D×D magico   作:鎌鼬

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禍の影

 

 

協定を結ぶに当たって思い当たる事といえば交渉だろう。どれだけ利益を引き出すか、どれだけ損害を減らすか、いかに自分たちの有利な条件を、相手に不利な条件を飲ませるか。これが普通の交渉だ。アザゼルに連れられて何度か悪魔や天使との交渉の場面を見せてもらったからそう言える。

 

 

そういう意味では、今回の交渉は異質と言えるだろう。曹操が出迎えてくれて、俺が円卓に座るのと同時に俺と曹操の目の前に一枚の誓約書が現れた。そして俺と曹操は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

まぁ言ってしまえば今回の場などサインをするだけの物だ。協定の内容は既に曹操との間に口で煮詰めてあるのだから。

 

 

そんな茶番の様な協定だが、待ち望んでいたものは多かったりする。まずは神の子を見張るもの(グリゴリ)。アザゼルが戦争反対派な事もあって、この協定で仮想敵が減るのは嬉しかったりする。次にアドラー。彼らも人外を滅する為だけの組織では無く、人の世を守る為の組織なのだ。堕天使側(こちら)には人に危害を加えるつもりは無いのでこれでアドラーの目的に近づいた事になる。

 

 

俺が繋ぎをしなくともアザゼルとアドラーの思想が変わっていなければこの協定はいずれ結ばれる事になっていただろう。要は遅いか早いかの違いでしか無い。

 

 

「よし、不備は無いな?」

 

「あれば破棄して書き直せばいいさ。俺と曹操の同意の下でそれを可能にする様にしてるんだからよ」

 

「確かにそうだ。だけど訂正するのは手間だからね」

 

 

そう言いながらペンを置くと俺たちの目の前にあった誓約書が独りでに浮き上がり、曹操の側に控えていた人影の元に飛んで行った。

 

 

「不備は……無いな。ではこの誓約書は灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)のメフィスト・フェレス氏に保管してもらう事にするが良いな?」

 

「異議なし」

 

「あぁ、ゲオルグやってくれ」

 

 

俺と曹操の言葉に頷くと人影ーーーゲオルグは手元に魔法陣を描き、誓約書をどこかに転移させた。転移先はさっき言っていた灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)のメフィスト・フェレスのところだろう。あそこは魔法使いの組織の一つで、メフィスト・フェレスはそこのトップだ。前もって話は伝えてあるし、厳重に保管してくれるはずだ。

 

 

誓約書が転移された事を確認してから魔法陣を展開、そこからケースを取り出してゲオルグに向かって投げた。それをゲオルグは手を使わずに宙で止める事で受け止めてケースの中身の確認を始める。

 

 

ケースの中身はアザゼルが研究していた神器に関する物と、アザゼルが開発を進めている人工神器に関する書類だ。アザゼルは聖書の神が作った神器に深い関心を示していてそれの研究と、聖書の神が作った神器以外に人工的に神器を作れないかと模索している。神器に関しては実際のところ、分かっていない事が多い。アザゼルは全種族中で誰よりも神器に対する造詣が深いと自他共に認めているが、それでまどうやって神器が作られているのかすら理解できていないのだ。だが、人工神器の開発は上手くいっているらしい。訳がわからない。

 

 

ゲオルグが書類の中身が確かだと認めると、彼も同じ様に魔法陣からケースを取り出してこちらに投げて来た。片手で受け止めて中身を確認する。そこに入っているのはアドラーの戦力にして最高機密である〝星辰奏者(エスペラント)〟に関する書類だった。

 

 

アドラーの主戦力は神器使いや魔法、魔術使い……そして〝星辰奏者(エスペラント)〟。神器とも魔法とも魔術とも全く異なる〝星辰光(アステリズム)〟と呼ばれる異能を使う彼らはどの勢力からしても異質で、それ故に惹かれる存在だった。何故なら……この〝星辰奏者(エスペラント)〟は誰もがなれる可能性を秘めているからである。特別な血筋でも無く、高名な誰かに師事したわけでもない人間が突如として〝星辰光(アステリズム)〟を使える様になる。それは力を欲しているものからすれば垂涎ものである。

 

 

だがアドラーも馬鹿ではない。人外に対抗出来る手段を奪われない為に〝星辰奏者(エスペラント)〟に死んだ瞬間、本人の意思により肉片一つ残らずに溶かす処理システムを組み込んでいる。それにより鹵獲、捕獲されそうになった瞬間に〝星辰奏者(エスペラント)〟は自害するのでこれまで〝星辰奏者(エスペラント)〟がどういう方法で作られ、〝星辰光(アステリズム)〟を使える様になるのか不明だった。

