心を失った少女も異世界から来るそうですよ? 作:ほら、死の花が咲いた
ちょっと何故かVOCALOID3 結月ゆかりをAmazonでポチポチしてしまいまして・・・楽しくてここ数日そっちで遊んでましたすみません!!
と言うわけで(どう言うわけだ)、今回は閑話休題のようなお話になります。
ホント先に進まないですね・・・でもこのタイミングでこの話は絶対に入れたかったので楽しんでいただけたら嬉しいです。
第12話
明日のギフトゲームについての話が終わり、一同が自分にあてがわれた部屋へと帰って行った中・・・・・雅は部屋へは戻らず、1人外へ出ていた。
特に何かがあったわけではない。ただなんとなく、外の空気が吸いたくなった・・・・・・・ただそれだけだった。
雅は"サウザンドアイズ"旧支店の外へ出ると、高台の淵に座りゆっくりと息を吸った。
この時間帯になると一気に気温は下がる為、冷たい空気に一瞬嫌な顔をした雅だったがそのまま街並みを見下ろすと、今度は感嘆の溜息が漏れて・・・・・少しだけ笑った。
そこには、街中に赤い灯火が広がっておりその一つ一つに、この街に住む人々の営みが伝わって来て雅はそれを綺麗だなと素直に感じて・・・・・・・感じる事が出来た事に嬉しくなった。
「少しずつ・・・・・皆んなの・・・おかげで、色々と・・・・・・・感じる事が、出来るように・・・・・なってきた・・・かな。きっと・・・・・箱庭に来たばかりの・・・・・・・私だった、ら・・・・・この景色・・・・・・・にも、何も・・・感じなかったかも、しれない」
雅はもう一度、街を見回しながら今日の出来事を振り返っていた。耀と一緒にギフトゲームに参加して、サンドラ達と出会って、お風呂で飛鳥をからかって、魔王の話をして・・・・・。
「魔王を倒したら・・・・・今度は、街を見て・・・・・・・回りたいな・・・・・。耀や・・・・・フラン・・・・・・・レミリアも、誘って・・・みようかな?美味しい物を・・・・・食べて、ギフトゲームも参加・・・・・・・しても、良いかも・・・・・。箱庭に来てから・・・怖い事も、あったけど・・・・・・・楽しい事も・・・沢山あった・・・・・これからも、皆んなと一緒にーーー」
唐突にーーー。周囲の空気が変わった気がした。
雅は驚きながらも、すぐに血を展開すると臨戦態勢に入る。周囲の暗闇に意識を向けていると、ゆっくりと近ずいてくる気配があった。
それは懐かしくもあり、同時についこの間感じたとも言える人物の気配・・・・・。
少しずつ・・・・・月明かりに照らされて現れたのは、先日傀儡を使って自身を襲った葉冥だった。
雅はその姿を見た瞬間、一気に緊張した。何故なら、傀儡の時とは放つ圧力が段違いだったからだ。
葉冥は足を止めると、優しく微笑んだ。
「久しぶり・・・・・かな?こうやって直接会うのは。俺は一方的にお前を見ていたから、久しぶりという感じはしないけれど・・・・・。今日は、俺自らお前を迎えに来たよ」
迎えに来た・・・・・・・。雅は意味が分からないという顔をした。先日は傀儡を使って無理矢理に鬼を取り出そうとしたくせに、どういうつもりなのだろうと一気に警戒心を強めた。
「そう警戒しないでくれないか?前回は無理矢理過ぎたと俺も反省しているんだ。取り出すのは無理そうだしね。だから・・・・・お前には俺の下へ来てもらおうと思ってね。お前の力は、こんな場所にいて良いものじゃない。その力はきっとお前の大事な人達を傷つけてしまうだろう。俺の傀儡を殺した時のようにね?」
葉冥の言葉に、雅は傀儡を
葉冥はその様子にまた微笑むと、一歩・・・・・また一歩とゆっくりと近付きながら言葉を続けた。
「お前だって気づいているだろう?いくらあの白夜叉が封印を施したとはいえ、それも完璧じゃない。いつ封印が破れて狂気に身を染めるか分からないと。遠くないうちに、必ずお前は仲間を殺す・・・・・・・お前が大事だと思っているものを、お前自身が壊すんだ。そんなのは嫌だろう?・・・・・・・俺と共に来い、雅・・・・・そうすれば、お前の仲間は死なずに済むし、お前も心配しなくて済むようになる。さぁ・・・・・・・」
