絆を紡ぐ星   作:純白のスノーマン

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こんにちは!(ノ≧ڡ≦)
皆さんお久しぶりでございます。
やっと書き終わりました。
やっとかけました。
大変長らくお待たせしました。
今回も皆さん!お付き合いください。(ノ≧ڡ≦)
それでは、袖星ワタル忍法帳の始まりです。



第三話 卒業試験

夜のひんやりと冷たい空気が誰もいない街道をひっそりと包んでいる。

 

「はぁ、はぁ………。」

 

一片も欠けていない月が薄暗い夜道を明るく照らす。

 

そんな中、俺は、義姉の手を引いて何かから逃げるようにして、薄暗い夜道を二人で駆けていく。

 

しんと静まり返った街道には、人気は無く、俺達二人の荒い息と、夜道を駆ける乱暴な足音だけだった。

 

だが……。

 

俺達のその足取りは、突如、追撃者達によって止められた。

 

何処からか現れた五人の男達は、俺達二人に襲い掛かる。

 

正確に言えば俺の隣りにただずむ義姉。

 

俺には目もくれず男達は、彼女に襲いかかった。

 

「やめろーーーー!」

 

俺は叫びにも似た雄叫びを上げながら彼女を守るために男達に飛びかかった。

 

しかし八歳と幼い俺は呆気無く二人の男に押さえられじたばたするしか無かった。

 

そして俺は乱暴に地面に押さえつけられたのとほぼ同時に彼女も捉えられ、

 

そして―――――――――…。

 

「やめろー――――――――…!」

 

俺の喉が張り裂けんばかりの絶叫も虚しく、彼女は俺の目の前で――――――――

 

殺された。

 

彼女の倒れた場所に彼女を包むように血だまりが広がっていく。

 

彼女が身に纏っていた純白の振り袖が真っ赤に染まっていくのはそれとほぼ同じタイミングだった。

 

「うあぁぁぁぁあ!――――――――…

 

ガバッ…。

 

俺は絶叫と共に音を立てて勢い良く身体にかけてあったタオルケットをまくり体を起こしていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、………。」

 

荒々しい吐息を立てながらゆっくりと周囲を見渡す。

 

あたりは明るく少し開いた窓から心地よい風と共に迷い込む鳥達のさえずりが耳に届くやいなや俺は今のが夢だというのを理解した。

 

「はぁ、はぁ、…夢か、はぁ……。」

 

俺はまだ荒々しさが収まらない息を立てながらガンガンと痛みが走る頭を抑える。

 

「今日は、卒業試験だってのに……何てものを見せんだよ」

 

汗でびっしょりに濡れた手のひらを俺はズキズキと痛む頭を抑えたまま暫く見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話 卒業試験

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な夢に無理やり起こされた俺は、時間はまだ登校するのには早い時間だったが家に一人でいるとあれこれ嫌なことを考えてしまうので早めに家を出ることにした。

 

何か妙な胸騒ぎもしていた。

 

今日は、卒業試験でもあるしさすがに緊張しているのかとも考えたりはしたが、それと言った類のものではないようだ。

 

だったらこの胸騒ぎは一体何から来るものなのだろうか……。

 

今日に限ってあ'の'日'の夢を見た…。

 

俺が〝化け物〟と称されるようになったあ'の'日'…。

 

俺のすべてが終わりそして全てが始まったあ'の'日'の夢を……。

 

俺の大切な者を奪ったあ'の'日'の夢を。

 

この何とも言えない焦燥感は夢により想起された忌々しいあの日の記憶からくるものなのだろうか……。

 

起きてから学校へ付くまでいろいろ考えたが結局この胸騒ぎが何なのか分からないままだった。

 

学校へ到着した俺はそのままクラスへと向かう。

 

いつもとは違い人気は無く、辺りはしんと静まり返っていた。

 

俺は、誰もいない廊下を一人無心で歩みを進めた。

 

廊下の窓から迷い込む暖かい風を頬に受け何処までも広がる澄み渡った青い空をぼんやりと眺めながら……。

 

教室についた俺は誰もいないだろうと予測していたが中に人の気配を感じ少し驚いた。

 

それも何だか、とっても懐かしい感じ……。

 

「―――― …姉さん…。」

 

俺は一言そう呟いてゆっくりと戸を開けた。

 

そこには、窓際の前から五番目の席に座り教科書を読んでいる少女がいた。

 

窓から軽快に流れ込んでくる風に、桃色の髪を揺さぶられ時々その綺麗な髪をかき分ける。

 

