心を失った少女も異世界から来るそうですよ?   作:ほら、死の花が咲いた

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第二話になります。

先方の都合で今日の仕事が無くなって暇になってしまった·····。

と言うわけで色々と問題児のSSを読んでみたのですが·······意外と雅と似たような性格のキャラの作品がある!?
これでは二番煎じじゃないか!と、少し落ち込んだりもしましたが自分、こう言う女の子大好きなんでこのまま書き続けますw

追記:誤字脱字修正


第二話:トリトニスの蛇神だそうですよ?

第2話

 

十六夜と雅の二人は、現在森の中を走っていた。

人間とは思えないスピードで走っていく十六夜にしっかりとついていく雅。十六夜は最初、結構本気で雅を担いで行くつもりでいたのだが、いい意味でそれは裏切られた。

 

「お前、意外と速いんだな。もっとトロい奴かと思ってたぜ」

 

「私は、人間やめてる・・・から・・・・・。十六夜こそ・・・・・速すぎ、る」

 

「俺はこれでも人間だぜ?・・・・・っと、ちょい止まれ雅」

 

十六夜に呼び止められ、急停止した雅は何があったのかと振り返ろうとしーーー。

 

「ーーー!」

 

「・・・こいつは、すげえな」

 

十六夜の言葉に頷いた雅。

十六夜は特に返事を期待してはいなかったため、彼女の反応に驚いた。思わずその横顔を覗いてみると、目を見開いて先程よりもさらに光が宿っているように思える。

 

「どうだ?・・・感動できたか?」

 

「・・・!!」

 

バッと、驚いたように振り向いた雅。しかし一番驚いたのは自分が驚いていることに気づいた雅自身だった。

 

「これが・・・・・かん、どう?」

 

「多分、そうなんじゃねえか?というかやっぱり、お前感情が上手く出せなくなってるだけみてえだな」

 

「上手く・・・・・出せな、い?」

 

「ああ。最初は感情がないんじゃないかって思ったんだが、泣いてた所を見るとそうじゃない。ただ、笑うことができなかったみたいだから感情・・・・・つまり、楽しいとか嬉しいとかを思ったように表現出来ないんじゃないかって思ったんだよ」

 

十六夜の推察にまたも驚いた。久しぶりに感じる感情を連続で味わうことになった雅は戸惑う。何かを言おうとした雅だったが、そこで邪魔が入った。

 

『ほう。人間とは珍しいな』

 

「ちっ・・・・・。おい、空気読めよこの駄蛇!」

 

『ゴハァ!?』

 

出てくるないなや、結構本気の蹴りをくらった蛇神は湖に沈んで行く。十六夜は着地すると雅に振り返ったが、そこにはもう先程のような感情は映っていなかった。

しかし多少は変化もあったようで、雅がトコトコと走りよってくる。

 

「十六夜は・・・・・強いんだ、ね」

 

「まあ、な。お前はどうなんだ?」

 

「私、は・・・・・・鬼を倒せる・・・くらいには?」

 

瞳は虚ろなままだったが、最初に比べるとほんの僅かに表情が変化しているように思え、目的の一つを多少は達成出来たかなと思う十六夜。

丁度その時だった。息を切らせながら髪を緋色に変えた黒ウサギが現れる。

 

「あれ、お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色」

 

「ウサギ・・・・・さん?」

 

雅は色の変わった髪が気になるのか、黒ウサギに走りよると背伸びをしながら撫で始める。突然頭を撫でられた黒ウサギは咄嗟にその手を払い除けてしまった。

 

「・・・・・・・・ぁ、」

 

途端に悲しそうになる雅。十六夜は頭を掻きながら二人に近づいた。

 

「黒ウサギ・・・。ちょっと頭を触られるくらいやらせてやれよ」

 

「す、すみません・・・・・。突然だったのでつい。って!それより一体何処まで来ているんですか!?」

 

「世界の果てまで来ているんですよ、っと。まあそんなに怒るなよ。雅、黒ウサギが頭触ってもいいってよ」

 

「・・・・・・・ホント?」

 

上目使いでおねだりしてくる雅。これで虚ろな瞳でなければ、初対面の相手でも言うことを聞いてしまうほどの破壊力があっただろう。しかし、彼女の瞳には光がない・・・状況によっては実にホラーな表情だった。

