心を失った少女も異世界から来るそうですよ? 作:ほら、死の花が咲いた
ペルセウス戦やっちゃうか悩みましたがもう一日準備期間が残っていることを思い出したので、そっちをやることにしました。
番外編で新しいメンバーも入りましたしね!
後書きには、また途中で申し訳ないのですが挿絵貼ってあります。雅ちゃんは一先ず塗り終わったのですが、背景も入れたい·····。ということでまだ途中としておきますw
背景どうしようかなぁ·····。屋内か屋外か·····雰囲気的には外かな?
とりあえず、本編どうぞ!
追記:誤字脱字修正及び一部内容の変更。
第7話
ペルセウスとのゲーム前日、"ノーネーム"のメンバーは新しく仲間となった三人を加えて街へくり出していた。なんでも、料理を担当することとなった幸平ソーマと城一郎が言うには、現在厨房にある道具だけでは最大限に腕が奮えないらしい。
十六夜や耀が見た感じでは必要な器具などは一通り揃っている様に見えたが、プロともなると趣味で料理をしていた二人では分からないような器材を使うのだろうと思い、こうして街へ買い物に来ているのだった。
「それで?いったい何が足りないんだ?」
「ん・・・・・・・?ああ、調味料とかがちょっとな」
「・・・・・・・・・・・・え?」
十六夜の質問に答えたソーマだったが、その答えに耀が間の抜けた顔で声を漏らした。ソーマはなにか変な事でも言っただろうかと首を傾げる。
「だから調味料だよ。あの厨房にもそれなりに種類は揃ってたけどそれでも足りないんだ。特にスパイス系の調味料が少なすぎる。多分小さい子供が多いからなんだろうけど・・・・・使い方次第では子供でも美味しく食べられる配合の仕方だってあるんだ。それ以外にもスパイスっていうのは色々な料理で隠し味としても使えたりするしな。後は・・・・・・・買い置きしてあった食材が偏りすぎだ。基本的な食材しかないんじゃ満遍なく栄養を取ることが出来ないだろ?体を支えるには食事による栄養の補給だって大事なんだからこれからはもっと色々な食材をだな・・・・・・・」
突然説教くさくなってきたソーマに驚きながらも十六夜たちは複雑な表情になっていく。別に彼らも好きで偏った食事をしていたわけではないのだ。今日だからこそ、昨日白夜叉から景品としてもらったお金があるものの、その前は本当に資金不足で最大限節約して生活していたのである。
問題児の中ではもともと酷いと言える生活をしていた雅だけは気にした様子はなかったのだが、流石にこれ以上ソーマに喋らせては誰かキレかねないと思い止めに入った。
「あの・・・・・・・ソーマ?」
「というわけでだな・・・・・・・ん?どうした?」
「あのね・・・・・・・私たち"ノーネーム"・・・・・は、昨日まで・・・・・ほとんどお金がない状態で・・・・・・・生活してた、の。・・・・・・・だから、好き嫌いがあって・・・・・偏った食事を・・・・・・・していたわけじゃ、なくてね?・・・・・・・とにかく、安い食材を探して・・・・・買うしかなかった・・・・・の・・・・・・・。だから、もう、その辺りで・・・・・勘弁してあげて・・・・・・・もらえないか、な・・・・・・・」
雅の説明に、ソーマと城一郎は顔を見合わせると居たたまれないといった感じの表情で頭を掻いた。
「そいつは・・・・・悪かったな。白夜叉の知り合いだっていう話だったから、ついある程度は支援を受けてると思ってたんだよ」
「息子がすまなかったな。正直、俺も同じことを思っていたから謝る」
「いや・・・・・・・構わねえよ。ソーマの言ってた事は事実だしな・・・・・。それに、今はかなりの大金を貰ったわけだし、無駄遣いしなきゃ暫くは困ることはねえだろ」