 

 

今回の協定でその最高機密を教えてくれる辺り、アドラーの本気具合が伺える。ざっと目を通したところ、〝星辰奏者(エスペラント)〟は天然物では無く人工物。特殊な金属を用いる事で別次元にある〝星辰体(アストラル)〟に感応し、〝星辰光(アステリズム)〟を使える様になるらしい。

 

 

……これを知った感想は、()()()()()()()()。魔導的な手法で異能が使えるようになるのは分かるがこれを見る限りでは()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()。確かに科学は人間の誇るべき技術なのだが……ここまで来ると感心よりも恐れの方が強くなってくるな。まぁ、これを教えた奴が奴だから仕方が無いという納得をしてしまうのだが。

 

 

内容を大体把握したので書類をケースの中にしまって魔法陣に収納する。どうやらゲオルグも読み終えたらしく、丁度同じタイミングでケースを収納するところだった。

 

 

「やれやれ……肩の荷が下りたって言うには早すぎるけど少し楽になったよ」

 

「若いのに気苦労しているみたいだな」

 

「まぁ、確かに気苦労は多いさ。救いたいと思っていても守勢に立つ以上どうしても出遅れてしまう……でも、これで泣いている誰かを救えると思うと俺のやってきた事は無駄じゃなかったんだって救われた気分になるね」

 

「十年前に出会った時は鼻垂れ小僧だったのに、今じゃ立派な守護者の顔になっているじゃないか」

 

「鼻垂れいうのは止してくれよ……だけど、ヒサメには感謝してもし足りないな。あの時行くあても無く彷徨っていた俺をアドラー(ここ)に導いてくれたのは、他ならぬ君とコカビエルなんだから」

 

 

曹操との付き合いは存外に長い。十年前に爺さんに見聞を広げるという名目で世界を放浪していた時に、ボロボロで死にかけている曹操を見つけたのだ。その時はまだ〝牙〟が出来ていなかったので爺さんの伝手で先代のアドラーの総統に曹操を託した。だけどあの時の小僧がここまで強くなるとは正直予想外だった。何せ曹操も超越者の位に至っているからな。

 

 

そうやって曹操と昔の事を語り合っているとジャンヌが紅茶を持ってきてくれた。

 

 

「なぁヒサメ……禍の団(カオス・ブリゲード)って知っているか?」

 

 

それを飲んでいると曹操がそう言ってきた。禍の団(カオス・ブリゲード)と聞いて思わず手を止める。

 

 

「知ってる。今まで〝牙〟の任務でそれを名乗る連中と何度かぶつかった事もあるし、勧誘もされたな」

 

「俺もだ。確か……英雄派とか言ったな。俺とジャンヌ、ゲオルグとレオナルドがここに居るとどこからか調べて勧誘に来たらしい」

 

「英雄派?俺のところは転生派とか名乗っていたな」

 

「へぇ……御大層な名前を名乗っている割には一枚岩じゃないみたいだな」

 

 

俺が出会った禍の団(カオス・ブリゲード)は転生派という転生者ばかりで構成されていたが、曹操の方は違うらしい。英雄派という名前と曹操たち四人だけを勧誘したところからして、恐らく英雄の子孫や生まれ変わりを集めているのだろう。

 

 

「目的は聞いたか?ちなみに転生派は好き勝手にやるだってよ」

 

「なんで無秩序な……英雄派は人間がどこまでやれるのかを試したいんだってさ。でも活動内容を聞いて放射光ブッパした。だって戦力を集める為にマッチポンプして洗脳染みたことしたり、戦う意思の無い人間から神器を引き抜いたり……どこが英雄だよとツッコミしたくなることしかしていなかったからな」

 

「それ本当に英雄なのか?仮に英雄だとしても反英雄だろ」

 

 

人間がどこまでやれるのか調べる為に人間に危害を加えるとか本当に英雄なのか怪しくなってくるな。名乗るなら人類に害を齎す反英雄の方が似合ってる。

 

 

「まぁ禍の団(カオス・ブリゲード)に関してはグリゴリ(こっち)でも調べてるけどな……幾つも派閥があって連携が取れていないのか全然掴めない」

 

アドラー(こっち)でも調べてるけど似た様なものだな……これは連携してやった方が良いかもね」

 

「協定を結んで始めての行動が頭のネジ無くした馬鹿共の調査か……なんかやる気失くすんだけど」

 

「やる気出してくれよな。これからどうする?一応部屋は準備してあるぞ」

 

「あ〜……俺はちょっと会いたい奴居るから別行動させてもらいたけど」

 

