黒子のバスケ~もう一人のマネージャー~ 作:植物
練習をする青峰達……
黒子は昨日辞めた灰崎の事を話した。
「そうか……やっぱ、灰崎は辞めちまったか。
じゃあ、しょうがねぇな」
「少し、冷たくないですか?」
「お前が言ってダメだったんだろ?なら、しょうがねぇとしか言えねぇよ」
「……」
「灰崎はプライドが高い奴だ。俺達や先輩が言ったところで、逆効果にしかならなかったはずなのだよ」
「ですが……」
「ったく……いつまでも甘いこと言ってるな!
お互いチームメイトであると同時に、競争相手だ。いつから人の心配できるほど、偉くなったんだ?」
「……」
「振り返ってる暇があんなら走れ!」
黒子の脳裏に蘇る灰崎の姿……バッシュを焼却炉の中へ放り投げ、灰崎は黒子の前から立ち去っていった。
「集合!!」
真田コーチの呼び声が聞こえ、部員全員彼の前に集合した。
「全中の予選まで、2ヶ月を切った。よってここからの指揮は監督が取る」
「えー」
「マジかよ」
「あの、どんな方なんですか?」
「あぁそうか、テツは初めてか」
「そうだな……じゃあ、挨拶しておかなきゃな」
その声と共に、黒子の肩を誰かが手で軽く叩き、黒子はすぐに後ろを振り返った。そこにいたのは、無精髭を生やした優しそうな顔をした男だった。
「監督の白金耕造(シロガネコウゾウ)だ。よろしくな、黒子君」
「なぜ、僕の名前を?」
「当然だ。選手の名前は全て覚えている」
一同は監督を見ると、挨拶した。監督は“固くならなくていい”と言いながら、前へと出た。監督を見ていた黒子に、赤司は話しかけた。
「練習には、よく来ていたよ」
「そうなんですか」
「出来るだけ選手の素の部分を見たいそうで、二階等から何も言わずに見ている事が多い」
「思ったより、優しそうな方ですね」
「それは無い」
黒子の言葉に、青峰達からどんよりとした空気が流れ、青峰は少し怯えたような声でそう言った。その様子に、赤司は少し汗を掻き、黒子は彼等を見ながら頭に?マークを浮かべるような表情をした。
「今まで随分のどかだったからな。
ここからが本当の練習だ。遥かにハードになるが、心配するな。
若い内は何をやっても死なん」
「只々鬼の様に、厳しいだけだ」
「一つ連絡事項がある……赤司」
「はい」
監督に呼ばれた赤司は、前へと出た。
「今日付けで、虹村に代わって、赤司征十郎をキャプテンとする」
突然の発言に、選手達はざわつき始めた。監督はそんな選手達話を続けた。
「三年生も思うところはあると思うが、勝つ為の決定だ。認めろ。
虹村は、今までよくやってくれたな」
「ありがとうございます」
その帰り道、ポテチを食べながら紫原は思い出しながら話をした。
「いや~、ビックリしたねぇ」
「スゲェのは知ってたけど、まさかもうキャプテンとはな」
「けど、まだ二年生なのに……大丈夫なんでしょうか?」
「おそらく心配ないのだよ」
「?」
「赤司は、日本有数の名家の子供」
「マジっすか?!」
「その後を継ぐ為、家は厳しくあらゆる英才教育を施されている。だから…などと言うつもりはないが……
虹村キャプテンが、それ以上にチームをまとめる力があるのだよ」
「へ~……てか、緑間っちも結構育ち良さそうっスよね?実は」
「赤司程ではないのだよ。
それより紫原。歩きながら食べるのは止めろ」
「え~嫌だ」
「!オイ!!」
反攻した紫原を緑間は睨み付け訴えた。その様子に、黄瀬は青峰に話し掛けた。
「ちょ!あの二人って仲悪かったんスか?!」
「あぁ。悪いって程じゃねぇけど……
緑間は、何事もキッチリしねぇと、気が済まねぇタイプだし。
紫原は、色々とルーズな奴だから。
元から気は合ってなかったんだけど、最近特にな」
「あ~……じゃあ、原因はあれっスかね?
最近あの二人、バスケの調子がスゲェいいからっスか」
黄瀬と青峰の話を聞きながら、黒子は先を歩く緑間と紫原の背中を少し心配そうに眺めた。
そして翌日の部活練習。
「なぜそんな所に、突っ立っているのだよ!!
今のはお前が、スクリーンを掛ければ俺が完全にフリーだっただろ!」
「ハァ?!ンな面倒くさい事、やんなくてもみどチンがこっちにパスくれれば、いいじゃん!」
睨み合う二人……二人は同時に、互いの胸倉を掴み訴えた
「俺が決めた方が良い!」
「俺が決めた方が良いのだよ!」
「うわ!喧嘩辞めろおい!」
その様子を見ていた先輩は、慌てて止めに入り先輩に続いて橙野も入り紫原から緑間を離した。
「何をやっとるんだ、全く!」」
その光景を見ていた虹村は、赤司に近付きながら話し掛けた。
「おい、どうすんだ?赤司キャプテン」
「少し様子を見ましょう」
そう言いながら、二人に近寄って行く黒子を赤司は見た。言い合う二人の間に入りながら、塔野は喧嘩を止めようとしていたが、二人は一向に辞めようとしなかった。そんな二人に、黒子は怒鳴った。
「喧嘩は止めてください!
今の二人なら、僕でも勝てますよ」
「?!」
「?!」
「練習の終わった後で、勝負してくれれば証明してみせます」
練習終了後、黒子チーム(黒子、青峰、黄瀬)対赤司チーム(赤司、緑間、紫原)で、先に10点取った方が勝ちというルールに従い、試合開始した。
点差はどんどん開き、いつの間にか黒子チームが7点獲得してしまっていた。
「ちょっと赤ちん、手ぇ抜いてない?」
「まさか……俺はいつも通りだ」
「もう……」
「フッ」
黒子が投げたボールに、黄瀬と青峰が同時に跳び取ろうとしたせいで、二人は衝突した。
「痛って……
お前何やってんだよ!黄瀬!
今のは、テツから俺のリターンだろ!?」
「何でですか!!どう考えても、俺へのパスじゃなかったっスか!!」
「ああ?!俺だろ!」
「俺っス!!」
睨み合い、二人は喧嘩を始めた。その様子に、見ていた橙野は呆れて、深くため息を吐いた。
「なぜお前等も、喧嘩を始めるのだよ!!」
「はぁ……何か、もう阿呆らしくなってきちゃった」
「とりあえず、みっともない事は分かったのだよ、黒子」
そう言いながら、緑間は黒子の方を見た。黒子は動き過ぎたせいか、膝を付き嘔吐していた。
「吐いてるのだよ!!」
嘔吐する彼の元へ、橙野は慌ててタオルと水を持っていった。赤司は体育館へ入ってきた虹村に、“解決した”と報告すると外へと出た。虹村は体育館の様子を見て、誇らしげに笑みを浮かべた。