そう言って十六夜はお金の入った巾着を取り出した。中にはとりあえず今日の買い物に使う分+αとして金貨10枚が入っている。残りはもちろん本拠の金庫の中だ。一部は十六夜たちの小遣いとして持っているが。
一先ず十六夜たちは調味料を買うためにソーマの知り合いが経営しているという店に向かう事にした。
「いらっしゃいませ~♪」
「おっす、アリス。久しぶりだな」
「幸平君!?生きてたの!?」
「オイオイ・・・・・・・相変わらず失礼な事を言うやつだな」
ソーマが訪れたのは、料理学校で同期だったアリスとリョウが経営している東側屈指の料理店だった。ちなみにアリスは十傑の第五席、リョウは四席だった実力者であるとソーマが説明する。
「そう・・・・・・・。アルディーニ君たちとえりなが・・・・・・・・・・・」
「ああ。それで、最近"打倒魔王"を掲げ出したコイツらのコミュニティに力を貸すことにしたんだよ」
「なるほどねぇ・・・・・。それで?今日はどういったご用なのかしら?」
「実はこの辺で調味料とかが揃ってる店を教えてほしくてな。お前らはどこで仕入れてるんだ?」
ソーマの用件を聞いたアリスは、少し考える素振りを見せると「ちょっと待っててねぇ♪」と言って店の奥へと消えていった。
30分ほど待っていると、なにやら箱を抱えてアリスとリョウの二人が戻ってくる。
「一先ず、これだけあればしばらくは持つはずよ」
二人が持ってきた箱の中身は数十種類の調味料だった。
「・・・・・・・こんなにいいのか?」
「大丈夫だ。お嬢はいつも少し多目に発注してるから・・・・・・・」
「そう言うこと!遠慮なく持っていきなさいな♪」
二人は恐らく魔王に襲われたソーマたちの事を心配してくれているのだろう。学生時代はお互いに腕を磨きあった戦友とも呼べる間柄だ。何度も食戟で戦ったライバルであり、またある事件の時は仲間として共に戦った仲でもある・・・・・・・。
ソーマは二人に向き直るとニカッと笑った。
「サンキューな。えりなたちは必ず助け出してみせるよ。今は、頼もしい仲間も出来だしな」
「ええ、お願いね」
「お前に言っても無駄だろうが、無理はするな・・・・・。それと、必要な食材があったら連絡しろ。お嬢の伝で大抵のものは揃う」
「おう!今度暇な時は手伝いに来るからよろしくな」
ソーマたちは互いに握手を交わすと、もう一度礼を言って店を出た。
次の目的地へ向かう途中、十六夜は先程の会話で気になっていた事をソーマに聞いてみる事にした。
「さっきのアルディーニやえりなってのは誰だ?それに、助け出すとか言ってたよな?」
「あ~ペルセウスとの戦いが終わったら話そうと思ってたんだけど・・・・・・・まぁいいか。実は、親父が当主を勤めていた料理専門のコミュニティ、"極星"ってコミュニティは東側と北側では名の知れた料理専門のコミュニティだったんだけどな。二年前に正体不明の魔王に襲われて壊滅しちまったんだよ。その時に、仲間のアルディーニっていう兄弟と、俺のかみさん・・・・・・・えりなが魔王に拐われちまったんだ。本当なら、俺や親父も拐われる筈だったんだが、その時に乙坂が助けてくれてな。それからは魔王の情報を集めながら乙坂のコミュニティで飯を作ってたって訳だ。んで、その乙坂が今度はお前たちのコミュニティに移籍するって言うだろ?しかもそのコミュニティは"打倒魔王"を掲げてるって言うから、親父と話して俺たちも移籍しちまおうって事になったんだよ」
「つまり、その仲間を拐った魔王が見つかったら俺たちに倒して貰おうってことでいいんだな?」
