに?」

 

「有栖院はその、・・・いわゆるオカマ、というやつなのか?」

 

俺は疑問を解消すべく、有栖院に質問した。すると、

 

「違うわ。あたしはね、男の体に生まれた乙女なの」

 

と返ってきた。

 

「(ど、どう違うんだろうステラ?)」

 

「(アタシに振らないでよ!)」

 

二人の動揺は加速したようだ。

 

―――ふむ。しかし男の体に生まれた乙女、か。本人がそう言うのであれば俺に否定できるはずもない。特に、()()()()()()()には。

 

「・・・そうか。ならば君のことはアリス嬢と呼ばせてもらおう」

 

「あ、じゃあ私はアリスちゃんって呼ぶね!」

 

「あら、あなたは?」

 

「あ、私、日下部 加々美っていうの。壁新聞部の部長やってます!」

 

「あら。壁新聞部ってことは、校内の噂に詳しかったりするのかしら?」

 

「ええ、それはもちろん・・・」

 

「あらやだ話合いそう♪」

 

「ふふふ」

 

「うふふ」

 

「「うふふふふふふふふ・・・」」

 

 

・・・なにやら危険なコンビが誕生してしまったようだ。

 

「そんなことより、そろそろ行きましょうお兄様♪」

 

「うわっ、ちょ、珠雫!?」

 

「ちょっとシズク!アンタいきなり何を―――」

 

そんなやり取りの中、珠雫嬢が一輝の腕に自分の体を絡めて歩き出し、ステラ嬢もそれに続く。

 

「んもう珠雫ったら、せっかちねぇ・・・」

 

そう言いながらアリス嬢も歩き出す。

それに続いて俺も歩き出そうと――

 

「えいっ」

 

むにゅっ。

柔らかな二つの弾力が俺の腕に押し付けられた。

 

「・・・・・・何してる」

 

「えへへ、珠雫ちゃんのマネですっ♪」

 

「・・・歩きづらいんだが」

 

「少しくらいいいじゃないですか。ほら、早くいかないと置いてかれちゃいますよ?」

 

「・・・・・・少しだけだからな」

 

「はーい♪」

 

・・・加々美に腕をとられたまま、俺は一輝たちを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

―――ショッピングモール―――

 

目的の映画が始まるまで時間があったので、俺たち一同はフードコートでクレープを食べていた。

 

女性陣はいかにも『女子っぽいトーク』をしていた。

当然そこに紙とペンを持った加々美も参加している。・・・待て、その紙とペンどこに持ってた。

 

「珠雫、ちょっと」

 

「?はい?」

 

そんな中、一輝は珠雫嬢のほっぺについたクリームを指ですくい、

 

「せっかく綺麗な恰好してるんだから、気を付けないと」

 

―――何のためらいもなく指についたクリームを舐めとった。

 

Fuuuuuu!

流石イケ☆メン、やることが違うぜ!

 

「ッッ~~~~~~!」

 

珠雫嬢は恥ずかしくなったのか、俯いてしまった。

 

それを見ていると、

 

つんつんっ

 

肩をつつかれたので向かいの席を見る。そこには――

 

「創先輩♪」

 

――これ見よがしにほっぺにクリームを付けた加々美がいた。

 

「・・・ほっぺにクリームついてるぞ」

 

「取ってください♪」

 

「だれが取るか。自分でとれ」

 

あれはまだ俺にはハードすぎる。

 

「もー、女心がわかってないですね先輩は~」

 

「どうとでもいえ」

 

「ヘタレ」

 

うぐ。

 

「チキン」

 

「あの、もう少し優しめで・・・」

 

「ふふふ、いやです♪」

 

 

 

 

そのすぐ後に、ステラ嬢が口周りいっぱいにクリームを付けているのを見た一輝がタオルを取りに行ったことで、場の空気がだいぶ和んだ。

ステラ嬢・・・、いや、何も言うまい・・・。

 

 

 

 

 

 

