黒子のバスケ~もう一人のマネージャー~ 作:植物
黒子がまだ三軍に居た頃、一軍にある噂が流れていた。
「は?予言少女?」
ウォーミングアップをする青峰大輝に、マネージャーの桃井さつきはそう話した。
「そう!今、運動部の中で有名なの!その子、試合の光景見ると数字を言うの。そして試合が終わって点数見ると、その子が言った数字と同じなんですって!」
「へぇ、面白ぇじゃん」
「青峰!練習始めるぞ!」
先輩に言われ、青峰は練習へ行った。
部員の練習を見ながら、帝光中学バスケ部部長虹村と副部長の赤司征十郎は話をしていた。
「赤司、その後のあの子の反応は?」
「緑間が声は掛けているんですが、なかなか首を縦に振ってくれませんね」
「そうか……」
「あの子が来てくれれば、うちの部ももっと変わると思うんですけど」
「そうだな……おら、そこ!!もっとカバーしろ!!」
虹村が指導に入った時、赤司はふと体育館の扉付近に目を向けた。そこには練習を見る前髪に赤いピンをした橙色のミディアムヘアーの少女が一人いた。
「あの子……(また来てる)」
「あの子が、例の」
「はい……
予言少女と呼ばれている……橙野優希(トウノユウキ)です」
黒子テツヤとの出会い
『バスケ部の……マネージャー?』
入学してしばらくした後、同じクラスにいた女子は橙野を誘った。
『うん!一緒にやらない?』
『……やめとく』
『え?!何で!?』
『……嫌だから』
『入ろうよぉ!』
席から立ち素早く教室を出て行く橙野を、女子は追い掛け誘ったが結局、橙野が彼女の誘いに乗ることは無かった。
その後、橙野が噂で予言少女と呼ばれるようになったのは、それからしばらくした後だった。
あるバレーボール部の練習試合……橙野は小学生時代の友達に誘われ、気分が乗らないままその子とその試合を見ていた。そして呟いた。
『25対18……25対12……そして2対0』
その声は隣で応援していた同学年に聞こえていた。そして1セット目は25対18、2セット目は25対12……試合が終わり結果は……
『2対0……よって、帝光中学バレー部の勝ちです』
審判の声に半分驚いた同学年は、橙野の方を見た。彼女はチラッと彼等を見ると、その場を去っていった。
それからという日々、各運動部の試合を見に来ていた橙野は、その試合毎に数字を言いそして当てていった。
それは噂となり、いつしか彼女は“予言少女”と呼ばれるようになった。
そして噂はバスケ部にまで届き、キセキの世代と虹村の耳に入った。
「なぁ緑間、その予言少女っていつ部に入るんだ?」
練習を終えた青峰は桃井と帰りながら、一緒に帰っている緑間真太郎に質問した。
「さぁな。何度も誘っているのだが、どうにも首を縦に振ってくれないのだよ」
「誘い方がいけねぇんじゃねぇの?」
「そんなことないよ!私もみどりんも虹村さんも、ちゃんと声掛けてるわ!」
「だから、その誘い方が問題なんだよ。よっし!俺がそいつを誘ってやるよ」
「やめろ!もしお前の行為に、気に入らぬ事でもあったら、もう誘えなくなるのだぞ!!」
「大丈夫!んなことしねぇよ」
場所は変わりここは、第一体育館……
体育館の傍を歩いていた橙野は、中から聞こえたボールを打つ音が気になり、恐る恐る覗いた。
中では、三軍にいる黒子テツヤが一人練習していた。
(……バスケ…か)
ふと蘇る記憶……仲間と一緒にバスケットボールをつき、練習をしていた日々。
「あの」
「?」
その声に気付きふと前を見ると、目の前にボールを持った黒子が立っていた。
「……(いつの間に)」
「何か、ご用ですか?」
「……お、音が聞こえたから……それで」
「そうですか……」
「……」
ふと体育館の中を見ると、コーンが並べられておりそれを眺めながら黒子の方に目を向けた。彼の体中には汗がびっしょりと掻いていた。
「……練習してたの?」
「ハイ……早く一軍に上がって試合に出たくて」
「……バスケは好き?」
「ハイ。大好きです」
橙野の質問に答えた黒子の顔が、一瞬笑顔を見せる友の姿が見えた。
(……弥生)
「あの、どうかしましたか?」
「……ううん。
ねぇ、見てもいい?あなたはのバスケ」
「もちろんです……あ、名前聞いてもいいですか?僕は黒子テツヤです」
「……優希」
「優希さんですか」
体育館へ入った橙野は、片隅に座り黒子の練習を眺めた。
見ている間に時折蘇る記憶……
髪を結い前髪に赤いピン留めをした少女が、黒子のように練習をしていた。その練習に自分も加わり一緒に練習していた。
練習を終えた黒子は、夜の帰り道は女の子一人だと心配だと思い優希と共に帰っていた。そしてずっと黙っている優希に、話し掛けた。
「優希さん、一つ聞いてもいいですか?」
「?」
「優希さんも、バスケは好きなんですか?」
「え?」
「僕の練習を見ている最中、とても楽しそうに観ていたので」
「……バスケは好きだよ……けど嫌いなの」
「え……」
「ここで良いよ。送ってくれて……ありがとう」
「いえ」
「ねぇ……練習見に行って良い?
黒のバスケ……私好き」
「もちろんです」