「まぁ、そう言うことになるかな・・・・・・・。皆には余計な面倒ごとを押し付けるようで申し訳ないとは思うんだけど、俺たちもいい加減なりふり構ってはいられないんだよ。あれからもう二年だ・・・・・。タクミたちがいるから大丈夫だとは思うけど、えりなが心配で仕方ないんだ・・・・・・・。頼む、もしもの時は力を貸してほしい」
ソーマは真摯に訴えながら頭を下げた。城一郎も同じように「俺からもどうか頼む・・・・・・・」と言いながら頭を下げる。正直、街のど真ん中なので端から見たらおかしな状況なのだろうが、十六夜たちはソーマの話を頭の中で考えていた。
「飛鳥たちはどう思う?」
「そうね・・・・・・・。私は、力を貸しても良いと思うわ。先程のアリスさんたちからも信頼されているようだから、悪い人たちではないのでしょうし。それに、ソーマ君のえりなさんを思う気持ちは本物だと感じたから」
「・・・・・春日部は?」
「私も・・・・・力を貸すよ。二人は、嘘を言ってない」
「最後に・・・・・・・雅は?」
「勿論、力を貸すよ・・・・・。助けたいって・・・・・・・気持ちも、あるし・・・・・二人の・・・・・料理の、ファンに・・・・・なっちゃった、から。・・・・・・・だから、ソーマと、城一郎さん、は・・・・・美味しい・・・・・・・ご飯を、作って?」
「だ、そうだぜ。それと、俺も力を貸す。もともと俺は魔王と戦いたくてしかたねえんだ。断る理由がねえ」
十六夜たちの答えに、ソーマと城一郎は顔を上げると笑顔になった。
「みんな・・・・・・・ホントありがとうな。ただ、俺たちを襲った魔王は乙坂の話だと四層クラスらしいから、今の久遠や春日部じゃ戦いに参加させられないって言ってた。近いうちに鍛えるっても言ってたから覚悟はしといた方がいいかもな」
「確かに、今の私では・・・・・逆に足手まといになってしまうものね・・・・・・・」
耀と雅は、飛鳥の言葉にありえない物を見るような表情で驚いた。二人は心の中で、あの高飛車な飛鳥があんなことを言ったことに物凄く驚いているのだ。
二人の中での飛鳥と言えば、どんなときでも自信に満ちており弱音など吐かないような高潔な女の子というイメージができていたのだ。
そんな二人の心の声を受信でもしたのか、それともあまりの事に顔に出すぎだったのか、飛鳥は雅と耀に視線を向けた。
「二人とも・・・・・・・・・・・・・なにか言いたそうね?」
「い、いや・・・・・・・別に」
「な・・・・・・・何でも・・・・・ない、よ?」
飛鳥はなおも二人を訝しげに見つめていたが、苦笑いするだけの二人に溜め息を吐くと話し出した。
「昨日の・・・・・白夜叉が用意したゲームでね。・・・・・・・私、十六夜君の足手まといになってしまったのよ・・・・・・。けど、その時に約束もしたの。絶対に強くなって今度は十六夜君の隣で戦ってみせるって。だから、乙坂君が特訓してくれると言うのなら、全力で挑むだけよ!少しでも十六夜君に近づけるように・・・・・・・少しでも早く、今度は私が十六夜君を助けてあげられるように!」
飛鳥は胸の前で両の拳を強く握りしめながら、決意を固めるように叫んだ。しかし、ここが街の真ん中だと言うことを思い出して急に恥ずかしくなってしまいモジモジし始める。
十六夜はそんな飛鳥に近寄ると、優しく頭を撫で始めた。
「頑張るのは良いけど、あんまり無茶はするなよ?期待はしてるけど、あまり怪我をしないように気をつけてくれ」
「わ、わかったわ///」
「・・・・・・・飛鳥・・・・・お顔、真っ赤?」
「飛鳥・・・・・・・可愛い」
「か、からかわないで二人とも!」
笑いあう四人に、ソーマと城一郎も顔を見合わせると一気に吹き出して爆笑した。その事で余計に飛鳥が真っ赤になってしまい、後から怖いことになるのだがそれはまた別のお話である・・・・・・・。