「ぁ・・・・・・・ぁ、ぅ・・・・・ぃ・・・・・・・や・・・・・・・」
葉冥はもう目の前まで来ていた。雅は一歩も動けず、ただ泣きそうな顔で葉冥の顔を見ていた。
心が揺らぎ、葉冥の言葉に自分の想像が重なって、遂には光のない瞳から大粒の涙が零れだす・・・・・。
葉冥はそんな雅を優しく抱きしめようとしてーーー。
突然横から殴り飛ばされた。
「ガァ!?」
「・・・・・・・え?」
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雅と葉冥が接触する数分前・・・・・・・。
境界門にある高台をげんなりとした様子で歩く一つの影があった。
「あ〜ったく!ホンマありえへんわ。みんなして人使い荒すぎるやろ!?長兄の頼みはともかく・・・・・もう一つの方は気がのらんなぁ・・・・・・・。けど恩があるし・・・・・」
なにやらブツブツと喋りながら歩くその影は、ようやく見えてきた"サウザンドアイズ"の旧支店の看板を見てまた溜息をついた。
「まぁええわ。どうせ僕なんかすぐに追い出されるやろ。一度は来たんやからそれでーーー」
そこでふと、周囲の様子が変わったのを男は感じた。少し目を凝らすと、高台の淵辺りで2人の人物が話しているのが見えた。
男は気配を殺すと、気づかれないように近ずいて会話を拾った。
(どうやら、あの女の子が雅って子みたいやな。そんで相手の男が葉冥か?なんや随分とけったいなこと言うとるなぁ・・・・・・・)
雅は顔を伏せていたため、よく見えなかったが葉冥の方は薄く笑っているのが見えた。普通に見れば、優しく微笑んでいるように見えるそれは男には無性に腹の立つ表情に映っていた。
そして・・・・・葉冥が手を差し出した時、ようやく雅が顔を上げた事で男にも彼女の顔が映る・・・・・・・。
そこには、不安・恐怖・悲哀・辛苦・・・・・・・様々な負の感情の涙を必死に堪えようと眉を寄せ、唇を噛む雅の姿があった。
本心では仲間たちとずっと一緒にいたい・・・・・けれど、葉冥の言う通り離れた方がきっと良い・・・・・・・大事だから、大好きだから・・・・・壊してしまいたく無いから・・・・・・・そんな想いが、彼女から流れる涙から伝わってくるような気がして・・・・・男はそんな彼女の姿を綺麗だと素直に思った。
(あかんな・・・・・・・あんな顔見せられたら、守りたくなてまうやないか!!!)
気づけば、男は葉冥の懐に潜り込み自身の拳を全力で叩きつけていた。
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突然目の前にいた葉冥が殴り飛ばされ、雅は突然の事に頭が追いつかず、ただ呆然と葉冥が吹っ飛んでいった方向を見た。
葉冥は吹き飛ばされながらも態勢を整えると、空中で静止して自分を殴った相手を確認して・・・・・驚いた。
「やれやれ・・・・・・・何故、貴方がここにいるんでしょう?・・・・・・・蛟魔王!」
「なんや、僕の事しっとるんか?」
そこでようやく、雅も葉冥を殴り飛ばした人物に意識が向いた。すぐ隣に立っていたにも関わらず、その男からは覇気のようなものが一切感じられなかった。
ーーードクンッ
けれど、その男を見た瞬間・・・・・雅は自分の心臓が大きく跳ねたのを感じた。そしてそれは、収まるどころか更に大きくなって苦しくなる。
雅はもう一度男の姿をゆっくりと見た。黒い髪に眼帯・・・・・服の上からでも分かる鍛え上げられた体。だというのに、その見た目からは信じられないほどに感じない覇気の無さに胡散臭い笑顔・・・・・。
けれど・・・・・雅にはそんな彼の瞳に、強い哀しみと後悔の色が映っているのが分かって自分まで悲しくなった。
(どうして・・・・・私が、悲しく・・・・・・・なるの?)
