心を失った少女も異世界から来るそうですよ?   作:ほら、死の花が咲いた

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皆さまお久しぶりでございます。

活動報告などでもお知らせいたしましたが、ようやく最新話に着手する事が出来ました!
それに伴い、今までの話も若干内容の変更を行っております。話によっては大きく変わっているものもございますのでもう一度読んでいただけたら嬉しいです。

それと、後書きにて雅ちゃん、今描くとこうなる(未完成)を貼っておきます。あまり上達していませんが・・・・・・・。

感想評価お待ちしています!


〜あら?魔王襲来のお知らせ?編〜
第9話:北側へだそうですよ?


第9話

 

買い物などをした次の日・・・・・。十六夜達は黒ウサギを探しながら本拠の中を歩いていた。

昨日は本拠に帰った後、雅のギフトの事やフランから聞いた弾幕ごっこの事などで最初こそ暗い雰囲気になってしまったものの、最後はかなり盛り上がっていたため"火竜誕生祭"について問い詰める事をすっかり忘れていたのである。

 

フランは昨日のうちにレミリアへ手紙を出していたし、事情を聞かされた飛鳥と耀の2人はーーー。

 

「へぇ・・・・・?毎日毎日、コミュニティのために頑張っているのに・・・・・・・残念だわ」

 

「そうだね・・・・・こんな面白そうなお祭りを内緒にされてたなんて・・・・・・・」

 

そして昨日の十六夜と雅と同じ類の怪しい笑み・・・・・・・。それを見ていたフランは、昨日同様黒ウサギに合掌するのだった。

 

・・・・・・・と、そんな訳で馬鹿ウサギを探している問題児一同だったのだが、何故か見つける事が出来ないでいた。まだ朝食の時間にもなっていないくらいには早い時間だったため、最初はアホウサギの私室へと向かったのだが見事に空振り。

それならばと、既に食堂へ行っているのかと思い向かってみれば、そこでは幸平親子が朝食を作りながらリリと白雪に教えている姿があるだけだった。

一応何処にいるか知らないか聞いてみるがーーー。

 

「黒ウサギの嬢ちゃん?・・・・・いや、俺は見てないな」

 

「俺も見てないぜ?」

 

「リ、リリも見てないのです・・・・・」

 

「私も見ていないな・・・・・っと、城一郎殿・・・・・・・そろそろ野菜を入れても良い頃合いか?」

 

という返事が返ってきて、忙しそうなのでその場はそっとしておくことにした。他にも年長組の子供達と数人に会ったため聞いて見たのだが、誰も見ていないらしく途方に暮れる問題児たち・・・・・・・。

これだけ探しても見つからない事に、少しずつ不安が出てきたその時だった。

 

「おや?・・・・・皆さんお揃いでどうしたのですか?」

 

・・・・・と、何も知らないポケウサギが玄関から戻って来るところだった。その後ろには、レティシアと乙坂も疑問符を浮かべながら立っていた。

十六夜達はそのアホっぽい顔にホッとすると同時に、これまでの経緯から一瞬でイライラが増幅し黒い笑みへと変わって行く。

更に、雅はおもむろにギフトカードから血の入った小瓶を取り出していた。

 

そんな問題児たちの表情から、いち早く身の危険を察知した黒ウサギは脱兎のごとく走り出そうとしたのだがーーー。

 

「・・・・・・・逃がさ・・・ない」

 

一歩目を踏み出す間も無く、雅の血によって簀巻きのように縛り上げられていた。

 

「ちょ・・・・・ちょっとお待ちを!?黒ウサギが何をしたというのデスか!?」

 

「何をしたか・・・・・か」

 

「ねぇ・・・・・黒ウサギ?」

 

「私達に・・・・・何か」

 

「・・・・・隠してる・・・・・・・事、ある・・・よ、ね?」

 

その瞬間・・・・・・・黒ウサギは全てを悟った。お互いの後ろでは、フランやレティシアと乙坂が苦笑いをしながら手を合わせている・・・・・。

黒ウサギは内心で助けてと叫びながらも、必死に誤魔化そうと口を開いた。

 

「な、なんの事・・・・・でしょう?黒ウサギにはさっぱり・・・・・・・」

 

