黒子のバスケ~もう一人のマネージャー~   作:植物

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『優ちゃん!バスケやろう!』


初めて出来た友達が、そう誘ってきたのは小学一年生の時だった。

3人兄姉の末っ子として生まれた。歳の離れていた兄はバレー部の主将、姉は新体操部のエース……
私にとって、二人は憧れの存在であり、目標だった。そして小学校に入って私が興味を持ったのが、友達が誘ってくれたバスケだった。

始めは思うようにいかなかった……周りの足を引っ張ってばっかり。辞めようとも思った……けど、友達はそんな私をずっと支えてくれた。そしていつしか、チームで私と友は必要不可欠な存在になった。


青峰大輝との出会い

暑い夏が過ぎ、涼しくなり始め、緑の葉が紅葉になり始めた秋のこと……

 

 

“ドン”

 

 

体育館から響くボールの音……黒子の練習を毎日の様に、橙野は見に来ていた。時々アドバイスをして黒子にバスケを少しずつ教えた。

 

 

「だいぶ上手くなってるね」

「本当ですか!」

「私的には、一軍に上がれると思うんだけど……」

「なりたいです」

「……黒なら、なれるよ。

 

バスケが好きなんだから」

「……」

「あ、自販機で何か飲み物買って来るね」

「え、けど」

「奢らせて」

 

 

そう言うと、橙野はバックから財布を取り体育館を出て行った。彼女が帰って来るまでの間、黒子は再び練習を始めた。

 

しばらくして、缶ジュースを手に橙野が戻ってくると、中には黒子の他に一軍にいる青峰がいた。

 

 

「あ、優希さん」

 

 

橙野に気付いた黒子は彼女の方に顔を向けた。彼と同じ方向に、青峰も振り向いた。

 

 

「あん?女?」

「えっと……」

「青峰君です。一軍にいる」

「何だテツ?お前、女に教わってたのか?バスケ」

「はい。優希さん、とても教え方が上手いんです。

それにいつも、僕の練習に付き合ってくれますし」

「フーン……じゃあさ、1on1(ワンオンワン)で、相手してくれ」

 

 

そう言いながら、青峰はバスケットボールを橙野に投げ渡した。橙野は持っていた缶ジュースを落とし、慌ててボールを受け取った。受け取ったボールを見つめそして青峰の方を見た。彼を見た瞬間、ボロボロの服を身に纏った変わり果てた友の姿が見えた。

 

 

「……り」

「?」

 

 

手からボールを落とした橙野は、自然に目から涙を流し青峰と黒子を見た。彼女の涙に2人は驚き、顔を見合わせた。

 

 

「ごめん……それは…出来ない」

「優希さん?」

「どうしたんだよ?優希」

「……」

 

 

青峰の質問に答えず、橙野はバック持ちそのまま体育館を飛び出した。そんな彼女の様子が気になり、後を追い駆けようとしたが、足下に転がっていた缶ジュースが足に当たり黒子はそれを拾い上げた。

 

 

「テツ、何であいつ」

「……分かりません。あんな姿を見るのは、初めてですから」

 

 

それから数日の間、橙野は体育館へ姿を現さなかった。彼女を心配した黒子は、様子を見に橙野のクラスへと行った。

教室へ行くと、橙野は窓際から2番目の一番後ろの席に座り、何かを眺めていた。

 

 

「ゆ」

「おい、優希!」

 

 

黒子が呼ぼうとした時、背後から青峰が現れそして彼女の名を呼んだ。呼ばれたのに気付いた橙野は、廊下の方に顔を向けた。

 

 

「青……黒」

「優希、一緒に帰ろうぜ」

「部活は?」

「今日は休みだとさ」

「……」

 

 

街中を黒子達は並んで歩いた。歩いている間、橙野は何も喋らず黒子と青峰も何も喋らず、三人の間に気まずい空気が流れた。

 

 

「あれ?橙野じゃねぇか」

 

 

その声に反応した橙野は、脚を止め前にいる他校の男子生徒三人を見た。

 

 

「優希?」

「優希さん、どうかしましたか?」

「橙野、お前まさかバスケ部に入ったんじゃねぇよな?」

「?」

「そいつ、青峰大輝だろ?

 

今年の中学で期待の選手。帝光中学バスケ部PF(パワーフォワード)の」

「まあ、そうだけど」

「ほらな。橙野、お前あんな事件起こしときながら、またバスケ部に入部したのか?」

「事件?」

「入ってない。

 

それより、そこ退いて」

「硬い事言うなよ。俺等と少し付き合え」

 

 

青峰と黒子を退かしながら、男の一人は橙野の肩に腕を乗せてきた。そんな彼等の態度を見た青峰は橙野の腕を掴み黒子と共に歩き出した。

 

 

「あ、おい!」

「悪ぃ、コイツ今日は俺等に付き合って貰ってるんだ」

「俺等?」

「……わ!いつの間にコイツ」

「優希さんに用があるなら、別の日にして貰いませんか?」

「調子に乗るなよ?お前等」

「乗ってんのはどっちだ」

「お前等、俺等を知らねぇだろ?」

「嫌ですねぇ……時の流れというのは」

「誰なんだよ、テメェ等」

「ジュニアキング……」

「?」

「名前だけなら聞いたことあるでしょ?」

「ミニバスケットボールで、六連覇を果たした男子チームの別名」

「確かに、耳にはしたことがあります。

 

