今年は申年ですね。・・・だからと言って特に何があるわけでもないんですが。あ、オリンピックがありましたね・・・。
そんなことより第六話です。
タイトルがすべてです・・・。
拙い文ですが、どうぞよろしく!
――――――破軍学園本校舎 屋上――――――
創は屋上に出る扉の上にある貯水タンクのそばに身を隠していた。
彼が今ここにいる理由は、夕方の一輝とアリスの会話に起因する。
一輝は次の対戦相手である綾瀬に呼び出されていた。
指定時刻は午前三時。場所はここ、本校舎屋上。
試合当日の真夜中に呼び出してくるなど明らかに罠である、と有栖が一輝に忠告したが、
一輝は綾瀬のことを信じ、会いに行くと答えた。
その会話を聞いた直後から、彼はここにいる。
(綾辻先輩が何をするつもりか知らんが、念のため止める準備はしとかないとな)
創は綾瀬からのメールを罠だと断定し、綾瀬が一輝に何かしかけた時に割って入るために自らの能力――『無銘・
オリジナルと違い、声や物音を出すと場所が分かってしまうが、気配と姿は隠せるので、ショッピングモールで使った『無銘・マッハグリード』と同様、創の劣化能力の中では使い勝手のいい能力である。
創が屋上に来てから数時間後――午前二時ごろに綾瀬は屋上にやってきた。
綾瀬は自らの固有霊装を展開し、屋上のフェンスに向かって
(どうやらそこで、一輝を待つつもりらしいな)
綾瀬の立っている位置は、屋上に出る扉の真正面。しかもフェンス寄り。
(そこからなら、不意打ちをしたとしても一輝ならば防げるだろう)
―――こりゃ杞憂だったかな・・・。
と創は考え始めていた。
そこから一時間ほど経ち、約束の午前三時。一輝がやってきた。
一輝の来訪に綾瀬も気付いた様子で、そのまま二人は対峙する。
「それで、僕に相談ってなにかな?」
一輝が切り出す。
綾瀬はやや間をおいて、言葉を返す。
「・・・黒鉄くんに一つ、聞きたいことがあるんだ」
「・・・聞きたいこと?」
一輝が綾瀬に聞き返す。
「黒鉄くんは、ヴァーミリオンさんと『七星剣武祭の決勝』で戦う約束をしているんだってね」
「うん。決勝戦で当たれたら、だけどね。どこかで必ずもう一度相見えようとは誓い合ってる」
一輝は迷いなく答える。
それを聞いて綾瀬は、
「でも、もしそこにたどり着く前に、自分ではとても敵わない相手と戦うことになったら、黒鉄くんはどうする?」
「・・・?」
(・・・?)
創と一輝が同時に首を傾げる。両者とも、綾瀬の質問の意図がわかりかねていたのだ。
しかし一輝はすぐにその質問に答えた。
「正々堂々全力を尽くして戦う」
彼にとって、その答えは決まり切っていたことなのだ。
「・・・勝てなくても?」
「それ以外に、できることなんてないからね」
――――――
一輝は『狩人』との試合以降、確かに変わった。今までの『皆に自分の実力を認めさせる』という目標よりも強く、そして身近な『新たな目標』ができているような気が俺はしていた。
その新たな目標自体は、先日のプールの一件で判明したが。
しかし―――、身近な目標ゆえにその想いは強い。それが『恋人』との約束ならばなおさら。
(・・・やはり桐原との試合が、一輝にとって一種の
俺は、あの試合の映像を見るたびにそう思う。
一輝が自分の道を諦めるとしたらあそこしかなかった。
実際、あの試合で一輝は諦めかけていた。
しかし、ステラ嬢がそれを許さなかった。
『自分の前ではずっと格好いいままでいろ』
自分の実力を直に体験し、そして認めてくれた人にこんなことを言われては奮い立つしかない。
ステラ嬢は一輝が諦めるのを許さなかった。普通ならば『諦めろ』という所を『諦めるな』と言った。
それゆえに一輝は勝った。
一輝が自分の道を諦めるのはあそこしかなかった、逆に一輝が新たな『目標』をもって奮い立つ場所もあそこしかなかった。
だからこその分岐点。
一輝はあの時、この先どんな試練が待っていても立ち向かう――『修羅の道』を往くことを決めた――いや、ステラ嬢によって決めさせられたのだ。
故に俺は、ステラ嬢を羨ましく思う。
俺は一輝の『背中を追う』ことしかできない。
だがステラ嬢は違う。
ステラ嬢は、一輝と『競い合い、高め合う』ことができる。
俺のような『魂に形を持たないモノ』――自分という『存在』を『証明』できないモノが至れる領域ではない・・・
――――――
創が考え事をしていると綾瀬が言葉を繰り出していた。
「ボクはそうは思わない。結果の伴わない正さなんてただの
「え・・・っ」
(な・・・っ)
創と一輝の驚愕が一致する。
当然である。
二人にとってその答えは予想外のものであったからだ。
創はその答えに警戒する。
(・・・綾辻先輩に動く気配はなし。ホントにただ相談するために呼んだだけ、なのか?)