「北側で開催される"火竜誕生祭"に、俺たち"ノーネーム"も招待されてるんだってな?」

 

なんとか誤魔化そうとした黒ウサギだったが、一発で砕かれてしまった。

 

「黒・・・・・ウサギ・・・・・・・内緒、酷い・・・・・・・どう、して?」

 

「み、雅さん!?そんな悲しそうな目で見ないでくださいまし!?」

 

「良いから答えなさい・・・・・。雅さんを泣かせたら・・・・・」

 

「わかってるよね?」

 

「雅を泣かせたら、フランも黙ってないよ〜?」

 

今にも泣き出してしまいそうな雅の声音に、動揺する黒ウサギだったが、それ以上に飛鳥たち女性陣から放たれる殺気にウサ耳をヘニョらせた。

特に・・・・・フランから放たれる殺気は尋常ではなく、選択を誤れば本気でどんな目に合うかわからないと本能が告げていた。

 

「そ、その・・・・・デスね、白夜叉様から緊急の連絡が入りまして・・・・・・・北側で、雅さんのお兄さんらしき人物を見かけたという情報があったそうです」

 

その瞬間、十六夜たちの空気が変わった。

 

「ちょっと待て黒ウサギ・・・・・葉冥は死んだ筈だぞ?」

 

「それが・・・・・目撃情報を元に、白夜叉様が調べたところペルセウスの本拠に現れたのは、分身体である事がわかったのです。そして、現在は北側・・・・・まさに、"火竜誕生祭"の会場近辺にいるそうなんです」

 

黒ウサギがもたらした情報に、十六夜を含めその場の全員が顔を歪めた。・・・・・・・葉冥・・・・・雅の兄にして、雅の中にいる鬼たちを狙う者・・・・・・・。

フランも・・・・・話には聞いていたので心配そうに雅を見たが、すぐに明るい調子に戻った。

 

「確かに厄介かもしれないけど、今度は大丈夫だよ!お祭りには私のコミュニティの人達も何人か来るって言ってたし、お姉様の来るって言ってたから♪今度こそ雅に何かする前に倒しちゃえば良いんだよ!」

 

そう言ってニコッと笑うフランに、十六夜たちはお互いに顔を見合わせると苦笑を浮かべながらも頷いた。

 

「あぁ、そうだな。前回のようなヘマはしねぇ」

 

「私も、二度も雅さんを苦しませたりはしないわ!」

 

「私も・・・・・頑張るよ」

 

「そうだな。俺も次はマジで本気で叩き潰してやるよ」

 

雅のためにやる気を出す面々に、嬉しさからようやく雅も笑顔を浮かべる事が出来た。

それを確認すると、黒ウサギはどうやら余計な心配だったようだと目尻に浮かんだ涙を拭いながら立ち上がろうとしてーーー。

 

「あ、あの・・・・・そろそろ拘束を解いていただけないでしょうか・・・・・・・」

 

自分が未だに雅によって縛られていることを思い出して、ゴロゴロとその場で転がりだした。十六夜たちもすっかり忘れていたようで・・・・・それでも雅が解こうとしないのを眺めながらニヤニヤしだした。

 

「ま、俺たちに内緒にしてた罰としてもう暫くはそのまま縛られてろ」

 

「そうね・・・・・とりあえず、朝食を食べに行きましょう?」

 

「うん・・・・・・・黒ウサギを探しててお腹空いたし」

 

「その後で・・・・・・・白夜叉の・・・・・所に、行く?」

 

よし・・・・・と頷きあうと、一同は食堂へと向かう。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!?引きずるのだけはおやめ・・・・・・・か、階段!階段がありまーーー!!」

 

「「「・・・・・・・うわぁ・・・・・痛そう」」」

 

雅に引き摺られながら、階段を鈍い音を立てながら上って行く様子に、フラン、レティシア、乙坂の3人は声を揃えて合掌するのだった・・・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

朝食も食べ終わり、"ノーネーム"の一同は白夜叉の下を訪ねていた。最初はお金はあるんだし子供たちも含めたメンバー全員で祭りへ行こうかという話になったのだが、それを聞いたジンが異議を唱えた。