そんな想いに振り回されている間も、葉冥と蛟魔王と呼ばれた男の会話は続いている。
「あかんなぁ・・・・・こんな
「さて・・・・・どうでしょうね?それに、俺は間違った事は一つも言ってないですよ?・・・・・・・それよりも、俺の質問にも答えて欲しいですね蛟魔王。何故、南側にいるはずの貴方がここにいて・・・・・しかも雅を助けるんです?」
「ある人の依頼や・・・・・。僕にこの子を守って欲しいてな・・・・・ホンマは来る気無かったんやけど、昔随分世話んなったもんやから断り切れんかった。・・・・・・・けど、今は受けて良かったと思うとる」
「依頼・・・・・・・ですか。白夜叉・・・・・では無いでしょうね。となると心当たりはあまり多くはありません・・・・・・・流石に、貴方を相手にするのは骨が折れますし今回は大人しく引きましょう」
「素直やな・・・・・いや、ここは引き際を弁えとると言うべきか?メンドくさいから諦めてくれへん?」
「冗談・・・・・・・俺の願いのためには雅が必要不可欠なんですよ。・・・・・・・それでは、2度と会わない事を願います」
葉冥はそう言うと、闇に紛れるようにして消えていった。すぐに気配もなくなり、辺りを覆っていた嫌な空気も霧散していく。
蛟魔王はそれを確認すると、雅へと向き直った。
「さて・・・・・大丈夫か?」
胡散臭い筈なのに・・・・・どうしようもなく優しい笑顔に、雅の心臓はまた大きく跳ねた。そして、彼の瞳が自分を映していると気づくと、顔が熱くなって・・・・・きっと赤くなっているだろうと思うと、恥ずかしくて彼の顔を見られず俯いてしまう。
「あれ・・・・・どこか怪我でもしたんか?顔が赤い・・・・・・・?熱でもあるんか?」
黙って俯いてしまった雅に、蛟魔王は心配そうに雅の前髪を掻き分けるようにして手を当てた。するとそこには、若干涙目になりながら真っ赤になった顔が現れて、蛟魔王は驚いた。
(あれ・・・・・僕なんか嫌われるような事したか?)
「あ〜・・・・・とりあえず、中に入ろか?」
「・・・・・・・う、ん」
雅が小さく頷くのを確認すると、蛟魔王は彼女の手を引きながら旧支店の中へと入って行くのだった。
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店の中へ入った2人は、ひとまず他の人たちは寝てしまっていると言う事で温泉前にあるロビーで話をする事にした。
2人は椅子へ座ると、雅が備え付けの茶器でお茶を入れ始める。
「とりあえず、改めて自己紹介しとこか。僕の名は蛟劉。さっきの男は蛟魔王って呼んどったけど、蛟劉って呼んでな」
「陸奥・・・・・雅、です。それで・・・・・・・どうして、私を?」
「詳しく話すと長くなるんやけど・・・・・
蛟劉が出した名前に、雅は目を丸くして驚いた。彼が言った名前は、陸奥家の遠い祖先・・・・・ある意味で、陸奥の創始者とも言える人物の名だったからだ。
「知ってるみたいやな。あの人は外の世界で着いていた"座"を後継に譲ると、当時の仲間たちと共にこの箱庭へと流れついたんや。その時に・・・・・僕の姉貴分、孫悟空姉さんと意気投合してな。しばらく一緒に行動してたんやけど、僕らが上層に喧嘩売った時に・・・・・・・ちょいヤバい奴らに囲まれそうになってな。姉さんが一部の敵を1人で食い止めてくれたおかげで僕らはなんとか逃げ切れたんやけど、姉さんでも流石に1人では防ぎ切れんかったみたいでな。そんなとき助けに入ったんが覇吐君とその仲間やったんや。僕らにとって、彼らは姉さんを救ってくれた恩人・・・・・ちゅうわけやな」