一通り買い物を済ませた六人は、そろそろ帰ろうかと話していると街の一画に人だかりが出来ていることに気がついた。なにか面白いことをやっているのかと、興味津々で近づいた六人は、どうやらギフトゲームが行われているようだと気がつく。
「さあさあ、現在トップの得点は83点でコミュニティ"暗黒料理"のナオさん!二位と10点以上の差をつけての独走状態となっています!飛び入り歓迎!誰か挑戦者はいないかぁ!!」
「どうやら料理対決のゲームをやってるみてえだな」
「ソーマ・・・・・・・参加・・・・・してきた、ら?」
「いや、俺が出ちまったらバランスが崩れちまうだろ」
「でも・・・・・・・優勝の・・・・・賞品、高級食材・・・・・・・だよ?」
雅の言葉に一同は飾られている食材に目をやった。十六夜たちは箱庭の食材にはあまり詳しくないため、どういうものなのか分からなかったが、ソーマと城一郎の反応は常軌を逸していた。
「うお!?親父、あれ・・・・・帝魚じゃねえか!?」
「ああ・・・・・・・間違いねえ!まさかこんな下層で帝魚を見ることが出来るとはな!!」
「あれ・・・・・そんなに凄い魚なのか?」
「帝魚ってのは上層でしか本来捕れない魚の王様みてぃなもんなんだけど、極稀に下層に流れ着いたりもするんだ。売れば金貨200枚にはなる幻とまで言われる魚だ!」
「そいつは・・・・・・・是非とも食ってみてえな」
十六夜の言葉に耀が首をブンブンと残像が見えるほどに振っていた。城一郎は少し考えるとソーマに話しかける。
「ソーマよ。どうだ?久しぶりに料理勝負といこうじゃねえか」
「オイオイ本気か?俺も親父も十傑の一席だったんだぜ?こんなゲームに参加なんてしたらブーイングの嵐になっちまうだろうが」
「なあに、観客の分も作れば大人しくなるだろ。それに、耀の嬢ちゃんが物凄い勢いで涎を垂らしてるしな」
城一郎の言葉に耀へ視線を向けると、そこには漫画やアニメでしか見たことが無いような勢いで涎を垂らしてる耀の姿があった。最早、帝魚を食べることしか考えていないようである・・・・・・・。
ソーマは頭をガシガシと掻くと、左手に巻いていた手拭いをほどきながらいい放った。
「しゃーねぇな!今まで823敗もしてることだし、そろそろいい加減勝たせてもらうぜ親父!」
「言うじゃねえか!かかってこいソーマ!・・・・・それと、ものは試しだ。お前らも参加しねぇか?」
城一郎はそう言いながら十六夜達の方を振り返った。
「ん〜・・・・・ま、3位まで賞品あるし出てみるか?」
「私は遠慮しておくわ・・・・・料理はした事がないし」
「私は・・・・・出ようかな。雅はどうする?」
耀が声をかけると、雅は困った様な顔(に見える)をして考え込んだ・・・・・。
耀はそこでしまったと思う。雅はずっとまともな食事ができない環境で生きてきた事を思い出し、どうすれば良いかと十六夜や飛鳥の顔を見ながらオロオロとしてしまった・・・・・。
そんな様子の2人を見て、十六夜はやれやれよ肩をすくめると飛鳥と共に苦笑する。
「雅・・・・・何事も経験だ。参加してみたらどうだ?」
「そうね・・・・・私もやっぱり参加しようと思うから、一緒に頑張りましょう?」
2人に声をかけられもう数秒ほど悩むと、雅はコツっと頷いた。
「・・・・・じゃ、あ・・・・・・・やって、みる」
「決まったみたいだな?・・・・・それじゃ、エプロンはこれを使ってくれ」
ソーマはそう言うと、ギフトカードの中から数種類のエプロンを取り出した。十六夜達はそれぞれ受け取りながらも、疑問を投げかける。