 

「確かに・・・・・仲間も増えて子供達を連れて行っても誰かしらが見ている事ができると思いますが、今回は雅さんの兄が襲って来る可能性があるんですよね?なら、子供達と、数人本拠の護衛に人を割くべきだと思います」

 

十六夜たちはいつの間にか大人な考え方が出来るようになっていたジンに驚きつつも、もっともな意見に頷くしかなかった。今回は乙坂を筆頭に・・・・・白雪と幸平親子が留守番する事になり、

乙坂が残る事には賛否両論別れたが白夜叉も祭りへは行くことを考えれば大丈夫だろうという結論にいたった。

 

そして現在は、白夜叉の部屋でくつろいでいるところだった。

 

「そうか・・・・・・・黒ウサギから話を聞き、覚悟した上で北へ行くと言うのだな?」

 

「あぁ・・・・・・・確かに危険はあるだろうが、これから先箱庭で生きて行く上で葉冥みたいな奴は早々に退場してもらった方がいい」

 

「そうね・・・・・それに、私達全員が雅さんが大好きなの」

 

「うん・・・・・だから、そんな雅を傷つける葉冥は許さない」

 

「ほぅ・・・・・出会って間もないと言うのに随分な好かれようだのう?まぁ・・・・・・・保護欲が刺激されるのはわかる。なんと言うか雅を見ていると守らねばならんと思ってしまうからのぅ・・・・・・・」

 

白夜叉の言葉に、そうなんだよなぁ・・・・・という表情を浮かべる一同。当の雅は、若干頰を染めて恥ずかしがっていた。

その姿にまたキュンとしてしまう飛鳥や耀だったが、流石に話が逸れすぎたため白夜叉は一つ咳払いをすると本題へと戻った。

 

「ゴホン・・・・・話を戻そうかの。おんしらの考えは分かった。今回は"幻想郷"からも数名ゲストとして呼んでおるし私も主催者の1人として参加する故、大丈夫じゃろう。ただし、絶対に雅を1人にはするなよ?必ず十六夜かフランのどちらかが一緒に行動するようにせい。・・・・・・・それと、雅の件とは別におんしら"ノーネーム"依頼したい事がある。まず・・・・・おんしらが"打倒魔王"掲げていると言うのは真かの?」

 

「あぁ、その話?それなら本当よ」

 

「ふむ・・・・・ジン、それはコミュニティのトップとしての方針か?」

 

「はい、"名"と"旗印"を奪われたコミュニティの存在を広めるには、これが1番良い方法だと思いました。もちろん、リスクは承知の上です。葉冥の事もあるので、当初の予定よりもリスクは上っていますが、乙坂さんやフランさんという戦力も加わりましたし、北側でも屈指の実力を持つ"幻想郷"とのパイプを繋げる事もできました。それに・・・・・シンボルを奪った魔王を倒そうにも、僕たちでは上層へは行けませんから。それなら、誘き出して迎え撃つしか方法もありません」

 

ジンは、真っ直ぐに白夜叉を見ながら自分の考えを口にしていった。白夜叉は、本当にこの少年があの気弱だったジン=ラッセルなのかと驚いた表情で見つめる。

それに対して・・・・・ジンは自嘲気味な笑顔を見せると、真剣な表情になった。

 

「僕は・・・・・まだまだ未熟です。今までは黒ウサギに頼りきりで、今だって・・・・・十六夜さんや雅さんを筆頭に、皆さんの活躍に甘えてばかりいる状態です。けど、これからもそのままでいるつもりはありません。僕は"ノーネーム"のリーダーです。僕は弱い・・・・・・・恐らく鍛錬した所で大した戦力にはならないでしょう。けど・・・・・知識を活かす事は僕にも出来る筈です。多くの文献を読んで知識を身につけ、それを武器にする事は出来る筈です。十六夜さんも膨大な知識を持っていますが、十六夜さん自身は最前線で戦いたがる人だと思いますし・・・・・そうなると、後ろで指揮を取る人材が今の"ノーネーム"にはいない・・・・・・・。だから、僕がその仕事を出来るようになれば、皆さんがより安心して戦えるようになるんじゃないかと思ったんです」