蛟劉はそこで一度お茶を飲むと、雅に視線を向けた。雅はどうしても、彼の顔を正面から見る事が出来ず、少しだけ顔を逸らしてしまう。蛟劉はそんな雅の様子に苦笑いしながらも話を続けた。
「でや・・・・・何故君を守ったのかって言うと、覇吐君に頼まれたんや。『俺が直接行ければ良いんだが・・・・・今は動けなくてな。ワリィが代わりに俺の子孫を守ってやってくれねぇか?』ってな。最初は断ろう思うたんやけど・・・・・どうにも彼の言葉には乗せられやすくてな・・・・・・・気づいたら頷いとった。彼には恩もあるし・・・・・それに、君を見た瞬間、僕自身が君を守りたくなった。君にとってはいらん世話かも知れへんけど、僕が一緒にいるのを許してくれへんか?」
雅は戸惑った。彼がここにいる理由にも驚いたし、偉大な祖先が自分の事を気にかけてくれていたこよにも驚いたし・・・・・けど、1番の理由は彼が守りたい言ってくれた事に嬉しいと感じている自分への驚きだった。十六夜や飛鳥・・・・・耀やフランに守ると言われた時は、嬉しさよりも申し訳なさの方が大きかったのに、蛟劉に言われた時は涙腺が緩みそうなほどに嬉しいと感じているのだ。
ついさっき会ったばかりの、本当に信じて良いのかもわからない相手なのに・・・・・雅はこの感情がなんなのかわからずまた俯いてしまう。
それを見た蛟劉は、やっぱり嫌われているのだろうかと思い・・・・・そこでふと、自分の考えがおかしい事に気がついた。
(あれ・・・・・なんで嫌われたと思ったんやろ?普通やったら会ったばかりで信じて貰えてへんとか考えんか?)
彼もまた、自分の雅に対する気持ちがわからずモヤモヤしてしまったが、このまま黙っていても仕方ないと思い直した。
「えぇと・・・・・僕の事が信じられへんいうならそれでもかまわん。その時は、君の目に映らんように守るだけやし。僕も君の嫌がる事をする気はあらへん」
蛟劉の言葉に、雅はそれは嫌だと思った。この感情がなんなのかはやっぱりわからないけれど、彼とは一緒にいたい・・・・・側にいて欲しい・・・・・・・彼のことをもっと見ていたい・・・・・そう思った雅は、彼女にしてはハッキリと声を出した。
「ま、待って!・・・・・嫌じゃ、ない・・・から・・・・・そ、側に・・・いて欲しい!だから・・・・・・・こぅ・・・りゅう・・・・・」
遂には・・・・・肩を震わせ、涙を流しながら蛟劉の名を呼ぶ雅。自分自身、なぜこんなにも一緒にいたいのか全然わからなかったが、それでも・・・・・流れ落ちる涙は拭っても拭っても止まらずもうどうすれば良いのかもわからなくなってしまった。
「うぅ・・・・・えぐ・・・あぅぅ・・・・・・・こう、りゅう・・・!」
蛟劉は、涙を流しながら自分の名を何度も呼ぶ彼女の姿に、初めてその姿を見た時の事を思い出した。
(ホンマに・・・・・なんで、この子の涙はこんなにも綺麗やと思えるんやろうな・・・・・・・)
気づけば・・・・・蛟劉は雅の体をそっと抱き寄せていた。彼女の体は細くて・・・・・腕の中にすっぽりと収まってしまって、それが今にも壊れてしまいそうに思えて抱きしめている腕が勝手に震えそうになった。
「・・・・・こう・・・りゅ?」
「大丈夫や・・・・・君が望むなら、僕は側にいる。だから泣かんといてくれ・・・・・君には、笑っていて欲しいんや」
「わら・・・う・・・・・難し、い。けど・・・今なら、出来そう・・・・・かも?」
雅はそう言うと、自分の顔が蛟劉に見えるようにと顔を上げた。
そこには・・・涙は止まっていなかったが、それでも間違いなく箱庭に来てから1番の笑顔が花咲いていたのだった・・・・・・・。
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次の日の朝・・・・・。十六夜達が起きてくると、全員が我が目を疑った。
