ランク戦初戦から次の日、俺は夜から来馬隊と荒船隊との試合の為午前中の内に自分の隊の作戦室へ来ていた
もう直ぐランク戦午後の部が始まろうとしているので俺はそちらへ向かおうと部屋を出る、恐らく部屋を出たことが全て悪かったのだろう
「何故俺がこの席にいる?」
「すいません今井先輩。昨日に引き続き太刀川隊長にゲストとしてお越しいただく予定だったのですが…」
「理解した、誰かアイツの給料俺に寄越せ」
そう、俺は今実況席にゲストとして呼ばれてしまっている。因みに実況は三上だ、すごく申し訳なさそうにしている為こちらがいたたまれなくなってくる
「アハハ、はい。ではB級ランク戦二日目の試合、午後の部の試合は那須隊、諏訪隊、東隊の三つ巴でお送りしていきます。ゲストはこの方、昨日圧倒的勝利を収めましたボーダーのメガネ代表今井隊今井隊長と我らが風間隊風間隊長に起こし頂きました。実況は私、風間隊オペレーター三上がお送りいたします」
「歌歩、一応聞いてやる」
「太刀川さんです」
「よし、ここにいる奴ら。アイツを俺の前に差し出せば一日稽古つけてやる」
「何? 今井、それは俺にも有効か?」
出だしからグダグダしているを三上が必死に元に戻そうとしているがそれ以上にここにいない筈の太刀川の妨害が酷い。更に風間が俺の言葉に食いついてくる
「風間隊長、今井隊長の稽古とはそんなに凄いものなんですか?」
「そうだな、自分より強い相手との戦闘は貴重だ。それがより格上のと戦闘ならなおさらだ」
「買い被り過ぎだ風間さん」
「何を言う。全体指揮なら東さん、前線指揮なら今井と忍田本部長に言わせるお前の稽古が貴重でない筈ないだろう」
「何言ってんだ、戦闘はともかく前線指揮は全部見えてんのに出来ねぇとマズいだろ」
「昨日に引き続いて風間さんにも高評価の今井隊長ですが、今井隊長は今回の試合はどうお考えでしょう?」
またもや横道にそれ始めた話を三上が修正し、俺に対して聞いてくる
「そうだな、諏訪隊がどこを選んでくるかによるが。どう転んでも那須隊有利だ」
「と、言いますと?」
「十中八九諏訪さんは射線の通らない場所を選んで来るだろ、そんだけで東さんは仕事が出来ねぇ。そうなると諏訪隊得意の中距離戦だがここは那須の独壇場、となると近距離戦になる」
「しかしそうなればアタッカーの二人居る東隊有利ではないか? 東さんも中距離スナイプのスペシャリストだ」
「そうですね」
俺の解説に風間と三上が応えてくる、ようやく実況らしくなってきたなと思いながらも俺は二人にこう言った
「那須隊には友子がいる、実力でいきゃギリA級レベルだ。東さんの射線に入らずに東隊のアタッカー二人の相手くらい出来て貰わねぇとな」
「熊谷隊員ですか?」
「そうか、熊谷はお前の弟子だったな」
「あぁ、だが今回熊谷はキーマンではねぇ。この試合のキーマンはやっぱあの人だ」
ランク戦が始まる、場所は市街地Aで天候は雨だ。住宅街の建ち並ぶここはスナイパーにとっては射線の通りにくい地形だ、しかも雨と来ている。しかし想定していた場所であったためどの隊も初動が早い
「予定通り茜は隠れて待機、くまちゃんは私と合流しましょう」
「了解、一直線に向かうと誰か居るから挟み撃ちにしよう」
「そうね、一応スナイパーに注意して。なにせ東さんだから」
「了解、私は援護出来たらします!」
言うやいなや私は玲目指して走り出す、途中に居るのが諏訪さんと堤さん以外なら相手をして玲を待つ
「っ!?」
「っと、避けられましたか」
私の前に現れたのは東隊の奥寺、どうやらバックワームでレーダーから姿を消し私の死角から奇襲を掛けてきたらしい
「残念ね、もっと鋭い奇襲を知ってるの私」
「なるほど、勉強になります」
「(ごめん玲、合流少しだけ遅れるわ)」
「(わたった、私の方は諏訪さんだったわ。多分こっちに諏訪隊が来ると思うから、茜はくまちゃんのフォローを)」
「(うん、東さんには気をつける)」
「(くまちゃん先輩!援護は任してくださいよ!)」
絶対近くにいる、くに先輩ならそうするしもしかしたら既に狙われているかもしれない。そうなると早く一人でも多く仕留めないといけない
「もういいですか?」
「待っててくれたの? 意外と紳士ね。お詫びにちょっと本気になるわ」
「お手柔らかに(こりゃーさっきの奇襲で当てられなかったの痛いなー)」
「僕らも交ぜてくださいよっ!」
「奥寺無事か!」
