Miniatua Garden Online ー仮想世界の問題児ー 作:夜明けの月
ツカサとカレンは、町を離れて草原に来ていた。今はプレイヤーがはけているのか、誰一人としていない。
「ほぉ……いい眺めだな」
「そうだね。っと、メッセージ来た」
カレンは、左手を横に振り、ウィンドを出す。そこからメッセージを選択して、届いたものの文面を読んでいく。
「誰から?」
「要から。信也と一緒にいるんだって。合流したいから場所教えてって」
「場所って言ったって、草原としか言えねえぞ」
「いいんだよそれで。付近までくれば大体わかるし。フィールドに出てるとだけ言ってればなんとかなるよ」
そう言い終わると、カレンはウィンドを閉じる。
「それじゃ、チュートリアルと行くか。まずは武器の使い方をマスターしないと」
「だね。じゃあ、そこら辺にいるモンスター狩ろっか」
°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。
「あ、返信来た。フィールドにツカサといる、だって」
「来いってこと?」
「そうじゃない?」
町のど真ん中にある噴水の前で、頭の右のほうに一本だけツノを生やして、アホ毛が立っている少年、シンヤと耳が尖った白銀の髪の少女、カナメがいた。
「というか、結局消せなかったんだ。
「僕だって消したかったけど、消したかったけど………!!無理だったんだよ!」
「涙拭きなよ」
「安倍さんも「カナメって呼んで。リアルの名前使うのNGだから。あとさん付けしないでね」……カナメも時間かかってたけど、そう現実と変わってないよね」
「そう?」
シンヤもカナメも時間がかかった割には、シンヤはツノが生えていること、カナメは耳が尖っていることを除けば、現実とそう変わらない容姿だった。
「とりあえずフィールドに出て合流しよっか。それからどうするかは後で決めよう」
「そうだね」
二人が町の外の草原に向かって歩き始めたその時だった。
カナメの目に不快なものが映ったのだ。
「うへぇ……こっちでもそういうのあるの……?」
「何が?」
「あれ」
そう言ってカナメが指差した方向には、複数人の男性プレイヤーと、それに囲まれた一人の女性プレイヤーだった。
「ナンパ……?」
「見てる方も不快になるからやめてほしいんだけどねぇ……」
「何でそこまで嫌ってるの……?」
そんな些細な事を疑問に思いつつ、シンヤは女性に目を向ける。
腰のあたりまである緑色の髪に整った顔立ち。耳は尖っているため、カナメと同じフェアリーかそれともエルフかのどちらかなのは見て分かる。
男性ならば声をかけても仕方がないと思う美少女さんだった。シンヤもその一人となりつつあるのだが。
「………まさかとは思うけど、あの集団に混ざろうかなぁ〜、とか思ってないよね?」
「お、思ってない思ってない!」
「怪しい……」
「うぐっ………!と、とりあえずさ、あの子助けない?困ってるようだし」
女性を見ると、見るからにオロオロしている。カナメもその姿を見ていたたまれなくなったのか、無言で頷く。
「うん、そうだね。それじゃあ、行ってこい!」
「痛ぁ!?」
何故か、カナメはシンヤを蹴飛ばした。蹴飛ばされたシンヤは、女性を取り囲んでいる男性に激突。そして、男性全員を巻き込みながら倒れこむ。
「大丈夫だった?」
「は、はい〜。ありがとうございますぅ〜」
女性はカナメが話しかけると、安堵したかのようにホッと肩を撫で下ろす。平和的に終わったかと思われた。
だが一方、蹴飛ばされたシンヤはというと、
「おい、テメェ。どういうことだ?」
「え、えっと……そこの人に蹴飛ばされて」
「〜〜〜♪」
「ちょっと!関係ないみたいなふりして口笛吹かないで!」
「ということはお前が突っ込んできたってことだよなぁ?」
「ひっ……!」
巻き込まれた男性達は額には青筋が浮かびそうなぐらいの気迫を放っている。
「ーーーーーーーーさ」
「さ?」
「三十六計逃げるに如かずッ!!」
「な……!?」
一目散に逃げ始めるシンヤに驚く男達。それも束の間。すぐにハッとして、鬼の形相でシンヤを追いかけ始める。
「待ちやがれ!」
「絶対ぇぶっ潰す!!」
「無事で帰れると思うなよクソ野郎!!」
「ふ、不幸だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
他のプレイヤーの話によると、町中にシンヤの悲壮な声が響いたという。
ーーーーそれから数十分後。
「ぜぇ……ぜぇ……」
「お疲れ」
「もと、はといえば……君が、原因なん、だけど………」
男達を振り切ったシンヤが元いた場所に戻ってくると、カナメとナンパされていた少女が楽しく話していた。
そして今に至る。
「あ、紹介しておくよ。この子、カエデちゃん」
「よろしくお願いしますぅ」