 

自分の弱さを認め、それでも尚コミュニティのために自分が何を出来るのか考え、そして道を見つけ出していたジンという少年に・・・・・その場の全員が、呆気に取られたように固まっていた。

特に、ずっと自分が守っていかなくてはならないと思っていた黒ウサギの動揺は大きく、いつの間にか大きく成長していた弟のような存在に涙が出そうな程だった。

白夜叉は、もう一度ジンの目をジッと見つめる・・・・・・・。それに対してジンも、目をそらす事なく彼女の瞳を見続けた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・ふぅ・・・・・・・。男子3日会わざれば・・・・・とは良く言ったものじゃのぅ・・・・・。いや、本当に驚いた。・・・・・・・が、ジンよ・・・・・知識を身につける事は良い。じゃがその知識を上手く使えるかはまた別の話じゃ。これからは、戦略的な事も身につけねばおんしの望む場所には立てんぞ?」

 

「それは・・・・・・・僕も悩んでいる所です」

 

「ふむ・・・・・ならば、少しばかり知恵を貸そうかの。まずはチェスや将棋、囲碁を覚えるんじゃ。そして十六夜や乙坂・・・・・後は雅辺りと出来る限り多く打つようにせい」

 

「雅さんとも・・・・・ですか?」

 

「うむ・・・・・私の感じゃが、雅は強いぞ?本能・・・・・というか感覚でどこをどう攻めれば良いか分かる類の人間じゃと思うからの。慣れて来たら、将棋などでは各駒を仲間に置き換えるんじゃ。例えば・・・・・物理的な戦力機動力もある十六夜は飛車。ギフトによって多彩な攻めが出来る雅は角といった具合にの。それが出来るようになれば、実戦でも戦場を将棋盤のように捉える事が出来るじゃろう。実際には臨機応変に対応しなければならなくなる事も多いじゃろうがの」

 

そう言って笑う白夜叉に、しかしジンはなるほどと頷くと頭の中では必要な物をリストアップしていた。北側に行っている間に色々と準備するつもりなのだろう。

 

「まぁ・・・・・ひとまずおんしの考えは良く分かった。その上で、"打倒魔王"を掲げたコミュニティである"ノーネーム"に依頼したい事がある。良いかな?()()殿()?」

 

「・・・・・・・あ、はい!」

 

それから白夜叉が語り出したのは、"サウザンドアイズ"幹部の1人が"火竜誕生祭"にて魔王襲来の兆しありという予言をしたという話だった。

それ以上でも以下でもないという白夜叉の言葉に、飛鳥や耀は敵の情報が一切ない事に若干不安そうな表情を浮かべていたが、十六夜や雅は特に気にした様子はなく割と余裕のある表情をしていた。

十六夜にとっては初の魔王戦・・・・・箱庭に来てからずっと楽しみにしていたのだ、ワクワクしてしょうがなかった。

雅は特に魔王と戦いたいというわけではなかったが、みんなが一緒なら大丈夫という安心感があった・・・・・・・。

 

白夜叉は一同を見渡すと、

 

「それでは、北側へ送るが準備は良いかの?」

 

それに頷く十六夜たち。

 

白夜叉は頷き返すと、両手を前に出してパンパンと柏手を打った。

 

「・・・・・・・よし、着いたぞ」

 

「「「「ーーー・・・・・・・は(え)?」」」」

 

思わず素っ頓狂な声を上げる十六夜たち。フランや黒ウサギはあははと苦笑をあげた。だが、それも仕方ないだろう。十六夜達がいた場所から北側までは980000km・・・・・・・。

そんなお馬鹿な距離を今の一瞬で移動したというのだ。

だがそんな考えも一瞬で過ぎ去り、4人はそれぞれの期待を胸に店外へと走り出すのだった・・・・・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4人は外に出ると、東側では見られなかった北側特有の風景に感嘆の声を上げた。特に飛鳥は元の世界でもほとんど外に出た事がなかったためか、そのはしゃぎようは年相応の少女そのもので、十六夜はそんな彼女を微笑ましそうに見つめた。

 