―――目的の映画を観る前に、一輝とアリス嬢がトイレに行ったので俺、加々美、ステラ嬢、珠雫嬢は一輝たちが帰ってくるのを待っていた。

 

その時、事件は起こった。

 

突如鳴り響く銃声と悲鳴。

どうやらテロリストがこのモールを占拠したらしい。

一般客もいる手前、不用意に固有霊装は使えない。

 

よって、俺たちは一般客と同様に、人質としてフードコートに集められた。

 

 

 

 

―――まずいことになった。

 

フードコートに集められた人質とテロリストの数、そして奴らの武装を見て俺はそう思った。

 

―――奴らは全員銃器持ち。下手に動けば人質が危ない。どうするか―――?

 

「お母さんをいじめるなーーーーっ!!」

 

 

そんなことを考えていると、一人の小学生くらいの少年がテロリストの一人にアイスクリームを投げつけた。

 

「(っ!?あのガキ・・・、バカヤロ・・・ッ!!)」

 

「こんのガキがぁぁーーーっ!!」

 

アイスクリームを投げつけられたテロリストは激昂し、少年を蹴り飛ばし、銃に手をかけた。

 

「(・・・クソッ!!)」

 

俺は我慢できず飛び出そうとする。

 

「(待って)」

 

しかしステラ嬢に止められる。

 

「(ステラ嬢!?何を・・・!?)」

 

「(アタシが出る。

アタシの正体はいずれバレるし、問題ないわ。

三人はいざって時のために隠れてて頂戴)」

 

そう言ってステラ嬢はテロリストから少年を守る形で飛び出した。

 

 

 

 

―――ステラ嬢が飛び出した後、俺はすぐさま珠雫嬢に話しかけた。

 

「(珠雫嬢、結界を張れるか?)」

 

「(今張っているわ。アリスにもそのことはメールしてある)」

 

愚問だったようだな。

流石は珠雫嬢、こんな至近距離にいても、結界を張っていることに気づけないとは。

 

「(結界ができたら合図をくれ、俺も出る)」

 

珠雫嬢は無言で頷いた。

 

 

 

 

―――ステラ嬢がテロリストの頭と思われる男――ビショウに脅され服を脱がされているときも、俺は見ていることしかできなかった。

 

怒りで頭が沸騰しそうになる。

 

おそらくは、一輝も同じ気持ちだろう。

 

 

 

 

―――そうしているうちに、どうやら結界が出来上がったようだ。

 

「(できたわ―――)」

 

珠雫嬢のその言葉を聞き、俺もすかさず自身の固有霊装を展開する。

 

(かたど)れ。『無銘・マッハグリード』―――!」

 

「『障破水蓮(しょうはすいれん)』!!」

 

珠雫嬢の伐刀絶技(ノウブルアーツ)『障破水蓮』の発動と同時に俺は結界の範囲外へ出た。

 

『何ィっ!!??』

 

ビショウ含めテロリストたちが驚いている。伐刀者はステラ嬢だけだと思っていたらしい、そこが隙だ!

 

「(『三倍速(トリプル)』―――)当て身」

 

トンッ

 

「ぐえっ」

 

テロリストの大半が上空の一輝に向けて銃を撃っていたため、一人目は簡単に倒せた。

しかし、一人が倒れたことによって十数人のテロリストが俺に気づき、銃を撃ってきた。

 

―――流石にこの数は・・・、使うしかないか

 

「『五倍速(フルドライブ)』―――!」

 

 

―――瞬間、俺の周りの世界がスローになる。

 

銃弾も、テロリストたちの動きも、上空にいる一輝の動きでさえも。

 

俺は、銃弾の雨を掻い潜るようにしてテロリストたちに近づき、一人ずつ確実に気絶させた。

 

 

―――ざっと八人ほどだろうか。俺が倒した人数は。

 

『五倍速』の反動で、服や体がボロボロになりながらも、冷静に周りを見る。

 

他の奴らはアリス嬢やステラ嬢が倒してくれたらしい。

 

こちらからは、珠雫嬢がステラ嬢に脱いだ衣服を渡しているのが見えた。

 

