Miniatua Garden Online ー仮想世界の問題児ー 作:夜明けの月
出来次第あげますので。
では、お楽しみください。
「まったく……どうしてこうなったんだよ……」
「知らないわよ。あんたのせいでしょうが」
「は?元はと言えばレイカが迷ったのが原因だろうが」
「それを言うなら先導して歩いて行くくせに、結局どこにいってるかわからなくなってたフブキもフブキじゃない」
「「あ"ぁ?」」
始まりの町の中心の噴水にて、言い合う男女の姿があった。フブキと呼ばれていた男の方は銀髪に狐耳を生やしており、レイカと呼ばれていた女の方は水色の髪で耳が少し尖っている。
フブキは頭上の狐耳を逆立て、レイカは目つきを鋭くしてお互いを睨んでいた。
「くそっ、お前と言い争ったところで時間の無駄だ」
「それはこっちのセリフよ。これからどうするか考える方が先」
「それはそうなんだが……カエデのやつ、本当にどこに行きやがった?」
「さあ?どうせそこらあたりふらふらしてるんじゃないの?」
「ありえるが……なんか違う気がーーー」
フブキが何かを言おうとしたところで、周りに異変が起きる。
「今草原の方で………」
「おいおい……マジかよ……」
賑わっていたはずの町の空気が一瞬でガラリと変わる。楽しそうな雰囲気だったのが疑惑、どよめきで埋め尽くされていた。
「……?何かあったのか?」
「さっきまで楽しそうな雰囲気だったのに。どうしたのかしら?」
フブキとレイカも周りの空気の変化に疑問を抱く。どうしてこんな空気になったのか、何があったのかという疑問で頭が埋め尽くされる。
すると、レイカの隣を騎士風の装備をしたプレイヤーが通り過ぎようとする。それをレイカが呼び止める。
「ねえ、ちょっといいかしら?」
「あ?なんだ?」
「何があったのよ?あなたさっき他の人に言ってたでしょ、『草原の方で』とかどうとか」
レイカがそう問いかけると騎士風のプレイヤーは顔色を変え、声を荒げて言った。
「ああ、そのことか。ヤベェことが起きたんだよ!」
「ヤベェ事とは?」
「今草原で大量のmobが湧いてるんだよ!!およそ、100体ものモンスターがうじゃうじゃと!!」
「「ひゃ、100!?」」
プレイヤーの口から出たのは初期ステージでは考えもできない数だった。10や20ならばまだ想定内だ。だが、予想した数と一桁違うのだ。驚くのも仕方がないのだろう。
だが、二人は次にプレイヤーが口にした言葉にもう一度驚かされる事になる。
「それと、そこにプレイヤーが数人いたが……まあ喜にする事じゃないか。それじゃあな!」
そう言って去っていこうとするプレイヤー。『プレイヤーがいる』というフレーズを聞き、二人の脳裏に嫌な光景が浮かんだ。そのプレイヤーの中に自分達が探している友人そこにいて、モンスターに襲われているそんな光景が。
「……おい、最後に聞かせろ。その中に緑色の髪の女の子はいたか?」
「緑色の?あぁ、いた気がするぞ。もういいか?」
「……ああ、すまないな」
フブキがそう言うと、騎士風のプレイヤーは早足で去っていった。
チッ、と舌打ちして頭を掻くフブキは面倒くさそうに声を上げる。
「……おいレイカ、どうやら行き先は決まったみたいだぞ」
「……そうね。というか、それぐらい私にもわかるわよ」
「「さっさと草原に行って
二人は草原に向かって全速力で走り出した。
「ヘブッ!?」
「って走り出した瞬間から転んでんじゃねえよ!」
°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。
フブキ達が草原に向かっている最中、その草原でツカサ達はモンスターとの攻防戦を繰り広げていた。
「くそっ……斬っても斬っても減らないじゃないか!」
「こりゃ死に戻りかなぁ……」