しばらく"サウザンドアイズ"支店側の高台から街並みなどを眺めていると、突然上から声をかけられた。

 

「お久しぶりね雅、十六夜・・・・・それに、フランも元気そうでなによりだわ。そっちの2人は初めましてね」

 

上を見上げると、そこにいたのは先日知り合いになった"幻想郷"メンバー・・・・・レミリア・スカーレットだった。その隣には、他にも3人の少女が佇んでいた。

十六夜が声をかけようとしたその瞬間ーーー。

 

雅の姿が掻き消えた。

 

「あら?」

 

「うわ!ちょ、なにをする!?」

 

「く、苦しいのだー」

 

「ちょっと・・・・・離してください」

 

次の瞬間には、後ろから慌てた様子の声が3つ聞こえて来た。十六夜達は、あぁ・・・・・またかと思うと、後ろを振り返る。そこでは、雅がレミリアを含めた4人の少女を侍らせるようにして撫でたり頬ずりしたりしていた。

 

「フ、フランも初めて会った時にされていたけれど・・・・・この子、撫でるのが無駄に上手くないかしら・・・・・・・」

 

「あ〜・・・・・雅の癖みたいなもんだ。そのうち慣れるぜ」

 

十六夜の言葉に、レミリアは「そう・・・・・」と頷くと諦めたように体を預けた。何故か雅に撫でられた少女は最初こそいきなりで嫌がるものの、すぐにされるがままになってしまう・・・・・。

 

ひとまず、雅は置いておく事にした十六夜達は初めて見る少女達の事を聞く事にした。

 

「で?そっちの3人は誰なんだ?」

 

「あぁ・・・・・この子達は"幻想郷"の仲間で・・・・・・・」

 

「あたいはチルノ!」

 

「ルーミアなのだー」

 

「古明地さとりです」

 

レミリアの言葉に続くように、3人は自己紹介した。十六夜達も、それぞれ名乗ると飛鳥がソワソワしながら十六夜の肩を叩き出した。

 

「十六夜君!早く下に降りましょう!街の中を歩いてみたいわ!!」

 

「わかったわかった!・・・・・悪いなレミリア。そういうわけで、先に街をみてくるわ」

 

「構わないわよ。雅がこの状態じゃ、真面目な話は後にした方が良さそうだしね・・・・・。楽しんでいらっしゃいな」

 

十六夜はそれに頷くと、飛鳥をお姫様抱っこして高台からジャンプで降りていった。それを見ていた耀も、それに続こうとしたが後ろから呼び止められた。声の正体は白夜叉で、ちょいちょいと手招きしている。

 

「すまんが耀は少し話があるので来てもらえんかの?」

 

「・・・・・話?」

 

「うむ・・・・・・・ほれ、雅もそんな所で撫で回しておらんで中へ入ってからにせい。・・・・・黒ウサギ達はどうする?」

 

「私はジン坊ちゃんと一緒に街へ下ります。私もジン坊ちゃんも、北側へ来るのは久しぶりですから」

 

「フランは雅と一緒にいるよ〜♪お姉様とも話したいし!」

 

白夜叉がそれに頷くと、一同はそれぞれ移動を開始した。

"サウザンドアイズ"の店内へ戻った耀達は、そのまま白夜叉の部屋まで行くと思い思いに座った。すると、いつもの女性店員がお茶を運んで来てくれる。店員はそのまま雅の隣に座ると、優しい笑みで話し始めた。

 

白夜叉はその様子を微笑ましく見ると、お茶を一口啜って耀へと向き直った。

 

「さて・・・・・先ほどの話じゃが、実はおんしに参加して欲しいゲームがあっての。ルールなんかはこの"契約書類"を見てくれ」

 

耀は白夜叉から"契約書類"を受け取ると、その内容を読んで見た。

そこには"造物主の決闘"と書かれて下り、どうやら創作系のギフト保持者を対象としたゲームのようだ・・・・・。

 

「創作系のギフト?」

 

