ほんの少しのズレによって起こるバタフライエフェクト。
『一夏』
──優しい声が聞こえる。
いつも聞いてる、まさに両親よりも聞いた声。いや、俺の場合、姉よりも聞いた声、だろうか?
この声の主はいつも俺──織斑一夏に安らぎを与えてくれた。
嬉しい時も。
楽しい時も。
悲しい時も。
悔しい時も。
彼女はいつも傍にいてくれた。
『一夏』
ふと思い返してみれば、彼女と会わない日がなかったことに気付いた。休みの日でさえ会っていた。
一日一回は必ずその顔を見る。一緒に住んでいるとかそんなことはない。ただ家が近かった。それだけの話なのに。
ほんとそれだけ。それなのに、妙に長い付き合いだよなぁ。
「一夏!」
……俺を呼ぶ声が妙にはっきり聞こえる。あと身体が揺らされているような。
あれ? これって幻聴じゃなかっ──。
「そろそろ学校行く時間なんだから、さっさと起きろ一夏ーッ!」
「ぐわああああああ!?」
その瞬間、世界が回った。いや、もうそりゃ驚くぐらいにぐんわりと。次いで額に強い衝撃。首が折れるかと思った。
鈍い痛みに顔を顰め、首と額を擦りながら上半身だけ起こす。視界を少し上げてみれば、そこには涙が出るくらいに貧相な胸を張りながら踏ん反り返ってるツインテ小悪魔幼馴染がいた。
制服に身を包んだ彼女は腕を組んでこちらを見下ろしていた。にやりと八重歯を見せながら彼女が浮かべるその表情は『起こしてあげたんだから感謝しなさい』と言わんばかりだ。
女性らしい身体をした人がやればよく似合うポーズだっただろうが、ちんまい身長のせいか子供が大人のマネをしているようにしか見えない。
腕を組んでいるなら多少胸が盛り上がってもいいだろうに……哀れに思いながら見ていると急に寒気というか殺気を感じてきたのですぐに視線を逸らす。
目についた時計を見ると、時刻は七時三十分。家を出る時間がおよそ八時三十分頃で、昨日のうちに着替えなどの用意は終えてあるからまだ三十分くらいは余裕があるはずだった。この小悪魔が起こさなければ。
「おはよう鈴。……で、何の用なんだ?」
「おはよう一夏。朝食、早めに作りすぎちゃって。ご飯は温かいうちが一番でしょ?」
「まぁ……うん。それには同意するよ。でもな、ひとつ言いたい」
彼女──凰鈴音が俺を早く起こした理由は理解できた。俺も時々やらかすことがあるし。
だがこれだけは言っておかなければならないことがある。
「いてぇよ! もう少し優しく起こせないのか!? 首が折れるかと思ったぞ!?」
「優しく起こしたわよ! それでも起きないんだから強硬手段とるしかないじゃない!」
「それでもやりようのってのがあるだろ!」
俺の反論に鈴は鼻で笑った。
「じゃあどうしろっていうの? キスして起こせとでも?」
「いやそれは駄目だろう。そういうことは大切な人としなきゃ」
「急に真面目な顔するんじゃないわよ。そこはネタで返しなさい」
やれやれ、と呆れたような顔をする。失敬な、とも思わなくもない。
しかしまぁだからといってこれ以上長引かせるのもあほらしい。俺はパジャマを脱いで用意しておいたワイシャツや制服を掴んで着込んでいく。
部屋にはまだ鈴がいるが気にしない。彼女も今更俺の着替えで赤面するようなやつじゃないというのを分かっているからだ。とはいえ何かしらの反応をしてたら面白いなぁと思い鈴を見る。彼女は俺の部屋のクローゼットをがさごそと漁り……って。
「何やってんの?」
「いや久々にエロ本探しでも」
「おい」
「あーあったあった。相変わらず隠し場所変わんないわねぇ」
「朝ご飯冷めたらとか言ってたのは誰だよ」
「あんたが着替えたら止めるわよー」
ペラペラと保健体育の教科書(おかず編)をふんふんと感心している様子で読み進めている彼女は恥じらいというものがあるのだろうか。
仮にも男の俺がいるのに……とも思うが、こいつは俺のことを弟みたいに思っているらしいので気にもしていないのだろう。俺も俺でこいつは女というか男友達みたいなものになっているので、エロ本を見られても恥ずかしさというより呆れが出てしまう。
