さすがに前作後半のロングスパート・アップは無理だった作者です(--
あの勢いというか奇跡は不可能かな?
さて今回のエピソードは……前半と後半では、エピソード・ヒロインが違ってたりします。
というか全体的に戦いの準備回……でしょうか?(^^
さて、ここはモンゴル語で”美味なる泉”を意味する”タムサク・ボラグ”。
ソ連在蒙赤軍がモンゴル東端に作った巨大軍事施設だ。
その具体的な大きさは施設自体でも東西13km、南北10kmの多角形で、これを周囲39km/幅8m/深さ3mの対戦車壕で取り囲んでいた。
その敷地面積は、山手線の内側の面積より広いと言ったら、そのスケールは伝わるだろうか?
そして、このモンゴル平原に突如として出来たようにしか思えない巨大要塞の支援のためだけに二つの大規模野戦飛行場が整備され、ソ連の街ボルジャよりシベリア鉄道が引き込まれ、さらにはマタト、ウラン・ツィレク、バイン・トゥメンと三つの負けず劣らずの巨大補給基地が整備された。
さて、そんないかにもソヴィエトじみた馬鹿馬鹿しいまでの巨大軍事施設の一角に”彼女達”はいた。
「ねえ、ノンナ……カチューシャ達は、一体いつまでここで待機してればいいのかしら?」
二人乗りの
かつては”カチューシャ・スペシャル”などと俗称されていたが、”冬戦争”での実践評価が良好だったせいで、この秋から正式に小規模生産が始まり【T-34bis】と名づけられ戦車の傍で、口元にジャムをつけたまま紅茶……彼女なりの”ロシアン・ティー”を楽しんでいるのは、もしかしたら身長130cmないかもしれない女の子がそう聞いてくる。
ふわふわの短い金髪に勝気そうな瞳……彼女こそは”冬戦争”において、他国なら僅か増強1個中隊規模の戦車で大隊規模の敵戦車隊を壊滅させるなど数々の武功を高く評価され、見事に女性で始めて『ソ連邦英雄勲章』を受賞した”エカテリーナ・トハチェフスカヤ”だ。
蛇足ながら”カチューシャ”とは彼女の愛称で、エカテリーナという名の女性の愛称としてはロシア語圏では一般的だ。
史実における女性初の英雄勲章受勲者は、
しかもゾーヤの受勲は彼女の死後(ドイツによる処刑後)の受勲であり、「英雄の死」を対独戦のプロパガンダにしたいスターリン一派の意向という側面が強いが、カチューシャの受勲は誰もが認める実績に裏打ちにされたものだけにその価値の高さがわかると思う。(まあプロパガンダ要素がないと言えば嘘になるが……)
また、カチューシャという少女を語るうえで忘れてはならないことがある。
彼女はソ連最年少元帥であり「赤いナポレオン」と呼ばれ、後の戦術論に多大な影響を与えた”縦深戦術理論”の生みの親として知られる”ミカイル・トハチェフスキー”の姪(トハチェフスキー元帥の弟の娘)という出自で、近い将来の夢は大大大好きなミーシャ伯父様の……と、この先を言えば粛清対象か?
