黒子のバスケ~もう一人のマネージャー~ 作:植物
体育の授業でサッカーをする黄瀬は、女子達の注目を集めていた。授業が終わると、黄瀬は同じクラスの紫原に質問した。
「黒ちん?
んー、いい人だよ」
「人間性は聞いてないっス。
あれでレギュラーって、おかしくないっスか?」
「そう?分かんない。
赤ちんと優ちんが決めたことし」
「赤ちん?誰?(優ちんは、昨日のもう一人のマネージャーの女の子だと思うけど)」
「んー……で、君誰?」
「黄瀬涼太っス!!同じクラスの!!
昨日、一緒にアイス食べたじゃないっスか!!」
「そうだっけ?」
「はぁ……聞く奴、間違えたな」
休み時間、自販機の前にいた緑間に黄瀬は話し掛けた。
「黒子のことをどう思うか…だと?」
「そうっス」
「黄瀬、何故そんな事を聞くのだよ?」
「俺の教育係っつー割には、何か……
つーか、レギュラーでもない俺の事、覚えてくれたんスね」
「赤司が注目しているからな」
「赤司?誰っスか?」
「その内分かるのだよ」
「……」
空になったカンを捨てながら、緑間は立ち去ろうとした。
「……黒子のことだが」
(今?!)
「あいつの星座は水瓶座。
今日のラッキーアイテムは、英和辞書。
ちなみに、蟹座はパペット人形なのだよ」
そう言いながら、緑間は怪獣のパペット人形を出し黄瀬に見せた。
「黒子の血液型はA型……だから、B型の俺と相性は悪いのだよ」
「それ……何なんだよ」
放課後、部活練習中黄瀬は桃井に黒子について質問した。
「え?テツ君をどう思うか?」
「そうっス。何なんスか?」
「て、テツ君をどう思うか何て……そんな」
「あの人、レギュラーとしては」
「まだ分かんないよぉ!」
勘違いした桃井は、顔を真っ赤にして逃げてしまった。
そんな彼女に軽くため息を吐きながら、黄瀬は周りを見回した。するとゼッケンが入った籠を持った橙野が目に入り、質問しようと声を掛けたがその瞬間彼女は、叫び声を上げながら近くにいた緑間に駆け寄っていった。
(お、俺……何かしたっスか?!)
悄気る黄瀬を、彼は少し離れた場所から見ていた。
「赤ちん、どうしたの?」
「いや」
紫原の質問に軽く返事をしながら、赤司は入ってきた黒子を見つめた。
その後の練習でも、黒子が活躍することはなかった。黄瀬と対決している最中も、自分にボールを取られ先輩に怒られっぱなしの黒子に、黄瀬は不満を感じていた。
「納得いかねぇっス!!」
練習終了後、黄瀬は黒子を指差しながら青峰に文句を言い放った。
「何であの人が、レギュラーなんスか?!」
「教育係を指差すなよ」
「俺とあの人、どっちが勝ったと思うっスか?」
「そりゃお前……
お前じゃん」
「じゃ、何で」
「フッ……あいつは、そうじゃねぇんだよ」
「?」
「俺やお前とは真逆。だけど」
「試合では、頼りになるよ。黒は」
タオルを持ってやってきた橙野は、青峰の言葉を繋げるかのように言った。黄瀬は頭の上にはてなマークを浮かべるかのような表情を浮かべた。そんな彼に、青峰は笑いながらこう言った。
「その内分かるよ。あいつの凄さが」
「……」
「黒子、黄瀬」
緑間が二人の名を呼びながら、四人の元へと寄ってきた。四人は顔を彼の方へと向けた。
「監督からの命令なのだよ……
明日の二軍の練習試合、二人共同伴だそうだ」
「二軍?何ですか?」
「保険なのだよ。
二軍、三軍の試合でも、一軍選手を数人入れるのだ。うちの伝統だ」
「はぁ」
「覚えておけ……
帝光の唯一絶対の理念……それは勝つことだ。
負けは論外……内容云々の話は、まず勝ってからだ」
「へぇ」