「問題ナッシングよ〜僕チンはジャンヌとエロリストと女子会するから」

 

「フリードォォォォォォ!!」

 

「曹操と言ったな?俺と手合わせをして欲しいんだが……」

 

「お、なら俺っちも一緒に良いか?」

 

 

ふむ、みんな思い思いに行動してるな。なら俺も動かせてもらおう……ちょっと会って話し合わないといけない奴が居るからな。

 

 

「なぁ曹操、チトセがどこに居るのかーーー」

 

「ーーーその必要は無いぞヒサメ」

 

 

曹操に会いたい奴の居場所を聞こうとした瞬間に、背後から首輪が飛んできて俺の首に装着された。突然の事に硬直していると引っ張られ、柔らかな感触と共に後ろから抱き締められた。

 

 

「会いたかったぞ、ヒサメ」

 

「あはははは……チトセ=サン、お久しぶりです……」

 

 

俺を引っ張って抱き締めてきたのは黒髪を靡かせて右目を眼帯で隠した女性。アドラーの部隊の一つ、天秤(ライブラ)の隊長のチトセ・朧・アマツだった。知り合ったのは曹操をアドラーに預けた十年前ならで、それ以降猛烈な好意を向けられている。抱き締めながら俺の匂いを嗅いでいる辺り中々に逝ってる感じがする。

 

 

「チトセさんチトセさん、この首輪はなぁに?」

 

「うむ、それはお前が来ると聞いて仕上げた特注品だ。中々に似合ってるぞ」

 

「俺が聞きたいのはそういう事じゃないんですけどぉ!?」

 

「レイナーレとフリードからツイッターで教えられたぞ、二人とヤったみたいだな?なら私ともヤろうでは無いか」

 

「ちょ!!チトセ!!もうちょっと雰囲気ってのを大切にしてだなって抜けねぇ!!」

 

 

くそっ!!地味に関節決められて外せない!!チトセも超越者だから抗うにしても全力を出さないといけないが……そうすると被害がなぁ……

 

 

「そういうわけだからヒサメを借りて行くぞ」

 

「チトセちゃぁん!!頑張ってねぇ!!」

 

「ふふふ……今日まで守り抜いてきた操と膜をようやくお前の為に捧げられる……!!」

 

「あぁ……もうどうにでもなぁれ〜……」

 

 

なんか抵抗するのも馬鹿らしくなってきたので脱力してチトセのなすがままにされる。

 

 

そしてチトセの部屋にお持ち帰りされたのだった……

 

 





〜協定
要約すると、互いが困っていたら助け合いましょうというのと、堕天使は人間への干渉を極力避ける事の二つ。それと堕天使からは神器に関する研究、アドラーからは星辰奏者(エスペラント)の製造法の技術交換が行われた。

星辰奏者(エスペラント)
アドラー独自の技術によって星辰光(アルテリズム)が使えるようになった者を指す。シルヴァリオ ヴェンデッタそのままだが、この世界に星辰体(アストラル)は存在しない。別次元にあって詠唱(ランゲージ)を唱える事で干渉する事ができる。

〜曹操
十年前にボロボロになりながら彷徨っていたところを見聞を広げる為に放浪していたヒサメとコカビエルに救われる。その時は〝牙〟は存在しないで勧誘出来なかったので代わりにコカビエルの伝手でアドラーの先代の総統に預けられた。そこで自分の意思で星辰奏者(エスペラント)の施術を受ける。そして現在から一年前に超越者となり、それと同時に先代から総統の座を譲り渡される。なお、この作品の曹操は()()()()()()()()()

禍の団(カオス・ブリゲード)
厨二集団。トップはとある目的の為に組織を結成したらしいが一枚岩では無く思い思いに活動している……なお、脳内設定では旧魔王派は求道者集団、英雄派は反英雄派、ヴァーリチーム消滅、頭のネジ無くした転生派……ドウシテコウナッタ。

〜チトセ・朧・アマツ
アドラーの部隊の一つ、天秤(ライブラ)の隊長。黒髪ロングの眼帯巨乳。ついでに超越者。十年前に曹操を預けた時からヒサメに惹かれていて、出会う度に猛烈なアプローチをかけていた。今まではノラリクラリとやり過ごされていたのだがツイッターでレイナーレとフリードからヒサメに抱いてもらったことを聞いてチャンスが来たと興奮して特注の首輪を用意する。そして……ヒサメのお持ち帰りには成功したらしいがベッド勝負で負けて、首輪はチトセに着けられる事になった。なお、秘密裏にチトセのファンクラブなる女神(アストレア)挺身部隊なる物が存在するらしい。

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