「趣味も姉モノばっか……本気で千冬さんが心配になってきたわ」
「いや、そこらへんにあるやつは弾に借りた奴だし」
「あ、そうなの? じゃあ別のところに一夏の奴があるわけね」
口が滑ったと思った時にはもう遅かった。
鈴はすぐさま別のところを探し出し……ってそこは弾に借りた奴の中でも結構過激なのが入ってる場所……。
「──ッ!? え、な、ええ!? ちょ、そんな嘘……!」
「ほら時間もそろそろ危なくなってきたから朝ご飯食べるぞー。献立なんだ?」
「え、えっと普通にご飯と味噌汁、あと弁当の余りだけど……ってちょ、ちょっと待ちなさいよ! これどういうこと!? 一夏こんな趣味だったっけ!?」
流石にアレは俺も引いたもんなぁ。
意趣返しができたことを確認した俺は、心の中で弾に感謝しながらリビングへ向かった。
※※※
「ったく……ホントに一夏のじゃないんでしょうね?」
「アレも弾のだって。無理やり渡されたんだよ。『後学のために見とけ!』って」
「アレをどう活用するのよ……」
好感度が(本人の知らぬ間に)ガンガン下がっていく親友を哀れに思いながら、鈴とふたりで学校へ。
はたと空を見上げれば雲ひとつない快晴の空である。まだまだ肌寒い気温が続く今日この頃だが、こんな日はあえて縁側に座ってのんびりしたいものだ。そんなことを隣のチャイナっ娘に言えば“爺臭い”の一言で切り捨てられるだろうが。
そういえばこの前だって爺臭いと言われた気がする。そう、あれは確か家でストレッチしてた時……。
「で、一夏。そういえばそろそろ藍越学園の試験日だけど、勉強の方はどうなの?」
「ん? ああ、そこらへんは多分大丈夫だと思う。過去問もきっちり回数重ねたし、傾向掴んで予想も立てたしな」
頭に浮かんでいたことを追い出し、鈴にそう返す。
藍越学園。学費の安さと就職率の高さ、そして近年の就職難民の多さから、倍率が恐ろしいほどに跳ね上がっているこの県きっての私立学園だ。
「それにしてもよく成績上げることできたわよねぇ……」
「自分でもそれはよく思う。まぁ鈴たちのおかげが大きいけどな」
目指した当初の俺の頭だと結構ギリギリの学校だったのだが、鈴や友人たちの協力もあり、今では十分射程圏内にある。
両親がおらず姉に養ってきてもらった俺にとって、就職に有利という実績を持つ学校はかなり魅力的だった。この前の模擬試験の結果ではほぼ八割をとれていたので問題はない……はずだ。
「あ、そういえばお前の方はどうなんだよ鈴。なんだかんだでお前の志望校聞いてなかったし」
「んー内緒」
「なんでだよ」
「まぁ合格したら教えるわよ。もしかしたら落ちる可能性があるし」
「へぇ……」
常に自信満々、とまでは言わないが、基本的に人前では弱音らしい弱音を吐かないこいつが珍しい。ぎょっとして鈴の顔を見る。
が、鈴の顔はまるで落ちるとは思ってもいなかった。にやり、という擬音が聞こえてきそうなくらい自信ありげな顔だ。
「あー……でもそうなると鈴と違う学校になるのか」
「そうねー。私がいなくなってもちゃんと起きるのよ?」
「子供じゃないんだから平気だって。つーかいなくなるって?」
「私が行くとこ、全寮制なのよ。休日とかは会えるだろうけど……基本的には顔を合わせることはなくなるわね」
「ふーん……」
興味ないようなふりをして、そう聞き流す。鈴と登下校しなくなる。ただそれだけなのに、何故だか心にぽっかり穴が開いたような感覚が胸に広がった。
今まで全く思い浮かべもしなかった先の話。鈴がいない学校生活なんてものは今まであり得なかった。クラスが違ったこともあったが、それでも登下校はいつも一緒だった。
これからはそんなことが当たり前になるんだろうか──そう思うと寂しいものがある。
そこまで考えて思わず苦笑がこぼれた。まるで子供じゃないか。こんなことでは鈴に笑われてしまう。もっとしっかりしたところを見せなきゃ男としてかっこ悪い。そう思い、キリリと顔を引き締める。