まず第一に、今まで一度も朝食前に起きることのなかった雅が既に食堂にいた事に驚き。
第二に、何故か見知らぬ男と楽しそうに話している事に驚き。
第三に、雅は見知らぬ男の膝に座っている事に驚き。
そして最後に・・・・・・・雅が少しだけ頰を染めながら今までにみた事がないほどの笑顔を浮かべている事に驚いた。
食堂の入り口でその光景を呆然といった感じで見ていると、それに気づいた蛟劉が声をかけた。
「君らが雅ちゃんの仲間か?僕は蛟劉・・・・・これから世話んなるから宜しゅうな」
「みんな・・・・・おはよ、う」
片手を上げながら挨拶する蛟劉に、雅も挨拶する。
「いや待て・・・・・世話になるってどういう事だ?」
「雅さんの知り合いなの?」
「凄い仲よさそう・・・・・」
「あ、よく見たら蛟魔王じゃん!お姉様!蛟魔王だよ!!」
「分かっているわ・・・・・彼と雅の運命は見えていたけれど・・・・・・・まさか初対面でここまで仲良くなってるなんてね」
レミリアの発言に、十六夜たち問題児3人は大袈裟なほどに驚いた。
「いや、ホント待ってくれ・・・・・初対面だと?」
「そやで?会ったのは昨日の夜が初めてや。最初は嫌われてるんとちゃうか思ったんやけど・・・・・まぁ見ての通りやな」
そう言いながら蛟劉は自分にもたれかかる様に座っている雅を見ながら苦笑した。
そんな蛟劉の言葉に、雅は拗ねた様に彼の足を蹴り出した。
「別に・・・・・最初から嫌って、ない。なんか・・・・・心臓が・・・ドキドキして苦しかった、だけ。今も・・・・・少しドキドキはしてる・・・し」
雅の発言に、またもや驚愕する十六夜たち。雅たちには聞こえない様に、十六夜たちは声を潜めた。
「なぁ・・・・・まさかとは思うが・・・・・・・」
「どうなのかしら・・・・・でも、可能性はあるわよね?」
「うん・・・・・もしそうなら、彼が信用出来るかは置いといても良い事だと思う」
「白夜叉も恋愛を進めてたもんね!」
「信用・・・・・と言う点で言えば、私は問題ないと言っておくわ。白夜叉も・・・・・良い顔はしないだろうけど認めてはくれるんじゃないかしら。因みに、彼の実力は4桁でも上位に入るわ。単純な強さで言えば、"幻想郷"のメンバーでも彼に勝てるのは10人もいないわね」
レミリアの評価に十六夜たちは、もう驚き疲れたといった顔をしたが当の本人である蛟劉は苦笑を漏らしていた。
「レミリアちゃん・・・・・・・それなん年前の話や?今の僕は昔ほど強あらへんよ」
「あら?弱くなったのと、ただヤル気が無いのとでは雲泥の差があるわよ?少なくとも、雅を守るためなら貴方は全力を出すんじゃないかしら?」
「・・・・・・・ホンマ、食えんやっちゃなぁ君は。一部から"おぜリア"なんて呼ばれてるくせに」
「その呼び方はやめてちょうだい!・・・・・(まさか蛟魔王にまで伝わってるなんて!!うー☆)」
"おぜリア"という言葉に、レミリアは頭を抱えて座り込む。それを見た十六夜たちは・・・・・なんとなく生暖かい目でレミリアを見たあと、それぞれ椅子に座り始めた。
そこに丁度、白夜叉と朝食を運んできた雪那が現れた。雪那も雅の様子に驚きながらも配膳を進めて行く。
そして白夜叉は口をあんぐりと開けながら蛟劉を指差していた。
「お、おんし・・・・・蛟劉貴様!ここでなにをしておる!?」
「あ〜久しぶりやな白夜王・・・・・まぁ落ち着いてや?今から説明するから」
蛟劉と雅は、改めて昨夜起きたことを全員に話した。十六夜たちは、まさか雅が1人で外に出ていたとは思っていなかったため少し非難めいた視線を彼女に送るも、葉冥が現れたという話に今度は心配そうな顔をした。