「うむ。人造、霊造、神造、星造を問わず、製作者が存在するギフトの事だ。北側では過酷な環境に耐え忍ぶために恒久的に使える創作系のギフトが重宝されておってな。その技術や美術を競い合うためのゲームがしばしば行われるのだ。そこでおんしが父より譲り受けたギフトーーー"生命の目録"は技術・美術共に優れておる。人造とは思えんほどな。展示会に出しても良かったのだが、そちらは出場期限が切れておるしの。その木彫りに宿る"恩恵"ならば、力試しのゲームでも勝ち抜けると思うのだが・・・・・・・」

 

「そうかな?」

 

「うむ。それにサポーターも1人付けることができるしの。本件とは別に、祭りを盛り上げるために一役買って欲しいのだ。勝者の恩恵も強力なものを用意する予定だが・・・・・・・どうかの?」

 

うーん・・・・・と、あまり気乗りしないように小首を左右に振る耀。"龍"には興味があるが、ゲームそのものにはあまり興味が無いようだーーーが、そこでふと思い立ったように白夜叉に尋ねる。

 

「ねぇ、白夜叉」

 

「なにかな?」

 

「その恩恵は・・・・・雅を助けるのに役にたつかな?」

 

幼くも端正な顔を、小動物のように小首を傾げる耀。

それを見て、白夜叉はチラリと雅の方を見た。彼女は今だに4人の少女で遊んでいて幸せそうに微笑んでいた。そして耀へと視線を戻すと、優しい笑みで頷いた。

 

「そうじゃな・・・・・おんし次第にはなるだろうが・・・・・・・勝者には主催者が用意できる範囲で望むものを与えられるよう私から進言しておこう。おんしが勝てば・・・・・確約はできんがおんしが欲しいと思う力が手に入ることになるぞい」

 

「そっか・・・・・・・それなら、参加してみる」

 

コクリと頷いて縁側から立ち上がる。陽は昇りきり、昼を廻り始めていた。

 

「あの・・・・・・・そろそろ雅を止めて欲しいのだけれど・・・・・・・・・・・・・・」

 

その横で、レミリアが疲れた笑みを浮かべながら助けを呼んでいた・・・・・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

耀が白夜叉と話をしていた頃・・・・・十六夜と飛鳥は"赤窓の歩廊"と呼ばれる場所を手を繋ぎながら歩いていた。

最初、十六夜はお姫様抱っこをしていた飛鳥を降ろしたら彼女が行きたいところに後ろから付いて行こうと考えていたのだが、降ろしてすぐに飛鳥が十六夜の手を取って歩き出したのだ。

どういうつもりか聞こうとした十六夜だったが、飛鳥の横顔が赤く染まっているのに気づき自分まで顔が熱くなるのを感じてそのまま隣に並ぶことにしたのだった。

 

そして現在は、だいぶ慣れて来たのかお互いに店に並ぶ商品を眺めながら言葉を交わすようになっていた。

 

「・・・・・やっぱり、東側とは違った物が多いわね」

 

「あぁ。特にさっき見た歩くキャンドルスタンドなんかは面白いな」

 

「・・・・・・・ねぇ、十六夜君」

 

「うん?」

 

突然・・・・・・・飛鳥の声音が変わった事で、十六夜は思わず立ち止まりながら飛鳥の顔を見た。そこには、先程まで見せていたような笑顔はなく、ただ1人の女として十六夜を見ている姿があった。

 

「少し前に・・・・・・・田所さんの旅館で言った事を覚えてる?」

 

「・・・・・・・あぁ、勿論だ」

 

「あれから・・・・・葉冥の事や雅さんの家出とかがあって、中々チャンスが無かったのだけれど・・・・・・・あの時から、十六夜君の心は変わったのかしら」

 

暗に、私のことを好きになったりしてない?と聞いてくる彼女に、十六夜は表情を暗くした。

それだけで、飛鳥は悟ってしまった。まだ、彼は悩んで・・・・・最悪、もしかしたら雅へと心が傾いているかもしれないと・・・・・・・。

 

「ご、ごめんなさい・・・・・・・折角のお祭りなのに、こんな事を聞いてしまって」

 