「三年まるまる会えない訳じゃないんだし、そんな寂しそうな顔しないの」
「なっ」
「んー?」
決意を固めてすぐそんな言葉をかけられ、思わず鈴を見た。からかうような笑みだ。まさか内心を見透かされるとは思わなかったから言葉に詰まる。
しまったと思う間もなく、俺の表情を見て鈴はますます笑みを深くした。
「真っ赤になっちゃって。かーわいーんだから」
「……うるさい」
「ほれほれ、うりうり」
「あーもう。突っつくんじゃない」
ぐりぐりと人差し指で頬を刺してくる鈴を片手であしらいながら、鈴から視線を逸らす。なんとなく彼女と目を合わせ辛い。
「……相変わらず、バカップルみたいにいちゃつきやがってまぁ」
「ん? あ、弾じゃない。おはよう」
「おはよう弾。今日も朝から生傷作ってきてるな」
「おっす。まぁ俺も悪かったからなぁ……」
そんな時、救世主の如く現れたのは我が親友、五反田弾だった。
妹ととても仲が良いようで、毎日過激なスキンシップをしているらしい。常にどこか怪我をしている。前に妹さんと会った時はそこまで乱暴な子には見えなかったんだが。
「今日は何したんだ?」
「母親に『たまには蘭を見習って家事手伝いしたらどう?』なんて言われたから洗濯物を畳んでたんだよ。で、しばらく畳んでたらテレビで面白そうなニュースがやってるの聞こえてきてな。そっちに目を向けてしばらく見てたら急に踵落としを食らった」
「そりゃなんで?」
「あいつのパンツ持ったままだったんだよ……」
「そりゃ兄が自分のパンツ持ったままぼーっとニュース見てるとか蹴りたくもなるわよ……」
「いやいや、妹のパンツだぞ!? これが美人のおねぃさんのパンツとかなら分かるが妹のパンツだぞ!?」
「往来の真ん中でなにパンツパンツ言ってんだこのバカおにぃいいいいいい!!」
「ぐはぁ!?」
背後からの急襲になんの対策もしていなかった弾はそのまま縦に回転しながら飛んでいった。
弾のいた場所と入れ替わるように現れた人物は、今さっき弾にとび蹴りを食らわせたとは思えないくらいの優雅な仕草で一礼した。
「おはようございます、一夏さん、鈴さん。今日もいい天気ですね」
俺たちとは違う学生服に身を包む彼女の名は五反田蘭。
兄と同じ赤い髪を揺らしながら儚げに微笑む姿はまさしくいいところのお嬢様に見える。兄とは大違いだ。
「おはよう蘭。今日も相変わらずね」
「ええ、鈴さん。兄がうるさくてすいません」
「面白いから気にしなくていいわよ」
蘭は鈴と仲がいい。今でこそ太陽と月のような正反対の性格に見えるが、昔は二人とも似た性格をしていた。お互いあまり譲らない性格だったせいか、出会った当初は常々衝突していたのだが。気が付いたら蘭の話し方がこのようにお淑やかキャラになっていたので、最近ではふたりの喧嘩はめっきり見なくなった。
前に理由を聞いてみたのだが「同じキャラだと負けることに気付いたので」と言っていた。なんの勝負なんだろう。
「あ、あの一夏さん。実は、これ……」
そう言って渡されたのは手のひらサイズの可愛らしいピンク色の袋だった。白のリボンで止められたそれを開いて中を見ると、そこには茶色と焦げ茶のストライプ。
「おー。クッキーか」
「ええ。一夏さん、そろそろ受験だっておにぃ……兄から聞いたので。もう少し早く聞いていればもっと凝った物を作ったんですけど……」
「いやいや! 十分嬉しいよ。食べてみてもいいかな?」
「もちろんです!」
ひとつ取り出して口の中に放り込む。
噛めばホロホロと身が崩れ、ほんのりした甘みと嫌にならない程度の苦みが口の中に広がった。かなり美味しい。売り物と言われても分からないくらいの出来だ。
美味しいよと告げれば彼女はパァっと花が咲いたように笑顔を浮かべ──すぐに顔を俯かせた。顔は見えなくなったが、耳は真っ赤に染まっている。
