心を失った少女も異世界から来るそうですよ?   作:ほら、死の花が咲いた

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第八話になります。

今回は少しグロいかな?少しだけね。

挿絵は前回のに背景をつけるつもりでいたのですが、なんとなく本編のあるシーンを描きたくなってしまったのでそっちにしました。

感想いただけると嬉しいです。

誤字脱字修正及び一部内容の変更

ではどうぞ!


第八話:ペルセウス・雅の暴走なのですよ?

第8話

 

"ペルセウス"とのゲーム当日、十六夜たちの朝はいつも通り緩やかに訪れた。

それぞれ身支度を整えると、朝食を食べるために階段を降りていく。

食堂として割り当てられた部屋では、幸平親子が既に朝食を並べている所だった。

 

「お、起きてきたな」

 

「朝食はもう出来てるぜ。一応この後決闘があるし、メニューは軽めの物を用意した。量は多いけどな」

 

「サンキューな・・・・・。んじゃ食べるか」

 

「待って・・・・・雅がまだ来てない」

 

席についていざ食べようと十六夜が声を上げたところ、耀が待ったをかけた。部屋を見回してみると、確かに雅の姿が見えない。

十六夜は少し呆れたように頭を掻くと、レティシアに声をかけた。

 

「レティシア、悪いが雅を起こしに行ってくれないか?」

 

「いや・・・・・私が行ったのではまた抱き枕にされかねないぞ?」

 

「あ~・・・・・・・。まぁ大丈夫だろ」

 

「仕方ないな・・・・・」

 

若干苦笑気味にレティシアは席を立つと、雅を起こすために階段を登って行く。

部屋の前まで来たレティシアは、ノックをしながら声をかけた。

 

「雅・・・・・・・。起きているか?」

 

・・・・・・・・・・・・・・シーン

 

しかし、反応がない。レティシアは溜め息を吐くと、やれやれと言いながら部屋へと入って行った。

 

しかし、そこで見た物はあまり心臓に良い物ではなかった。

部屋は夥しい量の血で染まっており、その中心では雅が腕に剣を突き刺したままぐったりと倒れている。

レティシアは一瞬状況が飲み込めずに放心していたが、我に返ると慌てて雅の下へと駆け寄った。

 

「雅!?何があった!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

気を失っているのか、全く反応しない雅に一先ず腕に刺さっている剣を抜いたレティシアだったが、それだけで徐々に顔色が良くなっていく雅の姿に彼女が不死であることを思いだし安堵する。

しばらくすると、完全に傷口は塞がりゆっくりと眼を開けた。

 

「あれ・・・・・・・・・・・・・・レティ・・・・・・・シ、ア?」

 

「ああ、そうだ。一体なにがあったと言うのだ?」

 

「・・・・・・・・・・・・夢の中で・・・・・・・葉冥に、襲われ、た」

「・・・・・・・は?」

 

言っている意味が分からなかったレティシアは、間の抜けた返事をしてしまう。雅は完全に体調が回復したのか、ゆっくりと起き上がると部屋の外へ向かって歩き出した。

 

「詳しい・・・・・ことは、下で・・・・・・・話す、よ」

 

若干話ずらそうな雅に、首を傾げながらもレティシアは後を追うのだった。

 

十六夜たちの所へ来た雅に、全員がまず驚きの声を上げた。レティシアも困惑していたのか、雅の状態は血で真っ赤に染め上げられたネグリジェという出で立ちだったため、何事かと思われたのである。

雅は全員を一度見渡すと、ぽつりぽつりと喋り始めた。

 

まず、夜眠りにつくとそこには葉冥がいたこと。

そいて戦いになり、雅は徐々に目の前の男が自分の夢に入り込んできた葉冥本人であると気づいたこと。

さらにはよく分からない力のせいで負けそうになってしまったこと。

仕方なく、夢だと分かっているなら出来ると思い、体内の血を操り暴走させて無理やり眼を覚ましたこと。

しかし、暴走させた血の制御ができなくなってしまい、仕方なく腕に剣を刺して一度体内の血を抜きながら制御しようと試みたが貧血で意識を失ってしまったことなどを話した。

 

