今週は慌しくなってしまいそうなので、時間が空いてるうちに可能な限り書いておきたい作者です(^^
それにしても今回で「CODE1940」は20話。早いもんですね~。
さて今回のエピソードは……サブタイ通りに姫様活躍の回です♪
はてさて、果たしてどうなることやら……
最後はちょっとお嬢なみほが黒かったりして(笑)
ここはハルハ河東岸、かつて内蒙古と外蒙古の教会に設置された
「各々方、準備は良いか?」
傍受の危険性がほぼない中隊内用の近距離無線機で彼女……鶴姫しずか中尉呼びかけると、配下9両の九八式巡航軽戦車から音声ではなく、無線機のマイク部分を指で弾くモールスで返信がきた。
別に無線封鎖をしているわけではないが、慎重に慎重を重ね無線傍受を警戒してのことだろう。よほど注意して聞かなければ無線ノイズにまぎれてしまう返信の内容は9両同じで、
”
即ち『応』。
この装甲偵察小隊を率いる鶴姫しずか少尉は獰猛な笑みを浮かべる。
「全車、突貫セヨッ!!」
馬に使う
「っ!」
口の轡のせいで上手く発音できないが、その少女……”
彼女の意志は、人ではなくむしろ馬だ。
(姫様にもっと踏まれたい。姫様にもっと踏まれたい。姫様にもっと踏まれたい。姫様にもっと踏まれたい。姫様にもっと踏まれたい。姫様にもっと踏まれたい……)
ご主人様に軍馬として調教され、ご主人様のおみ足に踏まれ命じられるまま、燃料が尽きるまでどこまでも走る忠実な鶴姫の愛馬だ。
そこには松風鈴という少女はなく、ただ”松風”という名の忠勇で淫乱な牝馬がいるだけだった……
「百足衆、鶴姫しずか! 推して参るっ!!」
ここは
***
「隊長! 敵襲ですっ!!」
「なぜ我々の位置が露見したっ!?」
そう驚いたのは、BT-7M快速戦車10両で編成された装甲偵察中隊を率いていたロシア人少尉だった。
彼らはいつも同じコースを走っているわけではない。
そしてこれまで敵と遭遇したこともなければ、ましてや攻撃を受けたこともない。
だが、彼らの不運は現状認識の甘さにあった。
確かに彼らの定期巡回コースはランダムだった。しかし、神出鬼没で見つかりにくい少数(3両の小隊編成)で偵察任務を行っていた旧カチューシャ旅団と違い、ジェーコフ司令部は効率を優先し、中隊編成の装甲偵察隊を波状投入する、数に任せた(ある意味、ソ連らしい)強行偵察に切り替えていた。
数多くの装甲偵察中隊を投入するのであれば、その偵察範囲が被らぬように設定されるのは必然であった。
つまり、彼らの言うランダムとは、いくつかある巡回コースの一つを選択することであった。
そして彼らは一つ勘違いしていることがあったのだ。
敵と遭遇したことはないというのは、あくまで「敵の装甲偵察隊と遭遇したことがない」であり、米陸軍情報部が随所に紛れ込ませていた”分隊”というごく少数規模の偵察隊にずっと
厳しい訓練により人間の限界に近い忍耐力と持久力を身につけた偵察専門の
そしてその情報収集能力の高さと解析技術の高さを武器とする米軍は、ソ連の偵察パターンの割り出し……もしかしたら、ソ連司令部すらも気付いてない規則性を割り出すことに成功したのだ。
おそらくそれは、偵察スケジュールの決定を行ってる担当官の
そして今日、彼らは”その結果”を味わうことになる……
「7号車被弾! 大破っ!」
「各個の判断で発砲せよっ!」
だが、中隊長にはわかっていた敵は側面から一気呵成に攻めてくる。
今更、迎撃フォーメーションを組みなおしても無駄だということを。
「全車転進! 砲撃にて牽制しながら撤退するっ!!」
その判断が出来ただけでも、この装甲隊長は有能と言えよう。
「敵はM2もしくはM3軽戦車かっ!?」
警戒すべきはBT-7Mに勝る速度を誇るこの二種だったが、
「違いますっ! 識別不明! もしかしたら日本戦車かもしれませんっ!」
(日本戦車? ならば例のTYPE-98か……?)
