心を失った少女も異世界から来るそうですよ?   作:ほら、死の花が咲いた

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第11話になります!

今回も1万字以上書いてるのに・・・・・・・話が全然進んでない!!!

進んでなさすぎてサブタイに悩んだ挙句当たり障りのないタイトルになってしまいましたw

ではどうぞ・・・・・・・

感想や評価お待ちしています!(作者のモチベーションが上がるかもしれません)


第11話:決勝前だそうですよ?

第11話

 

誕生祭・運営本部ーーー。

 

白夜叉を初めとした"サラマンドラ"のメンバーや"ノーネーム"のメンバーは、"造物主の決闘"の後サラマンドラの運営本部へと案内されていた。

途中、十六夜達と合流できたため現在、運営本部には今回祭りに参加していたメンバー全員が揃う形となった。

 

「で?俺たちを集めてなんの話をするんだ?できればすぐにでも風呂に入りたいんだが」

 

不機嫌なのを隠そうともせずに悪態をを吐く十六夜。実際・・・・・十六夜と飛鳥の2人は大量のネズミに襲われた事で、その返り血を大量に浴びたため今すぐにでも洗い流したくてしょうがなかったのだ。

 

白夜叉は少しだけ申し訳なさそうな顔をすると、サンドラへと視線を送った。

彼女はそれに頷くと、上座にある豪奢な玉座から立ち上がり十六夜達へと声をかけた。

 

「"箱庭の貴族"とその盟友の方、此度は"火龍誕生祭"へと足を運んでいただきありがとうございます。できる事なら貴方方の願いを聞き届けたい所なのですが、今回ばかりは私達の話を聞いていただきたく思います」

 

そう言って頭を下げるサンドラに、少し後ろに控えていた彼女の兄マンドラは険しい表情になったが、十六夜は礼儀正しい彼女の態度に少しだけ頭が冷えたようだった。

それを見て、白夜叉は1つ頷くと本題へと入るために連れの者達に目配せした。それに続くようにサンドラも同士を下がらせ、側近のマンドラだけが残った。

サンドラは人がいなくなると、硬い表情と口調を崩し、玉座を飛び出してジンに駆け寄り、少女っぽく愛らしい笑顔を向けた。

 

「ジン、久しぶり!コミュニティが襲われたと聞いて随分と心配していた!」

 

「ありがとう。サンドラも元気そうで良かった」

 

同じく笑顔で接するジン。サンドラは鈴の音のような声で一層はにかんで笑う。

 

「ふふ、当然。魔王に襲われたと聞いて、本当はすぐに会いに行きたかったんだ。けどお父様の急病や継承式のことでずっと会いに行けなくて」

 

「それは仕方ないよ。だけどあのサンドラがフロアマスターになっていたなんてーーー」

 

「そのように気安く呼ぶな、名無しの小僧!!!」

 

ジンとサンドラが親しく話していると、マンドラは獰猛な牙を剥き出しにし、帯刀していた剣をジンに向かって抜く。突然の事に、一瞬動くのが遅れた黒ウサギや耀などは表情を驚きに染めた。

しかし、当の本人であるジンは自身に向かってくる剣とマンドラの顔を見て、微笑みすら浮かべていた。

 

まるで、自分にその刃は届かないと言いたげに・・・・・。

 

そしてそれは現実となる。マンドラが振るった刃は、ジンの首筋ギリギリの所で十六夜の足で受け止められていた。

更には、マンドラは飛鳥の影によって体の自由を奪われ雅の血でできたふた振りの鎌によって首を挟まれていた。

ほんの僅かでも動けば首が飛ぶ・・・・・逆に自分の首が危なくなっているという状況に、マンドラは驚愕と恐怖を味わう事になっていた。

 

「・・・・・・・おい、知り合いの挨拶にしちゃ穏やかじゃねえぜ?止める気なかっただろお前」

 

「この力、まだ使いこなせてないの・・・・・・・。加減を間違えなくて良かったわね?」

 