赤を貴重とした忍装束を身に纏い、頭には忍装束と同色のリボンを身につけている。

 

彼女はまだ気が付いていないようだった。

 

だが俺はここであることに気がつく……。

 

今、彼女が座っている席…その席は…。

 

俺の席だ。

 

何かの間違いだと思って、何度も彼女の座っている席が前から何番目か数え直す。

 

しかし、いくら数えてみても五番目だ…。

 

それが意味するものとは……もちろん、

 

俺の席であるという事だ。

 

どうしたらいいんだ………。

 

どいてくれって言うべきか……。

 

それとも別の席に座っておくか…

いやでもその席の人が来たらなんて説明するんだ。

 

答が出ないままこのまま入り口に突っ立っていても仕方がないので俺は行動に出た。

 

おそらく彼女は今日の卒業試験に出そうな所を教科書で復習しているのだろう。

 

その瞳はキラキラと美しく輝いているのと同時に真剣そのものだった。

 

俺の席は前から五番目と言っても教室の座席は階段のように折り重なっているため正確に言えば五段目と言ったところだ。

 

四段目に足を踏み入れても彼女は気が付かない。

 

そして俺は、彼女の座る席、正確には俺の席の前に立ち、ついに彼女に声をかけた。

 

「そこ……俺の席なんだけど…。」

 

はい、これが俺の回答です。

 

「えっ……。」

 

流石に、気がついたのか彼女はゆっくりと俺の顔を見上げた…。

 

俺と彼女の視線がぶつかり窓から入り込む風が俺達の頬をそっとなでた。

 

「ごっ、ごめん!今片付けるね……」

 

桃色の髪を激しく揺らしながら彼女は立ち上がるとそう言いながら慌てて机の上を片付け始めた。

 

そんな彼女の慌てた素振りに俺は思わず笑ってしまった。

 

「どっ、どうしたの…?」

 

彼女は、少し戸惑いの表情を浮かべたじろぐ。

 

「ごっ、ごめん、何か……面白くて…。」

 

正直、自分でも驚いた。

 

そして分からなかった……。

 

なぜ彼女の仕草を見て笑ってしまったのか…。

 

そして彼女のことを少なからずもどこか懐かしいと感じてしまったことが……。

 

「そのままでいいよ…隣いいかな……。」

 

「あっ、う、うん」

 

どうして自分の口からそんなことが自然に流れでたのか不思議だった。

 

正面に立ってんのに結局五段目行くのかよ、と心の中で自分にツッコミを入れながら彼女の横へ移動する。

 

そしてそのまま着席……。

 

だが座ったはいいものの、今日は、彼女のように教科書類を持ってきていなかったのでどうしようかと考えていると俺の席に座る少女は優しい声で俺に声をかけてきた。

 

「何か…使う?」

 

彼女は、そう言いながら、机に広げられた教科書を一つ俺に差し出してきた。

 

俺はそんな彼女の気遣いに「いいよ、大丈夫」と答えた…。

 

その癖に、俺は彼女が読んでいるであろうと思われる教科書を横から覗いていた。

 

そのページはちょうど分身の術について書かれていたページであったわけで……。

 

「ねぇ、君サクラさんだよね、……分身の術苦手なの?」

 

そんなことを問いかけていた。

 

彼女の名前を確認したのは別に、自信がなかったわけではなかったのだが一応念の為……。

 

同時に2つの質問を投げかけてしまい…サクラさんは少し困惑した表情を浮かべていたが、すぐに笑顔で頷いてくれた。

 

どちらも正解……そう言うことなのだろうかと他人とのコミュニケーション能力に疎い俺はそう考えていると…彼女は、ゆっくりと口を開いた。

 

「あのぅ……。ワタル君?その……呼び捨てでいいよ……。」

 

そんな事を言うサクラさんは、どこか恥じらいの表情を浮かべていた。

 

じゃあ………。

 

「サクラ……。これで……いいかな?」

 

俺は、それに笑顔でそう答えた。

 

それからどれくらい話しただろうか……。

 

気がつけば、教室には、もうほとんどの生徒が集っていた。

 

いつものにぎわいが教室中を包み込む。

 

彼女と話している時間は素直に楽しかった……。

 

もっと話したいと思うほどに……。

 

こんなのあ'の'日'以来、相棒と出会った時以来初めてだったから……。

 

他人に俺の存在が認められている……そう思えることは……。

 