―――これで解決か。

 

 

と、思った瞬間

 

 

「動くなァァァァァッッ!!」

 

―――人質の中から女の怒声が響き渡った。

 

「(っ!?しまったっ・・・!人質の中にも仲間がいたのか・・・!!)」

 

「動くな!動くとこいつの頭を吹っ飛ばすよ!」

 

「キャアァッ!!」

 

 

―――その悲鳴は俺のよく知っている声だった。

 

人質の中に潜んでいた――テロリストの仲間と思われる女性に、銃を突きつけられているのは他でもない、

 

 

 

―――俺のルームメイト、日下部加々美だった。

 

 

「加々美っ!!・・・くっ、『五倍―――」

 

「動くなって言ってんだよ!!こいつがどうなってもいいのかい!?」

 

「イヤぁっ・・・!」

 

「ッ・・・!!」

 

女は、加々美にさらに銃を密着させる。

 

―――駄目だ、この距離じゃどうやってもアイツのほうが早い・・・!!

 

歯を食いしばりながらも、俺はおとなしくするしかなかった。

 

「さっさとビショウさんを解放しなっ!」

 

女は、アリス嬢の固有霊装によって身動きを封じられているビショウを解放するように要求してきた。

 

「・・・仕方ない、ここは言うとおりに―――」

 

一輝が女の要求を呑もうとした瞬間―――

 

 

「その必要はないよ」

 

 

まるで直接頭に語りかけるような男の声が響くと同時に、

 

 

―――光の矢が女とビショウの体を貫いた。

 

「ぎゃぁっ!」

 

「うぐぁっ!」

 

矢に貫かれた二人は気絶し、今度こそ完全にテロリストは無力化した。

 

 

「「これは・・・!」」

 

俺と一輝の声が重なる。

 

俺は、いや俺たちは、この技を、この声を知っている。

 

 

「やれやれ、他人の手柄を横取りするような真似はしたくなかったんだけどねぇ」

 

突然何もないところから現れたように見える男は、昨年度破軍学園七星剣武祭代表選手の一人―――

 

「「桐原(君)・・・」」

 

 

桐原 静矢(きりはら しずや)、俺と一輝の元クラスメイトだ。

 

「やぁ、久しぶりだね。黒鉄一輝君、新谷創君」

 

こちらに挨拶をしてきた桐原は一輝のもとへ歩み寄り、

 

「黒鉄君、君、まだ学校にいたんだ」

 

と、嘲笑うかのように言った。

それに対し、ステラ嬢と珠雫嬢が不快な表情に変わる。

しかし助けてもらった手前、声を荒げるわけにもいかない、なんとも複雑そうな表情だ。

 

「きりはらくぅ~んっ!こわかったよ~!」

 

ふと、人質の集団の中から数人の少女が桐原のもとへ走ってきた。どうやら今日このモールに来ていた桐原のガールフレンドらしい。

彼女たちの声に反応して、ふと彼女たちの来た方向に目を向けると、()()を見つけた。

 

俺は、彼女を見据えたまま隣にいるアリス嬢に言った。

 

「・・・アリス嬢、俺()()は先に帰らせてもらいたい」

 

「え?どうし―――」

 

疑問の声をあげるアリス嬢だったが、

 

「・・・あぁ、そういうこと」

 

俺の見ている方向を見て察してくれたようだ。

 

「後のことはこっちでやっておくから、ちゃんと慰めてあげなさいな」

 

「わかっている」

 

そう言って俺は、事情聴取などで警察に連れていかれる一輝たちから離れ、もはや誰もいない、先ほどまで人質のいた場所で一人、顔を俯かせてへたり込んでいる少女――加々美のもとへと歩き出した。

 

 

 

加々美の前まで歩み寄った俺は、彼女に高さを合わせるため床に片膝をついた。

 

そして彼女の名を呼ぶ。

 

「加々美」

 

「せん・・・ぱい・・・?」

 

 

彼女は俺に気づくと顔を上げ、そして大量の涙を流した。

 

