僕の家は多摩地区最大の霊園の目の前で花屋を営んでお墓参りに行く人の花を中心に売っている。
だが、お墓参りの時の花は、墓地の施設で売っているものを買っているので、このお店には全然お客さんが来ない。
僕も学校が終わったら花屋の手伝いをしているが、来る人はご近所さんばっかりで、1週間に一人お客さんが来るか怪しいところだ。
実際、今日でちょうど前のお客さんが着て一ヶ月たった。
そして同時に、僕の18歳の誕生日でもある。
「今日もお客さん来ないなぁ」
外はもう黄金色に染まり、もともと人通りの少ない道も誰も歩いていない。
そろそろ、閉めようかな。
父親は家に居るが、花屋の仕事以外の仕事をしている。
さすがに今のご時世、花屋だけでは生活は出来ない。
父親は主にミステリーなどの小説を書いている、そこそこ有名で映像化されたこともある。
母親は・・・6年前に事故で死んだ、墓は目の前にある霊園にあり、毎週花を持っていくのが習慣になっている。
だから、この花屋は大体僕しかいないので適当な時間帯になったら閉める。
今日も店を閉めようとしたら、子供連れの比較的若い女性がお店に入ってきた。
「いらっしゃいませ」
「あの、ひまわりの花束ありますか?」
はい、と返事をしてひまわりを取り、何本かまとめて包み差し出す。
子供はずっと母親であろう、この女性の傍を片時も離れない。
だが、子供は一切言葉を発せず、母親もちっとも子供のほうを見ない。
ちょっと不思議に思っていたが、特に気にすることもなかった。
「こちらでよろしいですか」
「はい」
会計をする時に何気なく
「お墓参りですか?」
言ってから、ものすごい不謹慎なことを言ったと気付き
「す、すみません」
「・・・・・・いいですよ」
すいません、といいひまわりの花束を母親に渡す。
すると子供がすごい笑顔で喜んでいる。
「あの・・・聞いてくれませんか?」
母親がこの世の終わりみたいな顔で語り始めた。
こんなことになるとは思っても見なかった・・・。
こんなことになるんだったら行かせなければ良かった。
「こうちゃん!!こうちゃん!!ごめんね・・・ごめんね・・・だから、戻ってきて!!」
誰も居ない部屋、いや居なくはない。
もう、永遠に目を覚ますことのない眠りについた小さな子供と、その変わり果てた姿を見て泣きじゃくる母親。
ほんの一時間前まで元気な姿だったのに。
私がいけないの、こうちゃんを無理にお使いに行かせたのが悪かったの。
「こうちゃん、ゲームばっかりしてないで少しはお手伝いして」
「えぇ~やだよ、面倒くさいもん」
「そんなこと言ってるとゲーム没収しますよ!」
うぅ、っと、うな垂れながらも渋々了承してお使いに行った。
そして子供はもう、家には上がることは出来なかった。
お使いに行くスーパーの前の交差点で赤信号無視をしたトラックに巻き込まれて亡くなった。
その後病院に運ばれたが、即死だったのでどうしようも出来なかった。
「・・・」
「そんなことがあったの・・・だから、私こうちゃんに恨まれてると思うの・・・でも仕方ないのよね」
まさかこんなに親身に話してくれるとは思ってもいなかったので言葉が出ない。
「ごめんなさい、こんなこと話してしまって」
目に涙を浮かべながらお店を出て行こうとする
「あの」
「・・・なんでしょうか」
思わず女性を引き止めてしまった。
ずっと気になっていたこと。
「お隣に居るお子さんは、こうちゃんの弟さんですか?」
そんなことを言うと、女性の顔が驚愕の色に染まった。
「え?私ひとりですよ!?それにこうちゃんに兄弟なんか居ません!!?」
女性が興奮気味でそんなことを言った。
僕は自分で言って驚いた。
この母親の反応からすると嘘をついているようには思えない
まさかと思って
「ねぇ君、こうちゃん?」
母親には見えてない、隣の子供に尋ねてみた。
そしたら、隣の子供が笑顔でうなずいた。
「あの、お母さん、こうちゃんはお母さんの隣にいますよ」
「な・・・なにを・・・」
女性が動揺して上手く話せていない。
「息子さんは、お母さんの事恨んだりしてませんよ。今もひまわりの花束を見て喜んでますし」
そういうと女性が涙を流し始めた。
「こうちゃんは・・・ひまわりが一番好きだったの、『あのお花みたいに大きくなってお空に近づくんだ』とずっと言ってたのです・・・」
「そうだったんですか・・・」
「私・・・こうちゃんに許してもらえたの・・・?」
「元々恨んでなんかいませんよ」
すると、こうちゃんがこっちに近づいてきて
「ありがとうお兄ちゃん、これでお母さんが悲しい顔しなくてすむ。あと伝えてほしいんだけど・・・」
女性は泣き崩れて床に座り込んで泣いている。
俺はこうちゃんに頼まれたことをする
「お母さん、こうちゃんからの伝言です『お母さんへ、僕はお母さんが大好きです。お母さんの笑顔がすごく好き、だからずっと笑顔でいてね』」
それを聞くと母親は泣き崩れた。
終わり