「でもデスペナが怖いぞ。確か今溜まってる経験値の5割と持ち物がランダムに10個ほど消えるなど、他にもまだまだ死の特典は盛り沢山だぞ」
アキトの言葉で静まり返る6人。そして、
『死んでたまるかァーー!!』
再びモンスターを蹂躙し始める。初期の敵は戦闘の仕方さえ覚えておき、冷静に対処すれば勝てないことはないので今のところはモンスターが一方的にやられている。
だがその時、シンヤがあることに気づく。
「ねぇ、確かさ……フィールドに出てくるmobだっけ?それの一部ってあれ持ってなかった?人工知能の……えーっと確かAIだったっけ?」
「それがどうした?今は関係ないだろ」
「確かそれってあのmobっていうやつが、学習して強くなったりするんじゃない?」
そのことはアキトも知らなかったのか、ツカサ達と同様に固まる。
その間に先ほど倒していたモンスターが湧き出る。それもなぜか、先ほどとは違う色の個体が総数の5分の1ぐらいの数で。
「………これヤバくない?」
「………下手しなくても死ぬんじゃないかな〜」
「星が、星が見えるよ……」
「コウキ!頼む、現実逃避しないでくれ!」
「ああ!もうどうにでもなれ!」
「クソッタレが!こんなところで変なうんちく持ってくんじゃねえ!余計にメンドクセェじゃねえか!」
「僕のせい!?」
その時、先ほど湧き出たmobの狼のうちの一匹がカレンに飛びかかる。他の敵に意識がいっていたのか、気付いた時にはもう間に合わなかった。
《グルァ!!》
「くっ…!?」
狼の爪が描いた一閃がカレンに直撃し、カレンを弾き飛ばす。HPバーが緑から黄色、黄色から赤へと変したところで止まる。
HPバーはパーティーを編成している場合、そのパーティーメンバーも他のメンバーの残り体力に気を配ることができるのだが、今カレンとパーティーを組んでいるツカサにはそんな余裕は全くなかった。
ただ、目の前から襲い来るmobの相手で手いっぱいだった。
「(くそっ!さっきまでならなんとかなったのに……!)」
ツカサは内心で歯噛みする。違う色の個体が出てきた瞬間に戦況は変わったのだ。
一方的な蹂躙だったはずが、逆にツカサ達が押されてきている。戦い慣れているはずのアキトでさえも、別個体を2体相手取ることでさえ手こずっている。他のメンバーは言わずもがな、1体と他のmobで手いっぱいである。
そんな中、狼はまだやり足りないのか、倒れ込んでいるカレンに近づく。まるで、獲物にトドメを刺しに行くかのように。
「カレン、1体ならなんとかなるだろ!?」
「ごめん……武器落とした……!」
「何っ!?」
ツカサが振り返るとカレンの後方の地面に突き刺さっている短剣があった。カレンの初期武器だ。
カレンとの距離はおおよそ10メートル。走ればすぐだが、今の体力で背中を見せるのは非常にまずい。
「(くそっ、どうすりゃいいってんだよ!!)」
ツカサが悩んでいる間にカレンは意を決したのか、立ち上がり武器を拾いに向かう。それを好機と見たのか、狼が飛び上がる。
しかも、ちょうどカレンが短剣の元にたどり着く場所あたりを着地点にして。
「カレンちゃん、後ろ!」
カナメの声に気づいて後ろを振り向くが、もう遅かった。狼の一撃は無慈悲にもカレンの胴を引き裂こうとしたその時だった。
「くそったれがぁぁぁぁ!!」
ツカサが届くはずもない距離の狼に向かい剣を振るう。その刹那、一陣の風が吹き抜け、身を焦がすような熱い風とともに炎が駆け抜ける。
炎はカレンに襲いかかろうとしていた狼を襲い、HPを0にして消しとばし、その延長線上にいた敵mobをもまとめて消しとばした。
「ーーーーーーーぇ?」
目の前で起きたことが信じられないカレン。その他のメンバーも信じられない、という顔をしていた。
炎を打ち出した当の本人であるツカサは、自分がしたことに驚いていた。
「なん、だ………今の………?」
「ギフトだ」
「は………?」