「先輩・・・・・・っごめんなさい・・っ!私っ・・・、何も・・・、ぐすっ・・・何も出来なくて・・・!」

 

嗚咽しながらそう言った彼女は、また俯いてしまった。

 

「加々美」

 

再び彼女の名を呼ぶ。

 

「私・・・、先輩達みたいに戦うこともできなくて・・・なのに自分の身も守れずに・・・、先輩達の足を引っ張っちゃいました・・・。本当に、ごめんなさい・・・」

 

「加々美!」

 

三度、彼女の名を呼び、

 

 

―――俺は、彼女を抱き寄せた。

 

 

「先、輩・・・?」

 

()()()()()()()()()()()()()()、加々美。

―――怖かったんだろ?体、震えてるぜ。」

 

「・・・っ」

 

震える彼女の体を強く抱きしめる。

 

「お前が無事でいる、それだけで俺は満足なんだよ」

 

「先、輩・・・っ」

 

再び、大量の涙を流す加々美。

 

「それに―――謝るのは俺の方だ」

 

「え・・・?」

 

「ほら」

 

俺は自分が着ている上着――『五倍速』の反動でボロボロになったジャンパー――を見せて言った。

 

「お前から貸してもらったジャンパー、こんなにしちまった」

 

「・・・そんなの別に―――」

 

「だからさ―――」

 

「・・・?」

 

彼女の言葉を遮って俺は、一呼吸置いてから、

 

「―――だから、またここに来ようぜ。

 

今度は二人で。

 

映画を見るついでに、服屋に寄ってさ。

 

そこでお前に俺が着る服をコーディネートしてもらうんだ、昨日みたいにさ。

 

――どうだ、いいアイディアだろ?」

 

口角を上げながら、そんなことを言った。

 

 

「――――――」

 

そんな俺に対し加々美は、驚いたような、呆然とした表情をしていた。

 

しかし次第に笑い始め、

 

「ふっ・・・ふふ・・・っ、なんですかそれ・・・っ、ふ、ふふっ・・・」

 

呆れたように言ってきた。

 

「む。笑うことないだろ、こっちは割と大真面目なんだぜ?」

 

「ふふっ・・・すいません・・・ふふ。・・・でも―――」

 

笑いが治まった彼女は俺に向かって言ってきた。

 

「―――でも、先輩らしいですね・・・」

 

「む、どういう意味だ?」

 

「そのまんまの意味ですよっ♪」

 

彼女は流れる涙を拭って、笑いながら言う。

 

 

 

―――よかった、やっぱこいつは笑ってたほうがいい。

 

彼女の笑顔を見てそう思った。

 

 

「そんなことよりも、」

 

「ん?」

 

「さっきの、ちゃんと実行してくれるんですよね?」

 

「もちろん。これから剣武祭の予選も始まるし、ここがどのくらいで元通りになるのか分からんが、必ず」

 

「ホントですか?約束ですよ?」

 

「あぁ、約束だ」

 

そう言って、こちらを上目遣いで見る加々美の頭を撫でてやる。

 

「あ―――、えへへ・・・」

 

頭を撫でられている加々美の表情は、とても可愛らしいものだった。

 

 

 

 

「―――さて、そろそろ帰ろう」

 

俺は彼女の頭から手を離し、提案する。

 

「あっ・・・」

 

加々美は名残惜しそうに俺の手を見つめている。

 

―――・・・そんな顔をするでない。撫でたくなってしまうではないか。

 

「いつまでもここにいても邪魔になっちまうだろうからな」

 

「・・・そう、ですね。でも――」

 

加々美が俺の胸に顔を埋める。

 

「――もうすこしだけ、このままでいさせてください・・・」

 

そういう彼女の体は震えていた。

 

「・・・少しだけだぞ」

 

「はい・・・」

 

 

 

 

―――しばらくしてから、俺たちは寮に帰った。

 

 




いかがでしたでしょうか。

おかしい、かがみんが完全にヒロインになってる・・・

当初の予定ではヒロインのヒの字もなかったはずなのに(汗)

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