だがそこは、ようやく慣れてきた黒ウサギ。少し屈んで頭を差し出す。雅は表情には出ていなかったが嬉しそうな雰囲気を出しながらもう一度頭を撫で始める。

一度目の時よりも恐る恐るといった感じで撫でていた手は、次第に髪をすいたりし始め、やがて耳に伸びていく。

 

「ウサ耳・・・・・・・フワ、フワ・・・」

 

ウサ耳を触りながら嬉しそうな(に見える)雅と、くすぐったそうに身を捩っている黒ウサギを見て苦笑いする十六夜は改めて疑問を口にした。

 

「それにしてもいい脚だな?。雅と遊んでいたとはいえこんな短時間で俺たちに追いつけるとは思わなかったぜ?」

 

「むっ、当然です。黒ウサギは"箱庭の貴族"と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギがーーー」

 

そこまで言ってアレ?と黒ウサギは首を傾げる。

 

(黒ウサギが・・・・・半刻以上もの時間、追いつけなかった・・・・・・・?)

 

頭の上に疑問符を浮かばせる黒ウサギだったが、雅の声で我に返った。

 

「十六夜・・・・・さっきの蛇さんは、どうする、の?」

 

「蛇・・・・・ですか?」

 

次の瞬間、大声を上げながら鎌首を持ち上げた巨体に黒ウサギの思考はまたもフリーズした。

 

『まだ・・・・・まだ我は敗けていないぞ、小僧ォ!!』

 

現れたそれはーーー身の丈30尺強はある巨躯の大蛇だった。

 

「じゃ、蛇神・・・・・!って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん!?」

 

「あん?怒ってんのは俺の方だったんだがな?コイツ・・・・・せっかく雅が楽しそうな表情を見せていたのに邪魔しやがったんだからよ」

 

本気の怒気を籠めて言い放つ十六夜。ずっと黒ウサギの耳を触っていた雅も手を離すと十六夜の横に並んだ。

 

「そういえば・・・・・邪魔された・・・・・・・」

 

『貴様ら・・・・・付け上がるなよ人間ガァァァァァァ!!』

 

「なあ、今度はお前の力を見せてくれないか?」

 

蛇神ガン無視で提案してくる十六夜に、雅は少し悩むと、コクリと頷いて前へ出た。

 

「蛇・・・・・さん。次は、私が・・・相手」

 

『フン・・・・・心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』

 

「じゃあ・・・・・負けたほうは相手に、服従・・・ね?」

 

『・・・・・・・・は?』

 

間抜けな声を出す蛇神。しかしこれには黒ウサギと十六夜も驚いた。

雅は虚ろな瞳で蛇神の目を見据えると、霊力を解放しながら答える。

 

「私は・・・・・いつもそうやって戦って、きた。だから、全力で来て・・・ね」

 

『・・・・・よかろう。貴様のような小娘にまで倒されては我が名が地へ落ちる!・・・我の全身全霊をくらうがいい!!!』

 

蛇神はそう吼えると、何百トンもの水で巨大な竜巻を三本作り出す・・・さらにそれを操り複雑な軌道で雅を包囲するように取り囲んだ。

黒ウサギは走り出そうとするが、十六夜に腕を捕まれて動けなかった。

 

「は、離してください!」

 

「大丈夫だ、まあ見てろ」

 

十六夜の言葉に視線を戻した黒ウサギだったが、そこには今にも渦に飲まれようとしている雅。特になにをするでもなくそれに飲まれていった雅に、流石の十六夜も少し焦るが、次に目に映った光景に驚いた。

竜巻が収束し、徐々に視界が戻るなか見えたのは、()()で立っている雅の姿だった。

流石の十六夜でもアレをまともにくらえばたしょうなりとも傷をおっていただろう。だが、雅は全くの無傷で佇んでいたのである・・・・・・・()()で。

 

「やっぱり・・・・・死ねない、かぁ。服・・・・・・・吹き飛んじゃった、な」

 

雅は特に気にした様子もなく蛇神に視線を戻すと、そこには蛇神が放心したまま固まっていた。それもそうだろう。自身の全霊の一撃を防がれたのではなく、無抵抗で受けて傷ひとつ付いていないのだ。