「・・・・・皆んなが・・・止めてなかったら、私は・・・・・・・切り落として、た」

 

3人の殺気の篭った視線に一瞬たじろいだマンドラだったが、なんとかと言った様子で口を開いた。

 

「サンドラは・・・・・もう北のマスターになったのだ!誕生祭も兼ねたこの共同祭典に"名無し"風情を招き入れ、馴れ馴れしく接されたのでは"サラマンドラ"の威厳に関わるわ!この"名無し"のクズどもが!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・ソゥ・・・・・・・」

 

ゾクっ・・・・・・・。

 

マンドラが最後の一言を言い終わった瞬間・・・・・周囲の温度が明らかに下がった。

怒りを露わにしていた十六夜達でさえ身震いしてしまうほどの殺気に、慌てて白夜叉が動き出す。

 

次の瞬間には、白夜叉が雅を地面に叩き伏せていた。

 

「落ち着かんか!今おんしが暴れれば、私も全力でおんしを叩きのめさねばならんぞ!?」

 

「ソノ前ニ・・・・・アレをコロス事クライは・・・・・・・デキ、る!」

 

雅はそう言うと、白夜叉に取り押さえられた拍子に外れてしまった鎌をマンドラへ向かって振るった。

その速度は並みの者なら認識すら出来ずに命を散らしている程のもので、サンドラが悲鳴を上げた事でマンドラも自分の死を悟り目を瞑った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

しかし、いつまで経っても斬られる感触が襲ってこない事に疑問を感じると、ゆっくりと片目を開けて状況を確認した。

そこには、雅の鎌がマンドラへ到達するギリギリで防いでいる十六夜と飛鳥の姿があった。

 

「どうして・・・・・止める、の?ソレは・・・・・・・私の、大切な・・・・・人達を、馬鹿に・・・・・・・したんだよ?」

 

「確かに、こいつの発言には頭に来たさ。俺だってぶん殴ってやりたいと思ってる。だがな?殺すのはダメだ。今・・・・・お前がこの駄蛇を殺しちまえば、多分お前の中の狂気が表に出て来ちまう」

 

「それにね雅さん。私達のために怒ってくれた事は凄く嬉しいけど、そのせいで貴女が壊れてしまったら私たちはきっと自分を許せない。私達はね・・・・・・・貴女に笑っていて欲しいのよ。だから、こんなお馬鹿の言葉程度で怒らないで?」

 

諭すように・・・・・優しく語りかけてくる2人に、雅は次第に殺気を収めていくと完全に力を抜いた。

 

雅が大人しくなった事で、周囲の温度も元に戻って行くと白夜叉も雅を解放し元の場所へと戻って行った。

 

「やれやれ・・・・・マンドラよ。あまり雅を刺激せんでくれ・・・・・・・。もし先ほど雅が別のギフトを使っておったら、最悪紅炎の都そのものが消滅しておったぞ」

 

白夜叉の言葉に、何を馬鹿な事をという顔をするマンドラ。しかし、白夜叉の若干青い表情に今の言葉が嘘でも冗談でもないと悟と顔を痙攣らせた。

 

マンドラが黙った事で、白夜叉は深く溜息を吐くとサンドラへと視線を向ける。

その視線の意味を察したサンドラは慌てて雅の前へと走りより頭を下げた。

 

「雅さん。先ほどはお兄様が心無い発言をしてしまい申し訳ありませんでした。どうか、お許しいただけないでしょうか・・・・・」

 

「・・・・・サンドラは・・・良い子・・・・・・・。でも、アレを・・・・・許す事は・・・・・・・でき、ない。"ノーネーム"の・・・・・みんなは、私の・・・・・・・宝物・・・だから。それに・・・・・さっき、威厳って・・・言ってた・・・・・けど・・・・・・・い、十六夜・・・・・・・」

 

どうやらめんどくさくなったらしい・・・・・・・。雅は疲れた顔で十六夜見ると、彼は頭を掻きながら後を継いだ。

 