―――否。それはない。
綾辻先輩が今着ているものは、まるで死装束だ。
加えてあの目――あれは、何かを決意している者の目だ。
それこそ、自分の命を捨てるかのような―――
「だからボクの答えはこうだ。―――
創の考えは現実のものとなる。
綾瀬は右手に自身の固有霊装―――『緋爪』を展開し、その柄に小指を当てると、
ズバッ!!
何かを断ち切る太刀音とともに、綾瀬の後ろのフェンスの両端が断ち切られた。
そして、綾瀬はフェンスとともに後ろに倒れ、四階建ての本校舎の屋上から落下した。
「「な――――――っ!?」」
一輝と創の声が重なる。
「くっ、『一刀修羅』!!」
一輝が『一刀修羅』を発動し、綾瀬の救出に向かったのを見て、創は悟る。
(っ!!そうか、これが狙いか・・・っ!)
―――だが、後悔している時間はない。
「『
創は一輝が飛び出すと同時に、固有霊装を切り替え、身体能力を強化し、屋上に出る扉の真上のコンクリートを足場にし、綾瀬が落ちたフェンスの穴に向かって弾丸のように飛び出す。
一輝が壁を走り出したのとほぼ同時に、フェンスの穴に着地。
そこから瞬時に方向転換し、創は
足場にしたコンクリートが抉れようが、体から血が噴き出ていようが、気にしない。
落下している最中、創は一輝に向けて叫ぶ。
「一輝ィッ!!そのままでいろォッ!!」
「新谷君!?」
すでに綾瀬に追いつき、胸に抱き込んでいた一輝は一瞬驚くも、瞬時に創のすることを理解したのか、綾瀬を強く抱きしめ目を瞑った。
「『無銘・
創は
「『
創と一輝と綾瀬に
それにより一輝たちは減速し、無事に地面に着地した。
■
『一刀修羅』の反動で、極度の疲労に襲われた一輝は綾瀬を自分の腕から離した後、その場に座り込む。
「はあ・・・はあ・・・、綾辻さん・・・なんでこんなことを・・・ッ」
「使っちゃったね、切り札」
綾瀬は座り込んだ一輝を見下し、その唇に弧を描く。
「え・・・?」
「言ったよね?どんな手でも使うって。『剣術』では、ボクは黒鉄くんに勝てない。でも伐刀者の能力で戦おうにも、黒鉄くんには『一刀修羅』という切り札があるから、ボクに勝ち目はない。でも、『一刀修羅』は一日に一度しか使えない。なら事前にそれを使わせてしまえば、黒鉄くんは切り札を失うことになる。試合は今から十時間後、回復は間に合わない。切り札を失った黒鉄くんになら、ボクにも勝ちの目が生まれる」
「はじめから一輝に『一刀修羅』を使わせるのが目的だったってわけか。・・・まったく、してやられたぜ。まさか、自殺まがいのことをするなんてな」
一輝と綾瀬の会話に創が割り込む。
「・・・新谷くんが隠れていたことは、ボクにとって予想外だったよ。まさか、黒鉄くんが約束を破るなんて・・・」
「それは違う。俺は、一輝とアリス嬢の会話を盗み聞きしてこの約束を知った。完全に俺の独断さ」
「そうなの?でも、どちらでもいいことさ。もう目的は達した。ボクはこの辺で失礼させてもらうよ」
そう言って、綾瀬はその場を去ろうとする。
「ま、待って・・・!」
去ろうとする綾瀬を、一輝が引き止める。
「綾辻さん、君が『
「・・・黒鉄くんには関係のない話さ」
一輝の問いかけをばっさり切り捨て、綾瀬はそのまま歩き出す。
「ボクは絶対君に勝つ。・・・勝たなきゃいけないんだ」