それと名字が微妙に違うのは、ロシア語特有の「男女による名字語尾の変化」のせいである。
***
スターリンが”事故死”してしまい、権力を握ったトロツキーが赤軍の実力派と手を組み行った(史実のスターリンに比べれば)小規模な粛清により、国内の政敵……特にスターリンの取り巻きを中心に、徹底的にこの世と違う場所に旅立たせた。
そのために生まれたのは、史実とは大幅に異なる人員で攻勢された【
やはり新たな赤い
ともかく史実では赤軍大粛清であまりに悲惨な最後を遂げたトハチェフスキーが生きているだけでなく、軍の大黒柱……名実共に「赤軍の至宝」として活躍し、逆に政治畑ではベリヤ、ポスティシェフ、コシオール、ルズタークが、
そういう意味においては、カチューシャは旧貴族社会なら公爵令嬢と呼ばれてもおかしくない立場だが、さすがは革命と戦闘で自らの歩むべき道を切り開くことをモットーとする赤軍。
例え名家令嬢であれど、愛すべき人民の尖兵として戦場に立ち、堕落した帝国主義者や放埓な資本主義者、無責任な民主主義者を討ち取ることこそ誉れと考えてるようだった。
奇しくもそれは古の貴族や騎士の理想像とする姿であり、また革新/革命を名乗る勢力ほど一周回って懐古趣味的になるという歴史事例に、ソ連もまた足を踏み込んでいるという証明でもあった。
「カチューシャ様、全ては同志ジェーコフ中将の胸のうちであらせられます」
そう答えたのはカチューシャとは好対照を成す長い黒髪&長身の涼やかな目元が印象的な妙齢の美女であった。
彼女の名は”ノンナ・テレジコーワ”。プライベートではカチューシャの専属メイド、軍務では従兵兼副官を務める才色兼備の有能な女性だった。
「確かに同志ジェーコフ中将の優秀さは、伯父様のお墨付きだけどさ~」
グリゴリー・ジェーコフ中将は幾多の赤い将軍の中でも、軍の機械化および戦争における機械化部隊の運用という新しい理論の強力な提唱者の一人として有名であり、それゆえにトハチェフスキーの覚えのめでたい若手将軍の一人であった。
また彼の立てる計画の緻密さ、厳しい訓練や厳格な規律の実施は有名であり同時に高く評価されていた。
「でも、カチューシャは
どうやら彼女は”冬戦争”では不完全燃焼だったらしく、そして持て余した闘争本能の捌け口を求めて、このモンゴル平原に来たようだ。
言い忘れていたが、カチューシャは戦功自体が先ず評価されカレリアから撤収する前に略式の戦地昇進という形でソ連独特の上級中尉になっており、先の通り英雄勲章を授与されると同時に1階級昇進(受勲昇進)しており、今は”トハチェフスカヤ大尉”となっていた。
そして、昇進した彼女に与えられたのは新しい階級章だけではなく……
「それにせっかくミーシャ伯父様が用意してくれた”独立増強試験戦車旅団”をいつまでも遊兵化させておきたくないじゃない」
***
それはソ連製の最新鋭戦闘装甲車両が、これでもかとつぎ込まれた真新しい戦闘集団だった。
カチューシャの操るT-34bisが配備された旅団直轄の3両(カチューシャの乗車を含めれば4両)に、今のところは主力のピロシキ砲塔(短砲身のL-11/76.2mm砲搭載型)のT-34が2個中隊26両の計30両のT-34を中核に、ノンナ率いる装甲自慢で機動防御を得意とするつい先日配備されたばかりの最新戦車技術を押し込めた”KV-1bis重戦車”が1個中隊の12両。”BT-7M快速戦車”装備の装甲偵察隊が1個中隊編成で12両。
そして火力支援と待ち伏せが専門の史実では「街道の怪物」と恐れられた”KV-2重戦車”までもが1個小隊4両が旅団長直結として配備されていた。
総勢58両に達する戦力で、旅団長であるカチューシャや副官のノンナをはじめとした”冬戦争”を経験した猛者と若手でも将来有望とされた選抜組を中心に編成され、現在極東に配されてるソ連装甲兵力の中でも有数の錬度を誇っている。