「あ〜つまりだ。旧"ノーネーム"が襲われた時に、助けに来なかったお前らが威厳だの誇りだの口にしてんじゃねえよって雅は言いたいんだよ。んで、それを棚に上げて俺らのことを"名無し"と侮辱したもんだから・・・・・雅はそいつを許せないと言ってるわけだ。謝るならサンドラ・・・・・あんたじゃなくその駄蛇に謝らせないと意味ないぜ?」

 

十六夜の代弁に、コクコクと頷いてみせる雅。サンドラは、納得したように頷くとマンドラへと向き直った。

 

「マンドラ兄様・・・・・正直に言って、私は先ほどの兄様の発言に失望しました。それに、彼らの言っていることも・・・・・事実です。誇りを口にするなら、先ずは助けに行けなかったことを謝罪してからでなければいけないと思います。ですから、こちらに非があるのに彼らを侮辱した事を詫びてください」

 

「なっ・・・・・・・・・・・・・・」

 

失望した・・・・・・・その言葉に、マンドラは雷に撃たれたようにショックを受けその場に崩れ落ちる。

そして肩を震わせながら小さな声で「サンドラに嫌われた」と何度も呟き始めた。

 

それを見た十六夜は・・・・・・・。

 

「こいつ・・・・・ただのシスコンなんじゃねえか?」

 

それは、その場にいた一部の人たちの思いを代弁する言葉だった。

その時、外から聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 

「白夜叉?入っても良いかしら?」

 

「ん・・・・・?おぉ、レミリアか?良いぞ」

 

「失礼するわ・・・・・・・って、何があったの?」

 

白夜叉の了解を得て入って来たレミリアは、マンドラの様子を見て疑問符を浮かべた。一緒に入って来たフラン達は、マンドラの頭を突いたりして遊び始めた。

それに対して十六夜達は苦笑いを浮かべると、簡単に説明した。

 

「なるほどね・・・・・という事は、まだ本題には入っていないのね?」

 

「そうなるの。とりあえず、私が集めたメンバーは揃ったことだし話を進めよう・・・・・。マンドラも、いつまでそうしているつもりじゃ?」

 

「待って・・・・・白夜叉。まだ・・・・・・・謝って・・・もらって、ない。私は・・・・・まだ、許してない」

 

「あぁ、そうじゃったの・・・・・マンドラ」

 

白夜叉から鋭い視線を向けられ、マンドラはビクッと肩を震わせるとゆっくりと立ち上がった。その表情には、苦々しいという感情がハッキリと張り付いていたがサンドラにも睨まれてしまい肩を落としながらも頭を下げた。

 

「・・・・・先ほどは、失礼な態度を取ってしまい・・・すまなかった。以前、助けに行けなかった事に関しても・・・・・事情があったとは言え、申し訳なくは思っているのだ。どうか、許してほしい」

 

「私からも、もう一度お詫びします。本当にごめんなさい!」

 

マンドラに続く形で、サンドラも深々と頭を下げながら謝罪した。

雅は、2人に近ずくとゆっくりと頭を撫でた。

 

「気持ちは・・・・・受け取った。頭を・・・・・・・上げて?」

 

まさか撫でられるとは思っていなかった2人は、頭を上げて更に驚いた。つい先ほど、震えが止まらなくなるほどの殺気を放っていた雅が、今は見惚れるほど優しい笑みを浮かべていたのだ。

これには十六夜達も驚くと同時に、マンドラへの怒りが彼女の感情を引き出すキッカケになったのかもしれないと思い、結果的に良かったのかもしれないと顔を見合わせて苦笑した。

 

「ふふ、なんとか丸く収まったようじゃの。それでは、今度こそ本題にはいるぞ?皆には予め軽く話はしてあるが、今回の誕生祭に魔王が現れる可能性がある。おんしらには、その魔王に対抗するために集まってもらったのじゃ」

 

白夜叉はそう言いながら、一枚の封書を取り出し皆に見えるように広げてみせた。

そこには、ただ一行・・・・・。

 