「いや・・・・・俺の方こそ、悪い。まだ・・・・・悩んでるんだ。雅の事は守りたい・・・・・それは、変わってない・・・・・と思う。けど、それが保護欲みたいなものから来てるのか、それとも好きだから守りたいと思うのか・・・・・・・わからない。飛鳥の事も・・・・・守りたい。あの日・・・・・お前にキス・・・されてから、俺の中でお前の存在が大きくなったのは間違いないんだ。けど、この感情が・・・・・好きって気持ちなのか、わからない。俺は・・・・・俺、は・・・・・・・ッ

!?」

 

言葉を紡ぐたびに・・・・・表情が険しくなり、少しずつ声が掠れ今にも泣き出しそうで・・・・・・・辛そうな十六夜の姿に、飛鳥の方が耐えられなくなってしまった。

飛鳥は十六夜の顔を両手で包み込むと、そのまま彼の顔を自分の胸元へと引き寄せる。いつの間にか・・・・・・・周りの喧騒も遠くなっていて、今はお互いの息遣いだけが聞こえていた。

 

「あ、飛鳥?」

 

「ごめんなさい・・・・・十六夜君が、そこまで悩んでるなんて、私・・・・・気づけなくて。でも、それだけ真剣に悩んでくれてる事が嬉しくも感じてて・・・・・酷いわよね?・・・・・こんなに、辛そうな十六夜君を見て、嬉しいなんて・・・・・・・ごめん、なさい」

 

今度は、飛鳥の声が震えていた・・・・・。自分は酷い女だと、自分自身を責めている。十六夜はそんな彼女のいじらしさが可愛く見えて・・・・・飛鳥は彼の真っ直ぐな心が愛おしくて・・・・・・・暫くの間、周囲の事など気にする事もなくお互いを抱きしめ合うのだったーーー。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

十六夜と飛鳥が街を見て回っていた頃・・・・・黒ウサギとジンの2人も彼らとは別の歩廊を歩いていた。

旧"ノーネーム"が崩壊してからというもの、2人ともずっと忙しかったため久々に羽を伸ばせる今の状況にワクワクが止められないでいた。

特に、黒ウサギは休む暇もなく子供達の世話をしたり出稼ぎに出たりと大忙しだったため、のんびりと街を見て回れることにテンションが上がりっぱなしだった。

 

「ジン坊ちゃんジン坊ちゃん!次はあれを見に行きませんか?」

 

「黒ウサギ落ち着いて・・・・・お店は逃げないんだから。今のペースで歩いてたらすぐに疲れちゃうよ?」

 

「あぅ・・・・・ジン坊ちゃん、本当に大人っぽくなりましたねぇ・・・・・・・」

 

少し前の彼ならば、黒ウサギのペースにあたふたしながら付いてくるのが精一杯で・・・・・今のジンは、本当に落ち着きのある考え方ができるようになっていた。

リーダーとして見れば、それは喜ばしい成長である。しかし、黒ウサギにとっては守らなくてはいけないと思っていた少年が、いつの間にか急に大きく成長してしまっていたことに少しばかり寂しさのようなものを感じてしまっていた。

 

ジンも・・・・・彼女の感慨深そうな言葉に、以前の自分ならこんな時照れてしまっていただろうと思っていた。

 

いつからだろうか・・・・・・・こんなにも、強くなりたいと思うようになったのは・・・・・。

十六夜達が召喚されてすぐは、まだどうしたら良いのかわからず十六夜の作戦に頼ることしか考えられなかった。

けど、ガルドとの戦いで耀が怪我をして・・・・・そう、雅が血まみれで部屋から出て来た辺りから・・・・・・・彼女ほどの実力者でも、大怪我をする事はあるんだとショックを受けたのがキッカケかもしれない。

自分はただ、彼らの実力を黒ウサギから聞いた時驚くことしかできなかった。水神を素手で倒し、更には従属させた十六夜と雅。そして、自分は顔を俯かせることしかできなかったガルドに対して、圧倒的優位に立っていた飛鳥よ耀・・・・・・・。

この人たちに任せれば、きっとコミュニティを再建できる・・・・・そんな甘い考え方しかできていなかった自分にとって、あの光景はあまりにも衝撃的すぎたのだ。更にはペルセウスとの戦い・・・・・・・葉冥が現れ雅が悲鳴をあげる中、十六夜達は必死に彼女を助けようと戦っていた。雅が暴走してしまった時も・・・・・安易に彼女を傷つけるのではなく、助ける事を第一に考えて行動していた。

 

けれど、自分はその時何をしていた?

