あなたが幸せな時間はいつですか?
家族や友達、恋人といる時間、好きな事をしている時間・・・人それぞれ、色々と思われる事でしょう
あ、どうも申し遅れました。わたくしルウィー教会でブランの専属秘書を務めております、細氷ハクという者です。どうせ名字とか忘れてたでしょ?
えーコホン、それは置いときまして。えと何だったっけ・・・あ、そうそう幸せな時間の話ですね
前者であげた物も素晴らしいと思います。ですが私の場合はずばり睡眠ですね!
人間として生まれながらに持っている欲求、それを満たしている時こそ正に至福の時といえるでしょう
そう、私はまさに幸せに包まれているのです。夢を見る事のない、深い睡眠いわゆるノンレム睡眠です
休日の惰眠を貪ってるわけである。もうベッドと一体化している気分だ
――あぁ申し訳ない、こっちも限界が近いみたいです。今回はここまでで、さよ・・う・・・な・・・らぁ・・・・・
ハクは再び睡魔の海へと身を沈める。おいそこ、どっかでこの流れ見た事あるなぁとかいうな
ダッダッダッダ――
教会の廊下を駆けるピンクとブルーの影、ラムとロムの朝は早い・・・
ある日は怒られて逃げたり、またある日はやっぱり怒られて逃げたりと幾度となく走り抜けた廊下
だがいつも逃げるだけではない。今日はある場所へ向かっていた
「ここよ!ロムちゃん」
「うん!」
ロムとラムはある部屋の前で立ち止まる。その扉にはハクという文字、つまりはハクの部屋だ
二人は扉バーンとをあける。が深い眠りについてばかりのハクは動じず未だ睡眠という名の海を回遊中だ
「お兄ちゃん、寝てる・・・」
ロムはハクの姿を見て、頬を膨らませる
「むー・・・あ、そうだ!ロムちゃん」
「んーなに?」
同様に頬を膨らませていたラムだったが何か思いついたのか一瞬で表情が明るくなりロムに耳打ちする
「えー、ラムちゃん、危ないよ・・・」
「大丈夫、大丈夫。ほら見てて」
ラムは本棚の本のないところを登って行く
「ほら、大丈夫だよ。ロムちゃんもいけるよ」
「う、うん。分かった」
ロムもラムの説得に折れ、しぶしぶ本棚を登る
「・・・よいしょ」
「ね?大丈夫でしょ」
「うん♪」
・・・いや、十分楽しんでいる
「じゃあ、いくよ!」
「うん!」
「「せーの!」」
二人は掛け声と同時に本棚を蹴る
ロムとラムの身体は本棚を離れ、ちょうどハクの寝ているベッドの上まで来る
そこで勢いを失った二人の身体はそのまま重力に従い・・・寝ているハクへと吸い込まれた
「ぐあぁっ!?」
思わぬ強襲に見舞われたハクの口から自分の声とは思えない声が出る
思わず目を見開き、今圧倒的に足りない情報の取得を試みるが寝起きの脳には大分ハードな仕事だ
開かれたままのドア、本棚から落ちたのであろう何冊かの本。そして目の前に広がる俺の上に乗った双子の笑顔・・・
「やっと起きたわ、ハク」
「おはよう、お兄ちゃん」
「・・・・・・おはよ」
全てが分かった・・・分かってしまった・・・・
ともかく二人をベッドから降ろし、ハクもベッドから出る。クローゼットを空け、着替えながらロムラムの話を聞く事にした
「はぁ・・・んで今日はどうしたの?」
「暇!!」
起こった惨劇は分かった。それからどうしてこのような事になったのかの経緯を聞こうとすればそれは至極単純な回答が返ってくる
(暇って、それでこんな仕打ちを・・・)
「やることが無くて暇なの!」
ラムの言葉にロムもうんうんと首を縦に振る
「お得意のいたずらは?」
「いたずらはいつも同じ。つまらない」
どうやら一番の被害者ブランも飽きられたらしい
「うーん、じゃあ何かやりたい事は?」
逆に聞いてみるが二人も首を傾けて悩んでいる。
これは困った。暇なのにやりたい事が無い、これではこっちが何をされるか分かったものではない
これは一刻も早く何か手を。と考えたところでピカーンとハクの頭の上電球が明かりを灯した
「じゃあ、俺と楽しい事をしよう!」
「たのしいこと?」
二人は首をかしげているが、やるとなったらこうはしていられない。急がなくてはっ!