しかし、それと優希さんと何の関係あるんです?」

「俺等と同様、そいつが所属していたチームが別名ジュニアクイーン……いわば女子チームのミニバスケットボールで六連覇したチームなんだ」

「!?」

「けどそいつ、最後の試合であんな」

「もういい!!」

「?!」

 

 

何かを言い掛けた男子達に向かって、橙野は大声を上げた。そして青峰の腕を振り払い三人の元へと歩み寄った。

 

 

「青、黒……ゴメン、今日はこの人達と帰るから」

「優希……」

「優希さん」

 

 

二人に笑みを見せると、橙野は三人の男子に連れられ町の中へと消えた。

 

 

翌日、黒子は橙野のクラスへ行った。だが教室には、彼女の姿は無かった。気になり黒子は出てきたクラスメイトに話し掛けた。

 

 

「橙野?アイツ、今日休みだぜ」

「え?どうして」

「風邪だとさ」

 

 

彼女の事が気になりながらも、黒子は部活に励んだ。そして練習が終わった後、いつもの様に第三体育館へ行った。

 

 

「お!テツ、来たか」

「青峰君、もう……!」

 

 

ふと体育館のステージに目を向けると、そこに頬に絆創膏を張った優希が座り見ていた。彼女に気付いた黒子は、すぐに駆け寄った。優希はステージから降り、黒子と向き合った。

 

 

「優希さん!どうして……」

「……」

「優希さん?」

「優希、テツも来たことだ。

 

昨日の事、詳しく話せよ」

「……」

 

 

黙る優希……そして意を決意したかのように、深く息を吐きそして口を開いた。

 

 

「レッドチームって知ってる?」

「レッドチーム?」

「確か、ミニバスケの女子部門で毎年優勝してるチーム名です」

「そのチームに入ってたんだ……私。小一から」

「……」

「近所に住んでた幼馴染みだった友達が誘ってくれたんだ。

 

最初は全然駄目駄目だった。パスも出来ない、シュートも出来ないで……チームの仲間は皆、何も言わず励ましてくれたんだけど……内心迷惑掛けてるんじゃないかって思って、一度辞めようと思った。

けど、友達はそんな私を助けてくれた。練習にいつも付き合ってくれて、上達しない箇所には、アドバイスをくれたり教えてくれて……それが功を奏してか、私のバスケは日に日に上達して……

 

バスケの才能が開花したのは、チームに入って二年……小三の時だった。

初めて自分が入れた点数で、優勝した。その年を入れて三連覇……チームメイトは皆、私と友達をエースと称えてくれた。先輩も後輩も監督も皆……そしてある時、こんな異名が着いた。『光と影』。

 

 

黒のバスケは、友達のバスケと似てるの。だから、黒の練習観てて楽しかったのは、半分懐かしかったからなんだ」

「そうだったんですか」

「光と影……そう呼ばれながらも、私達レッドチームはついに五連覇した。その試合を最後に、六年生は引退して私達が継ぐことになった。キャプテンは友達で私が副キャプテン。

初めは上手くいかないことが多くて大変だったけど、周りの手助けもあって、何とか乗り切られた。

 

 

けど、六年生最後の試合の時……事故が起きたの」

「事故?」

「試合中、敵の足が私の足に絡んでそのまま横転……私は足を負傷して欠場した……そして最悪な結果になってしまった」

「……負けたのか」

「……

 

チームの皆は、泣きながら私と友達に謝った。『自分達がもっとしっかりして、二人に頼りっきりにならなければ、こんな事にならなかった』って……私も友達も皆のせいじゃないって、慰めて引退した。

 

けど、周りが許しても許してくれなかったチームがあった」

「まさか……そのチームが」

「昨日の男子が言ってた、別名ジュニアキング……」

「ミニバスケの男子部門で優勝してるチーム……ですね」

「そう……

 

男子部門最強があいつ等だった……多分プライドが許さなかったんでしょうね……

 

 

小学校を卒業に控えたある日……私達二人は、そいつ等から暴行を受けた」

「!?」

「青からボール貰った時、その時の記憶が蘇ったの……

 

友達が……傷付けられる姿が……」

 

 

次第に橙野の目から涙が流れた。その時体育館の扉が開く音がし彼等は扉の方に顔を向けた。扉を開けたのは桃井だった。

 

 

「あ!青峰君!こんな所で何……あれ?その子」

 

 

桃井の声が聞こえた途端、橙野は振り返り顔を上げず体育館を飛び出して行った。

 

 

「優希!!

 

さつき!!何しに来たんだよ!」

「そ、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない!!遅いから、迎えに来てやったのに!」

「余計なことすんな!!とっとと先に帰ってろ!!」

「何よ!!もう、青峰君なんか知らない!!」

 

 

桃井は力任せに体育館の扉を閉め、帰って行った。青峰と黒子はすぐに着替え、学校を出て行き橙野を追い駆けたが彼女の姿はどこにもなかった。

 

 

「くそ!」

「優希さん……以前言ってました」

「?」

「バスケは好きだけど、嫌いだと」

「テツ、優希を……俺達のバスケに誘おうぜ」

「はい」

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