そう言って、綾瀬の姿は完全に見えなくなった。
「あ、綾辻、さん・・・」
なおも一輝は綾瀬を追いかけようとし、まだ疲労が抜けていないのでその場に倒れこみそうになる。
「っと・・・、無茶すんなよ、『一刀修羅』を使ったんだ。すぐには動けねえよ」
倒れそうになる一輝を創が支える。そしてそのまま一輝を肩に担ぎ、医務室まで運んだ。
■
――――――破軍学園 医務室――――――
目を覚ました一輝が見たのは、とてもカオスな光景だった。
「フンッ!!フンッ!!」
「ちょっ、やめなよ創先輩!!一応怪我人なんだよ!?」
「何を言うかっ!怪我人だからと言ってベッドで寝たままでは筋肉が衰えてしまうわ!」
「・・・アタシもやろうかしら」
「いいんじゃないですか。足太いんですし」
「太くないッ!」
「太いんですよ」
「太くないって言ってるでしょッ!?」
「と思うじゃないですかぁ~」
「・・・・・・」
まず、創が一輝の隣のベッドのそばで、ダンベルを両手に持って筋トレしている。
それを止めさせようとする加々美。
創の筋トレを見て、自分もやりだそうとするステラ。
そのステラを弄る珠雫。
そして、傍観をきめるアリス。
―――なんだこれ・・・。
当然の感想である。
「!皆、一輝が目を覚ましたみたいよ」
一輝が目を覚ましたことに気付いたアリスが、皆に声をかける。
「お兄様!?」
「イッキ!?」
アリスの言葉を聞いてステラと珠雫が一輝のベッドに駆け寄る。
「ステラ・・・、珠雫・・・」
「「よかったぁ・・・」」
一輝の無事を確認し、安堵するステラと珠雫。
「お、やっと目ぇ覚めたか、一輝」
創も筋トレを止め、一輝のベッドに寄る。
「新谷君・・・、ッッ!!そうだ、時間はッ!?」
一輝は慌てた様子で起き上がる。
「昼の一時よ。試合まではまだ時間があるわ。それよりもイッキ―――」
一輝の問いにステラが答える。ステラはそのまま一輝に詰め寄る。
「アリスとハジメから、ことの顛末は聞いたわ。・・・センパイに呼び出されてたみたいじゃない。アタシに何の相談もしないで、呼び出しに応じちゃうなんて・・・」
「まったくだぜ」
ステラに賛同する創。しかし、
「創先輩もだよっ!」
「いッッ!?」
加々美に思いっきりツネられた。
「『今日は帰らない』ってメールだけ送られてきて、次の日には医務室に搬送!?どれだけ心配したと思ってんのッ!?」
「す、すまん・・・」
加々美に怒鳴られる創。ステラに詰め寄られる一輝。
「・・・どっちもどっちよねえ」
「まったくだわ」
両者の様子を見て、アリスと珠雫はそうこぼす。
プシューッ。
そんな中、医務室の扉が開き理事長――黒乃が入室してきた。
「黒鉄、新谷。目をさま――――――なんだこれは・・・」
一輝と創たちの様子を見て、黒乃は困惑したようだ。
「あ、大したことではありませんのでお構いなく」
「そ、そうなのか・・・?」
珠雫が黒乃に向けて言うが黒乃はますます困惑したようだ。
■
――――――破軍学園 中庭――――――
黒乃から綾瀬の父親――『
その時の戦い以降、海斗が目を覚ましていないことを聞き、創たちは中庭のベンチに移動していた。
「一輝」
珠雫やステラ、アリスといくらか話し、ステラとともにどこかへ行こうとする一輝を創が呼び止める。
