少女の悲鳴がこだまするとき、黒き外套の男は現れる。

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初投稿&初物書きです。

いろいろ勉強不足もあると思いますが、よろしくお願いします。


仮面の魔人

 

一人の男がいる。ボロボロの外套を纏い、黒ずくめの服に身を包んだ男。

彼が見下ろす先には………ダンボール箱に入れられた子犬がいた。

くぅん、くぅんと男を見つめる子犬は弱弱しく鳴く。

 

「………。」

 

男は、子犬に手を伸ばそうと……その時だった。

男の耳には確かに聞こえた。

誰かの悲鳴が。

 

 

 

 

 

 

ビルとビルの谷間。めったに人が通らない寂れた路地裏。

少女は怯えていた。

 

ただ、学校からの帰りに近道をしただけなのだ。

家の近くにあるこの路地裏を通ると、通学路を通るよりも数分短縮できる。

早く家に帰って、好きなアニメを見て、好きな漫画を読んで楽しい時間を過ごしたかった。

それだけだったのに…

 

少女の前には、数人の影が立ちはだかった。

灰色の装甲服に身を包んだ屈強な男たち、そしてその背後に立つ2人の…いや、人ではない。

一方は血のように赤い体色をしたジャガーのような、もう一方は群青色の体色のコウモリのような。いずれも人間ではない。

怪物が2体。

 

そして、男たちの背後には血を流し倒れている男性たちが。おそらく生きてはいないだろう。

装甲服の男たちに殺されたとみて間違いはない。

 

そのような現場に出くわしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

「…見られてしまったようだな」

 

「面倒なことになった」

 

ジャガーとコウモリがこちらを見てつぶやいている。

そして装甲服の男たちに向かって言い放つ。

 

「半機神(デミマキナ)ども、あのガキを殺せ。」

 

人殺しの現場を見られた以上、生かしておくわけはいかない。

じりじりと装甲服の男たちが少女に迫る。

 

「や、やだ…こないで…」

 

死にたくない。

やりたいことはまだたくさんあるのだ。まだ学生なのだから。

しかし、無情にも死は迫る。

 

逃げようにも狭い路地裏、そして腰が抜けてしまっている。

もはやこれまでか…短い人生だった。

少女は涙を流し、恐怖に顔をゆがめ――

 

――その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

少女の目に映ったのは、黒ずくめの外套。

少女をかばうように目の前に立つ男。

 

「貴様、何者だ…?」

 

ジャガーが男に問う。装甲服たちはいったん距離をとった。

 

「この子をどうするつもりだ」

 

「知れたこと…我らの姿を見られたからには消すのよ!!」

 

吼えるコウモリをまるで無表情でみつめる男の姿に、ただ唖然とする少女。

腰が抜けて動けないが、この状況に違和感しかない。

 

怪物に襲われる自分を、謎の男が救う。どこのアニメだこれは。

 

「当然、貴様も死んでもらう。覚悟はいいか!」

 

叫ぶジャガーに、いつでも襲い掛かれるぞとばかりに構える装甲服たちとコウモリ。

自分のために、この男は死ぬのかもしれない。

恐怖で声もだせない少女は、ただこの状況を傍観するしかなかった。

 

「覚悟…?その必要は、ない」

 

男は、右手を挙げた。

掌を空へと向けて広げたあと、ゆっくりと胸の位置へと降ろしていく。

そして、目を見開き…声をあげた。

 

「変、身。」

 

 

 

 

 

 

男の体が白い光に包まれる。眩い光の中で男の皮膚が、筋肉が、細胞そのものが姿を変えていく。

そして、白い光が徐々に黒く染まっていく。

 

光が収まったとき、少女と怪物たちの目に映ったのは。

 

「き、貴様…その姿はっ!?」

 

黒い装甲に外套を纏い、黄色に輝く複眼と腰まで届く灰色の長髪。そして、腰に携えたショットガン。

少女の目にはあの黒づくめの男が、怪物たちとはまた違う…異形の黒い魔人に見えている。

 

「俺は、お前たちを潰すためにここにいる。死ぬ覚悟をするのはお前たちだ。」

 

抑揚なく話す黒い魔人の姿に、怪物たちは驚いた様子を見せる。

だが、すぐに向き直り

 

「しゃらくせえ!やれぇ!」

 

ジャガーの号令に従い、つぎつぎと装甲服の男たちが黒い魔人に襲い掛かる。

 

黒い魔人はショットガンを構え、撃ち放つ。

銃弾は眼前にいた装甲服の男の頭部を文字通り吹き飛ばし、さらに背後にいたもう一人の胴体をさらに撃ち砕く。

仲間の死にひるむことなく装甲服は黒い魔人に向かっていく。

 

魔人の拳が、装甲服の顔面を捉え、頭ごとまるでボールのように飛んでいく。

続いて拳を広げて手刀を横薙ぎに、胴体を真っ二つにする。

 

少女の目には、その光景が巨大なカマキリに立ち向かうアリのように見えた。

カマキリの斧になすすべなく切り刻まれていくアリ。

 

ふと気づくと、装甲服たちは皆死んでいた。

10人近くいたはずが、たった一人に皆殺しにされたのだ。

 

「ほう…」

 

感心するようにつぶやくコウモリ、ジャガーは腕を鳴らしつつ構える。

 

「雑魚をやったくらいでいい気になるなよ…」

 