もっともこの数なら他国では増強大隊、あるいはせいぜい戦車連隊と呼ばれる規模なのであるが、ソ連はこのスケールの装甲戦闘集団を”旅団”と呼称していた。
史実を紐解くと独ソ戦が始まった頃のソ連の戦車旅団編成は、
1941年12月:戦車旅団:戦車大隊×2(KV-1重戦車=10両、T-34/76中戦車=16両、T-26軽戦車=10両、合計36両)
というもので、さすがに”この世界”では定数が増えているが、カチューシャがかなり優遇されてるのは間違いないだろう。
あと、ソ連は日本に継いで婦女子の多い軍隊ではあるが、特に”独立増強試験戦車旅団”……非公式な呼称だがこっちのほうが呼ばれ方としてはメジャーな”カチューシャ旅団”は女性比率が高い。
とはいえ、別に男性がいないというわけではなく……というより、旅団構成員の約半数は男だった。
おかげで美人系から可愛い系まで取り揃えたカチューシャ旅団の第一規律は、「ヤるのも誘ってヤられるのも感知しないけど、避妊だけはするように。妊娠が理由の除隊や後方送りとかありえないし」とのことだ。
実際にカチューシャ自身も気をつけている。年齢的というより体系的に、彼女には無用なような気もするが……それは追求しないのが吉だろう。
「それではカチューシャ様、威力偵察任務などを志願するのはいかがでしょう?」
カチューシャは少し考え、
「そうね……確かにハルハ河には視察にいったきりだもんね。戦場を実際に戦車で走ってみるのは重要よね? それに戦車を遊ばせておくよりはずっとマシだもん」
何より、北アフリカではしゃいでるイタリア人やバルカン半島でバカ騒ぎをしてるドイツ人を羨ましく思わなくてよいというのが精神衛生上よさそうだ。
「ただし遭遇戦は頻発するとお覚悟ください」
彼女達が陣取るタムサク・ボラグから東に行けばハルハ河があり、その東岸の帰属を巡って米ソが今まさに領土的対立を起こしていた。
しかしカチューシャにとっては願ったり叶ったりだったようで、
「新戦車の性能やカチューシャ考案の戦術が実戦で試せるなら、むしろ望むところよ♪
この地には、かつて内蒙古と外蒙古の境界線を示していた
そしてカチューシャ達が威力偵察に出ようとしてるハルハ・イーストバンクには、ホロンバイル草原とハルハ東部の境界標識一つが、現地語で”
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「
「ケイ! ホント、久しぶりだねぇ~っ!!」
”ひしっ!”
熱い抱擁で体温を分け合う二人には、隔たれた時間も空間も関係なかった。
さて、言うまでもなくここは富士機甲学校。
話はちょっと前に遡るが……
全体的に
「ミホーーーッ!!」
バンとドアが開くと同時に、標準支給のタンカースジャケットではなく、なぜかブラウンレザーの陸軍航空隊用のA-2フライトジャケット金髪少女が飛び出し、全力全開でジャンピング・ハグを決めたのだった。
ケイの手加減なしのフライング・ボディ・プレスを察知して、恐るべき反射神経で体制を整えがっちりとそれを受け止めたみほの身体能力は驚嘆に値すると言っていいかもしれない。
「がるぅぅぅーーーっ!」
「フ―ーーーーッ!!」
何やら威嚇してる
それはまるで「仔犬や仔猫に呻られた程度で恋人を譲る女がどこにいるの?」とでも言ってるようだった。
もっともケイの行動の半分は、みほ自慢の二匹のペットのジェラシーを煽ってからかっているのであるが。
実はケイ、仔犬も仔猫もついでに大人しい大きな猫も、みほのペットはみんな気に入ってるのだ。
特にみほがからむと打てば響くような食いつきのいい二匹は、ついついかまい倒して遊んでしまいたくなる。
この傍迷惑な愛情表現こそが、まさにケイ・ユリシーズ・サンダースという少女なのだが……
彼女の心理は、主人公の妹にかまいたくなる某森島先輩に近いと言えば、納得してもらえるだろうか?