話を聞いた十六夜たちは、襲われたことや貧血で倒れた事よりも、夢の中とは言え雅が負けそうになっていたことに驚いた。少なくとも彼女の実力は十六夜と同等以上のスペックを誇っている。そう簡単に負けるような状況になるだろうかと思った。

 

「その、よく分からない力ってのはどんな感じだったんだ?」

 

「わから・・・・・・・ない。なぜか、上手く血が・・・・・操れなかったり・・・・・・・あと、傷の治りが・・・・・・・遅くなったりして、た。夢の中だから・・・・・だったのか、それとも・・・・・葉冥自身の、能力・・・・・だったのか・・・・・・・それも、わからな、い・・・・・・・」

 

「なるほどな・・・・・」

 

確かにそれは良く分からないとしか言えないだろうと十六夜は思った。恐らく、雅が言っていた通り夢の中だからか、もしくは相手のギフトの力を衰えさせる類いの物だろうが、十六夜はともかく雅のように血を操ったりして戦う相手には有効な手段だろう。

しばらく考えていた十六夜だったが、雅が立ち上がったことでそちらに思考を持っていかれた。

 

「多分・・・・・だけど、葉冥は今日のゲームにも・・・・・なにかしらの形で、手を出してくると・・・・・・・思う。ルイオスに・・・・・なにか与えるのか、それとも・・・・・・・自分で乗り込んで・・・・・くるかは分からない・・・・・けど、みんなに・・・・・迷惑、をーー」

 

「迷惑になんか思わねえよ」

 

雅の言葉を遮るように十六夜が声を出した。雅はキョトンとした顔で十六夜を見つめる。そして回りに視線を移すと、飛鳥や耀たちが優しく微笑んでいた。

 

「いいか?葉冥ってやつにはガルドとの戦いで飛鳥や春日部だって痛い思いをさせられてるんだ。もうお前だけの問題じゃねえんだよ。だから、まあなんだ・・・・・。一人で抱え込まずに俺たちに頼れ。一緒に戦ってやるからよ」

 

「そうよ。私たちは仲間でしょう?遠慮なんてしなくて良いのよ」

 

「ガルドの時は、雅のお陰で早く怪我が治った。だから、今度は私が雅を助ける」

 

十六夜に飛鳥に耀・・・・・。そして乙坂やソーマたちも、笑顔で頷いている。雅は少し閉ざしかけていた心に、暖かい光が射すような感覚がして泣きそうになりながらも、少しだけ出来る様になった笑顔を浮かべて礼を言うのだった。

 

「みんな・・・・・ありがと、う」

 

 

その後、朝食を食べ終えた"ノーネーム"の一同は、乙坂が姿を消すことが出来るということで全員揃ってルイオスの前まで辿り着くことに成功していた。

 

「ちっ・・・・・・・。名無し風情も止められないなんて、これが終わったらあいつら全員粛正しなきゃな」

「ま、今回はちょうどいいギフトを持ったメンバーがいたんでね。で、どうするよ?この人数相手に勝てるほどお前は強くないだろ?」

 

「ハッ!名無し風情が何人集まろうが僕が勝つに決まってるだろう?さあ、目覚めろ!・・・・・アルゴールの魔王!」

 

『Ra・・・・・ra・・・・・・・GYAaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

「そっか・・・・・雲まで・・・・・・・石化できるん、だ・・・・・・・」

 

ルイオスがアルゴールを呼び出した直後に発生した褐色の光によって石となって降ってきた雲を、雅は血を操って仲間に被害が出ないように迎撃した。

 

「十六夜は・・・・・・・どっちと・・・・・戦いた、い?」

 

「お前が先に選んで良いぜ?」

 

「そう·····なら、私は・・・・・ルイオスを、ヤル」

 

「OK!」

 

お互いに頷きあうと、それぞれの敵へと向かって突進する。雅は一瞬でルイオスの懐まで潜り込むと、予め瓶から出しておいた血を無数の針のようにして超至近距離から放った。

 

「ガァ!?」

 