『火龍誕生祭にて、"魔王襲来"の兆しあり』

 

と書かれていた。その文面に、白夜叉とレミリア以外の全員が首を傾げた。

 

「おい白夜叉・・・・・これはどういったものなんだ?」

 

「ふむ・・・・・言ってしまえば、これは未来予知による予言じゃの。これを渡して来た人物は、全てを()()上で、この一文だけを私に知らせた」

 

「私には、何故そうしたのか分かるわね・・・・・私には、運命を見る力がある。だから、今後の展開はある程度予想がついているけれど・・・・・その封書を送った相手がそれ以上言わなかったのなら、私も口を閉ざさせてもらうわ」

 

レミリアの発言に、十六夜達はどうしたものかと悩んだが、結局はやる事は変わらない。

 

「ま、相手の情報が何もないってのは不安要素ではあるが・・・・・今回はレミリア達もいるしな。俺たちは俺たちのやりたいようにやらせてもらうぜ?」

 

「まぁ良かろう。いざとなれば私が出れば良いのだしの。レミリア達も・・・・・良いかの?」

 

「構わないわ。ただし、今回私は十六夜達の実力を見たいということもあるから、本当に危なくなるまではあまり手は出さないわよ?例えどれだけ犠牲が出ようとも・・・・・ね」

 

レミリアは、そう言いながらサンドラ・・・・・というよりも、マンドラを冷たい目で見た。

サンドラや一部の人間は・・・・・その視線に首を傾げていたが、白夜叉を初めとした十六夜とさとり・・・そして雅もなんとなく今回の顛末を理解した。

 

さとりはその前から既にわかっていたが・・・・・。

ずっと片目を瞑り、第三の目とも言える物で全員の心を読んでいたさとりは、薄く笑うとマンドラから視線を外した。

 

(まぁ、レミリアさんが何も言わないのであれば大した犠牲は出ないのでしょう。今回私達は葉冥という男に対処するのが本命ですし、余計な事はしないでおきましょうか・・・・・)

 

レミリアが発言してからというもの、マンドラはずっと険しい顔で黙っているだけだったが一部を除いて気にする者はいなかったため、その後は簡単な作戦会議へと移りすぐに解散となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

サウザンドアイズの旧支店へと帰った十六夜達は、ひとまず汗や埃を流すために風呂へと向かった。帰るやいなや、女性店員に、

 

「そんな格好で中に入る事は許しません!十六夜さんはそっち、飛鳥さんはそっちで服を脱いでお風呂へ直行してください!その間に汚れた服はこちらで洗濯しておきますので上がったら備え付けの浴衣を使って下さい。まったく何があったらここまで汚れるというんですか!!」

 

と・・・・・文句を言う暇もなく風呂場へと押し込まれたのもあったが、実際十六夜達も気になってしょうがなかったし早く風呂には入りたかったので素直に言うことを聞いていた。

どうせだからと、一緒に戻っていたレミリア達も先にお風呂へ入ることにしたので、女湯はもし覗いた男が見たならばまさに桃源郷だったろうというメンツが揃っていた。

 

半分は見た目幼女だとか言ってはいけない・・・・・・・。

 

「ふぅ・・・・・ようやく嫌な気持ちから解放されたわ・・・・・・・。まったく、マンドラさんのせいで無駄に時間がかかってしまったわね」

 

「飛鳥・・・・・ごめ、ん。私も・・・・・話を、引っ張った・・・・・・・から、余計に・・・・・・・時間かかっちゃった、よね」

 

「み、雅さんは良いのよ!あれは私だって腹が立ったもの・・・・・」

 

しょんぼり・・・・・と言った感じで謝る雅に、慌てて飛鳥がフォローしているとそれを聞いていたフランが気になっていた事を聞いて来た。

 

「そう言えば、どうして飛鳥と十六夜は血塗れになってたの?2人が怪我したわけじゃないみたいだったからさっきは聞かなかったんだけど」

 

「私も気になる。十六夜もいたのに、そんなに苦戦するような相手だったの?」

 

