傲慢な堕天使も来るそうですよ?   作:問題児愛

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十三羽 〝ハンティング〟開始と憤怒の魔神

 ―――箱庭2105380外門。ペリベッド通り・噴水広場前。

 ルシファー・飛鳥・耀・ジン、そして黒ウサギ・十六夜・三毛猫は〝フォレス・ガロ〟のコミュニティの居住区を訪れる中、飛鳥とルシファーは早速昨日のことをからかわれていた。

 

「ヤハハ。まさか堕天使ロリの部屋が開けっぱかと思いきやお嬢様が………ねえ」

 

「い、十六夜君!?その話はもう何百回も口にしてるわよね!?いい加減にしてほしいわっ!」

 

「………飛鳥がルシファーと添い寝飛鳥がルシファーと添い寝飛鳥がルシファーと添い寝飛鳥がルシファーと添い寝飛鳥がルシファーと添い寝……………」

 

「春日部さんも春日部さんよ!呪文のように延々と唱えないでくれるかしら!?」

 

「「だが断る」」

 

「………もう好きにしなさいよお馬鹿友人共ぉおおおおお!!!」

 

 いつぞやのルシファーのような絶叫を上げる顔を真っ赤にした飛鳥。その隣では同じく顔を真っ赤にしたルシファーがずっと俯いていた。

 ルシファーからすれば魔王の爪跡を見た辺りからショックと魔力切れの疲れにより眠ってしまい、朝起きたら飛鳥に抱きしめられた状態だったわけなのだから。

 そんな光景に頭を抱える黒ウサギとジン。

 途中で例の猫耳店員に会い、忠告とエールを受けて〝フォレス・ガロ〟の居住区画を目指す。

 

「あ、皆さん!見えてきました………けど、」

 

 黒ウサギ達は一瞬目を疑った。それは居住区が森のように豹変していたからだ。ツタの絡む門を擦り、鬱葱と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

 

「………ジャングル?」

 

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

 

「いや、おかしいです。〝フォレス・ガロ〟のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず………それにこの木々はまさか」

 

 ジンはそっと木々に手を伸ばす。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動の様なものを感じさせた。

 

「やっぱり―――〝鬼化〟してる?いや、まさか」

 

「ジン君。ここに〝契約書類(ギアスロール)〟が貼ってあるわよ」

 

 飛鳥が声を上げて指さす。その門柱に貼られた羊皮紙には今回のゲームの内容が記されていた。

 

 

『ギフトゲーム名〝ハンティング〟

 

 ・プレイヤー一覧

 プライダ・S・ルシファー

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件

 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 ・クリア方法

 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は〝契約(ギアス)〟によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 ・敗北条件

 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 ・指定武具

 ゲームテリトリーにて配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

 〝フォレス・ガロ〟印』

 

 

「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです!」

 

 ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げる。飛鳥は心配そうに問う。

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

 

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操ることも、耀さんやルシファーさんのギフトで傷つけることも出来ないことになります………!」

 

「………どういうこと?」

 

「〝恩恵(ギフト)〟ではなく〝契約(ギアス)〟によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込むことで、お三人の力を克服したのです!」

 

「すいません、僕の落ち度でした。初めに〝契約書類〟を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに………!」

 

 ジンは悔しそうに拳を握りしめる。十六夜は「へえ」と感心そうに呟く。

 

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

 

「気軽に言ってくれるわね………条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何かも書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない」

 

 そう呟く飛鳥は厳しい表情で〝契約書類〟を覗き込む。するとルシファーが飛鳥の手を握って笑う。

 

「平気よ飛鳥。このギフトゲームはガルドとかいう獣男を支配できなければ傷もつけられないわけよね?なら直接が無理なら間接的に私の魔法で押さえつけてしまえば身動きは取れないはずだわ。そこを指定武具でトドメをさせばはい終了―――こんなところかしら」

 

「………本当に頼もしいわね、ルシファーさんの魔法って」

 

「ふふん、褒めても何も出ないわよ?」

 

