傲慢な堕天使も来るそうですよ?   作:問題児愛

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基本5000文字以内を目指す所存です。

早速6000文字とオーバーしてしまいましたが(苦笑)


二羽 箱庭の説明と幼きリーダー

「―――あ、ありえない。ありえないのですよ。まさか話を聞いてもらうために一時間以上も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

「………アンタら後で覚えてなさいよね。人間風情が私の羽に触ること事態万死に値するんだからッ!!」

 

 涙目の黒ウサギとルシファー。結局共に半刻以上ずつもの間ウサ耳を、羽を引っ張られたそうだ。

 恨めしい瞳を問題児達に向けるルシファー。するとそれに気がついた飛鳥がニヤリと笑って、

 

「あら?物足りなかったかしら、ルシファーさん?」

 

「そんなわけないでしょう!?羽を引っ張られて喜ぶとか、ドMでもない限りありえないっての!」

 

「え?ドM違うの?」

 

「違うわよ!?」

 

「飛び跳ねて喜んでたじゃねえか」

 

「喜んでないわ!痛かったから仕方がなかったじゃないっ!」

 

「「「え?もっと引っ張って欲しい?」」」

 

「違うって言ってんでしょうがッ!!」

 

 ルシファーの怒号が辺りに響き渡る。黒ウサギは人間が堕天使と漫才みたいな事をやっている光景に瞳を瞬かせていた。

 まあ、悪魔がヒトを騙し誑かすのが一般的な話だが、逆は実に滑稽な事だろう。

 黒ウサギはこの光景を何故か微笑ましく思った。

 

(これなら人間と堕天使という種族の違いでも仲良くやっていけそうな気がするのです)

 

 なんて言ってる場合ではない。折角問題児達に話を聞いてもらえる状況を作ることに成功したのにコレではまた時間がどんどん経過してしまう。

 黒ウサギは「んんっ!」とわざとらしく咳払いをして、

 

「いつまでもルシファーさんを弄るんじゃありません!黒ウサギの話を聞いてくださるのでしたら然るべき態度でお願いするのですよ!」

 

「「「はーい」」」

 

 適当に返事した問題児達はルシファーをからかうことをやめて黒ウサギの前の岸辺に座り込んだ。ルシファーも彼らから距離をおいて岸辺に座った。

 黒ウサギはそれを確認すると両手を広げて説明を開始した。

 

「ようこそ、〝箱庭の世界〟へ!我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚致しました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は普通の人間ではございません!ルシファーさんがいい例ですが、その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその〝恩恵〟を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

 箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は挙手して質問した。

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う〝我々〟とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するに当たって、数多とある〝コミュニティ〟に必ず属して戴きます♪」

 

「嫌だね」

 

「冗談じゃないわ」

 

「属して戴きます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの〝主催者(ホスト)〟が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

 

「………〝主催者〟って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示する為に独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが〝主催者〟が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。〝主催者〟次第ですが、新たな〝恩恵(ギフト)〟を手にすることも夢ではありません。

 後者は参加の為にチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらは全て〝主催者〟のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね………チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間………そしてギフトを賭け合う事も可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然―――ご自身の才能も失われるので悪しからず」

 

 愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる黒ウサギ。その挑発とも取れる笑顔に、同じく挑発的な声音で飛鳥が問う。

 

「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらっていいかしら?」

 

「どうぞどうぞ♪」

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

 黒ウサギの発言に飛鳥は片眉をピクリと上げる。

 

「………つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

「お?」と黒ウサギは驚く。

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します―――が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし〝主催者〟は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

 黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

 

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界に於ける全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させて戴きたいのですが………よろしいです?」

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

「………それなら私もよ。―――と言いたいところだけど聞きたい事は恐らく貴方と同じだから発言権は譲るわ」

 

「へえ?それじゃあお言葉に甘えて―――黒ウサギ」

 

「は、はい。何でしょう?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

 十六夜が威圧的な声を上げて立ったことと、ずっと刻まれていた軽薄な笑みを消していた表情を見て緊張が走る黒ウサギ。十六夜はスッと目を細めて、

 