「ギリギリで僕が助けに入れたんやけど・・・・・かなり危ない状況やったで?」
「そうか・・・・・雅、頼むから1人で行動しようとしないでくれ。せめて、葉冥の件が片付くまでは必ず俺たちかフランと一緒にいてくれ」
「ごめん・・・・・なさ、い。でも、今度からは・・・大丈、ぶ。蛟劉と・・・・・一緒に、いたいから・・・・・・・側に、いる」
雅は申し訳なさそうに頭を下げると、蛟劉に振り返った。暗に、「良いよね?」と告げるその表情に蛟劉は彼女の頭を撫でながら頷いた。
「まぁ、僕も雅ちゃんを守りたいって気持ちは同じやから・・・君がそうしたいなら僕はかまへんよ。むしろその方が守りやすくてええしな」
「まぁ・・・雅がそう言うなら良いけどよ」
「それにしても・・・・・昨日とは別人みたいに表情が柔らかくなったわよね」
「そう・・・・・かな?・・・・・・・うん、そうか、も?昨日・・・・・思いっきり泣いたら・・・なんかすっきりしたって、言うか・・・・・でも、まだ足りない・・・・・と思う」
雅はそう言いながら、自分の頰を手でムニムニしだした。どうやら思っていることを表情に出す事がまだ難しいのだろう。特に笑うのが難しいと思っているのか、何度も口角を上に上げたり下に下げたりしながら「うーん・・・・・」とうねった。
それを見ていた十六夜たちは、それでも昨日までと比べれば随分と表情が豊かになったと困った顔をしている雅を見て思い、お互いに顔を見合わせてはクスクスと笑いあった。
そんな彼らの態度に、雅はムッとした顔になりジーッと非難の視線を向けるが、それがまた今までの彼女には無かった仕草だったため余計に十六夜たちに笑われてしまうのだった。
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朝食も食べ終わり、皆が今日の予定のために動き出す中蛟劉は白夜叉に呼び出され、彼女の私室へと(半ば無理矢理)連れて来られていた。
雅も一緒に付いて行こうとしたのだが・・・・・。
「すまんが2人だけで話したいのでの。おんしはレミリアやフランたちと一緒にいてくれ」
と言われてしまい、蛟劉を見ても片手ですまんと言われてしまったので渋々といった感じでフランたちロリっ子たちに抱きついて癒されていた。
「さて・・・・・まぁなんじゃ。本当に久しぶりじゃな蛟劉。覇吐たちは元気だったかの?」
「僕が会ったんは覇吐君だけやったけど・・・・・まぁ元気みたいやで?なんかあっちはあっちで忙しいみたいやけど」
「そうか・・・・・しかし、本当に彼奴らの子孫だったとはのう。これで、雅の持つ"座"についても確信が持てたわい」
「雅ちゃん"座"まで持っとるんか!?・・・・・まさか葉名も持っとるやないやろな?」
「それはわからん・・・・・・・じゃが、もし持っているとしたら・・・・・かなり厄介だ。なにせ、"座"は神格の中でも特殊な部類の物だからのう」
2人は顔を見合わせてると溜息をついた。
"座"とは白夜叉が言っていた通り神格の一種ではあるが、通常の神格とは異なる点が多々ある。
一般的な神格は"恩恵"と同じく修羅神仏から与えられるものであり、雅が契約したトリトニスの蛇神・白雪も白夜叉から神格を与えられた事で蛇神となった経緯がある。
逆に、最初から神として産み落とされた者もいれば突然神として覚醒する者も稀にだが存在する。
だが、"座"に関しては不明瞭な点が多く"座"を所持しているからと言って必ずしも神になれる訳ではない。言ってみれば、"座"とは神になるための資格のような物であり次代の神候補に与えられる"恩恵"と言えるのである。
ただ・・・・・候補とは言ったものの、それは箱庭の神という訳ではない。