 とか言いつつも、飛鳥に褒められて上機嫌のルシファー。分かりやすいツンデレ魔神である。

 その様子をニヤニヤと見つめる十六夜と耀。苦笑する黒ウサギとジン。

 飛鳥が嬉しそうに見つめてくる中、ルシファーはスッと門を見つめてその奥から感じる力に表情を険しくする。

 

「(だけど恐らく私は飛鳥達と共闘は叶いそうにないわね………。この感じる魔力は恐らく私の同士が後ろに控えているわ。そしてこの強すぎるほどの『憤怒』の感情を露にしているのは―――)」

 

「―――ルシファーさん!」

 

「へ?」

 

「へ?ではないわ。突入するわよ!」

 

 考え事をしていたルシファーに声をかけた飛鳥。ルシファーは振り返ると飛鳥・耀・ジンを門前で待たせていた。

 ルシファーは慌てて三人の元へ駆け寄り、門を開けて突入した。

 

 

―――――――――――――――

 

 

「………突入したみたいだな。さて、我はルシファーの相手をしに行くか」

 

『オゥ。しっかり働いて来やがれよ、ロリサーモン』

 

「サタンだと言っているだろうがッ!!我は幼い鮭ではないぞ腐れバエッ!!!」

 

『アァ、間違えた。行ってこいロリマモン』

 

「マモンってもはや別の悪魔になっているだろ!?絶対に『ごうよくのま』の住人であるマモンが今ごろクシャミしてるぞ!?つーかマジで黙れ駄バエッ!!」

 

 とことんベルゼブブに弄られて激昂するサタン。ケラケラと笑うベルゼブブ。

 アスタロトは深い溜め息を吐いた。

 

『喧嘩はその辺にしてください。というよりインカム越しでも喧嘩をなさるなんて本当に仲がよすぎですね』

 

『アァ。サタンはルシファーの化身だからなァ!弄りやすいったらありゃしねえッ!!』

 

「我は貴様の玩具ではないぞ!?………はぁ、本当に駄バエの相手は疲れる」

 

『オゥ!?そうべた褒めすんなよなァ、ロリサモン』

 

「幼女召喚するなよ変態(ロリコン)!?いや割りと本気でッ!!」

 

『だが断るッ!!』

 

 ゲラゲラとベルゼブブの笑い声がサタンの耳に取りつけているインカムから大音声で聞こえてくる。

 サタンは盛大に溜め息を吐くと、インカムを取り外して―――バキャッ、と怒りを籠めて踏み砕いた。

 

「………さて。駄バエのせいで溜まった鬱憤は―――ルシファーにぶつけるとするか」

 

 サタンは12枚の黒い翼を広げて、ルシファーに八つ当たりしに行った。

 

 

―――――――――――――――

 

 

 門の開閉がゲームの合図だったのか、生い茂る森が門を絡めるように退路を塞ぐ。

 光を遮るほどの密度で立ち並ぶ木々は人が住める場所とは思えない。

 街路と思われるレンガの並びは下から迫り上げる巨大な根によってバラバラに分かれ、もはや人が通れるような道ではなくなっている。これでは何処から襲ってくるのか分からない。

 緊張した面持ちのジンと飛鳥に、耀が助言する。

 

「大丈夫。近くには誰もいない。匂いで分かる」

 

「あら、犬にもお友達が?」

 

「うん。20匹ぐらい」

 

「詳しい位置は分かりますか?」

 

「それは分からない。でも風下にいるのに匂いがないのだから、どこかの家に潜んでる可能性は高いと思う」

 

「ではまず外から探しましょう」

 

 飛鳥が提案すると、ルシファーが彼女の手首を掴んで引き止めた。

 

「え?ルシファーさん?」

 

「探す必要はないわよ飛鳥。あの獣男ならその人間が言った通り家に―――奥にある屋敷の中にいるわ。階層は二階で指定武具らしい剣を背に守って………ね」

 

「え?それは本当ですか!?」

 

 ジンは驚いて聞き直す。ルシファーは首肯して続ける。

 

「ええ。私は全能の魔法使いよ?この程度のことを探知するのは造作もないわ」

 

「………え?ルシファーの魔力って尽きたんじゃ………」

 

「一睡すれば全快よ。舐めないでくれるかしら、人間」

 