無数の針はルイオスに次々と刺さっていき血飛沫を撒き散らす。

 

「今のは、レティシアを・・・・・苛めた分、だよ・・・・・・・。次は、黒ウサギを・・・・・苛めた分・・・・・・・」

 

次にルイオスを襲ったのは雅の身長よりも少し長い大太刀による一撃だった。その大きさからは想像も出来ないほどの速度で振るわれた三つの斬撃は、ルイオスには全く同時に放たれたように錯覚させるほどのタイミングで体を切り刻む。

 

「ゴハッ!」

 

「次は・・・・・私達、"ノーネーム"を・・・・・した、分」

 

雅は大太刀の形状をハンドガンのように変えると、両手に一挺ずつ構えてルイオス目掛けて銃弾を放った。一瞬で無数の銃弾を身体中に浴びせられたルイオスは、最早悲鳴を上げることすらできなくなり血塗れになって地面へと倒れる。

丁度同じタイミングでアルゴールを蹴り飛ばしたいざが雅の近くに着地するところだった。

 

「そっちも終わったみてえだな」

 

「うん・・・・・・・。みんなが受けた・・・・・屈辱分は、やり返し、た」

 

「ハハッ!サンキューな。さて、ルイオス。このまま負けたらお前らの旗がどうなるか分かるか?」

 

雅の血液を大量に打ち込まれたルイオスはなんとか頭だけ動かすとどう言うことだと眼で訴えた。

 

「レティシアを取り返すのは何時でも出来るだろう?そうだなぁ・・・・・・・まずは旗を盾に直ぐ様ゲームを挑んで、今度はお前らの名を貰おうか。そうすればお前たちも俺たちと同じ名無しだ。そして今後活動ができなくなるほどにお前らの名を貶めてやるよ。・・・・・・・徹底的にな」

 

「・・・・・や・・・やめて・・・・・・・くれ」

 

動かない体を無理やり動かそうとしながら、ルイオスは掠れた声で懇願するように言った。

 

「嫌か?・・・・・・・なら、もう少し俺を楽しませてくれよ。ペルセウス」

 

「動け・・・・・ないのに、どうしろって・・・・・・・言うんだ!」

 

「あん?・・・・・・・あぁ、そういや雅の血にはそういう効果もあったっけな」

 

つまらねえと言いながら十六夜は踵を返す。そこでようやく黒ウサギが前に出てきて勝利宣言をしようとした。

 

「勝者、"ノーネーーーーーーー」

 

『ちょっと待って貰おうか!』

 

ドスッ・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・え?」

 

「雅!?」

 

黒ウサギが勝利宣言をしようとしていたところに乱入したのは、ボロボロのマントを羽織った男だった。その男は雅の後ろへ着地すると、油断しきっていた雅の体を後ろから腕で貫いていた。

不死である雅にとってその程度の傷はどうということは無かったのだが、今回は心臓を潰されていたためショックで完全に意識を手放してしまう。

男・・・・・・・葉冥の狙いはまさにそこにあったのだった。

 

「ククク・・・・・・・意識を失ったようだな。これで楽に鬼を取り出せる」

 

葉冥は雅の体を寝かせると、胸の上に手を持っていき呪文を呟き始めた。それは、ガルドと戦った時に雅が発していた言葉に近いような発音で、彼が呪文を唱える度に雅の体がはねあがった。

 

「テメエっ!雅を離しやがれ!」

 

十六夜は葉冥に向けて拳を振るうが、結界のようなものに阻まれて攻撃が通らない。耀や飛鳥、乙坂も攻撃に加わるが一向に突破出来なかった。

そんなとき、意識を失っていた雅から吐血の声が上がる。

 

「む・・・・・?意識が戻ったか。しかしここまで来れば意識があろうが関係はないな」

 

葉冥は一瞬驚くも、直ぐに詠唱に戻った。その直後、雅の体を激痛が走る。それは、400年前に鬼の移植をされたときに感じた痛みと全く同じ物だった。

 

「い・・・・・イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

雅は絶叫を上げ、暴れるように体を跳ねさせた。その時に前髪が乱れ、今まで隠してきた血色の瞳が露になってしまう。

 