睨み合っていたがここに小荒井、堤、笹森の三人が参戦する。各隊隊長以外全員が出揃う、まぁ茜は隠れてるけど
「おーっと! ここで乱戦が始まりました!」
「フム、これは諏訪が仕事をしているな。那須隊不利な状況か、東さんもまだ姿を見せていない」
「これは当初の今井隊長の予想を覆す状況ですが…」
乱戦が始まり風間が状況を伝えると三上がそれに乗り聞いてくる
「友子を取るつもりなら東さんも出てくるべきだったな、あれで取れられるほどウチの友子は弱くねぇ。時間が起てば諏訪さんも玲に削り取られる」
「確かに、熊谷は那須が諏訪を取るまで堪えれば勝ち。後は東さんがどっちに居るかか」
「日浦隊員はどうでしょう?」
「間違いなく友子の方だな」
「だろうな、諏訪の方にいる理由がない」
「おーっと! ここで堤隊員ベイルアウト! 続けて日浦隊員もベイルアウト! 戦況が一気に動きました!」
「これは」
「あぁ、日浦のファインプレーだ」
「くぅー、いい感じで邪魔ですね堤さん!」
「そりゃどうも!」
弧月使いのアタッカーではショットガンに押し負ける、そのことをわかっているのか私と東隊の二人は積極的に戦わず先ずは堤さんと笹森君の対処をしている
堤さんを警戒していると笹森君の弧月が、笹森君を警戒しているとと堤さんのショットガンが、今は的が三人の為対処出来ているがこのままではジリ貧だ。そう思っていると堤さんが狙撃される、続いてまたもやこことは違う場所に狙撃による攻撃が行われる
「堤さんっ!?」
「隙有り」
堤さんがベイルアウトし動揺していると笹森君を切り、その隙を逃してくれない東隊の二人掛かりの攻撃を受け流し奥寺君の片腕を切り落とす
「うわ上手っ!?」
「熊谷先輩めちゃくちゃ強くなってないですか?」
「そりゃ優秀な師匠がいるからね、今日はその師匠も見てるし。下手なことするとまた地獄見学ツアーに連れてかれんのよっ!」
言葉を言い切ると同時に二人に向かい突っ込んでいく、そしてここでテレポートを起動させ相手のすぐ後ろに転移する
「なっ!?」
「小荒井っ!」
「悪いね、師匠がテレポート好きなモノで!」
小荒井君を半分にして返す刀で奥寺君に切りかかる、奥寺君は弧月でガードしてくるが私にはくに先輩から教わった技がある
「ガードをすり抜けっ!?」
奥寺君には私の弧月が自分の弧月をすり抜けてきたように見えただろう、私も初めてやられた時はそう思った
「さて、玲ん所でも行きましょうかね」
『試合終了、勝者那須隊』
「あれ?」
あのあと見事日浦に釣られた東さんは居場所が知られ諏訪と那須の接近を許し諏訪のショットガンを受け最後に那須を道連れにベイルアウト、残った諏訪さんも那須の攻撃によるダメージが素でトリオン漏出過多によるベイルアウト、熊谷が残り那須隊の勝利となった
「今回の試合を振り返ってどうだったでしょう今井隊長」
「今回はなんと言っても茜が春秋さんを釣り出したのが大きいな、いかにもスナイパーが撃ちたくなるような登場だった。堤さんも仕留めてるし今回のMVPだな」
「前半は諏訪隊の思惑通りだったが、ノーマークだった日浦にやられた感じか」
あれは撃ちたくなっても仕方ないと思う、何せ道路に出て堤を撃ったからな
「ては一人で三人仕留めた熊谷隊員の働きはどうでしょう?」
「動きとしては悪くねぇが、手の内を見せ過ぎだな。次はこうはいかねぇな」
「流石は今井の弟子、といった所か。最後のあの奥寺の防御をすり抜けたアレもお前の入れ知恵か?」
「あぁ、俺が教えた。種は簡単だ、スローで見たらよくわかるから知りたい奴は後で見ろ」
そう簡単である、アレはただ相手の弧月分先へテレポートしてるだけだ。だからガードをすり抜ける事ができる、これは相手の防御が弧月だったり極致シールドだったりと小さくないと出来ないが効果は見ての通り抜群に高い、初見じゃ絶対ガード不可能攻撃だ
「ありがとうございます、今井隊長は夜からランク戦となっていますが意気込みなんかを聞かせてくださいますか?」
「相手は来馬隊と荒船隊だが、伊達に長い間ボーダーやってねぇって所見せてやるよ」
「俺達は防衛任務で見れないのが残念だな」
「ありがとうございました、それではゲストは今井隊長と風間隊長。実況は三上でお送りしました、今井隊長は夜のランク戦頑張ってください」
俺は夜のランク戦に向け休む為に早々に作戦室に向かう、夜飯は出水にでも持ってこさせよう。作戦室から出なければ厄介ごとに巻き込まれないのだ