腰を落とし、力を貯め、そして駆ける。

 

「貴様が何だろうと!俺たち機神(マキナ・デウス)の敵じゃねえんだよぉぉぉっ!!」

 

すさまじいスピードで魔人の顔めがけて左の拳を突き出すジャガー。

だが、その拳はいとも簡単に、魔人の右腕に受け止められた。

 

「敵じゃないのはお前の方だ」

 

残る左腕を振り上げ、ジャガーの左肩に叩き付ける。

人のものではない、緑色の血を吹き出しながら左肩から先が切断され、ジャガーは悲鳴を上げる。

 

「ふぅぅ……はぁぁっ!!」

 

魔人の叫びとともに放たれる回し蹴りは、完全にジャガーの頭部を捉え…勢いのままに切断する。

 

「ぎゃうっ」

 

宙を舞うジャガーの頭部を、ショットガンで容赦なく吹き飛ばす。

脳漿が飛び散り、程なくして残る胴体が力なく倒れた。

 

 

 

 

 

 

「ジャガーマキナを倒したか…なかなかの出来だな、貴様」

 

一人残されてなお、コウモリは偉そうにたたずむ。

そして翼を広げ、さらに続ける。

 

「ここは退いてやる。だが…お前はもう終わりだ。」

 

「“神首(しんしゅ)”は、邪魔者を許さない。お前はもう終わりだ」

 

そして飛び立つコウモリだったが…

 

「だれが逃がすと言った…?」

 

魔人の足から小さい鎌のような鋭利な突起が生えた。

魔人はそれを壁に突き刺し、そして、それを足がかりにして壁を上方に向けて走る。

まるで重力などないかのように走り、そして上昇していたコウモリに追いついた。

 

「なにっ!?」

 

魔人の手に握られていたショットガンの銃床から、長大な棒が出現する。

続いて、銃口の部分からは鈍く輝く刃が横に向けて生えた。

その姿はまるで死神の持つ大鎌のようであった。

 

魔人は軽々と大鎌を振るい、コウモリの羽を切り落とす。

 

「がああっ!?」

 

落下していくコウモリの腹に、魔人が降り立つ。

そして、大鎌の銃口を向ける。

 

「貴様は、何なんだ…!?」

 

「名乗るならば…」

 

魔人は落下していくコウモリの上でつぶやく。

 

「仮面ライダー…とでも呼ぶがいい。」

 

そして銃声が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

黒い外套の男は少女を立たせ、路地裏を後にする。

少女の目には先ほどの戦いの惨状は残っていなかった。

証拠隠滅のためか、装甲服の男たちやコウモリ、ジャガーの怪人の死体はほどなくして塵になって消えた。

 

あまりの出来事に、いまだ現実味を感じられない少女だったが…

 

「あ、あれ…」

 

男が、子犬を拾って去っていく姿を見て、思い出したように路地裏を走り抜けていった。

 

 

 

 

 

まるで地獄のような、謎の空間。

そこに3人の男が立っている。

 

「見つかったか、例の脱走者が」

 

「ああ、ジャガーマキナとバットマキナがやられたらしい」

 

「機神(マキナ・デウス)が2体もか…」

 

話し合う3人の男の前にはグリフォンを象ったエンブレムが輝く。

 

『奴を捕らえよ』

 

「我が“神首(しんしゅ)”よ、奴は裏切者でございます」

「裏切者には死を。それが方針だったはずでは」

 

『奴の暗く凶悪な殺意は、必ずや我らの力となる。再改造を施すために捕らえるのだ』

 

エンブレムから放たれる声に、3人の男たちは応えた。

 

「それが神首の命ならば、喜んで従いましょう」

 

「全ては、我が神首…“デウス・エクス・マキナ”のために」

 

「そして、我ら…“ジュデッカ”の宿願のために」

 

 

 

 

 

 

町のはずれにある廃墟。

黒い外套の男は瓦礫に背中を預け、子犬を撫でていた。

 

「すまないな、拾ったはいいが…食べ物がない」

 

くぅん、と一鳴きして子犬は男の手を舐める。

男は優しげな微笑みを見せる。

 

そのとき、ガサッと物音がした。

音がした方向を見ると…

 

「いたいたー…」

 

先ほど救った少女が、ビニール袋を手に立っていたのだ。

 

「君は…」

 

少女は男と子犬のもとへと歩み寄り、男の隣に腰を下ろす。

そして、袋から肉まんを取り出して差し出す。

 

「はい」

 

「あの…」

 

「はい」

 

子犬にはミルクを与えている。

男は差し出された肉まんを、恐る恐る手に取り…かぶりつく。

 

「あの…、さっきは助けてくれて…ありがとう」

 

「…俺のこと、怖くはないの…か?」

 

問われた少女は、考えるようなしぐさをして言った。

 

「怖かったけど…でも、いい人だってのはわかったから。ねぇ?」

 

少女は子犬を抱き上げて、屈託なく笑う。

その姿に、男もつられて笑顔になる。

 

「おじさん、名前は?」

 

「おじさんじゃない…」

 

「いいから、名前」

 

「……ジン。黒乃 刄(くろの じん)だ」

 

「ジンさんか。私は真白、宇津見 真白(うつみ ましろ)

 

 

 

 

 

 

この物語に名前はまだない。

 

これは、脱走者が英雄になる以前の…出会いの記録である。

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。

今後は書きたいときに書いて投稿する感じになると思います。


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