「イヤァァァァァァァァ!!!痛い・・・・・!!!・・・・・イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイィィィィィィィィ!!!」

 

量の目から大粒の涙を流しなが叫び続ける雅の姿に、十六夜たちは死に物狂いで攻撃を続けるがびくともしない結界に徐々に疲労が溜まっていく。人並みの体力しかない飛鳥は既に膝をついてしまっており、耀も攻撃の手が減ってきている。乙坂も多種多様なギフトで攻撃を試みているが、今のところ効果は全くなかった。

十六夜は最後の賭けに出ようと、右手に疑似創世図を発動しようとするが、そこで異変は起きた。

 

『イタイッテイッテルジャナイ』

 

グシャッ

 

「・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

「・・・・・・・・・・・・みや・・・・・・・び?」

 

不吉な音と共に目の前で起きたのは、雅の胸に当てていた葉冥の右腕が弾け飛ぶ光景だった。

 

「な・・・・・・・な・・・・・私の、私の腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

絶叫しながら雅の側から飛び退く葉冥。ようやく解放された雅はゆっくりと体を起こすと、狂ったように笑い始めた。

 

『アハ・・・・・・・アハハハッ!・・・・・・・・・・・・アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』

 

雅は上空数百メートルのところまで飛び上がると、血を操って翼を作りゆっくりと羽ばたきながら降りてくる。その翼と、血に染まったその姿は、どこか吸血鬼を彷彿とさせる姿と変わり果てていた。

 

『ハァ~・・・・・。葉冥兄さん・・・・・・・酷いじゃない、スゴくイタカッタンダヨ?』

 

「どういうことだ・・・・・・・何故、鬼が取り出せなかった」

 

『お馬鹿なお兄様ネ・・・・・・・。私の中にいる鬼はね、もう私と同化しちゃってるの。取り出すなんてもう不可能なんだよ』

 

「そんなバカな!ならばなぜあの術式で苦しんだ!?」

 

『そりゃあ、私の中に封印した数多の鬼を無理やり抜かれそうになったらイタイデショウ?総勢449匹もの鬼を抜かれそうになったらサァ!!・・・・・・・・・・・だからね?オシオキシテアゲルヨ』

 

狂気に満ちた瞳でそう宣言すると、雅は右手を掲げ・・・・・・・そしてナニカを潰すように握り混んだ。

その瞬間、今度は葉冥の左足が弾け飛ぶ。

 

「ガァ!?」

 

『アハハハハハハハハハハ!!ホラホラ、モットイイコエデナキナヨニイサン!!』

 

グシャッ・・・・・・・グチュッ・・・・・・・・・・・・ブシャッ・・・・・・・・・・・・・・グチャッ!

 

雅が右手を握り混む度に、右足が、左腕が、右目が、左の耳が弾け飛んでいく・・・・・・・。次第にそれは内臓へと延びていき、葉冥だった物の回りにはその残骸が無惨に散らばっていた。

 

「・・・・・・・た・・・・・・・・・・・たしゅ・・・・・け・・・・・・・・・・・・」

 

『ナーーーニーーーーーー?キコエナーーーーーイ♪』

 

そして、とうとう頭を潰された葉冥は、ピクピクと痙攣したあと動かなくなった。

 

『・・・・・・・・・・・ア~ア、ツマラナイナァ・・・・・・・・・・・・。ア、ソウダ!』

 

天を仰いでいた雅は、良いことを思い付いたと言わんばかりに勢いよく十六夜たちの方へ振り返った。

そこには、青ざめた表情の飛鳥や耀、黒ウサギにジンたちと、険しい表情の十六夜と乙坂の姿が。

 

『アハッ♪・・・・・・・ネエ、コンドハミンナガワタシトアソンデヨ!』

 

そう言いながら、今度は十六夜に向けて右手を構える。十六夜は瞬時に自分が狙われていると悟ると、一瞬で間合いを詰めて雅に殴りかかった。

 

『オット・・・・・・・!サスガイザヨイ!カンタンニコワサセテクレナイナァ・・・・・・・』

 

