黒子のバスケ~もう一人のマネージャー~   作:植物

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光が強ければ影も濃くなる……

私は『光』、友達は『影』としてチームを引っ張った。


レッドチーム……チーム名の由来は分からない。噂じゃ随分昔、前の前の監督の好きな色が赤だったから、そういうチーム名になったという。


『レッドチームにちなんで、こんなの買ってみたんだ!』


友達はそう言いながら、前髪に着けていた赤いピン留めを指差した。


『ねぇ、似合う?』
『……うん』
『ちょっと、何よその反応!

あ!もしかして、羨ましいとか?』
『そんなわけないでしょ』
『またまたぁ!

優ちゃんも欲しいかなって思って、もう一つ買っといたんだ!はい!』


小さな可愛い袋を、友達は私に差し出した。少し驚いて友達と袋を交互に見た後、袋を受け取った。中に入っていたのは、友達と同じ赤いピン留めだった。


『早く着けて!』


急かされ、私はピンを前髪に着けた。友達は満面な笑顔を私に向けた。


『スッゴイ似合ってる!』
『……あ、ありがとう』
『ヒヒ!これ、友情の証にしようね!私と優ちゃんが、バスケでは最高のパートナー同士、そして部外では、最高の親友って証!』


笑った友達の顔……私は、友達のその顔がまるで、私の暗かった心を照らしてくれる、太陽に見えた。


橙野優希のバスケ

ファーストフード店で買ったジュースを飲む橙野……その時笑い声が聞こえ、後ろを向いた。どこかのバスケ部の部員なのか、部活のバックを置き皆でジュースを飲み楽しそうに話していた。

その姿が、一瞬自分と友人の姿に見えた。

 

 

(……弥生)

 

 

ジュースの容器を捨て、橙野は店を出て行った。その時、背後から何かに押されその勢いのまま地面に倒れてしまった。腕を抑えながら、橙野は体を起こし振り向いた。

 

 

「よう橙野」

「……」

「少し付き合え。な~に、いつも通りの事をやるだけだ」

 

 

腕を掴まれ、無理矢理立たされた橙野は他校の男子に連れて行かれようとした時だった。突然前からバスケットボールが投げられ、ボールは男子の顔面に直撃した。

 

 

「悪ぃな。優希は今日、俺等と付き合うんだよ」

 

 

前を見ると、そこに怒りに満ちた目をした青峰がとその背後に黒子が立っていた。

 

 

「またテメェ等か!」

「一体何なんだよ!」

「そりゃ、こっちのセリフだ!テメェ等、優希に一体何の恨みがあんだよ!」

「恨みねぇ……ミニバスで、俺達男子部門は六年間優勝したのに、コイツ等のチームは五年連続優勝して、その翌年に敗退……そこにいる元副キャプテンの橙野とキャプテンだった水谷のせいで」

「敗退したからって、何で優希がお前等に付き合わなきゃならねぇんだって聞いてんだ」

「そんなもの、俺達のプライドが許さないからだ。それだけの理由だ」

「んだと」

 

 

殴り掛かろうとした青峰を、橙野は慌てて彼の制服を掴み首を横に激しく振った。

 

 

「つー訳で……さっさと橙野を、渡せよ」

「嫌なこった」

「な!」

「そんなに欲しいなら、バスケで勝負だ。俺達に勝ったら優希を渡す。

 

けど、俺に負けたら二度と優希に手を出すな。分かったな」

「俺達?お前一人じゃねぇか?」

「一人ではありません」

 

 

その声と共に背後からボールが投げられ、男子の後頭部に当たった。跳ね返されたボールは、黒子の手に戻りキャッチした。

 

 

「うわ!いつの間に!」

「何か、以前もこうだったような気が……」

「……いいぜ。けど条件がある。

 

橙野を試合に出せ。彼女が出れば、3対3の試合が出来る」

「……優希、できるか?」

 

 

怯えた様子の橙野に、青峰は話しかけた。彼の質問に橙野は不安な表情を浮かべながら、首を縦に振った。

 

 

「へ~……あんな事件起こしときながら、バスケ出来るんだ?怖いねぇ」

「それ以上の悪口は、試合に勝ってからにしろ」

 

 

他校の男子を先に行かせた青峰は、橙野の肩に手を置いた。

 

 

「大丈夫だ。俺等二人に任せろ」

「……」

「優希さん、僕達を信じてください」

 

 

そう言うと黒子は拳を差し出した。彼に続いて青峰も差し出した。二人の拳の間に一瞬友達の拳が見え、橙野は二人を信じたかのような目で、拳を軽く合わせた。

 