「なんでこんなにエプロン持ってるんだ?」
「たまに料理教室みたいな事もしてたからな・・・・・その時に貸し出してたやつだ」
「へぇ・・・・・?私も今度教えてもらおうかしら」
十六夜達がエプロンをつけ終わると、城一郎がいつの間にか受付を済ませていた様で調理ブースへと案内された。
こうして、ソーマと城一郎による親子対決と十六夜達の料理勝負が始まった。ゲームの内容は審査員五名による点数の平均点で算出され、得点の高いものが優勝、お題はないため、全員が思い思いに食材を選ぶと調理に取りかかっていく。
そんな中、調理しながらも十六夜達は幸平親子の話をしていた。
「確か、雅と春日部は二人の料理を食べた事があるんだよな?どっちが勝つと思う?」
「ん・・・・・。私の味覚じゃ・・・・・・・二人の料理の、差がわからない・・・・・・・。けど、少なくとも・・・・・二人とも、平均点90以上は・・・・・・・出すと思う、よ」
「私は・・・・・・・城一郎さんが勝つと思う。ソーマの料理も物凄く美味しかったけど、やっぱり経験の差なのかな・・・・・城一郎さんの料理の方が深みがあるって言うのかな。ん~上手く言葉に出来ない・・・・・・・かな?」
「ふーん・・・・・・・・・・・」
十六夜は二人の評価に頷くと、調理している二人の方へと視線を移した。そこでは、お互いに楽しそうに、しかし物凄いスピードで調理をしているソーマと城一郎の姿。
周りの観客も、そして審査員や司会の男性・・・・・・・さらに現在トップのナオという女性すら声を失ったかのように二人の調理をただ呆然と眺めていた。
十六夜の目でも、二人の調理には一切の無駄がないように思える。十六夜自身、料理は得意な方だと自負していたのだが、あの二人の調理を見たあとでは自分がやっていたことなどママゴトでしかなかったのだと思い知らされる。
そうこうしているうちに、二人とも仕上げに入ったようで辺りには胃を刺激する匂いが充満していた。正直この匂いだけでご飯が何杯も食べられてしまえそうなほどの破壊力がある。
あまりのスピードに、十六夜達も慌てて自分の調理へと戻って行く。
十六夜が作っているのはパスタ、耀は麻婆豆腐、飛鳥は手の込んだ物は作れないと自分でも分かっているため、とりあえず簡単そうなサンドウィッチを作っていた。
そして雅は・・・・・・・・・意外にも手際よく作業を進めていた。材料を見た感じ、どうやらシチューを作っている様だ。今は一口大に切った材料に火を通しているところだった。
そうこうしていると、幸平親子が調理を終えていた。どうやら先手はソーマのようだ。ソーマは鍋の中身をお椀によそうと審査員と、そして観客たちにも料理を振る舞っていく。
「俺が作ったのは季節の野菜と、南側で飼育されている豚のA5肉があったのでそれらをふんだんに生かした豚汁だ。熱いうちにおあがりよ!」
ソーマの言葉に観客たちが歓喜に染まる。あれだけの行程を見せられたのだ、観客たちの期待も相当に高いのだろう。
同じようにお椀を受け取った十六夜たちもさっそく食べることにした。
「・・・・・・・んな!?」
瞬間、十六夜をはじめ観客たちの間に驚愕が走る。期待していたとは言え豚汁である。それぞれの家庭の味が出る料理とはいえそこまで大きな違いが出ることはないオーソドックスな一品。例えA5肉を使ったとは言えそれは肉単体の味が際立つだけであり豚汁事態が美味しくなるわけではないのである。
しかし、この豚汁はベースの味こそ豚汁そのものだが、今までに食べたことのあるそれとは全くの別物だった。