耀も気になっていたようで、フランに続くように近寄って来た。

飛鳥は「あぁ・・・・・」と言いながら、大空洞で起きた事を話した。

 

「さ、流石に数万匹のネズミは怖いね・・・・・」

 

「そうね・・・でも、十六夜君があそこまで焦っていたのはなぜだったのかしら?数は多かったけれど、所詮はネズミなのだから少しくらい引っ掻かれたって大した怪我にはならないわよね?」

 

飛鳥の素朴な疑問に、今度はレミリアが答えた。

 

「貴女の話を聞いた限りだと、恐らく十六夜はネズミ捕り道化の話を思い浮かべたのでしょうね。伝承を少しでも知っていれば、ネズミがもたらす病原菌などを警戒するのは必然でしょう。中には死に至る物もあるしね?」

 

レミリアの説明に、飛鳥は今更になって背筋が寒くなるのを感じて深く温泉に浸かり直した。十六夜が必死に戦ってくれなければ・・・・・そして、自信が新しいギフトに目覚めていなければ、今頃はレミリアの言う病気に苦しんでいたかもしれない事実に恐怖したのだ。

飛鳥は、改めて十六夜に感謝すると同時に"好き"という気持ちが強くなっていく。

 

「あらあら、死んでいたかもしれないって言うのに随分と幸せそうな顔ね?もしかして十六夜の事が好きなのかしら?」

 

「なっ!べ、別に良いでしょう!?好きな人が必死に守ってくれたんだもの、嬉しいに決まってるじゃない・・・・・・・」

 

「飛鳥・・・・・そんなに十六夜が好きなんだ?」

 

「私は・・・・・恋愛に、興味ない・・・・・・・けど、飛鳥の恋・・・は、応援・・・・・してあげたく、なる」

 

「フランも応援する〜!」

 

「ふふ、黒ウサギも応援するのですよ♪」

 

「なんか知らないけどあたいも応援するぞ!」

 

「応援するのだー!」

 

「私も応援しておきましょう。ところでチルノさん?あまりこちらに近ずくと溶けますよ?」

 

「「「溶けるの(溶ける・・・の)!?」」」

 

何故か全員から応援された飛鳥は、恥ずかしさから耳まで真っ赤になりながら更に温泉へと沈んでいく。

さとりの溶ける発言に、耀や雅がチルノを追いかけ回し始め、更にフランやルーミアがそれに便乗し始めたためそれ以上は弄られなかったが、温泉から上がるまで飛鳥は湯船から顔を出すことができなかった・・・・・。

 

一方、十六夜とジンの2人はさっさと体を洗い終えると温泉前のロビーで女性店員と共に牛乳を飲みながら寛いでいた。

十六夜はふと、思い出したかのように女性店員へと声をかけた。

 

「そういや・・・・・あんたってなんて名前なんだ?」

 

「教える義理はありません」

 

「まぁそう言うなって。雅には教えたのか?」

 

「・・・・・・・そう言えば言っていませんでしたね」

 

女性店員は若干申し訳なさそうに眼を伏せた。雅とはそこそこ仲良くなっていたため名を名乗っていなかったことに罪悪感を感じてしまったのだろう。

 

「雅に教えるならどうせ俺たちも聞きことになるんだ、教えてくれよ。それとも今まで通り"あんた"で良いのか?」

 

「はぁ・・・・・仕方ないですね。ただし、雅さんには自分で言いたいので先に言わないでくださいね」

 

「あいよ」

 

女性店員は十六夜の軽い返事にまた溜息を吐くと、若干頰を染めながら名乗った。

 

「私の名は・・・・・雪那・・・です」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

何故か黙り込む十六夜とジン。女性店員・・・・・・・雪那は沈黙に耐えきれなくなると、更に顔を紅くしながら叫んだ。

 

「黙らないで下さい!私だって似合わない名前だと思ってるんです!!」

 

「あぁ・・・・・いや、確かに驚いたが別に似合ってないわけじゃないだろ・・・・・なぁ?」

 