「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。俺が聞きたいことは………たった一つ」

 

 十六夜は黒ウサギから視線を外し、他の三人を見回し、巨大な天幕によって覆われた都市に目を向ける。

 彼は何もかもを見下すような視線で、

 

 

「この世界は………面白いか?」

 

 

「―――――」

 

 他の三人も無言で返事を待つ。彼らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。

 

 

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。

 

 

 それに見合うだけの催し物があるのかどうかこそ、四人にとって一番重要な事だった。

 黒ウサギは満面の笑みで、

 

「―――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証致します♪」

 

 

―――――――――――――――

 

 

 ―――場所は箱庭外。どこかの島に聳え立つ煉獄塔最上層『ごうまんのま』に通じる廊下。

 

「―――♪」

 

 鼻歌を歌いながらスキップするようなステップで廊下を歩く紫色の髪の少女アスタロト。彼女の向かう先はルシファーの部屋だ。

 ルシファーとは対照的の白いワンピースをパタパタさせながら。

 だが、部屋にだいぶ近づいてきたところで異変に気がついた。

 

「―――あれ?ルシファー様のお部屋が開けっ放しになってます………?」

 

 何時もはきちんと閉まっているはずの部屋が―――開けっ放しだったのだ。おかしいと思ったアスタロトは急いで駆け出すと部屋の中を紅と蒼のオッドアイが覗いた。

 そこにはルシファーの姿はなく、蛻の殻だった。代わりに紅い絨毯の上には一枚の手紙が落ちていた。

 アスタロトはその手紙を拾い上げて読む。

 

「えっと、『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの〝箱庭〟に来られたし』!?」

 

 ハッとして封筒の方も拾い上げて見ると、『プライダ・S・ルシファー殿へ』と達筆に記されていた。アスタロトはすぐさまルシファーが〝箱庭〟というところに拉致られたのだと悟り、

 

「こ、こうしちゃいられません!ルシファー様が何者かに拉致られたことを―――ベルゼブブ様にご報告致しませんと!」

 

 アスタロトは大至急第五層『ぼうしょくのま』に棲まうベルゼブブの下へ向かった。

 

 

―――――――――――――――

 

 

 ―――場所は戻って箱庭2105380外門。ペリベッド通り・噴水広場前。

 箱庭の外壁と内側を繋ぐ階段の前で戯れる子供達がいた。

 

「ジン~ジン~ジン!黒ウサの姉ちゃんまだ箱庭に戻ってこねえの~」

 

「もう二時間近く待ちぼうけでわたし疲れたー」

 

「………そうだね。みんなは先に帰っていいよ。僕は新しい仲間をここで待っているから」

 

 口々に不満を吐き出す友人達に、ジンは苦笑しながら帰るように指示を出す。

 

「じゃあ先に帰るぞ~。ジンもリーダーで大変だけど頑張ってな~」

 

「もう、帰っていいなら早く言ってよ!わたしの足なんてもう棒みたいよ!」

 

「おなか減ったー。ご飯先に食べていい?」

 

「うん。僕らの帰りが遅くなっても夜更かししたら駄目だよ」

 

 ワイワイと騒ぎながら帰路につく少年少女と別れる。ジンは石造りの階段に座り込み、暇を持て余したのか外門を通る人々をぼんやりと眺めていた。

 そこへ、

 

「ジン坊っちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」

 

 ハッと顔を上げるジン。外門前の街道から黒ウサギと女性三人が歩いてきた。

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性三人が?」

 

「はいな、こちらのお四人様が―――」

 

 クルリ、振り返ったがすぐにカチン、と固まる黒ウサギ。

 

「………え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から〝俺問題児!〟ってオーラを放っている殿方が」

 

「ああ、十六夜君のこと?彼なら〝ちょっと世界の果てを見てくるぜ!〟と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」

 

 そう答えた飛鳥は上空4000メートルから見えた断崖絶壁を指差す。

 街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を逆立てて問いただす。

 

「な、なんで止めてくれなかったんですか!」

 

「〝止めてくれるなよ〟と言われたもの」

 

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

 