「あれ? ケイ、そういえば新型戦車……確かM4だったっけ?と一緒に来るって聞いてたけど?」
いつもより、あるいは他の誰に接するよりも砕けた感じのみほの口調が、二人の距離の近さを報せるようだ。
「ああ、それは残りの隊員共々アリサとナオミに任せてきたわ」
ケイはみほに抱きついたまま、さらっととんでもないことを言い切った。
「ほら、ワタシってばヨコスカに降りたらすぐに車借りて、フジに直行したからね~♪」
そして自分で運転しながら「法定速度? なにそれ美味しいの?」という雰囲気でかっ飛ばしてきたようだ。
本人の言葉を信じるなら、隊員の入国手続きと戦車の揚陸作業など諸々は、全てアリサとナオミに投げてきたようである
みほに会いたい一念と言えば聞こえはいいが、単に面倒ごとを押し付けただけともとれる。
「あの二人も可哀想に」
追い掛け回した挙句に待ち伏せ攻撃でフルボッコにした相手と、射撃と砲撃の名手でガムがトレードマークの二人を思い出し、思わず苦笑いするみほ。
「ノンノン! ミホ、こういう時は『頼りになる副官がいてラッキーじゃない♪』って言うべきところよ?」
「わたしはその割り切り方ができるケイを、いっそ凄いと思うよ」
「ンフフ~☆ 惚れ直した?」
「まあ、そうかな?」
みほの言葉と同時に唇を押し付けるケイ。ただでさえ、
***
「ねえところでミホ、”この子”が噂の
みほをハグハグしたままキラキラした瞳を向けるその視線の先には、比喩でなくみほ達がここしばらく毎日のように乗っている鋼鉄の獅子が居並んでいた。
このリアクションから察するに、ケイもみほに負けず劣らずのタンク・マニアクスのケがあるようだ。
「そうだよ♪ 最近になってようやく仕上がってきたんだぁ」
嬉しそうに微笑むみほを見てるとまたしても唇を奪いたくなる衝動に駆られるが、そうしたら話が進まなくなるくらいは自覚してるケイは、続きは今晩のお楽しみということにしておいて……
「ねっねっ、ワタシにも動かせるかな?」
「車の運転ができるなら、動かすぐらいはすぐにできるんじゃないかな? 麻子さんに言わせれば『歴代の日本戦車の中で一番運転し易い』らしいし」
「じゃあ、さっそく……」
試製一式中戦車に乗り込もうとするケイだったが、
”むんず”
首根っこをみほに握られてしまう。
「ちょっと~! ワタシと離れるのが名残惜しいのは判るけどさ~」
みほはニッコリ微笑み、
「そうじゃないでしょ?」
「だ、大丈夫よ! マニュアルくらいあるんでしょ? ワタシの
「それでもない。ケイ、着任の挨拶がまだだったよね?」
「あん。ワタシとミホとの間に、そんな無粋なことはいいっこなしじゃない?」
「わたしには別にいいんだよ。わたしには」
「???」
本気で何を言ってるか判らないという顔をするケイに、ついみほは溜息を突いて……
「ケイ、”
「へっ?」
みほは「やっぱりか~」という表情で、
「挨拶は人間関係の基本だよ? 細かいことは言わないし、言うつもりもないけど……せめて最初くらいは隊長らしくしないとね?」
「He~y。じゃあミホ、校長室までエスコートしてよ♪」
「わたしでよければ喜んで」
どうやら富士機甲学校は、しばらくさらに賑やかになりそうだ。それとも喧しくなりそうという言い方の方が適格だろうか?
本当に良くも悪くもでありそうだが……
そしてアリサとナオミが、残る【
***
こうして役者は……あるいは駒は揃った。
あと必要なのは、”
そしてそれはきっと、もうすぐ用意されるだろう。
それも世界有数の”熱い盤面”が、だ。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
前半はカチューシャ再来、後半はみほとケイの再会のエピソードはいかがだったでしょうか?
カチューシャ様、ノモンハンに到着!
ケイ、みほ達と合流!