「そ、そうですね。雪那さんは肌も白いですし、似合っていますし良い名前だと思いますよ」

 

割と真面目な表情で褒め始める2人に、雪那はこれ以上ない程自分の顔が赤くなるのを感じた。

今まで仕事一筋な生活をしていたため、面と向かって異性に名や容姿を褒められた事がなかったのだ。どうして良いか分からず恥ずかしさでプルプル震えていると、丁度そこへ温泉から雅達が戻ってきて不思議そうな顔をした。

 

「あら、店員さんを口説いていたのかしら十六夜君?」

 

「冗談だとは分かっているがやめてくれ。飛鳥から言われると流石に怖い」

 

飛鳥の冗談に、十六夜は若干冷や汗をかきながら否定する。その間に雅は雪那へと近寄っていて、ようやく冷静になれたのか改めて自己紹介していた。

 

「その、今まで名乗っていなくてすみません」

 

「気にして・・・・・ない、よ。私も・・・・・・・聞いてなかった、し。でも、教えてくれて・・・・・嬉しい」

 

「良かったです。これからも仲良くしていただけると嬉しいです」

 

「私・・・・・こそ、雪那・・・・・は仲間以外、で・・・・・・・初めての・・・友達。これから、も・・・・・よろしく・・・ね」

 

お互いに微笑み合う2人。その様子を眺めていた十六夜達は、自然と笑えるようになってきた雅に自分たちも自然と笑顔になるのを感じていた・・・・・。

 

その後、一同はもう一度白夜叉の部屋を訪れていた。今回の予言の魔王について、十六夜やレミリアはサラマンドラの連中抜きで話をしたいと思っていたからである。

白夜叉は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに察すると皆に座るよう促した。

 

「おんしらが訪ねてきた理由はわかっておる。早速・・・・・黒ウサギの審判衣装をエロ可愛くする会議を」

 

「始めません」

 

「始めーーー」

 

「十六夜君?」

 

白夜叉の悪ノリに、十六夜は乗ろうとしたが飛鳥に目で殺された。冷や汗を流しながら苦笑いをする十六夜に、飛鳥はやれやれと溜息を吐くと十六夜の隣へと移動すると白夜叉を睨みつけた。

 

"良いから本題に入りなさい"

 

その迫力のある瞳は、白夜叉もたじろぐほどの力を持っていた。

 

「ま、まぁ・・・・・衣装の事は一旦横に置いておいてだな?実は明日から始まる決勝の審判を黒ウサギに依頼したいのだ。おんしらは別の要件があってきたのじゃろうが、先にこちらを決めさせてくれ」

 

「それは構いませんが、随分唐突でございますね。何か理由でも?」

 

「うむ。どうやら黒ウサギが街ではしゃいでた様子を、街にいた連中がわざわざ誕生祭の為に上層から降りてきたと勘違いしたらしくての。明日からのゲームで見られるのではないかと期待が高まっているらしい。"箱庭の貴族"が来臨したとの噂が広まってしまえば、出さぬわけにはいくまい。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させてほしい。別途金銭も用意しよう」

 

なるほど、と納得する一同。"箱庭の貴族"の名は、それほどまでに民衆から評価されているのだろう。

 

「わかりました。明日のゲーム審判・進行はこの黒ウサギが承ります」

 

「うむ、感謝するぞ。・・・・・・・それで審判衣装だが、例のレースで編んだシースルーの黒いビスチェスカートを」

 

「着ません」

 

「白夜叉・・・・・これ以上は、私も・・・・・・・怒る、よ?フランと・・・一緒に、キュッと・・・・・・・しても、良い?」

 

そう言いながら掌を白夜叉に向ける雅。フランも楽しそうに白夜叉へ手を向けていた。これには白夜叉も割と本気で焦り始めた。

仮にキュッとしてドッカーンされても死にはしないが、冗談ではない痛みを味わうのは御免被りたかった。

 

・・・・・・・と、そこで耀が思い出したかのように手を上げながら白夜叉に訪ねた。

 