「そこまで恥ずかしがらなくても。これだけ美味しいんだから自信を持っていいと思うけどなぁ」
「うぅ……」
「そこで『風邪か?』って聞かなくなっただけ成長したとみていいのかしらねぇ」
「うっ……流石にあれだけ言われ続ければ心の機微にだって気付くようになるさ」
『心の機微……ねぇ?』
声を揃えてそう言う鈴と蘭。お互いに顔を見合わせると呆れと同情を合わせたような笑みを浮かべて肩をポンポンと叩き合っていた。
その『何言ってるんだか』というような反応に俺も思わずムッと顔を顰めてしまう。
確かに昔は鈴たちの言う“乙女心”が分からず見当違いのことを言っていたかもしれない。しかし鈴が大量に貸してきた恋愛マンガや恋愛小説を読み込んだ今では、こうして女性が求めている言葉をかけることだって出来るようになったのだ。
「ふっ、昔の俺とは違うのさ」
「はいはい違う違う。あ、蘭。このクッキー、作り方教えてよ。最近お菓子作りにハマっちゃってさー」
「ええ、いいですよ」
「あの……少しくらい俺の心配してくれませんかね……?」
格好つける俺と軽く流す鈴と蘭。そしてボロボロな弾と、なんともカオスな光景がそこにはあった。
※※
教室に到着し、クラスメイトに挨拶しながら席に着く。鈴は俺の右隣、弾は別のクラスだ。朝のホームルームまではまだ時間がある。
鈴は既に友達と喋りにいってしまったので、カバンからこの前買った本を取り出した。真っピンクの表紙に『恋する乙女はドッキ土器!』というコッテコテのタイトルをした恋愛小説だ。正直買うのは迷ったが、意外と反響はよろしいらしいので思い切って買ってみたのだ。
今のところ3分の1くらいまで読んだがそこそこ面白い。ヒロインふたりが土器を作って主人公にアピールするという斬新な入りから始まり、今は新たなヒロインが青銅を使った壺を作って主人公に迫っているところだ。『「受け取って、私の乙女心!」 彼女はそう言い放ち、その手に持った壺をブン投げた』。ふーむ、これが乙女心……理解するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
そんな時、不意に目の前が暗くなった。顔を上げればそこには黒髪ポニテの大和撫子がいた。
「おはよう織斑。今度は何を読んでいるんだ?」
「おはよう篠ノ之。これだよ」
そう言って彼女、篠ノ之箒に表紙を見せる。
彼女はタイトルを目を細めて確認した後、目元に手を寄せ軽く揉んでいた。
「やはり私にはそういうものは向かんな……」
「やっぱり苦手か?」
「ああ。嫌いではないんだが、どうにもな」
「意外と面白いぞ? 俺は主人公が土器ではなく青銅器を作るシーンが好きだな。主人公の葛藤が良く書かれている」
「まるで恋愛小説の説明に聞こえないんだが」
カバンを机に置き、篠ノ之が席に座る。彼女の席は俺の前だ。篠ノ之は椅子をずらしてこちらを向いた。背もたれを肘掛にしないところにどこか真面目さを感じさせる。
「そうだ。篠ノ之はどこの高校に行くんだ? なんだかんだで聞いてなかったし」
「なんだ突然。まぁ別に教えるくらいだったらいいが……私はIS学園に行く予定になっている」
「IS……って倍率がかなり高いとこだろ? よく狙おうと思ったな」
IS。正式名称インフィニット・ストラトスは今からおおよそ10年前に開発されたマルチうんたらの……うん、詳しいことはまるで覚えていない。知っているのはそれは兵器のようなものであり、スポーツとして扱われているものであり、女性にしか扱えないものであるということだけだ。
ともあれそんな女性にしか使えないISは世の女性からすると結構なステータスになるらしい。巷では女というだけで傲慢な振る舞いをする女性がいるのだが……今は関係の無い話か。そんな訳でそのISについて専門に教えてくれるその学園の倍率は、俺が行く藍越学園を遥かに上回っている。確かに彼女の成績は俺より良いが、それでも似たり寄ったりなレベルだ。どういうことなんだろう……?