「お前のギフトだと言ったんだ」
一同が驚く中、アキトは確信があるようにツカサに言った。
「まさかこんな状態で覚醒するなんて思わなかったが、間違いない。どんな逆境でも一発逆転できる恩恵。それがギフトだ」
「これが……」
「それに、これで俺らが確実に勝てる道筋ができたぞ」
アキトは不敵に笑い、高らかに告げる。
「この戦闘、必ず勝つぞ」
°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。
「むぅ〜、遅いなぁ森羅ちゃん」
「焦っても仕方ないじゃない。キャラメイクは結構時間かかる人もいるんだし、待つしかないわよ」
ミツキとバリスは事前に言ってあったフィールドへのゲート前でシンラ達を待っていた。
「ミツキちゃーん!」
「………っ!!」
ミツキは何かを察知したかのようにバリスの後ろに隠れる。すると、バリスに抱きつく影があった。
「ありゃ?ミツキちゃんは?」
「おいルリ、勝手に走って行くなよ!」
バリスに抱きついたのはルリで、その後ろからトウヤがやって来る。
「二人とも、待って……!」
「はしゃぎ過ぎにもほどがあるだろ」
急いで走ってきたのか、息を切らしながらシンラが走ってきて、ハヤトは他のメンツが走ってきたにもかかわらず、ゆっくり歩いて来る。
「全員揃ったね」
「見た目がそこまで変わってないから分かりやすかったね。特にミツキちゃん」
「え?私?」
ミツキの現実での髪の色は赤なのだが、ゲーム内でも変わらず赤色であり、ポニーテールである。
「現実に忠実にキャラメイクしたからなぁ……」
「まあいいんじゃねえの?俺もそうしたし」
「……結局全員いつもと一緒じゃねえか」
「いいんじゃない。ミツキちゃんもシンラちゃんも可愛いからなんでもいいよ!」
「「とりあえず頬ずりやめて!」」
ルリが二人に抱きつき頬ずりをし始めると、バリスが草原の方を向いて5人に問う。
「さて、どうしようかしら?これからフィールドに出る?レクチャーとかならしてあげなくもないけど」
「じゃあ頼む。バリスはβテスターなんだろ。頼りにしてるぞ」
「ふんっ。もっと崇めなさい」
「前言撤回。自分でなんとかする」
「へぇ、そうなのね。ハヤ、お腹出しなさい」
「嫌だよ。っておいちょっと待て。バリスお前どこからそのカラシとわさび取り出した?こら止まれ。頼むこっちに来るんじゃねえそういうのはいけないとおmぎゃああああああああ!!」
真面目に話を切り出したはずのバリスがハヤに制裁を始めたため、手持ち無沙汰になったトウヤは空を見上げて遠い目をする。
「平和だなぁ……」
全然平和ではない気がしますがまあそういうことにしましょう。
そんな時だった。どこかから大声が聞こえてくる。
「そこどいてくれ!!」
トウヤだけがその声に気づき、声がした方向を向く。そこには、走ってくる銀髪の少年と少年に担がれた水色の髪の少女がいた。
「ん?なんだ?」
「ちょ、頼むからどいてくれ!フィールドに用があるんだよ!」
「何かあったのか?」
「ちょっと色々とな。じゃあな!ほら、レイカさっさと起きろ!」
「無理ぃ……疲れた……」
「だぁぁぁぁ!!クソッタレが!!」
そう叫んでフィールドに出て行く少年達。その背中を眺めるトウヤ達は疑問に思う。何があったのかと。
「………尾ける?」
「うーん……、確かに気になるけど……」
「ま、初期装備あるしなんとかなんだろ」
「はぁ、はぁ、まあうちには頼れるβテスターがいるから」
「ふふ、崇め奉りなさい」
ハヤが肩で息をしながら言う。そして、胸を張るバリス。
「嫌だよ」
「ん?」
「頼むからカラシとわさびをしまってくれ」
「ねえ、夫婦漫才はもういいから行かない?」
「「夫婦じゃない」」
ミツキが指摘すると口を揃えて否定する二人。シンラは息ぴったりなのにと言おうとしたが、面倒くさそうなので心の中に留めておく。