雅はそんな蛇神の心情を知ってか知らずか分からないが、その巨躯に手を添えると、

 

「汝・・・我が魂と契りを結びたもうなれば、血の盟約を・・・・・ここに刻み、服従せよ・・・・・・・・」

 

普段とは違う響きの声を発すると同時に、蛇神の体が薄い光に包まれていき、やがて身体中に血のような色の紋様が浮かび上がると手を離した。

 

「今のは・・・・・いったい」

 

疑問を口にした黒ウサギだったが、裸のまま何事も無かったように戻ってきた雅に我に返ると、慌てて彼女の体に抱きつき体を隠す。

雅は軽く黒ウサギの豊満な胸に苦しみながらも十六夜へと声をかけた。

 

「十六夜・・・・・その、羽織っている服を・・・貸してほし、い」

 

一応羞恥心はあるらしいと、少し頬を染めた雅を見た十六夜は思い制服の上着を脱いで渡す。雅はそれを着るとしっかりボタンまで閉めた。

しかしその姿は身長差もあるせいかしっかりと体を隠せてはいるものの・・・・・なんと言うかイケナイ感がハンパない。

もしこれがYシャツなら、妄想が加速するのは確実だっただろう・・・・・。

 

雅はもう一度蛇神に近づくと、少しずつ人の姿に変わっていくのを眺めながら声をかけた。

 

「どんな・・・・・感じ?」

 

蛇神は完全に人の姿に変わると、両手を交互に眺め・・・そして雅を見て答えた。

 

『・・・・・先程までよりも、力が湧いてくるようだ。昔、神格を得た時の感覚に似ている』

 

「そう・・・・・契約は成功、だね。あなたの名前、は?」

 

蛇神は雅の質問に、その場に膝を下ろすと指を揃えて頭を垂れる。

 

「我が名は白雪。我が主よ、今この時より我が全ては主の物・・・今後ともよろしく頼む」

 

「よろしく・・・・・白雪」

 

こうして、雅は白雪という新たな戦力を得るのだった。

 

十六夜たちとも自己紹介を済ませた白雪は、雅の事情を聞くと謝罪をしていた。

 

「主よ。申し訳ない」

 

「気にしなくて・・・・・いいよ。ちょっと・・・残念だった、けど・・・おかげで、貴女を手にいれられ、た」

 

黒ウサギは蛇神を服従させたことに最初は驚いていたものの、今では小躍りしそうなほどに喜んでいる。小声で「・・・こ、これで、態々遠くまで水を汲みに行ったりしなくて済むのですよ!」などと言っているが、十六夜はその様子を見て不機嫌な表情で彼女を見ていた。

その視線に気づいたのだろう。黒ウサギは恐る恐るといった感じで十六夜に声をかける。

 

「な、なんですか十六夜さん?怖い顔をされてますが、何か気にさわりましたか?」

 

「別に?・・・・・ただ、俺たちはお前のコミュニティに入ると決めたわけじゃないのに随分と嬉しそうだと思ってな?」

 

十六夜の言葉に冷や汗を流し始める黒ウサギ。その様子に雅と白雪も疑問を感じたのか、白雪が質問した。

 

「主たちはまだコミュニティに入ってはいなかったのか?」

 

「つい数時間前に召喚されたばかりだったからな。それで、黒ウサギ?」

 

「な、なんでございましょうか?」

 

「お前、俺たちになにか決定的なことを隠してるだろ」

 

今度こそ黒ウサギは完全に固まった。彼女にとってそれは、今は絶対に知られてはいけない事だった。ダラダラと流れる冷や汗が止まらなくなる。

どうすればと焦っていると、雅が顔を覗き込んできた。

 

「ウサギ・・・さん。隠し事、あるの?」

 

「そ、それは・・・」

 

「それは・・・・・今は、知られたく・・・ない?」

 

「ーーーっ!」

 

「そっか・・・・・・・」

 

雅は悲しそうな瞳で俯くと、数瞬考えてから顔を上げた。そこには、キツく眼を瞑ってなにかに耐えるように震えている黒ウサギ。そんな彼女の頬に両手を添えると、優しい声で囁いた。