「〝黒ウサギには言うなよ〟と言われたから」

 

「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょうお二人さん!」

 

「「うん」」

 

「NO!?………それでルシファーさんはどうして黒ウサギに言わなかったのですか!?」

 

「そうね。私はあの人間に〝世界の果てを見に行かねえか?〟と誘われたわ。勿論断ってやったけど。貴女に言わなかったのは、私は別にあの人間がどうなろうが知ったことないわってことよ。ご理解戴けたかしら?」

 

「あ、なるほど!そう言うことだったのですね―――こんのお馬鹿様!!」

 

 黒ウサギはどこから取り出したのだろうか、ハリセンを振り上げルシファーの頭にスパァンと奔らせた。

 

「いぎゃ!」

 

「「「「え?」」」」

 

 謎の悲鳴と共に頭を押さえるルシファー。予想外の反応に四人は驚く。

 代表して飛鳥がルシファーに尋ねた。

 

「………貴女もしかして、頭を叩かれるのは痛かったりするの?」

 

「何よ、文句あんの?頭を叩かれて痛くないっていうヒトが寧ろ存在するわけ?」

 

「そう。いいことを聞いたわ。教えてくれてありがとう、ルシファーさん」

 

「え?」と飛鳥にお礼を言われた意味が分からず小首を傾げるルシファー。彼女が自分の失言に気づくのは、ずっと後の話である。

 飛鳥の嬉しそうな笑みを見て黒ウサギと耀も察して、悪どい笑みを浮かべた。ジンは心の中で「ご愁傷様です」と唱えた。

 だがジンは〝世界の果て〟の話を思い出すと蒼白になって叫んだ。

 

「た、大変です!〝世界の果て〟にはギフトゲームの為野放しにされている幻獣が」

 

「幻獣?」

 

「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に〝世界の果て〟付近には強力なギフトを持った者がいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」

 

「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」

 

「ゲーム参加前にゲームオーバー?………斬新?」

 

「ふん。私の羽を引っ張った罰ね、いい気味だわ」

 

「冗談を言っている場合じゃありません!―――って最後の方は酷くないですか!?」

 

 ジンは必死に事の重大さを訴えるが、二人は肩を竦めルシファーだけはフンと顔を背けた。

 黒ウサギは溜め息を吐いてジンに振り向いた。

 

「はあ………ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、お三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「わかった。黒ウサギはどうする?」

 

「問題児を捕まえに参ります。事のついでに―――〝箱庭の貴族〟と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」

 

 黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、艶のある青い髪を淡い緋色に染めていく。外門めがけて空中高く飛び上がった黒ウサギは外門の脇にあった彫像を次々と駆け上がり、外門の柱に水平に張り付くと、

 

「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフをご堪能ございませ!」

 

 黒ウサギは、淡い緋色の髪を戦慄かせ踏みしめた門柱に亀裂を入れる。全力で跳躍した黒ウサギは弾丸のように飛び去り、あっという間に四人の視界から消え去っていった。

 巻き上がる風から髪の毛を庇うように押さえていた飛鳥が呟く。

 

「………箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」

 

「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが………」

 

「そう」と飛鳥は空返事をする。彼女は心配そうにしているジンに向き直り、

 

「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、お言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」

 

「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。三人の名前は?」

 

「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」

 

「春日部耀。そこで腕組みしてるのが」

 

「プライダ・S・ルシファーよ。名前なんか好きに呼べばいいわ」

 

「え?あ、はい。よろしくお願いします」

 

 ルシファーのぶっきらぼうな返事にジンは驚きながらも頷いた。飛鳥は躾の悪い子供を見るかのような瞳をルシファーに向けた後、

 

「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」

 

 飛鳥はジンの手を取ると、胸を躍らせるような笑顔で箱庭の外門をくぐるのだった。




ルシファーの同士一人目はアスタロトです。

ネクロ・(ディア)・アスタロト
髪の色:紫色
瞳の色:紅色(右)と蒼色(左)
肌の色:白色
服装:白のワンピース
   白のニーハイソックス
   白の靴

ギフト等はネタバレ要素なので〇羽にて更新後ご確認ください。
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