「お前・・・・・・・本当に雅なのか?」

 

『ソウダヨー?マア・・・・・イマノワタシハ、イママデタメコンデキタ狂気のカタマりミタイナモノダケドネ!』

 

今度は雅が十六夜に殴りかかるが、十六夜はそれを難なくかわす。葉冥を殺したあの力は驚異だが、狂っているぶん攻撃事態は単調になっており、かわすのは難しくはなかった。

次第に武器を使い始めた雅だったが、やはりその武器捌きは元の雅と比べるとただ振り回しているだけであり、第三宇宙速度で動ける十六夜にはかすることすらない。

だんだんと苛立ちを見せる雅の攻撃は次第に大振りになっていき、反撃のチャンスも幾度もあったが十六夜が手を出したのは最初の一度きりだった。

 

(どうする・・・・・・・多分あいつの不死性は失われていないから、間違って殺しちまっても問題はないんだが・・・・・それでこの狂気が収まるとも思えねえ。なにか手はないのか!?)

 

十六夜はできることなら傷つけることなく雅を止めたいと思っていた。たとえ死ぬような体じゃ無かったとしても、雅は仲間で、守りたいと思った相手である。現状は雅は十六夜にしか興味がないようだから、その間になにか打開策を見つけなければいけないと思考を加速させていた。

 

『アーーーーーモウ!サッキカラヨケテバッカリ!ツマラナイヨ!!』

 

「なら、鬼ごっこだと思えばいいんじゃねえか?」

 

『オニゴッコ?ナニソレ』

 

十六夜の提案に、雅の攻撃が一時的に止まった。それを見計らったかのように、乙坂が十六夜へと声をかける。

 

「十六夜!雅の意識を刈り取れないか?」

 

「はぁ?どうやってだよ」

 

「不死の弱点の一つは首を絞められたりして意識を奪われることだ。殺せなくても勝負の内容次第では敗けになるからな。そんな感じで雅の意識を刈り取って欲しい。そうすれば、俺のギフトであの狂気を取り除ける」

 

「へぇ・・・・・・・?試してみる価値はありそうだな。気絶させればいいんだよな?」

 

「ああ」

 

軽く作戦を練ると、十六夜は雅へと向き直った。

 

「悪いな・・・・・・・鬼ごっこはここまでだ。こっからは、俺も全力で攻撃するぜ!」

 

十六夜はそう言うと、雅に飛びかかる。

 

『アッハ♪・・・・・・・ソウコナクッチャ!!』

 

雅もそれに答えるように手に持っていた鎌で迎撃した。しかし、そもそも技が単調になっている今の雅では十六夜の動きには付いていけないのである。数分もしないうちに雅は十六夜の強力な一撃を頭に食らうことになった。

 

『ア・・・・・グゥッ・・・・・・・!!』

 

「ちっ!浅かったか・・・・・・・なら!」

 

まだ間合いは十六夜の手の届く範囲。今度は雅が下を向いているのを良いことに、顎をかすらせるようにアッパー気味に拳を振るった。

その一撃は雅の脳を一気に揺らし、視界が歪む。それでも意識を手放さないのは雅が普通の人間ではないからだろう。

十六夜は続けて何発も人間の急所に拳をめり込ませていき、二度目の喉への一撃の直後、雅が無理に息を吸おうとしたことで起きた激痛によって意識を失った。

 

「ハァ・・・・・・・ハァ・・・・・・・・・・・ようやく、か・・・・・仲間を殴るってのは、予想以上に胸糞悪いな」

 

「お疲れ様。ここからは俺の仕事だ」

 

十六夜へ労いの言葉をかけた乙坂は、気を失い倒れた雅の隣に膝をつくと感情操作のギフトを使用した。本来なら自然に感情を出せるようになった方がいいと思っていて使わずにいたこのギフトは、相手の感情を操作することで心を閉ざしてしまった人の治療などにも使える。邪な考えを持たなければ非常に便利なギフトである。

今回は、大きく表に出てきてしまった狂気を心の奥へと押し込め、代わりに喜怒哀楽の感情を表に引っ張り出すことで、雅を元に戻す方法を取った。ただし、乙坂自身は自然に取り戻した方が良いと考えているため完全には戻したりはしなかった。