 

「なら・・・・・私が、こうなってしまった理由を教える、から。・・・ウサギさんの、お話も・・・・・聞かせて、もらえないか、な?」

 

「雅さんの・・・・・過去、ですか?」

 

「・・・・・・・うん」

 

雅は、泣きそうな心を必死に堪えながら話始めた・・・・・。

 

 

・・・・・・・・・話を聞き終わった黒ウサギたちは、顔を青くしていた。特に十六夜はかなり険しい顔をしている。

十六夜自身も似たような経験があったが、彼の場合は最初から利用しようとしているのがバレバレだったため、心に傷を作ることはなかった。そもそも、そこまで弱い心は持ち合わせていなかった。

しかし、雅の場合は違う。彼女は最初は愛情を注がれていた。例え、それが利用するための表向きの愛情だったのだとしても、純粋だった彼女はそれを知るすべはなかった・・・・・いや、疑うことすら無かったのだろう。何故なら彼女にとってはその愛情を向けられることで幸せに感じていたのだから。

愛されていると思っていた家族から裏切られた時の彼女の絶望は、いったいどれほどの物だったのだろうか・・・。それも単純な裏切りではない。今までの幸せが根底から覆されるような裏切り・・・・・。それを分かってやれない自分に、十六夜は今までに感じた事が無いほどの怒りを覚えていた。

 

(コイツは・・・・・心が壊れてしまうほどの絶望を与えられても、老いることも、死ぬことも出来ずに400年以上一人で生きてきたってのか!?どうして・・・・・誰も気づいてやれなかった!!助けてやろうとしなかった!?向こうの人間って奴は・・・そこまで腐り切ってやがったのか!!!」

 

雅は400年以上生きていると言ったが、今まで接してきた感じだと精神年齢は見た目と同じように幼いまま止まってしまっているように思える。恐らく感情の欠落が原因なのだろうが、その事が余計に十六夜を憤らせていた。

 

(俺に・・・・・出来ることはないのか?俺を救ってくれたアイツのように、俺に・・・・・・・コイツを救うことはできるのか?)

 

握りしめた拳から血が滲んでいることに気づかないでいた十六夜は、その手を雅に握られて我に返る。そこには、少しだけ笑顔とよべる表情を浮かべた雅の顔があった。今にも泣き出してしまいそうな・・・・・そんな儚い笑顔が。

 

「十六夜・・・・・怒ることはないんだよ。私は、十六夜たちに、感謝・・・してるの。たった、数時間で・・・・・私は、少しだけ感情を・・・・・取り戻せた。ずっと・・・忘れて、いた、感動・・・を教えて、くれた。だから・・・・・ありがと、う」

 

その言葉で、十六夜は泣きそうになってしまった。

 

(違う・・・・・俺は、まだなにもしてやれていない!なにもしてやれていないんだ・・・・・・!)

 

気づけば十六夜は、その小さな体を抱き締めていた。泣きそうなのを必死に我慢して、少しでもこのいたいけな少女に人の温もりが伝わるようにとーーー。

 

「その・・・・・悪い」

 

「どうして・・・謝る、の?」

 

「いや、男に抱きしめられるのは嫌だったんじゃないかと今さらになって思ってな」

 

「嫌じゃ・・・なかったよ。温かくて・・・・・十六夜の、気持ちが・・・伝わってきた」

 

頬を掻きながら赤くなる十六夜。そんな彼らを見て、黒ウサギと白雪は肩を竦めて微笑み合うのだった。

 

その後、本題であった黒ウサギの話を聞いた十六夜たちは、手伝う事を了承。涙を浮かべて感謝する黒ウサギだった。しかし十六夜と雅に飛鳥と耀にも事情を説明するように言われ、落ち込んでしまうのだった。

 




というわけで第二話でした。

少しずつ雅の感情が戻って来ていますが、まだまだ表層部分にすぎません。顔にはほとんど出ませんし、何より瞳は虚ろなままです。

今後どのように彼女が成長していくのか楽しみにしていただければと思います。

それと、白雪がこの時点で仲間になっていますね。これは雅の力の一部を見せるためで、深い意味は無かったりします·····。

それでは、またお会いしましょう!
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