「そう、楽しい事。俺は準備してくるから庭で待ってて」
ハクはそう言うと部屋を出てある場所へと向かった―――
それから10分後、庭で待っていたロムとラムの元に形の異なる二つのバッグを背負ったハクが現れた
「遅い!!ハク!」
「ごめんごめん、ちょっと色々と準備するものがあってさ」
「お兄ちゃんそれ、何?」
ロムがハクの背負っていたバッグを指差して、そう言う
「これはね・・・じゃーん!」
「ラケット?」
バッグを開けると中には三本のラケットと何かの筒が入っていた
小さい子であってもしっかりと握れるグリップ、細いフレーム構造が大きさの割の軽さを実現している
つまりはバドミントン用のラケットだ。ちなみにさっきの筒はシャトルが入っている
「そ、バドミントンのラケットだよ。んでもってこれが・・・よいしょっと」
「「おお!」
続けてハクが取り出したのは簡易ネット、それを広げるとちょうど1コート分のネットの大きさになる
ハクの言っていた楽しい事というのは正にこのバドミントンの事だった。遊びといったらいたずらかゲームだった二人の事を考えれば外で身体を動かすというのも必要だ
ちなみにミナさんとブランにも話はしてある。ブランに至っては安心して小説を書ける!といつになく張り切っていたが・・・
「よーし、準備いいか?」
「おっけーい!」
「だいじょうぶ!」
ネットの向こう側の二人が返事をする。こちらはシングルス、あっちはダブルスといった感じで行う
「じゃあ、いくぞー。よっ!」
シャトルを空中に投げ、コルクの部分を打ちぬく。シャトルは放物線を描き二人の方へ飛んでいく
「ラムちゃん、お願い」
「おっけ、ほい!」
前に構えていたロムの頭上を越えたシャトルをラムが正確に打ち返してくる
こちらへと向かってくるシャトルは先ほどのハクのショットと同じ放物線を描く。普段は活発なラムだがこのショットはそんな性格とは逆に慎重で正確なショットだ
「お、やるなぁ。よっ!」
「油断、だめ」
ロムのそんな言葉と同時にシャトルがネット近くにおとされる。ロムが飛び上がり、ハクの打ったシャトルを浅く打ったのだ
「うお!くっ、おりゃ」
すかさずハクは前へと手を伸ばし打ち返す
「お兄ちゃん、さすが」
「そっちこそだよ・・・」
どうやらロムも同様に慎重な性格と逆にプレーでは攻撃的なスタイルになるらしい
こちらのショットを正確に返してくるラムとのストロークをしていれば、時折飛び出してくるロムがこちらのペースを巧みに乱してくる
こちらも何とか対応しているがさすがいつでも一緒の双子だけあって連携は完璧だ。こちらも油断ができない
始めてからお互いに点を稼ぎ、試合も終盤へと向かっている。徐々にではあるが圧されている感が否めない
はじめこそ二人にしてはネットが高く大丈夫かと心配していたが、そんな心配はするだけ無駄だったようだ
「よし!いいよ追い詰めてる!」
「うん、ナイスラムちゃん!」
結構なラリーになっているがラムもだんだんと前に上がってきており、こちらは防戦一方になりつつある。徐々にバドミントンの勝ちパターンにはめられていく
ポイントもアドバンテージを取られてしまい、二人の勝ちまで後一点となってしまった。これでは心配するどころかこれでは負かされてしまうだろう
「これで、どうだ!」
逆転の一手とラムへ割りと鋭いショットを打つが・・・
「チャンス!」
「うっ!」
ネットからの高さをさげようものならすかさずロムが手をだしてくる
なんとか上げる事に成功するが前に寄ってきているラムへのチャンスボールになってしまい、強く打ち返される。だんだんとハクの位置が下がってくる。これでは・・・
「ロムちゃん、チャンス!」
「うん!」
守備を固める為、ネットから下がって打っていたのが仇となった。ロムが最初にいた位置より少し下がっている事に気付かなかった
ロムはハクの上げた球はゆっくりと落下し、その真下にはロム。俗にいうスマッシュの構えだ
ハクはラケットを構える。が、ロムのショットは意標をついたものだ
ロムのスマッシュの構えから繰り出されたのはネット付近に落ちる球。ドロップだった
(いつそんなの覚えたんだああぁぁ)
心の中で叫びながらネットの近く、シャトルの落下地点へ全力で飛ぶ。間に合え!!