「む」と耀は不機嫌そうな顔でルシファーを睨む。相変わらず飛鳥以外は〝人間〟のままで呼び方を変えようとしない。

 ルシファーはそんな耀を無視して飛鳥に紙片のようなモノを手渡した。飛鳥は首を傾げて問う。

 

「………これは何かしら?」

 

「それは私が作ったオリジナルの魔法紙片よ。使用すれば闇で出来た鎖が出てくるわ」

 

「鎖?………もしかしてこれであの外道を拘束しなさいってことなの?」

 

「そうよ。だけどそれを起動させるにはこの紙片を支配できなければ不可能なの」

 

「支配?」

 

 耀が小首を傾げて問う。ルシファーはまた首肯した。飛鳥は難しい顔をして呟く。

 

「支配、ね。私にルシファーさんのギフトを支配できるかしら………」

 

「………飛鳥」

 

「飛鳥さん………」

 

 その呟きに耀とジンは苦い顔をする。たしかにあの白夜叉でさえ魔力切れになる前のルシファーには攻撃が一切通じなかったのだ。

 そんな彼女のギフトを支配するなんて可能なものだろうか、と飛鳥達は思ったからである。

 ルシファーは首を横に振って飛鳥の手を握って笑う。

 

「大丈夫よ、飛鳥。どうしてかは分からないけど貴女のギフトは私に通じたわ。だからギフトだって支配できるはずよ」

 

「え?でもあの時ルシファーさんを支配できたのって弱ってたからじゃ………」

 

「あら?飛鳥のギフト程度じゃ本来堕天使を支配することは出来ないわ」

 

「え?」

 

「弱っていようがなかろうが私は堕天使よ。それでも私を支配できたのは飛鳥の何らかのギフトが私の闇の力を掌握したんだと思うわ。だから―――もっと自分の力に自信を持ちなさい?」

 

「………ルシファーさん」

 

 落ち込む飛鳥を励ますルシファー。その優しさに飛鳥は嬉しそうな笑みを浮かべて彼女の頭を優しく撫でる。

 すると気持ちよさそうに目を細めて飛鳥に抱きつくルシファー。

「え?」と驚く飛鳥。だがルシファーは5秒ほどたったらすぐに飛鳥から離れて、

 

「………耀。ちょっと来て」

 

「え!?」

 

 耀は思わず驚愕した。それはルシファーに今まで名を一切呼ばれていなかったからだ。さらに、

 

「!?」

 

「「は?」」

 

 耀がルシファーに近づくと彼女が抱きついた。耀は驚きと困惑に支配され、飛鳥とジンに至っては間抜け面をして驚いている。

 ルシファーは飛鳥にしたのと同じく5秒ほどたったらすぐに耀から離れて、

 

「最後はジンね。来て」

 

「はい!?」

 

 今度はジンの名前を呼び来るように催促する。ジンはわけが分からぬままルシファーに近づく。すると、

 

「!?」

 

「なっ!?」

 

 今度はジンに抱きつくルシファー。相手が異性ということもあり、飛鳥と耀は驚愕した。ジンも唖然としている。

 ルシファーは彼女達と同様に5秒ほどたったらすぐにジンから離れて、三人の顔を見回して頷く。

 

「ふふ。これでもう大丈夫よ」

 

「「「何が!?」」」

 

 全くである。飛鳥はだいぶ慣れてきているが、耀とジンに至っては初めてだ。

 ジンなんか年頃の近い女の子に抱きつかれたようなものだから動揺が激しかった。

 ルシファーはそんな三人にクスリと笑い、

 

「何がって―――〝おまじない〟よ」

 

「「「おまじない?」」」

 

「ええ。どんなおまじないかはじきに分かるわ。それに―――お迎えが来てしまったみたいだわ」

 

「え?」と飛鳥達が疑問の声を発すると、ルシファーは右手を前に出して虚空にある何かを掴むような仕草をした。

 すると虚空から闇色の剣が出現し、ルシファーはそれを握り構える。のちに分かることだが、この剣は闇で出来たモノで光で出来た剣でないと破壊すら敵わない代物だ。

 

「ルシファーッ!!!」

 