「他人事のように返事をするな。
万一負けたら、二人は二軍降格なのだよ」
「げ?!」
「頑張んなきゃね」
「橙野、お前も明日来いとのことだ」
「はーい」
「返事は短くするのだよ!」
「ヘイ」
「“ヘイ”ではない!“はい”なのだよ!!」
翌日……
黄瀬と黒子、橙野を先頭に歩いた。その間、黄瀬は黒子に勝負をかけたが、黒子は無意味だと言い断った。
そして対戦校に着き、試合を行った。だが敵チームのプレイは目に余るくらいの酷さだった。審判も審判で、その行為を見て見ぬふりをし、帝光中学は負けそうになっていた。
「酷すぎ……監督」
「そうだな……
黄瀬、出番だ」
監督に言われ、黄瀬はコートへと出た。試合を開始した途端、敵チームは黄瀬を中心に次々に危害を加えていった。黄瀬は何とか持ち堪えながら、点数を稼いでいくが一向に縮まなかった。
「……監督、黒子を」
「あぁ」
笛が鳴ると、黒子はリストバンドを着けてコートへと出た。コートへと出て来た黒子に、敵の選手はショボい等と言い馬鹿にした。
(馬鹿にするのも今の内……
さぁ、こっから反撃開始よ)
不敵に笑う橙野の表情を、黄瀬は目に入り引き攣った顔をした。
(な、なんスか?あの顔……)
「すみません……力を貸して下さい」
「……俺?!逆じゃねぇっスか?!」
「僕は影だ。点を取る光は、黄瀬君です」
「?」
試合開始の笛が鳴り、帝光チームが、先にボールを取りドリブルをして相手の動きを伺っていた。二人にマークされていた黄瀬は、ふと黒子の方に目を向けると彼は誰にもマークされておらず、ディフェンスの目にも入っていなかった。
黄瀬が2回ほど、瞬きをすると突然ボールが目の前に現れ、彼は慌てて受け取りそのままシュートした。その光景に、敵チームは皆驚きの顔を隠せないでいた。
その後の試合も、黒子と黄瀬の活躍により、試合は勝利した。
帰り道……
二軍達が喜びながら、歩いている中黄瀬は黒子に話した。
「ちょっとだけ、言ってたことが分かったっス……
けど、分かんねぇっス!」
「?」
「すべき事がもし分かったとしても、それが自分を犠牲にしなきゃいけないんだったら、俺には無理っス」
「……」
「黒子っちが凄いのは分かったけど……それって、楽しいんですか?(言いながら思った……この人は犠牲とか考えてない。
だから、凄ぇ人なんだと思った)」
「楽しくないですよ」
「?」
「負けたら、もっと」
(勝利への純粋さを)
「それより『黒子っち』って、何ですか?」
「あぁ!俺、尊敬する人には『○○っち』付けるんス」
「……辞めて下さい」
「いいじゃないですか!」
「っ……」
「それより黒子っち!」
「ん?」
「俺、バスケにはまりそうっスよ!」
笑顔を浮かべながら、黄瀬はそう言った。彼の顔を見た黒子は笑みを浮かべて言った。
「そうですか」
二人の様子を見ながら、橙野は微笑み携帯でメールを打った。そのメールは、赤司の元へと届き彼は内容を見ると微笑んだ。
その帰り道、黒子は橙野が試合前に書いた点数を見ていた。
「やはり凄いですね。優希さんの能力」
「初めはどうなるかと思ったけど、勝てて良かったよ」
「そういえば、優希っちって確か、噂の予言少女っスよね?」
「そうだけど……(優希っちって……)」
「何で、バスケ部のマネージャー何て、やってるんスか?」
「小学校の頃、バスケやってたんだけど、体壊してできなくなっちゃって……しばらくの間、黒と青のバスケ見てたら、見るのが楽しくなってそれでマネージャーで入ったの」
「へぇ、そうだったんスか……じゃあ、これからよろしくっス!」
「こちらこそ」