「知り合いとなかなか会えないから、取り敢えず私たちと行動することになったから」
「……それはまた急だね」
「まあ、あの二人なら了承してくれるでしょ」
「まあ、そうだね」
ツカサとカレンの同意なしに決める二人。息を切らしていたシンヤは立ち上がり、さてと切り出す。
「それじゃあ、合流する?ここにいてもメリット無いし。主に僕が」
「そうだね。じゃあ行こっかカエデちゃん」
「はい〜」
三人は草原を目指して歩き始めた。
°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。
「ここらあたりのはずなんだけどなぁ……」
マップを見ながら唸るシンヤ。マップには三種類の点が表されている。
青色の点はプレイヤーやNPC、緑色の点はフレンド、赤色の点はモンスターなどの敵を表している。シンヤ達がいる草原は見渡しが良く、障害物があまり無いため、周りに目視できる敵やプレイヤーはいないことは一目瞭然だった。
だが、シンヤの見るマップには近くに二つずつ青色の点と緑色の点があった。それも、ほとんど同じところに。
「マップがバグったんじゃない?だって誰もいないよ?」
「そうなんだよねぇ……」
「あの〜」
悩む二人に恐る恐る手を挙げるカエデ。カエデは気がまとまって4本ぐらい経つ場所を指差す。
「あっちの方から金属同士が打ち付ける音が聞こえました〜」
「「え?」」
そう言われて黙り込む二人。一時の静寂が訪れたかと思うと、キィンという甲高い音が聞こえてきた。
「ありがとカエデさん!」
「カエデで構いませんよ〜」
「じゃあ、カエデ。あと敬語はなしでもいいよ」
「分かった〜」
そう話しつつ気の方に近づく。近づくにつれ、甲高い金属音は大きくなる。そして、木の後ろ側に回ると、そこには、
「せいやぁ!!」
「お、らぁ!!」
黒髪の刀を振るう男とツカサが剣を交えていた。
「あ、カナメにシンヤ。あと……誰?」
三人に気付いたのか、戦闘を傍観していたカレンが話しかける。その隣にいた淡い青色の髪の男の子も三人に目を向ける。
「カエデちゃん。さっきナンパされてるところ助けたの」
「よろしくお願いしますぅ」
「でさ、その子は誰なの?あとツカサと戦ってる子」
シンヤはカレンの横にいる男の子とツカサと対峙している刀使いを指差す。
「僕はコウキだよ。よろしく」
無表情ながらも自己紹介をするコウキにシンヤ達も自分の名を告げる。
「で、あっちにいるのが確か……アキトだっけ?」
カレンがうーんと唸りながらシンヤの問いに答える。すると、カナメは不思議そうな顔で尋ねる。
「なんでこんな事になってるの?特にあそこの二人。なんで《デュエル》なんてやってるの?」
「あー、それね……」
カナメにそう言われると、なぜか疲れたような顔をするカレン。その表情を見て首をかしげる状況が飲み込めていない三人。
はぁ、とため息を吐くとカレンは話し始めた。
「話すよ。こうなった事の始まりを」
°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。
一方その頃、とあるゲームショップにて。
「ねぇ、悩んでないで買っちゃおうよ〜」
「でも、面白くなかったらなぁ……」
「私、β版やったけど面白かったわよ?」
「……何でもいいから早くしてくれ」
とあるゲームを前にしてクリームイエローの肩にかかっている髪で、コバルトブルーのカーディガンを身につけた少女、夜月森羅が悩んでいた。
隣にいる赤い髪のポニーテールが特徴の東雲三月が、買うように催促していた。
二人の後ろには、翡翠色の長髪の幼j……少女、クオン=バリス=ラッセルと外にはねた黒髪と空色の瞳を持つ少年、天城凍夜がいた。
「もうかれこれ一時間はここにいるぞー……」
凍夜は疲れたような顔をして嘆く。それに触発されたのか、森羅が申し訳なさそうに凍夜を見る。
「だって、面白いか面白くないかって大切じゃない?」
「大切だが、それを体験したやつがここにいるんだからよ」
そう言って、凍夜はクオンを指差す。クオンは胸を張り、
「ええ、だって三千人だけのβ版をプレイしたんだもの。変わってないなら、結構楽しめるわよ」
自慢げに言うクオンに三月が続く。
「そうだよ!まあそれはいいとして、私森羅ちゃんとプレイしたいから、やろうよ!」
テンションが上がりきっているのか、抱きつきながらそう言う三月。
「でも、ボク今お金持って「私が貸すからあとで返してね」あ、うん……」
三月に押されるまま買う事になった森羅。それを見て満足そうに頷くクオン。
「そういや、琉璃の奴どこ行きやがった?」
凍夜は一人そう呟いた。
ーーーここに、もう一つの物語の歯車が回り始める。
さて、そろそろキャラが多くなってきたので、三話目出したら一旦キャラ説明挟みます。