 

治療が終わって数十分後、雅が目を覚ますと目の前には金色の髪が映っていた。

 

「・・・・・・・ここ・・・・・は」

 

「ん・・・・・・・目が覚めたか?」

 

「十六夜?」

 

「ああ・・・・・。なにがあったか、覚えてるか?」

 

「・・・・・・・なにが・・・・・・・・・・・・・・あっ」

 

雅は自分がなにをしたのか思いだし、慌てて十六夜の背中から降りようとしたところで目眩を起こしてまた寄りかかってしまった。

 

「暴れるな。いくら不死とはいえ、俺の攻撃でしこたま脳を揺さぶられたんだ。暫くはまともに歩けないだろ」

 

「で、でも・・・・・・・私、は」

 

「まあ・・・・・・・なんだ。お前が気にすることじゃねえよ。悪いのはお前を利用しようとした葉冥の奴だ。その葉冥も死んじまったしな。幸い・・・・・お前以外の奴は怪我もなかったんだし・・・・・・・だからもう泣くな」

 

雅は泣いていた。自分がしてしまったことを悔やんで、そして恐れて。確かに十六夜の言うとおり、今回は怪我人が出なかった。けれどそれは十六夜という自分を押さえられる戦力と、乙坂という自分の狂気を押さえ込める力を持った人間がいたからだ。

もし、この二人がいない場所で自分が暴走してしまったらと、雅は恐怖に体を震わせる。

 

十六夜たちは、一先ず雅の力がどういった物なのかを調べるために"サウザンドアイズ"の白夜叉を尋ねた。意外にも、女性店員と雅は仲良くなっていたようで、雅の状態を見てすぐさま通してくれた。

 

「と、いうわけでだな。雅が今回見せた力に心当たりはないか?」

 

「ふむ・・・・・・・。雅よ、ちとおんしのギフトカードを見せてはもらえんかの?」

 

白夜叉の言葉に、雅は素直にギフトカードを渡す。

 

「やはりの・・・・・・・。前回はノイズが走っていたギフトが読めるようになっておる」

 

「なんて名前なんだ?」

 

「"破壊を司る者"となっておるな。・・・・・・・これは、とんでもないギフトだぞ」

 

「そんなに凄い物なのか?確かに葉冥を殺ったときは壮絶だったが」

 

白夜叉は一度目を瞑ると、ゆっくりと喋り出した。

 

「この箱庭にも、破壊系のギフトはいくつも存在する。だがそれは限定的な力での。例えば、石を壊すと言った対象が限定されたものばかりなのだ。多くても三種類を同時に破壊出来る程度じゃな。・・・・・・・しかし、このギフトはそういった制限がない。文字道理、どんな物でも、それこそ、この箱庭の世界ですら壊すことができるじゃろう」

 

白夜叉の説明に全員が驚愕した。箱庭を壊せるということは、世界その物を壊せると言っているようなものだ。そんな力が存在しても良いのだろうか。

 

「まあ・・・・・・・雅なら間違った使い方はしないじゃろうし、特に問題はないのではないかの?」

 

「・・・・・・・それが・・・・・だな」

 

十六夜は先ほどの戦いで起きた事を聞かせた。

 

「ふむ・・・・・・・。そうか、雅は長年感情を消失したまま戦いに明け暮れていたからそのストレスやら色々なものが狂気となって蓄積されていたのかもしれんな。しかし、乙坂の力で治ったんじゃろう?」

 

「俺が施したのは狂気を心の奥へ押し込めて他の感情を表に出すっていう応急処置的なことだけなんだよ。これ以上のことは俺の持っているギフトじゃ無理なんだ」

 

「そうか・・・・・・・。ならば、私が少し手を加えよう。とは言っても、私に出来るのも応急処置程度じゃがな」

 

白夜叉はそう言うと、雅の胸の辺りに手を当てた。するとそこから温かみのある光が溢れだし、雅を優しく包み込む。

 