まず、A5肉が全く浮いていない。それ以外の食材たちとしっかりと調和してなおかつ、お互いの存在を引き立たせている。十六夜はどうやってこの調和を作り出したのか必死に味わいながら考えたが、己の知っている食材ではこれだけの味を出すのは不可能だと結論した。だとすれば、恐らく箱庭にしかない食材の可能性が高いが・・・・・・・。
「その豚汁には隠し味として北側で採れるハナカズチっていう樹木の蜜を加えてあるんだ。これは蜂蜜に近いものなんだけど、蜂蜜よりもとろみがあってなおかつ、少し酸味がある食材なんだ。それによって、他の食材の旨味成分を包み込み中で熟成させる効果がある。さらに酸味によってくどくなりがちなA5肉の強さをマイルドにしてくれることによって味のバランスを整えてくれる」
ソーマの説明に審査員が驚愕するのが伝わった。たった一つの食材でバラバラになってしまう味をまとめあげたと言うのだから驚かずにはいられないだろう。
食べ終わった審査員たちは、迷うことすらなく点数を記入していった。
「え~幸平ソーマさんの点数ですが・・・・・・・なんと、100点!満場一致で100点です!何度か開催されたこのギフトゲームですが、100点がでたのは今回が初めてとなります!」
ソーマが叩き出した点数に辺りが騒然となりかけたが、そこで放たれた圧倒的な雰囲気に一瞬で観客たちは静まり返った。その気を放つのはソーマの父でありソーマと同じく十傑の一席だった男・・・・・・・。
「やるじゃねえかソーマ。だが、俺も負けてはいないぜ?」
そう言いながら城一郎はソーマと同じく観客たちにも料理を配っていく。城一郎が作った料理は、カレーのスープだった。
すでにソーマが最高得点を出している時点で優勝は確定していると言ってもいい。しかし、しんも、観客たちも、その料理を食べずにはいられなかった。
我先にと言った感じで口をつけ始める一同。そして・・・・・・・・・・。
「か、観客たちが恍惚とした表情で固まってるぞ・・・・・・・」
「これは・・・・・しかたないかもしれない・・・・・・・」
城一郎が出したスープは、スパイスを生かした一品であることはわかるのだが・・・・・・・・・・・。辛い・・・・・・・とにかく辛い。なのに食べるのを止められない。喉を焼くような辛さすら快感のような錯覚に陥りながら、十六夜たちはただただ食べ続ける。あの飛鳥すら、作法を気にすることもなく口許にお椀の縁を持っていき、大量の汗を流しながら夢中になって食べていた。
「今回は13種類のスパイスを組み合わせてみた。ただ、それだけだとただの激辛スープになっちまうから、それを補うために南側で採れるファチネっていう果物の果肉を一緒に煮込んだ。この果物は火を通すことで食感が肉のようになるのと同時に、スパイスが喉に与える刺激を和らげる効果もある。これによって、スパイスの刺激をあまり気にせずに味を楽しめるようになるってわけだ。さらに今回はこの東側で採れるシータングっていう野菜も加えることで、体の代謝を上げる効果もあるから、スパイスと合わせて体にいい料理になっている」
またも驚きの組み合わせでその場の全員を驚きに包む。審査員たちはどうするべきか深刻に悩んでいるようだ。すでにソーマに100点をつけてしまっている以上、できても同率優勝。しかし景品の帝魚はひとつしかない。ああだこうだと言い合っている審査員に、雅が近寄り声をかけた。
「あの・・・・・・・。ソーマと、城一郎さんは・・・・・・・どちらも私の・・・・・コミュニティの、同士です。なので・・・・・どちらが優勝でも、帝魚は私達の・・・・・コミュニティで、頂くことになるの、で・・・・・この場は、どちらの料理が・・・・美味しかったかだけの、審査にして・・・・・・・いただけません、か?」