「キュッとする前に聞きたいんだけど・・・・・私が明日戦う相手ってどんなコミュニティ?」

 

「キュッとするのを前提に聞くでない!いくら可愛く言ってもアレをくらうのは勘弁じゃぞ!?・・・・・・・それと、それは教えられん。"主催者"がそれを語るのはフェアではなかろ?教えてやれるのはコミュニティの名前までだ」

 

白夜叉は座ったまま後退りしていた姿勢を正すと、ゴホンと1つ咳払いをしてからパチンと指を鳴らした。

すると昼間のゲーム会場で現れた羊皮紙が現れ、同じ文章が浮かび上がる。

そこに書かれているコミュニティの名前を見て、飛鳥と十六夜は驚いたように眼を丸くした。

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"に・・・・・・・」

 

「"ラッテンフェンガー"・・・・・・・か」

 

「うむ。この二つは珍しい事に6桁の外門、一つ上の階層からの参加でな。格上と思ってよい・・・・・・・が、雅がサポーターじゃしの・・・・・。それに、昼間の戦いぶりを見るに、耀単体でも良い勝負ができるかもしれんの」

 

苦笑気味に言う白夜叉に、耀はなるほどと頷いた。つまり、そこに雅が加われば勝てる可能性は高いと言っているようなものだったのだ。

 

一方十六夜は、"契約書類"を見ながら深刻そうな顔をした。

 

「なぁ白夜叉・・・・・。この"ラッテンフェンガー"のコミュニティなんだが・・・・・・・明日の敵は、ハーメルンの笛吹き道化だったりするのか?」

 

もし、明日の敵が夕刻に自分たちが襲われた時の敵と同一だった場合・・・・・・・。雅がいる以上負けるとは思わないが、下手をすれば耀は命に関わるかもしれないと十六夜は思った。

レミリアから話を聞いていた飛鳥も、心配そうに耀を見つめている。

 

雅と耀はなぜそんなことを聞くのかと首を傾げていたが、黒ウサギと白夜叉の驚嘆の声に意識を持っていかれた。

 

「ハ、"ハーメルンの笛吹き"ですか!?」

 

「まて、どう言うことだ小僧。詳しく話を聞かせろ」

 

2人の驚愕の声に、十六夜は更に表情を険しくしながらも疑問符を浮かべた。まさか、自分が思っていた以上に厄介な相手なのだろうかと・・・・・・・。

それを見て少しだけ冷静さを取り戻した白夜叉は、幾分声のトーンを下げ、質問を具体化した。

 

「あぁ、すまんの。最近召喚されたおんしらは知らんのだな。ーーー"ハーメルンの笛吹き"とは、とある魔王の下部コミュニティだったものの名だ」

 

「何?」

 

「魔王のコミュニティ名は"幻想魔導書群(グリムグリモワール)"。全200篇以上にも及ぶ魔書から悪魔を呼び出した、驚異の召喚士が統べたコミュニティだ」

 

しかも1篇から召喚される悪魔は複数。特に眼を見張るべきは、その魔書の一つ一つに異なった背景の世界が内包されていることです。魔書の全てがゲーム盤として確立されたルールと強制力を持つという、絶大な魔王でございました」

 

つまり、自分たちを襲った奴は想像以上に危険な存在だった・・・・・そう思ったが、次に黒ウサギから発せられた言葉にその考えは打ち砕かれた。

 

「けどその魔王はとあるコミュニティとのギフトゲームで敗北し、この世を去った筈なのです。・・・・・・・しかし十六夜さんは"ラッテンフェンガー"が"ハーメルンの笛吹き"だと言いました。童話の類は黒ウサギも詳しくありませんし、万が一に備えご教授して欲しいのです」

 

黒ウサギの緊張した顔は、もしも魔王が現れた時のことを警戒してのものだろう。

十六夜と飛鳥は顔を見合わせると同時に頷いた。

 