十六夜たちがいた外の世界においての候補であり、"座"についた者は自分の思想・・・・・もしくは理想や欲望とも言えるものを世界の法則として広める事が出来る。
歴代の"座"についたもので言えば、"輪廻転生"などが挙げられるが、話に出てきた覇吐たちが広めたのは歴代の神たちの良いところを自分達なりに組み合わせ、更に自分達の理想としたものを叶えるものだった。
それは数百年もの間世界の法則よして廻り続け、次代の神も彼らの思想を尊重した法則を打ち立てた事でこれからもその想いは受け継がれていくと思われている。
白夜叉と蛟劉は、今後どうするべきかを考え出した。
「とにかくじゃ・・・・・おんしが側に付いておるのなら心強い。レミリアやフランも気にかけてはくれている方じゃが、特にレミリアは必要以上に手を出しはしないだろうし十六夜達に関しては箱庭に来たばかりというのもあるせいか、まだまだ考え方が甘いところがある。黒ウサギも同様にの・・・・・・・今のあやつらには、実力と経験のある人材が必要だと私も考えておったのだ」
「せやな・・・・・昨日はホンマ焦ったで。依頼されて来てみればいきなり襲われとったんやからな」
そう言う蛟劉の表情は、本心から危なかったと思っているものだった。それを見た白夜叉はそんな彼の様子に疑問を抱く。
「なんだ・・・・・あの一件依頼覇気を無くした奴の表情とは思えんの?そんなに雅が気に入ったのか?・・・・・まさか惚れたなんて事はないじゃろうが」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい!?」
目を伏せて沈黙する蛟劉に、白夜叉は大袈裟なほどに驚いて身を乗り出す。蛟劉は額に手を当てると上を仰いだ。
「あ〜・・・・・僕も分からへんよ。さっきも言ったけど、最初は長兄のおつかいだけ済ませてさっさと帰るつもりやったんや。けど、あの子の泣き顔みた瞬間に・・・・・なんやこう・・・胸に来るもんがあってな。気づいたら葉冥の奴殴り飛ばしとった。その後も少し話しただけやけど・・・・・・・気に入った・・・のは確かやろうな・・・・・」
「ふむ・・・・・まだ十六夜達と同じ域は出ておらんか?じゃが・・・・・雅の方は随分とおんしに懐いとるようだの?」
「なんでやろね?まぁ雅ちゃんかわええから僕としちゃ役得やけど・・・・・・・ちょ、怖いわ!そんな睨まんといてくれ冗談や冗談!!」
思わず軽口を叩いた蛟劉に、白夜叉は殺気のこもった視線を向けていた。流石の蛟劉も冗談で殺されるのは勘弁だったのですぐに訂正すると、白夜叉も一つ咳払いをして殺気を抑えた。
「まぁ・・・・・あの娘の発育が見た目に反して良いのは認めよう。特に胸などは服の上からでは分かりずらいし元々細いからのう・・・・・じゃが、恐らくBは最低でもあるのは確かじゃ。その上形も・・・・・・・」
「お前こそ何言うとるんや白夜王!?いや・・・・・でも確かにあの子ほっそいよなぁ・・・・・あの細さであの大きさは確かに・・・・・・・」
白夜叉の誘導に引っかかった蛟劉は昨夜、離れたがらなかった雅と一緒に寝た時の事を思い出していた。
最初こそ一緒に寝るのはマズイと説得しようとしたのだが、だんだんと涙を浮かべ始める雅の姿に遂には蛟劉が折れ、何もしなければ問題ないと自分に言い聞かせながら寝たのだった。
「なんじゃ・・・・・
「そらもうこっちは必死なのにあの子無防備に抱きついて来るから・・・・・・・あ」
「クックッ・・・・・・・なるほど?これは十六夜達に報告するべきかのう?」
口元を扇子で隠しながら笑う白夜叉に、蛟劉は慌てて立ち上がった。
「ちょい待てや!?いや待ってくれホンマ頼むで白夜王!あの子らに言ったらどうなるかぐらいわかるやろ!?」