しかしそれと同時に恐怖も感じていた。

 

いつだって、そうだ……。

 

何か、大切なものができると、そう思えることができると、いつも恐怖する。

 

俺は知っているから……。

 

大切なものを失う悲しみを……。

 

もう二度と失いたくないから…だから、人と関わりあうことを極力避けてきた。

 

〝化け物〟と呼ぶそんな人々の鋭く凍て付くような目から逃れたいとも思っていたが……、それも俺が人目を避ける大きな理由の一つだ。

 

誰か他人と関わることは、こんなにも温かくて心地良いと思える……。

 

だから俺はいつも人目を避けてきた。

 

誰かと関わるとそれを失いたく無いとそう強く思ってしまうから……。

 

ズキン……!!

 

「うっ……。」

 

「どっ…どうしたの!?」

 

朝、起きた時に感じたあの鋭い痛みが蘇り、再び俺を襲う。

 

「くっ……。」

 

そもそもこれは頭痛なのか……。

 

そういや俺は……今どこを抑えている…。

 

その時俺はようやく気がついた。

 

俺はさっきから右目を抑えていることに……。

 

眼の奥が……熱くて痛い……。

 

あまりにも奥が痛いため、俺は頭痛と勘違いしてしまったらしい。

 

右眼を覆っている指の隙間から、サクラの心配そうな表情が飛び込んでくる。

 

その表情はとても歪んでいて今にも泣き出しそうだった……。

 

彼女はまだ知らないだけ……。

 

あ'の'日'の事実を……。

 

だが、俺は彼女に問いただしたくなった……。

 

なぜ……そんな顔をするんだ……と。

 

どうして心配してくれるのか……と。

 

俺は、〝化け物〟なのに……。

 

彼女は、俺の真実を知ったらどんな顔をするだろうか、

 

俺の真実を知ってもなお、そんな顔をしてくれるのだろうか。

 

だが俺は、そんな感情を無理矢理胸の奥に押し込みそっと彼女に微笑みかける。

 

「大丈夫……ちょっと朝から頭が痛くてさ、風引いちゃったかな……」

 

、と俺はそんなことを言ってしまった。

 

その時、教室の戸が勢い良く引き開けられ、俺達のクラスの担任であるうみのイルカ先生が入ってきた。

 

それまで賑やかだった教室は次第に静かになっていく。

 

先生の少し強張った表情から俺達は、それぞれが口をつぐみ、やがて教室は静寂に包まれた。

 

イルカ先生はクラスが静かになったことを確認すると、一人ずつ力強く点呼を開始した。

 

クラスの人数は三十人。

 

三十人全員の名前が一人ずつ呼ばれるその間、今日は特別、座席は自由らしく、俺の隣にちょこんと座る少女はチラチラと俺の顔を心配層に覗きこんでいた。

 

そんな彼女に俺は、再びニコッと微笑み「もう大丈夫」とささやきかける。

 

すると少女は安心したのか、同じくニコッと笑い、先生の点呼に元気よくその美しく澄み渡った声で返事をした。

 

 

 

 

 

 

その後、クラス全員の名前を呼び終えた、イルカ先生は卒業試験に全員が出席していることで安心したのか満足した表情を浮かべ、よしと頷くとすぐに真剣な表情を作り、いよいよ本題に入った……。

 

そう今日の一大イベント……卒業試験の説明に―――。

 

隣りに座るサクラは少し緊張した面持ちで説明を待っているようだった。

 

「……で、卒業試験は分身の術にする。呼ばれた者一人ずつ隣の部屋に来るように。」

 

……分身の術か…。

 

ちらりと隣に座る少女へと視線を向けるとやはり、サクラは先刻苦手であると話していた分身の術が試験内容であることを告げられ落ち込んでいた………。

 

分身の術――――――

それは己自身の残像を作り出し主に、囮や陽動などに使われる術だ。

 

忍術の中では基礎忍術の代名詞でもあるこの術だが、うまく発動するには少しコツが入り、そのコツをつかむのも苦労する。

 

残像を作り出すだけでなく、それを維持するためのチャクラコントロールや、瓜二つの自分の像を作り出し、それを維持するために必要な像をイメージすることへの集中力。

 

これは基本、どんな忍術を発動するにあたって重要なことであるが故にこの術が基本忍術と称されているのだ。

 

一度コツを掴めば簡単なのだが……。

 

よほど自身がないのかサクラは、ずっと俯いたままでいる。

 