「・・・?」
「俺は、綾辻先輩がどんな人なのかよくわからない。朝の彼女が、本当の彼女なのかもしれない」
だが、と創は続ける。
「少なくとも、去り際の彼女は無理をしていた。・・・救ってやれよ、彼女を。それができるのは多分、一輝だけだ」
「・・・ああ。できるだけ、頑張ってみるよ」
気の抜けたような、でも確かな返事をして、一輝はステラとともにその場を離れた。
■
???「キングクリムゾンッッ!!!」
■
――――――旧・綾辻剣道場前 街道――――――
―――俺は今、一輝たちの後方十数メートルを歩いている。
創は、一輝が綾瀬との試合に勝ち、綾辻剣道場を取り戻すべく、綾瀬とステラとともに出かけたのを見て、尾行している。
一輝と『剣士殺し』の戦いを見るだけならば、創が待ち伏せなどをしていれば、一輝たちと一緒に行くこともできただろう。
しかし今回の彼
「(ここが、綾辻先輩の実家だった場所か~)」
「(あまりでかい声出すなよ?)」
「(わかってるよっ♪)」
創とともに、『無銘・朧月』で姿を隠しているのは新聞部部長、日下部加々美。
そう、何を隠そう、今回の彼らの目的は『一輝の盤外試合のすっぱ抜き』である。
「(でも、いいの?)」
「(何がだ?)」
「(私の都合で、創先輩の能力使ってもらっちゃって・・・。)」
「(良い良い。俺だって一応、新聞部副部長だからな。部長の手伝いくらいするさ)」
―――成り行きでなっただけだが。
創がそう言うと、加々美が感激したように言った。
「(創先輩に、副部長としての自覚ができてきたようで私は感激だよ・・・!)」
ほろり、と涙を流すフリをする加々美。
「(・・・お前は俺の母親か何かか?)」
「(ルームメイトだよ?)」
「(んなこたわかってる)」
そんなやり取りをしているうちに、一輝たちが道場に着いたようだ。
一輝たちより少し遅れて石段を登る創と加々美。
創たちが登った時には、すでに不良たちは一輝に倒され、一輝たちが道場へ入るところだった。
一輝たちが完全に道場に入ったのを見て、道場の扉から三メートルほどのところで立ち止まる。
「(・・・ここまでだな)」
「(えー!?もう少し近寄ろうよ!)」
「(バカを言うな。これ以上近づいたらステラ嬢に気付かれちまうよ。ここで我慢しろ)」
「(むー・・・!)」
不満そうにする加々美だが、渋々納得したのか、その場にしゃがみ込んでカメラを取り出す。
『無銘・朧月』で姿を隠している以上、創は加々美に触れていないといけないので、必然的に加々美の肩に手を置く形となる。
「(・・・始まるみたいだな)」
「(だね)」
そして、一輝と『剣士殺し』倉敷蔵人の戦いが始まった――――――。
いかがでしたでしょうか。
はい、二巻が今回で終わると言ったのはどこのバカでしょうかねえ・・・?(すっとぼけ)
綾瀬vs一輝全カット。某ボスに仕事していただきました。
原作の戦闘を、全カットにするかダイジェスト風にするか悩んでおります。仕事するのがボスか神父かの違いなんですけどね。
一応今回は全カット、次回はダイジェスト風にします。
三巻以降は、一輝たちと別行動を取ることが多くなる(はずです)ので、そんなに困らないはずです、うん。タブンネ・・・。
新たに『無銘・◯◯詳細』を投稿しました。