「うむ!私としては面白いものが見れそうじゃな!!」
「うぉい!?み、雅ぃ!雅ちゃーん!!ちょい白夜叉止めるの手伝ってや!?」
蛟劉の叫び声に、急いで駆けつけた雅は襖を開けると・・・・・白夜叉を止めて欲しいと言っていた蛟劉の方が逆に取り押さえられていているという状況に困惑した。
「なに・・・・・やってるの?」
「いやなに・・・・・・・こやつが突然暴れての?」
「騙されたらあかん!こいつ昨夜一緒に寝た事を十六夜君達にバラす気なんや!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
雅は昨夜の事を思い出した。
『一緒に寝るんはかまんけど、君の仲間には内緒にしたってな?多分怒られるやろうから』
『うん・・・・・・・わかった。約束・・・する』
『約束や。ほな・・・・・おいで?』
『こう、りゅう・・・・・あったか、い』
『できれば・・・・・もうちょい離れてもらえるとありがたいんやけど・・・・・・・』
『やぁ・・・・・・・』
『やぁ、って・・・・・・・。あぁ、もう可愛いすぎるやろこの子!?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そしてもう一度蛟劉を見る。彼の瞳は「約束したよな?」と訴えかけていた。
雅は一つ頷くと、手のひらを白夜叉に向けた。
「白夜叉・・・・・こう・・・りゅうを、離して・・・・・・・。じゃないと、キュッと・・・・・しちゃう」
「い、いや雅ちゃん?なにもそこまでする必要は・・・・・」
「約束・・・・・大事。こう、りゅうは・・・もっと、大事。キュッとして・・・・・・・」
言いながらも手を握り始める雅に、白夜叉は慌てて蛟劉を離し飛び退いた。
いくら白夜叉といえど雅の能力なら適度に壊される・・・・・最悪治すのに数日かかるかもしれない程に原型を留めない可能性もあり、これから魔王の相手もしなければならない可能性を考えるとここで傷を負う訳にはいかなかった。
「分かった、分かった!!・・・・・・・まったく、本当にこんな男のどこが良いんだかのう・・・・・。蛟劉よ・・・・・・・雅を泣かせでもしたらどうなるか・・・・・分かっておるな?」
「わかっとる・・・・・というよりその時は僕が僕自身を許さへんよ」
白夜叉と蛟劉はしばしお互いの顔を見ていたが、やがて蛟劉の腰に抱きついていた雅に視線を落とすと揃って苦笑を浮かべた。
「ま、とりあえず移動しよか?そろそろ行かへんと耀ちゃんの出るゲームに間に合わなくなるで?」
「それもそうじゃの・・・・・ほれ、雅も行くぞ。流石に耀1人ではゲームに勝つのは難しいと思うぞ?」
「ん・・・・・・・わかった。こう、りゅう・・・・・応援・・・してくれ、る?」
「勿論や。ちゃんと見とるから頑張って来い」
「う、ん・・・・・頑張・・・る」
雅は蛟劉に腰から離れると、グッと胸の前で拳を握ってやる気を示した。
3人は、それぞれ自分が向かうべき場所へ歩き出す。
白夜叉は来賓席へ・・・・・雅は耀と合流するために先に向かっているだろう選手控え室へ。そして蛟劉は雅を1人にしないため、彼女の横に並んで歩を進めるのだった。
今回はここまでとなります。
ん〜・・・改めて考えると賛否両論ありそうな感じになってしまいましたが、私は後悔していません。
とりあえず・・・VOCALOIDが楽しいので少し更新ペースが落ちそうです(汗)
まだまだ機材?が足りなくて伴奏と合わせる事すら出来ない状況ですが調教の技術を練習しながらボチボチ頑張っていこうと思ってます。
では、また次回お会いしましょう!
次回は絵も載せたいと思ってますw