もう既に最初の人が呼ばれ、次々と他の人も呼ばれ始めている。

 

もういつ俺の番が来てもおかしくないし、それはサクラも同じである。

 

「次、うずまきナルト。」

 

ついにナルトも呼ばれ、緊張しているのか少し強張った声が教室中に響いた。

 

ナルトはゆっくりと席を立ち何時もと違い足をふらつかせゆっくりと教室を出ていく。

 

どうやら今日のナルトには、いつものようにふざける余裕はないらしい。

 

そんな彼の様子からも、俺達は緊張感と言うものをひしひしと感じさせられた。

 

教室から出ていく彼の背中を見送った直後、俺の左手に何か、温かいものが乗せられた。

 

俺は少し驚き、体を強張らせた。

 

やわらかくて温かいサクラの右手が俺の左手にそっと重ねられていた。

 

俺はそうだと認識した時、今までに感じた事のない気持ちが沸き起こりそれと同時に、体中が熱くなるのを感じた。

 

心臓がドクンと一回大きく飛び跳ね、それから今まで安定していた鼓動が次第に早くなるのを感じた。

 

「私……合格できるかな……」

 

俯いたまま彼女は、そう呟いた。

 

こんな時、俺には彼女にどんな声をかけてあげればいいのか分からない、

 

俺と彼女の間にしばしの間、沈黙が訪れた。

 

その間もほかの生徒の名前が次々と呼ばれていく。

 

「次、うちはサスケ」

 

そう試験官が声を上げたとき俺は、ピクリと体を動かした。

 

その振動が彼女に伝わったのか、彼女はそっと顔を上げ俺を見つめる。

 

………こんな時、相棒はなんて声をかけるだろう………。

 

俺は、そう思いとにかく懸命に考え抜いた俺なりの答を出した……。

 

「不安なのはサクラだけじゃない……、俺も不安だよ―――――。

 

 

未だ不安の色を隠せないでいるサクラを見つめ、俺は続けた。

 

 

―――――きっと上手く行く、サクラならできる。俺を信じて………。」

 

 

そして、そんな無責任なことを言ってしまった。

 

どうしてだろう、なぜ、失う悲しみを知っていながら、失った時に得る絶望感を知っていながら、俺は失うかもしれないそんなものを作ってしまうのだろうか。

 

言ったあとに俺はとても後悔した。

 

「ありがと…。ワタル君、やさしいね。ワタル君と一緒にいると何だかすごく安心する。」

 

だけど彼女は笑ってそんなことを言った………。

 

そしてその瞬間、彼女は俺にとって数少ない大切な存在、守りたい人となった。

 

「―――だったら、もしまた不安になったら…、俺のことを思い出せよ…」

 

俺の口からは、自分でもビックリするくらい自然に、そんなことを言っていた。

 

聞こえないように、

そっと言ったつもりなのに、

彼女に聞こえてしまったのか、サクラは両目を大きく見開いて再び俺と視線を交錯させる。

 

「次、袖星ワタル。」

 

俺の名前が呼ばれ、俺は彼女を見つめたままゆっくりと立ち上がった。

 

そして、もう少し俺は笑顔で彼女に声をかけていた。

 

「ほら、さっき二人で確認しただろ?大丈夫サクラならできる。俺はそう信じてる。」

 

その間、俺は一秒たりとも彼女の視線から目を逸らさなかった……。

 

「ありがと……私、がんばる。」

 

そういった彼女の表情にはもう微塵も不安の色は感じられず、むしろ笑顔で俺にそう告げた。

 

その笑顔は、朝日に照らされキラキラと光り輝く朝露のように、どこまでも澄み渡りそして美しかった。

 

俺はそんな彼女にコクリと頷くと彼女に背を向けゆっくりと教室を出た。

 

―――ありがとう、サクラ。俺こそ勇気をもらったよ。

 

そう心の奥でそっと呟きながら――――。

 

教室を出るとそこには無事に合格し、キラキラと光る額当てをしたサスケが立っていた。

 

「やっと出てきやがった……」

 

そう毒づく相棒。

 

俺はそんな相棒に対し、苦笑いで答えた。

 

「女にかまけてる暇なんてねーぞ……」

 

また更に毒づく相棒。

 

これには、俺も「見てたのかよ……」とぼやき返した。

 

表情は相変わらず固いがこれは相棒なりのお冷やかしだ。

 

俺もこれには少々やりづらさを感じる。

 

「まぁ、そんなことはどうでもいい」

 