「まぁ、な。私の場合、そこに行かざるを得ない、というのが正しいのかもしれん」
「ふぅん……」
「……聞かないのか?」
「いや、正直言うと聞きたいんだけど。聞いてもいいのかなぁって」
そう言うと篠ノ之は何とも言えないような顔をして、そして呆れたように微笑んだ。
「別に気にしなくて良い。私としても言いたくないわけではないからな。あまり広めてほしくないのは確かだが」
「そうか? じゃあ頼む」
「ああ。といってもすぐ分かることだ。私の苗字、これを見てどう思う?」
「どうって……普通に良い苗字だと思うぞ? こう、篠ノ之! って感じがして」
「いやどういうことだそれは!? ……んんっ! 違う。ISの開発者の苗字と同じだろう?」
「あ、そういえばそうだな……ってえ? それで行かざるを得ないってまさか」
篠ノ之は少し難しい顔をして頷く。
「彼女は私の姉なんだ。重要人物保護プログラムでそのことは隠されているがな」
「なるほどなぁ……でも苗字が一緒ならすぐばれそうなものだけど」
「織斑も今の今まで気がつかなかっただろう? 苗字が一緒なだけで私が彼女と家族だなんて思う人間はほとんどいないからな」
聞いてくる人間もいない。篠ノ之はそう言って笑う。笑った時の顔は可愛いと思うのだが、どうしてか篠ノ之はクラスの中ではしかめっ面でいることが多い。根気良く仲良くなろうとした結果、彼女は俺、鈴、五反田兄妹には笑顔を見せてくれるようになった。その笑顔をもう少し他の人に見せれば友達もすぐできそうなものなのになぁ。
「それより、織斑は確か藍越学園だったか」
「ああ、試験対策はばっちりだぜ」
「そうか。お前がそこまで言うならばきっと受かるだろう。頑張って」
彼女がそう言った途端、チャイムが鳴り先生が入ってくる。篠ノ之は「ではな」と言うとすぐさま前を向き、授業の準備をする。俺もそれに習うように最初の授業の準備をした。
「はーいじゃあ朝の連絡から入るぞー。えー皆も知っている通り、毎年一部の高校では入学試験後にISの適正テストがあります。皆さん忘れないように」
「ああ、そういえばそんなのあるんだっけ……」
IS適正が高い人材が普通の高校に進むなんて勿体無い! と、確かどこかのお偉いさんが高校受験時にISを触れさせることを義務化させたんだったか。男子操縦者が出るかもということで男も受けなければならないのは面倒だ。開発されて十年以上経っているんだから諦めればいいのにとも思う。ちなみに藍越学園はその一部にばっちり入っていた。
「まったく面倒な話だよなー。終わったら早く帰りたいのに」
「お前が受けるところ適正テストあるんだっけ。聞いた話によると拘束時間かなり長いらしいぜ」
「(げ、マジか……)」
近くのクラスメイトのそんな会話が聞こえ、思わず溜息を吐きそうになる。ただでさえしんどい試験なのにそこから更に待っていなくちゃならないなんて……。そう考えただけで気が滅入ってくる。
「(この場合は仕方ないかぁ……。ま、一日中って事はないだろ)」
担任から発せられる他の連絡事項を右から左に受け流し、参考書を開く。
時間がかかるのが決定事項なら、今更どうこう言っても仕方が無い。今はそのことは忘れよう。藍越学園には絶対に入らなければならない。落ちるなんてことはあってはならないのだ。
──絶対合格してやるぜ!
決意を新たに固め、俺は参考書を開きシャーペンを握り締めた。
「あ、ISが動いた!?」
「男性がISを!?」
「え、えぇ……?」
──が、そんな俺の決意も空しく。
状況をあまり理解できぬまま、俺の希望とはまるで違う進路へと進んでいく事になったのであった。
頑張る(未完を完結させるとは言ってない)
これの続きは完結から投稿する予定です。
※何故かおかしなことになってたのであげ直しました。申し訳なーい!