「それじゃあ、俺らも行くか」
そう言ってトウヤ達は少年達が向かった方向に向かった。
°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。°。
どこかの会議室のようなところで椅子に腰をかけているスーツを着た白髪の女性、白夜とその向かいに座る茶髪で紫の瞳を持つ少年がいた。
「で、なんだよ。俺あんたと面識ないんだけど」
「おお、すまんな。おんしに頼みたいことがあったのだ。我が社が作り出したゲームにおける順位で、トップランカーのリンドウよ」
「………それを言ってなんかあんのか?」
「だから言っておろうが。おんしに頼みたいことがあると」
そう言ってカバンからPCを取り出す。
「あと自己紹介をしておこう。私は夜紗白夜。株式会社《千の瞳》の代表取締役だ」
「あんた偉い人だったんだな」
「くく、まあそのことは良い。おんしも名を名乗れ」
「……高町竜胆。それとあんたの言ったように《千の瞳》には世話になってる。あと、これからも世話になる」
素っ気なく答える竜胆にくつくつと笑う白夜。
白夜は先ほど取り出したPCを起動し、とあるゲームのパッケージを取り出す。
「おんしにはこのゲームをプレイしてもらう」
「《Miniatua Garden Online》……?これこの間発売し始めたやつじゃ……」
「うむ、そうだ。そして、幾つものゲームで絶対的な強さを誇ってきたおんしに頼みたい。このゲームのクリアを」
「……?どういうことだ?」
白夜は先ほど浮かべていた笑みは消え、真面目な雰囲気に変わる。
「我が社のゲームのセキュリティはどんな手段を使っても突破することは不可能だ。だが、このMGOはそこら辺りが少し甘くての。サービス開始直後にゲームの設定内容が書き換えられたのだ」
「何が書き換えられた?」
「書き換えられたのは、フィールドに出る敵mobそしてフィールドボスと階層ボスだ。全てが全て、どこかのネットのスレに流れていたデマがゲーム内で実現しているのだ」
竜胆は白夜の話を聞き、一つ疑問が浮かんだ。それは製作当初からそのデマらしきものにするようにしていたのではないか、と。
「おんしの言いたいことはわかる。だが、そんなプログラミングをした覚えはない。そしてそれを命じた覚えもない」
「ならどうして……」
「完璧なセキュリティが確立する前に割り込まれた、と考えるのが確実じゃろう。現にそれを目の当たりにしているプレイヤーもおる」
そうしてPCの画面を竜胆に見せる白夜。そこには、数十体のmobに囲まれた7人の男女だった。
「色が違う個体だと……?」
竜胆は映し出された現実を否定する。勝手にその個体が湧いてくるならいい。元からそのフィールド上にいたなら頷ける。
だが、目の前のことはあり得なかった。元いた個体から特異な変化を見せるなんて聞いたことがなかった。
「おんしにはこのゲームのプレイヤー達と協力し、クリアを目指して欲しいのだ」
「クリアしてこの状況がどうにかなんのか?というかクリアの条件は?」
「このゲーム7層に分かれて追っての。そのうちの最下層、第7層をクリアしてくれれば良い。クリア後に大幅なメンテナンスをする際に書き換えられたところは全て書き直す」
「mob以外のイベントとかの変化は?」
「ない。そこら辺は安心してプレイできるぞ」
竜胆は目の前に置かれたパッケージを取り、席を立つ。
「話がそれだけなら俺は帰るからな」
「くく、無愛想な小童だのぉ。では、頼んだぞ」
「はっ、ゲームクリアなんて楽勝すぎる。
竜胆はそう言い残し、会議室を去った。一人残された白夜はPCの画面を見ながら笑う。
「さて、小童共が頑張っておるのだ。私も頑張らねばな」
白夜はPCの電源を落とし、会議室を立ち去るのだった。
これからはスローペースになるかもしれませんので、ご了承を。