結局どうでもいいのかよ………。

 

俺は心の中で大きなため息をついた。

 

ますますやりづれー。

 

「……そんなことより、お前頭痛の方は大丈夫なのか」

 

ドキン……。

 

俺はその言葉に敏感に反応してしまった。

 

俺は素直に驚いた。

 

全く、相棒には全部お見通しだな………。

 

「気づいてたのか…」

 

「当たり前だ、お前何度か頭を抑えてただろ……」

 

「……………。」

 

俺は相棒に心配されることに少しやりづらさを覚え、相棒の目から視線をそっと離した。

 

「それとも、目が痛むのか?」

 

それを聞いた瞬間、俺の心臓は大きく飛び跳ねた。 

 

やはり、相棒は気づいてる……。

 

俺の体に起きている違和感を……。

 

「お前、こめかみのあたりを抑えていただろ――――――

 

「大丈夫、そんなんだよなー、少し風引いたのかも」

 

俺は、相棒にこれ以上俺の体に起こっている異変を悟られないように彼の言葉を遮り無理やり気丈に振る舞って言った。

 

「……………。」

 

相棒は何処までも深く黒いその瞳で俺を見つめていた。

 

「なっ、なんだよ。」

 

「そうか……。必ず合格しろよ。」

 

「あっ、当たり前だ。俺が合格しないわけ無いだろ。」

 

相棒はまるで俺のことをすべて見透かすような瞳でそう言った。

 

「外で待ってる。終わったら少し俺に付き合え……。」

 

それを最後に彼は俺に背を向けゆっくりと靴箱の方へと歩き始めた。

 

その背中をしばらく眺めていると、隣の教室からイルカ先生がひょこっと顔を出し「何やってんだワタル。早く入れ!」とそう言うので、俺はしぶしぶ隣の教室へと足を踏み入れた。

 

そこには、「何やってんだ、遅かったじゃないか!」と毒づくイルカ先生。

 

「まぁまあ、いいじゃないですか。」とそれをニコニコとした表情を浮かべてなだめるミズキ先生の二人。

 

ズキン!!

 

「うっ………。」

 

突如、再びあの鋭い痛みが、俺を襲った。

 

ズキズキとした痛みが体中に響き渡る。

 

そのテンポはどんどん早くなってきている気がする。

 

ッたく………こんな時に……。

 

「どうした!?ワタル、大丈夫か?。」

 

驚いた表情を浮かべ少し慌てるイルカ先生は、俺の異変に気付いたのか、すぐに俺のそばに駆け寄ってきた。

 

「だ、大丈夫です…。少し、頭痛が、」

 

「苦しそうだぞ。本当に大丈夫か?」

 

俺は、イルカ先生のそんな掛け声に、コクリと静かに頷いた。

 

「すごく痛がってるじゃないか、無理するな、今回はもう―――――

 

「おっ、お願いします!やっと、やっと来たんだ、やっとスタート地点に建てる日が来たんだ………、俺は、俺はこんなとこで終われない………」

 

 

イルカ先生の言葉が終わる前に俺は、彼の言葉を遮り痛みも忘れ必死に嘆願した。

 

そう、終われないんだ。

 

こんなところで………

 

俺は、忍になるんだ……。

 

こんなところで、しかもこんな形で終わったら、あの日俺にこの両眼を捧げて命を落とした、姉さんは………なんの為に、

 

そんなことさえも俺は考えていた。

 

「じゃっ、じゃあ始めるぞ、無理はするな………」

 

先生はやれやれと言わんばかりの表情を浮かべ優しく受け入りてくれた。

 

ありがとう先生。

 

先生は、きっとほんとに俺のことを心配してくれて言ってくれてたはずだ。

 

それを俺のわがままで許してくれた。

 

下手に、失敗はできない。

 

そう考えている間にも、右眼の痛みはなかなか引かない。

 

それどころかその痛みはどんどん激しさを増している。

 

それにまた、今朝起きた時感じた違和感というべき胸騒ぎが再び胸の中で沸き起こった。

 

一体、何なんだ……この痛みと言い、変な胸騒ぎと言い、、

 

でも、今はそんなことを考えるのは辞めだ………。

 

今は何としても合格しなければ………。

 

―――――ワタル君と一緒に居るとなんだかとても安心する。

 

「―――っ!!」

 

突然、先刻サクラが俺に言ってくれた言葉と、その時の彼女の笑顔が俺の頭を瞬時に駆け巡った。

 