ついにお膳立てが整ってしまいました(^^
でも本格的な戦闘が始まる前にカバとかウサギとかカモとかアヒルとかちょっと書いておきたいな~とか思ってたりします。
それにしても、ケイはフリーダムだなっと(笑)
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
***
設定資料
KV-1bis重戦車
主砲:ZIS-5/76.2mm戦車砲(口径76.2mm、41.5口径長)
機銃:DT機銃×3((7.62mm×54R弾)
エンジン:V-2Kディーゼル・エンジン(機械式過給機付液冷V型12気筒ディーゼル、550馬力)
車体重量:43t
装甲厚:砲塔前面90mm(傾斜装甲),車体前面75mm(傾斜装甲)
サスペンション:
変速機:前進5段/後進1段
操向装置:二重作動式
最高速:42km/h
乗員:定員5名乗車(6名乗車可能)
特殊装備:Fu2/Fu5車載無線機、
備考
実はT-34シリーズよりも史実よりかけ離れた開発背景とスペック・シートを持つに至った、ある意味1940年登場戦車の中で最も化物チックな戦車かもしれない。
史実ではT-35多砲塔重戦車の後継戦車としてSMK重戦車、T-100重戦車らと同時開発されたが、”この世界”では全く異なり、当初は「次世代戦車技術の研究/開発/実証の為の実走可能な大型実験プラットフォーム」というのが最初の立ち位置だった。
そして様々な機材を搭載することを想定して重戦車級の車体になってしまい、また開発期間短縮のためにSMK、T-100から流用された部品を用いている。
例えばT-34のクリスティー式より先進的な、スウェーデンのランズベルク(L-60)軽戦車を倣ったトーションバー式独立懸架装置と大型鋼製転輪の組み合わせを採用。
エンジンはT-34のV-2ディーゼル・エンジンをベースに、
エンジンの高出力化に伴いトランスミッションを新規設計の5速タイプとし、さらにはT-34の泣き所の一つとして数えられている旧態依然としたサイドクラッチ型クラッチ・ブレーキ操向装置をこの世代の戦車の標準となってきていた:二重作動式
またこれらの最新の足回りと駆動系のコンビネーションにより、最高速では劣るものの小回りはbisを含む前期型T-34より利いたという情報もある。
しかもその最高速も55km/hを誇るT-34と比べて劣るだけで、試製一式中戦車の45km/hと比較するなら決して見劣りはしない。
ちなみに史実のKV-1は変速機の重さが数多い欠点の一つとされたが、”この世界”では使い勝手は「いたって普通」らしい。
また問題だった機械的信頼性や故障率はソ連戦車として考えれば「これも普通」であり、まだ技術実証の途中である多くの機材や装置を積み込んでいることを考えれば「驚異的信頼性」になるようだ。
これも”この世界”のT-34シリーズ同様に、ドイツに大量発注している高性能部品の影響も無視できないだろう。
またKV-1で試されたの新世代技術の数々は、後に第二世代(後期型)T-34シリーズなどに搭載されたものも多く、KV-1の先進性を証明するエピソードとして語られている。
砲塔は実験戦車だけあって量産性は考慮されてなかったのであえて鋳造にする必要なく、様々な砲を搭載できるようにするため部品単位で接合できる
ただ区分的に”次世代試作重戦車”の体裁をとっていたために防御力は重視され(これは内試験装備の実戦テストを行うからという意味もある)、砲塔前面90mm/車体前面75mmと分厚く、しかもT-34と同様に避弾経始の概念を取り入れた傾斜装甲を採用しており、その防御力は他国の戦車から比べても頭一つ抜き出ていた。
そしてドイツのⅣ号戦車に倣い、三人乗り砲塔を採用してることも大きい。
また史実と違いKV-1重戦車のKVは、開発主任だったコーチン技師のイニシャルのKと、ロシア語で車両を表す”Vehicle”の頭文字を合わせた開発コードに過ぎなかった。
つまりKV-1とは「コーチン技師開発の1号車両」という意味だ。
ついでに言えばKV-2も「KV-1の車両に陣地や防衛線などの重防御地点攻撃用の大型砲を乗っけたら使い物になるのか?」という疑問から生まれた、こちらも「コーチン技師開発の2号車両」という意味の実験車両扱いだった。
しかし、実戦テストを行うために投入した”冬戦争”で予想外の大活躍(特にノンナやノンナとかノンナが)をしてしまったのと、SMK重戦車、T-100重戦車が実戦で思い切り弱点や急所や醜態を晒してしまったために急遽KV-1/KV-2の量産がきまったのだった。
”冬戦争”に登場したKV-1との最大の違いは、T-34bisに搭載されるF-34戦車砲と同時開発されていた同じく長砲身の76.2mm戦車砲”ZIS-5”を主砲として搭載していることだろう。
T-34シリーズとの住み分けは、火力は同等ながらも機動力で勝るT-34が騎兵や矛とするならKV-1は分厚い盾であり、特に機動防御など防御力や持久力が必要とされる戦いに真価を発揮するだろう。