 

ただ怯え、黒ウサギに庇われていただけだったではないか・・・・・・・。

あの時は、結果的に雅を救うことには成功したが、それでも代償が無かったわけではない。今後も同じように助ける事が出来るとは限らない・・・・・・・。

 

だからこそ・・・・・自分自身も力をつける必要があると思った。けど、自分の持つギフトは戦闘向きじゃないのはわかっていたし、そもそも運動神経が良いわけでもない。

どうすれば良いか悩んだ末にたどり着いたのが、指揮官的なポジション・・・・・。前線で戦えるようになるには膨大な時間と修行が必要になる。しかし、知識を吸収するならば個人差はあるだろうが体を鍛えるよりは早いだろうし、自分にも向いていると思ったのだ。

 

方針が決まってからのジンの行動は早かった。その日から、彼は寝る間も惜しんで書庫にある本を読み漁っていった。その中で気になる場所があれば別の本で肉付けしたし、丁度いい本が無ければ街の本屋まで買いに行く手間も惜しまなかった。

そうやって・・・・・今日までに読んだ本の数は、100冊に到達しそうな程で、これは十六夜が箱庭に来てから読んだ数のおよそ3倍の量だった。

 

側から見れば・・・・・かなり無理をしているように感じる量だったが、ジン自身は本を一冊読むたびに増えて行く知識に一歩ずつ目標に近ずいている実感と、何より本を読むのは非常に楽しかったため無理をしているという感覚はなかった。

 

だが、目標に近ずくにつれて自己嫌悪が募っていく事もあった・・・・・。それは、黒ウサギへの申し訳なさ・・・・・・・。

もし、自分がもっと早くやる気を出していたら・・・・・・・もしかしたら黒ウサギにもっと楽をさせてあげられたかもしれない。子供達にも、もっと美味しいものを食べさせてあげられたかもしれない・・・・・・・。そう思うと、今までの自分が許せなくて、夜に声を殺して泣く日も少なくなかった。

 

だから・・・・・これからは自分が守る側にならなければいけない・・・・・・・目の前を、楽しそうに歩く黒ウサギを見て・・・ジンはもう一度自分に誓うと共に、今日まで言いだす事ができなかった事を言葉にした。

 

「黒ウサギ・・・・・ごめん」

 

その言葉はあまりに小さく・・・・・ともすれば街の喧騒に掻き消されてしまうかと思ったが、流石は"箱庭の貴族"と言うべきか黒ウサギの耳にはしっかりと聞こえていた。

彼女はジンへ振り返ると、キョトンとした顔をする。

 

「突然謝ったりしてどうしたのですか?」

 

「色々・・・・・・・かな。・・・・・今まで、頼りきりだった事、ずっと・・・苦労ばかりかけてしまっていた事・・・・・・・そして、今日まで・・・謝る事ができなかった事・・・・・・・」

 

ずっと・・・・・言えなかった。何度も・・・何度も謝ろうとして、その度に勇気が出なくて・・・・・・・それでも、やっと・・・・・言えた。

その事に・・・思わず泣き出しそうになってしまったけれど、ここで泣いてしまっては以前の自分と何も変わっていないと思い直し、必死に涙を堪えた。

 

「ジン坊ちゃん・・・・・そんな、私がしてあげられた事なんて、微々たる事なのですよ。私は、"ノーネーム"の皆さんが大好きです。大事な・・・・・"家族"だと思ってます。・・・・・家族を守る事に苦労なんて感じませんよ」

 

そう言ってはにかむ黒ウサギに、きっと・・・・・それは本心なんだろうとジンは感じた。それでもやっぱり・・・・・だからこそ、自分達のことを"家族"だと言ってくれた彼女のことをジンは、今度は自分が守れるようになるのだと何度も・・・・・何度も心に誓うのだった・・・・・・・。

 

 




今回はここまでとなります。
久しぶりの最新話だったためか、ちゃんと書けているか不安です。

雅ちゃん今描くとこうなる。


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