審査員たちは顔を見合わせると、どこかホッとしたような表情で雅に頷き返した。
「そ、それでは・・・・・・・城一郎さんの点数を発表します!・・・・・城一郎さんの点数は、108点!これは公式記録には載りませんが、現在一位ということになります!」
司会の発表に、観客たちは盛大な拍手を送る。壇上では城一郎が観客に向かって手を振っていた。
ソーマは十六夜たちのもとへ戻って来ると、彼らの調理を眺めながら悔しそうに顔をしかめた。
「あ~また負けちまった。今回はかなり自信があったんだけどなぁ」
「ソーマの料理も・・・・・・・スゴく・・・・・美味しかった、よ。でも、城一郎さんの料理の方が・・・・・・・インパクトが強かった・・・・・感じ、かな」
「そうだね・・・・・。味で言えばそこまで差は無かったと思う。ソーマの料理は、メニューとしてのインパクトで負けてたんだと思う・・・・・・・かな」
「けど、かなり僅差だったと思うぜ?少なくとも、お前の料理も100点以上で計算したら2~3点しか違わなかったんじゃねえかな」
「そっか・・・・・・・。少なくとも、近づいてはいるみたいだな」
ソーマはフゥ・・・・・と息を吐くと、こちらに戻ってくる城一郎へと視線を向けた。その表情はどこか清々しく見え、自身の目標の大きさを再度実感しているようにも見えた。
それから少しして・・・・・十六夜達も自分の調理を終わらせると、まずは1番自身が無さげな飛鳥から審査してもらった。
サンドウィッチなら作れると思っていた彼女だったが、予想以上に苦戦したようで見た目はお世辞にも良いとは言えなかった。それでも可愛い女の子が一生懸命作っていた事で、審査員達は笑顔で頬張った・・・・・。点数こそ51点と、参加者24人中21位という結果だったが、本人は初めてにしてはそこそこな結果に次はもっと美味しく作れるようになろうと心の中で誓った。
次に出されたのは十六夜の一品・・・・・。濃厚なチーズをベースとしたクリームパスタに、審査員達も美味しそうに食べ始めた。十六夜は隠し味に箱庭の食材・・・・・ランドーという果物の汁を生地に練りこんでいた。これは仄かな酸味が特徴の果物で、濃厚チーズと合わさる事でくどすぎず食べやすい料理になっていた。点数も82点と、全体で5位に入り幸平親子にも褒められ十六夜にしては嬉しそうな顔をしていた。
次に耀が作った料理に移った。彼女の麻婆豆腐は、見た目はごく普通の麻婆豆腐・・・・・・・だが・・・・・・・・・・・・・・城一郎の一品同様、辛かった・・・・・・・。耀が使用したのは6種類のスパイス。一つずつ味見をして使うスパイスを決めた耀は、特に箱庭独自のスパイスを5種類も使用していた。十六夜の様に隠し味こそ使っていなかったものの、その絶妙な調合で辛いのに・・・・・辛いからこそ・・・・・・・喉を通った時の刺激は審査員たち脳にダイレクトな旨さを伝えることに成功していた。点数も88点と高得点を叩き出し、十六夜や飛鳥を驚かせた。
最期に・・・・・雅の料理が審査員達の前に並べられた。こちらもまた、見た目はごく普通のクリームシチュー・・・・・・・。十六夜達は意外な手際の良さに驚きはしたものの、実際の味がどうなっているのか・・・・・どこか不安そうに見つめていた。
一口・・・・・・・審査員が、食べた・・・・・・・・・・・。
しかし、誰も言葉を発しない・・・・・・・。司会の男性も・・・・・どうしたら良いのかわからない様で、結局食べ終わるまで誰も喋らないままで、流石の雅も、この時ばかりは不安を顔に出して静かに待っていた。
完食後・・・・・・・。
「え、え〜・・・・・・・では、審査員の皆様・・・・・雅さんの料理はどうだったのでしょう?」