「これでよいじゃろ。今のは雅の心の狂気に対して段階的に封印を施した。全部で5段階・・・・・・・。狂気が目覚めようとするたびに一つずつ封印が解かれていく仕組みじゃが、最後の一つが突破される前に私のところへ来ればまた上書きできるから、ちょくちょく確かめに来るといい」

 

白夜叉の言葉に一同がホッと胸を撫で下ろす。しかし、一番ホッとしていたのは雅本人だった。もしかしたらもう"ノーネーム"にはいられないと思っていた雅は、大粒の涙を流しながら白夜叉の胸で泣き始めるのだった。

そのあと、泣き疲れて眠ってしまった雅に膝枕をしながら白夜叉は祝勝祝いにと、"ノーネーム"の本拠にいたソーマたちや子供たちを集め、盛大なパーティーを開くのであった。

 

祝勝会の途中、白夜叉はこっそりと抜け出すと誰もいない空へと視線を移し杯を煽りながら雅の持つもうひとつギフト、"座"について思考を巡らせる。

 

「・・・・・・・まさか、私の予想が当たっていたとはな・・・・・。今回のギフトといい、あの娘は本来どれだけ重い使命を背負って産まれたのやら・・・・・・・。竜胆よ、あの娘は・・・・・お主の子孫だったりするのかのぅ?」

 

白夜叉の呟きに返事を返す者はなく、白夜叉の視線の先には輝く星ぼしだけが映されているのであった・・・・・・・。

 

十六夜達が白夜叉のところを訪れていたころーーー。

 

人気のない森に佇んでいた男がいた。そこへ一羽のカラスが舞い降りてくる・・・・・。

 

「そうか・・・・・分身体でも大丈夫だと思っていたが・・・・・・・400年という年月の中で同化してしまっていたのか。やはり・・・・・・・俺自身が出向かなければ無理だったか?」

 

男はそう言うと、カラスを肩に止まらせて踵を返した。言葉とは裏腹に、その横顔には笑みが浮かんでいる・・・・・・・。

 

「・・・・・・・中々楽しめそうで嬉しいよ・・・・・次は、いったいどんな悲劇をみせてくれるのかな?・・・・・・・・・・・我が妹よ」

 

最期にそう言い残すと、男は闇に避ける様に姿を消すのだった・・・・・・・。

 




今回はここまでとなります。
まずは挿絵おば

暴走した雅ちゃん


【挿絵表示】


今までに描いた絵を友人に見せたら「お前は相変わらず右目を描かないなと突っ込まれたので今回は本編でもようやく右目を晒したのでこんな感じに描きました。翼はコウモリっぽいイラストを参考に。
巫女服ってはだけさせるの難しいですね・・・。色塗り途中なんですけど、ここまで描くのに累計で20時間ほどかかってまして・・・。主に両目をみせるための髪のバランスとか巫女服はだけさせるためのバランスとか脚とかを描き直しまくったせいなんですけどねw

正直手の指とか足とか凄い苦手です・・・。

まぁとりあえず、少し本編を振り返ってみましょうか。

十六夜「ようやく出番か。今回は主に雅の暴走がメインだったか?」

一応はそうなるように書いたつもりですね。

十六夜「雅の新しい能力だが、あれは東方のフランのものと一緒なのか?」

基本的には同じだと思っていただいて大丈夫です。

十六夜「ふーん・・・。何気に狂気とかもフランと同じだよな?」

そうですね。ちなみにここで重大発表ですが、次回はそのフランちゃんを出す予定です!ただし、幻想郷のフランちゃんとは別人という設定の元書いていきます。詳しくは次回を楽しみにしていただければと思います。

十六夜「あんまりキャラ増やしすぎるとお前じゃ動かしきれないんじゃないか?」

一応はそこも考えています。上手くいくかはわかりませんが。

十六夜「そこはなんとかしろよな。とりあえず、今回で1巻の内容は終わりか?」

一応はそうなりますね。歓迎会はキングクリムゾンするとして、少しだけオリジナル回をやりたいとは思っています。

十六夜「なるほどな。今回はこんなところか?」

そうですね。それでは、また次回お会いしましょう!

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