 第五宇宙速度以上で飛翔してきた黒い何かはルシファーの名を叫びながら急降下してきた。

 ルシファーに振り下ろされた闇の剣は、同じ闇の剣を交わせることで受け止める。

 

「きゃあ!」

 

「わっ」

 

「うわっ!?」

 

 その衝突で生まれた余波によりルシファーの近くにいた飛鳥達は吹き飛ばされて悲鳴を上げる。だがその余波に巻き込まれたのにも関わらず彼らは無傷だった。

 これにより飛鳥達にかけられた〝おまじない〟がルシファーの加護であることに気づく。

 飛鳥は慌てて立ち上がり、ルシファーに向かってお礼をした。

 

「ルシファーさん!おまじないって貴女の加護だったのね!ありがとう………!」

 

「ふふ。お礼を言っている暇はないわよ飛鳥。獣男の討伐をお願いね?私は―――襲撃者の相手をするから」

 

「わ、分かったわ。気をつけてね、ルシファーさん」

 

「それはこっちの台詞よ、飛鳥。まあ―――お互いにね」

 

 飛鳥とルシファーは笑みを交わし合うと、飛鳥は耀とジンを連れて先を急いだ。

 その様子を見届けたルシファーは、改めて闇の剣同士を交わせている襲撃者に視線を戻す。

 

「悪いけど飛鳥達には手出しさせないわよ?………サタン」

 

「フン、安心しろルシファー。あんな雑魚共にはハナから用はない!我の目的は―――ルシファー、貴様を虎の下へ行かせないことだからな」

 

「そう………それならいいわ。だけどその態度、気に入らないわね。サタン、貴女は私の化身だったはずだけど」

 

「ハッ、笑わせるなよ小娘!貴様の闇は徐々に光に侵食されつつある。『傲慢』が消滅するのも時間の問題だ」

 

「え?」

 

 ルシファーはキョトンとした顔で固まる。だが彼女の性格が柔らかくなりつつあるのはそのせいなのかもしれない。

 サタンはフン、と鼻を鳴らしたあと、ルシファーに凶悪な笑みを浮かべて告げた。

 

「だが安心しな。貴様の闇の力が光に侵食され尽くす前に―――我が貴様を殺し、〝ルシファー〟となってやろうじゃないか!」

 

「―――ッ!!?」

 

 サタンの言葉にルシファーは絶句した。まさか自分の同士かつ化身であるサタンが、命を狙ってこようとは思いもしなかったからだ。

 一方、サタンは八つ当たりのつもりで来たはずだったのだが、ルシファーの身に起きている異常が発覚してあの様なことを口にしてしまった。

 

「(やってしまった………我はなんて大それたことを口にしてしまったのか………!我らが主にあんな態度を………絶対に殺されるな)」

 

 ダラダラと冷や汗を流すサタン。勿論彼女は最初からルシファーを殺すつもりなど毛頭ない。

 だが『憤怒』を司っているためか、怒りっぽく言いたいこととは正反対のことを言ってしまうのがしばしばだ。

 サタンが本当に言いたかったのは恐らく―――『我が何とかしてみせるから貴女は心配する必要はない』だろう。憐れな性格である。

 これは余談だが、ベルゼブブに対しては嘘偽りなく本音を零している。彼のことは本当に嫌いなようだ。

 

 話を戻し、絶句していたルシファーは覚悟を決めて口を開いた。

 

「―――分かったわ。サタンがその気なら来なさい!全力で―――――相手してあげるわっ!!」

 

「(やっぱり怒らせちゃったようだぞ!?はぁ、我は―――無事に生きて帰れるだろうか………)」

 

 ルシファーは額に青筋を浮かべて笑っている。サタンは自分の身に危機を感じながらも、決死の覚悟で彼女に戦いを挑むのだった。




次回はバトル尽くしになりそうです。

内容をちょい見せです。

飛鳥&耀VSガルド
ルシファーVSサタン
十六夜VSベルゼブブ
黒ウサギVSアスタロト
ジンとレティシアは………観戦者←

十六夜と黒ウサギの魔神戦は力試し程度なので激戦はおあずけになります。
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