「ひとまず、その話をするには俺たちが血塗れになった経緯を先にする必要がある。その後で、"ハーメルンの笛吹き"については我らがリーダーからしてもらおう。こないだ童話系の本を読み漁ってたから、多分俺より詳しくなってるはずだ」

 

「ふむ・・・・・では聞かせてくれ」

 

既に何度か説明していたが、十六夜と飛鳥はもう一度今日起きたことをできるだけ詳しく話した。2人の話が終わると、それを引き継ぐ形でジンが"ハーメルンの笛吹き"について話し出す。彼なりにわかりやすく、要点だけをまとめて説明された事でチルノ以外はしっかりと理解することができたようだった。

 

「ふーむ。"ラッテンフェンガー"に"ハーメルンの笛吹き"か・・・・・・・となると、滅んだ魔王の残党が火龍誕生祭に忍んでおる可能性が高くなってきたのう」

 

「YES。参加者が"主催者権限"を持ち込む事が出来ない以上、その路線はとても有力になってきます」

 

「うん?なんだそれ。初耳だぞ」

 

「おお、そうだったな。魔王が現れると聞いて最低限の対策を立てておいたのだ。私の"主催者権限"を用いて祭典の参加ルールに条件を加える事でな。詳しくはこれを見よ」

 

ピッと白い指を振ると光り輝く羊皮紙が現れ、誕生祭の諸事項を記す。

 

『§ 火龍誕生祭 §

 

参加に関する諸事項欄

 

一、一般参加者は舞台区画内・自由区画内でコミュニティ間のギフトゲームの開催を禁ず。

 

ニ、"主催者権限"を所持する参加者は、祭典のホストに許可なく入る事を禁ずる。

 

三、祭典区画内で参加者の、"主催者権限"の使用を禁ずる。

 

四、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以外の侵入を禁ずる。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

"サウザンドアイズ"印

"サラマンドラ"印

 

十六夜の手元に現れた羊皮紙をそれぞれが見て頷いた。

 

「確かにこのルールなら、魔王が襲ってきても"主催者権限"を使うのは不可能だな」

 

「うむ。まあ、抑える所は抑えたつもりだ」

 

「問題は・・・・・魔王が、既に参加者として・・・・・・・紛れ込んでる・・・可能性」

 

「雅の言う通りね。もし、本当に"ラッテンフェンガー"が魔王の残党なのだとすれば、"主催者権限"は使えなかったとしてもいつ行動を起こすか分からないわね」

 

「そうじゃな・・・・・。サンドラの顔に泥を塗らぬよう監視は付けておくが・・・・・・・。万が一の時は、おんしらの出番だ。頼むぞ」

 

白夜叉の言葉に、その場にいた全員は頷いて返した。しかし、十六夜と飛鳥は頷きながらもある事が気になって顔を見合わせていた。

 

それは、自らを"ラッテンフェンガー"の一員だと言っていたとんがり帽子の精霊の事・・・・・・・。

今は飛鳥の膝の上でスヤスヤと眠っているが、2人にはこの小さな精霊が魔王の一員にはどうしても見えなかった。

みんなに伝えようかとも思った飛鳥だったが、十六夜が首を横に振ったので良いのかなと思いつつも、十六夜も同じ気持ちでいてくれている事に嬉しくも感じるのだった。

 




今回はここまでとなります。

ちょっとずつ・・・・・雅が感情を表に出す場面が増えて来ましたね・・・・・・・。

幻想郷のメンバーは今後も入れ替わり出てくる予定です!
幻想郷のこの子出して欲しい!とかあれば感想に書いていただければ話の内容と照らし合わせながら採用するかもしれません。

現在出演予定のメンバーは、霊夢、魔理沙、紫、妖精の子たち、アリス、パチェ、勇儀、萃香、文・・・・・・・辺りですかね。幽香さんとかも出したいかも?

後ソーマのメンツももう少し出したい・・・・・・・けど、動かしきれるか不安すぎますw
やれそうならちょこちょこ出てくるかもしれませんね。(南側とかでは特に)

それではこの辺で!
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