それとほぼ同時に、俺は我に返り、分身の術の印を結び始める。

 

――――ありがとう、サクラ。

 

その間、今の今まで鋭く傷んでいた眼から痛みは引き、それと同時に何か体中に力が込み上げてくるのを感じた。

 

そして………その印をすべて結び終えたと同時に俺は両目を見開き力強く術を唱えた。

 

その両眼には、煌めきかかった水色の瞳に二重十字のような文様が浮かび上がり、中央には瞳孔と思わせる黒い斑点が浮かび上がる……見てもいないのに俺の両眼に起きた状況が瞬時に頭に入り込んできた。

 

いや、違う正確に言えば俺が俺自身を、そしてこの部屋を他の視点で見ているそんな感覚に襲われた。

 

「影分身の術!!」

 

ボフッと激しく白煙を巻き上げ、俺は十人の俺の形をした実像を作り出した。

 

「―――!?」

 

白煙が消え去り視界が開けるとそこには、ポカーンと開いた口が塞がらないイルカ先生とミズキ先生の姿があった。

 

な、何だ今の感覚………。

 

だが俺は俺自身に起こった現象に驚愕していた。

 

今はもうあの感覚はない。

 

だが、まだ鮮明に覚えている。

 

俺の眼が、鮮やかな蒼色に輝きそしてそれを見ている俺がいたことを………。

 

昔、ある男に聞いたことがある。

 

俺には特殊な能力があると……。

 

それを手にする可能性があると………。

 

義姉の両眼を移植することで………。

 

蒼い目、二重十字のような文様………。

 

これが〝転生眼〟だと言うのか。

 

俺には、心当たりがあった。

 

そう、五年まえヒルゼンじいちゃんに引き取られる前に暮らしていた日向家本家の男にそれについて聞かされていたから。

 

「すっ、すごいなー」

 

そんなことを考えていた俺を現実に引き戻したのは先生の驚いたそんな声だった。

 

「ホントですね。」

 

そんな二人のやりとりを見て俺は、正直少し嬉しくなった。

 

「ごっ、合格だ、」

 

俺はそのイルカ先生の言葉を合い図に俺は術を解いた。

 

「よし。」

 

とにかく、やっと……やっと、スタート地点に立てた。

 

先刻まで俺を襲っていた眼の痛みはやいろいろな事象に対する驚きは綺麗に晴れ、それと引き換えに合格した事に対する歓喜が込み上げてきた。

 

――――ありがとう…サクラ。

       君のおかげで…―――。

 

「おめでとう。ワタル。」

 

イルカ先生に笑顔で、合格の証である額当てを渡され俺はほっと、安堵のため息を漏らした。

 

「何だ、ワタル。どうした?」

 

「えっ……。」

 

俺は咄嗟にそんなことを言われ、なんの事か分からず首を傾げた。

 

その瞬間、俺は、両目からなにか温かいものが流れ、頬を伝い、零れ落ちていることに気が付いた。

 

あまりにも嬉しくて、気付けなかった……。

 

自分が泣いていることに……。

 

そもそも、俺はなんで泣いているのだろう……。

 

嬉しいはずなのに……。

 

俺がいつも涙を流す時は、辛くて悲しい時…。

 

この時俺は生まれて始めて感じた。

 

人って、うれしい時にも涙を流すのだと……。

 

「ワタル。何泣いてんだ、。忍はこれからだぞ。」

 

そんな俺に、イルカ先生は優しい声で激励をし、そして笑顔で俺を見守っていた。

 

「はい………。」

 

いつまでも、止めど無く流れだす涙を必死で拭いながら俺はそっと返事をした。

 

―――ありがとう、サクラ。

 

――――やったよ。…しおり姉さん。

 

俺は強くなる。

 

ヒルゼンじいちゃんみたいに、みんなを守れるように。

 

決して折れることのない木の葉の里の大木に………。

 

俺はいつまでもいつまでも、貰ったばかりの額当てを力強く握り締めていた。




どうだったでしょうか。
今回も楽しんで頂けましたでしょうか。
少し急展開なとこはありましたが、そこは大いに反省してる次第でございます。
次回は、もう少しワタル君の過去を明かしながら転生眼についても触れます(๑•̀ㅂ•́)و✧
お気に入り登録をしてくださった方有り難うございます。
自分のモチベーションもおかげで上げ上げです。
オリキャラ、オリジナル忍術これからバンバン出していこうと思います。
それでは、また次回までサヨナラ(^_^)/
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