 

ストリートコートへ来た黒子達……先に5点取った方が勝ちというルールを言い、そして黒子がボールを上げ、それと共に試合が始まった。

先にボールを取ったのは、青峰が取り疾風の如く点を取った。その光景を見た橙野の目に数字が過ぎった。

 

 

「……5対0」

 

 

その言葉を聞いた黒子は、一瞬彼女を見た。

次々に点を入れる青峰……男子達は顔を合わせ頷き、そして彼を見て不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「……ダメ」

「優希さん?」

「青!こっちにパス!」

 

 

橙野に言われ、青峰はすぐにボールを渡した。渡したと同時に前から迫っていた一人の男子が、舌打ちをしながら青峰を見た。

 

 

「せっかく、怪我させてあいつに一生バスケできなくさせようと思ったのに」

「!?」

 

 

青峰から受け取ったボールを付きながら、二人の男子を避けた……だが次の瞬間、橙野は何かに躓きボールを持ったまま横転し、取られる寸前駆け寄ってきた青峰に投げ渡した。彼女からボールを受け取った青峰は、そのままダンクシュートした。

 

 

「優希!」

「あなた方、さっきわざと優希さんの足に」

「テツ、どういう事だ」

「僕は見てました。

 

優希さんが、彼等から避けた後走ってる彼女の足下にわざと足を出して転ばせたところを」

「!?」

「なぜ、優希さんにここまで酷いことを」

「そんなの決まってるだろ?

 

そいつ等のチームが、負けたからだ!」

「そんな理由で」

「お前等から見りゃ、そんな理由かもしれねぇけど……

 

こっちにしてみれば、いい迷惑なんだよ!!」

 

 

3人の記憶に蘇る小学校最後の大会……優勝しカップとメダル、そして賞状を貰った。翌日は男子バスケ部に皆がおめでとうって言ってくれる……

だがそれは、幻として消えた。皆負けてしまった女子チームのことを気遣い、試合を話題にしようとしなかった。友達に話し掛け優勝した事を言うと……

 

 

『君等は優勝して当然だよ。

 

けど、その話今はしない方がいいよ。女子チーム最後の試合で、副キャプテンの橙野が怪我して欠場したんだ。それのせいもあって、優勝できなかったんだ』

 

 

「俺等は勝てて当然だって言い方しやがって!!優勝したのに、居心地悪かったんだよ!!」

「女子チームが負けたせいで、俺達男子チームは体育館にも学校にも、居場所がなくなったんだよ!!」

「だから俺達は、二人に罰を与えた……心に一生残る傷を付けてや」

「喋ってる暇があるなら、試合をやりなさい」

 

 

殺気に満ちた目で、橙野は喋っていた3人の間をすり抜けシュートした。

 

 

「テメェ!!人が喋ってる時に!」

「ダラダラ文句言ってる暇があんなら」

 

 

ボールを拾った男子の前に、青峰が立ちボールを奪った。それを見た2人の男子は、すぐ青峰をマークしようと彼に向かった。

 

 

「青!」

「任せた!」

「取らせるか!!」

 

 

ボールを奪われた男子が、橙野の前に立ちボールを奪おうとした。

 

 

「あなたに、そのボールは取れない」

「何?……!」

 

 

橙野の言う通り、ボールは一瞬で現れた黒子により、青峰へと返されそのままシュートした。

 

 

結果は5対0……橙野が予言した通りの数字だった。

 

 

 

 

圧倒的な強者を前に、男子達は立ち尽くした。

 

 

「俺等の勝ちだ……もう二度と、優希に」

「……殺し」

「?」

「人殺しのくせに、バスケなんてやってんじゃねぇ!!」

 

 

その言葉に、橙野は固まってしまった。男子達は立ち上がり更に続けた。

 

 

「自分のパートナーを大親友から、バスケを奪って挙げ句の果てには、その大親友の水谷を殺したくせに!!」

「っ……」

「お前は、水谷だけじゃ足りずその2人からもバスケを奪うのかよ!!」

「水谷を殺しておきながら、のうのうと生き続けるつもりかよ!!」

「テメェ等!!いい加減しろよ!!」

 

 

転がっていたボールを拾い、青峰は男子達に向けて投げつけた。弾き返されたボールの勢いに怯え、男子達は立ち上がり一斉に逃げて行った。

 

 

「優希さん、もう大…!」

 

 

優希の方に向いた黒子だったが、そこに彼女の姿は無かった。

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