「ふむ・・・・・・・・・なんと・・・・・言えば良いのか・・・・・・・今までに食べたことのないシチューだった。ほぼ全ての食材が本来シチューでは使わないものばかり。肉、野菜、スパイスや香草・・・・・・・本来なら噛み合わない筈の食材達が・・・・・・・奇跡的なバランスで組み上がり、初めて味わう美味しさを作り出していた・・・・・」
「美味しかったんです・・・・・ね?」
「美味かった!ただ・・・・・・・その美味さを表現できない我が身が口惜しい!」
「な、なるほど・・・・・では採点をお願いします!」
司会がそう言うと、審査員達はそれぞれ手元の装置に点数を入力していった。計算は一瞬・・・・・・・雅の得点は・・・・・・・93点だった。
その点数に、十六夜達は驚くと共に雅へと駆け寄った。
「おいおい・・・・・・・雅お前凄いな!」
「まともな食事はできなかったって聞いてたけど・・・・・腕は良かったってことかしら?」
「料理の修行とかしてたとか?」
口々に褒めてくる仲間達に、雅は少しの間驚いた様に固まっていたが、ようやく実感が湧いてきたのか・・・・・誰が見ても分かるほどの笑顔を浮かべて喜びを表した。その儚そうな・・・・・それでいて幸せそうな笑顔に、その場にいた全員が、はぅ〜・・・・・・・と魅入っていた。
「何度か・・・・・・・ソーマ、や城一郎さんの・・・・・調理・・・・・・・見てて、真似して・・・・・・・みた」
だが・・・・・その雅のセリフに、今度は驚愕の声が会場中から上がった。雅は、今までに見てきた調理技術を見ただけで自分のものにしてしまっていたのだ。流石に幸平達ほどの熟練度には及ばないものの、その技術は既にプロの領域に達していると言っても過言ではないものだった。
十六夜は・・・・・・・嬉しい表情をしている雅を見ながら考えた。
(想像以上の結果だったな・・・・・・・まさかあそこまで表情に出るほどになるとは・・・・・・・・・・・ただ、何度か見ただけで幸平達の技術を身に付けたってのは・・・・・・・今後の展開次第では悪知恵の働く連中に狙われかねねぇな・・・・・・・。葉冥のこともあるし・・・・・出来るだけ警戒はしておいた方が良いか?)
十六夜の不安が現実となるかは分からなかったが、今はひとまず・・・・・・・雅が嬉しそうだし良いか、と納得しておくことにしたのだった・・・・・・・。
その後、帝魚を手に入れた一同は本拠へと帰ったのだが、帝魚を見た黒ウサギが買ってきたのだと勘違いをし、危うく説教を受けそうになるのだった。
問題の帝魚はペルセウスとの戦いに勝った後、祝勝会で振る舞うという話になり耀がかなりガッカリしていたのだが、代わりに出された城一郎とソーマのスペシャリテに歓喜するのだった。
同じくスペシャリテを食べた十六夜たちは、先程の勝負で出された料理ですらまだ本気ではなかったのだということを思い知らされて・・・・・今日何度めかの驚愕を味わうのだった・・・・・・・。
今回はここまでとなります。
七話を書いてる途中で前回の番外編を読み返していたら、ところどころおかしな部分がありましたね·····。白夜叉に袋を持たされてたのにその後出番がなかったり·····orz
今後はこういったことが無いように気おつけます!
なにやら今回の内容も番外編っぽい感じになってしまいましたが一応本編扱いで投稿いたします。
ちなみに、この作品では城一郎も十傑の一席だったことになっています。
では、挿絵をどうぞ♪
【挿絵表示】
次回は背景の下書きが入った状態になりそうかな?
そして次こそはペルセウス戦を終わらせたいと思います!
ではまたお会いしましょう♪