なんとか落下するより早くラケットをシャトルの下へ滑り込ませることが出来た。あとは・・・と上を見ると二人が既にネット際まで詰めていた
とることが出来なければ俺の負け、仮にぎりぎり取れてもこの二人のチャンスボールとなり、次の一打で勝敗が決してしまう。油断はおろか隙も無い
・・・だが絶体絶命の時ほど燃えるものだ
「お、りゃ!!」
ハクはシャトルを出来る限り奥へ上へ打ちあげた、二人のはるか頭上へ
「「あ!」」
ロムとラムの連携はかなり強力だった。そうつまりは強力すぎたのだ・・・
二人は連携を取りすぎた結果、動きが段々と似てきていた。そしてこの場面では同じ位置にいて並んでしまっていた、その為今後ろには誰もいない、前にいる二人の高さを超えてしまえばこっちの勝ちだ
「よし!」
ハクはうつぶせのままだが勝利を確信した。二人ではあの高さは届かない、試合はまだ終わらせないという意志を見せつけたのだ
・・・だがあまりに立ち過ぎたフラグが回収されないなんて事は無かった
「ロムちゃん!」
「うん!」
二人は声を掛け合うと二人ともジャンプした。だが当然ながらシャトルには届かない
そこでロムをラムが肩車するように体勢を変え、ラケットを振るう・・・
「「いっけーー」」
振るわれたラケットはシャトルを見事に打ち返す。うつぶせのままのハクに返されたシャトルを打つことなど出来ずシャトルはハクのコートに落下した
勝敗は決した。ロムとラムはハイタッチをし、喜んでいる
負けこそはしたが喜んでもらえたようでなによりだ
「いやー、二人とも強いよ~」
「もっちろん!」
「ぶい」
二人はこちらにピースを向けている
「あ、そうだ。ハク!」
「ん?どうした?」
「ハク負けたから罰ゲームね!」
ハクは突然告げられた内容に数秒フリーズする
「・・・・・え!?そんなの言ってなかったよな!?」
「負けたら罰ゲーム、これ絶対」
苦し紛れの反論もロムに切り捨てられる
勝ってから公表する新ルール・・・・憎いぜ
「・・・なるほど、それでこうなってるわけね」
「そう言う事らしい」
後ろから聞こえるブランの声に返事を返す
場所は変わり、ハクはリビングにいた。あれから片付けをし、昼食をとった後にここで罰ゲームを受けているところだった
その最中に執筆活動を中断させたブランが来たので、経緯を説明していたのである
「・・・で、とても罰ゲームには見えないのだけれど」
「それは俺も思った・・・」
ソファに座るハクは下を見ながら苦笑する。そこには座っている自分の上に座りながらすやすやと眠る二人の姿があった
試しにブランがロムの頬を突いてみるがロムはむにゃむにゃと口元をくすぐったそうに動かすだけだ
「起きる様子はないわね」
「まぁかなり激しくやってたから疲れたんだろうな」
罰ゲームははじめ、ハクがソファになる事だったらしいがどうやらベッドに変わったらしい
睡眠の素晴らしさを知っているハクが二人を起こせるはずも無く。ブランに救済の目を送ってみるが・・・
「私は二人がおとなしくしているうちに作業を進めるわ」
「あぁ・・・・」
そう言ってブランは立ち去ってしまった・・・酷いよブラン・・・
伸ばした手がブランを掴むことなどできず、空を掴む
「どうしたもんかなぁ・・・」
なんとなく視点を下に移せば悔しいほどに熟睡している二人が居る
「ふぁ~、何だか見てるこっちが眠くなってきたよ」
考えてみれば疲れているのは彼女たちだけではない
身体をソファに完全に預ける事にした。動けないってのも意外に辛いんだな
昼食の片づけを済ませたミナはお茶を淹れて一息つく事にした
「ふぅ・・・」
見渡すとソファに座っているのであろうハクの後ろ姿が見えた
「あら?」
声をかけようと近づくとそこにはソファで寝ている3人が居た
午前中、庭で遊んでいたようだがどうやらその後眠ってしまったようだ
「結局寝るのね・・・」
ブランも戻ってきており、3人を見てそういった
「あ、ブラン様。作業はもういいのですか?」
「ええ、取りあえず考えてたところまでは書けたし、私も休憩しないと」
「それでしたらお茶をお入れしましょうか?」
「お茶・・・そうね、そうするわ」
「分かりました。用意しますね」
ブランとミナは気持ちよさそうに眠っている3人を見てからお茶を準備している隣のダイニングへと向かった
俺「この前、バド部でさ~」
友達「バドブ・・・?」
俺「あ、バドミントン部ね・・・」
何回かこんな会話をした事がある(笑