「敵戦車は我らより鈍足だっ! 速度で振り切れっ!!」
しかし、相手が悪すぎた。
そう、ここで彼らは致命的な判断ミスを犯したのだ。
ロシア人にとって満州に配備された日本戦車と言えば、アメリカ人が資本主義者らしく借金のかたに日本人から奪って(注:あくまでロシア人の解釈)きた”九八式重戦車”を真っ先に思い浮かべる。
報告では装甲防御と砲威力は中々のものだが、アンダーパワーなエンジンのせいで英国の歩兵戦車と同じ程度の速度しか出せないらしい鈍亀だ。
更に彼らが米軍の動向を探る頼みの綱、あちこちに潜ませた諜報部員の報告にも問題があった。
潜伏員達は、僅か10両とはいえ日本人の九八式巡航軽戦車がハイラル・ベース入りしたことを確かに掴み、報告していた。
だが、その報告書には米軍が俗称で使う”TYPE-98
特に注釈なく書かれたそれを情報担当官が満州(と『特地』)では一般的な九八式重戦車、その”偵察特別仕様”だと思い込んでも無理はなかった。
組織工学的な弱点なのだろう。その情報は誰にも精査されることなく上に提出され、そのまま”事実”として認識されたのだろう。
そしてその誤認情報を手渡されていたこの不運な赤軍装甲偵察中隊長が、「重戦車ベースの偵察戦車が
***
「ほう。”犬追物”とは面白い。一度嗜んでみたいとと思っていたところだ!」
鶴姫はニヤリと笑い、
「全車に告ぐ! これより我ら”
「「「「「はっ!!」」」」」
鶴姫の号令一下、全車が綺麗に最小の回転半径を誇る信地旋回を決め、中隊符丁”百足衆(鶴姫命名)”が追撃に移行する!
「隊長! 振り切れませんっ!」
「馬鹿な……」
それはありえない光景だった。
正体不明の敵戦車は、引き剥がされるどころか信じられないほど小さな回転半径で一斉回頭するとこちらを凌ぐ勢いで追撃してきたのだ!
「3号車被弾! 炎上!」
「
『あいよ。姫様、まかせな』
鶴姫が
松風同様に学生の頃……「楯無女子戦車学校」時代からの古い付き合いで、頼れる副官であると同時に松風が少々過剰な雌馬調教のせいで鶴姫の細い足で踏まれ蹴られることが至上の喜びとなってしまった今となっては、数少ない気の置けない人間の友人と言える。
「全車、敵右前方に一斉射! 放てっ!」
「本部に援軍要請!」
「無線が繋がりません!」
それは必然だった。
この周辺には、既にソ連の大半の無線周波数を割り出していた米軍により短時間の
「隊長! 頭を抑えられます!」
操縦手から悲鳴のような報告が聞こえれば、キューポラから半身を乗り出し自分の目で敵……TYPE-98とは明らかに異なるそれを恐怖と共に見ていた隊長は、
「食い破ってみせろっ!」
しかし、その勇ましい命令は実行されることはなかった。
”ガツンッ!!”
「!?」
車体に強力な衝撃が走ると同時にそれに抗えなかった隊長の身体は宙を舞い、投げ出された勢いそのままに地面に叩きつけられる。
彼が意識を刈り取られる前に最後に見た光景は、爆発し燃え上がる自分の戦車の姿だったという……
***
(俺は運がいいのか……?)
気が付いたとき、身体の節々が痛むがなんとか無事なようだった。
しかし……
”ちゃき”
首筋に雪以上に冷たい感触を感じたときに悟る。
(いや、悪いな。やはり俺の命運もここまでか……)
突きつけられたそれは
(女? それも少女じゃないかっ!?)
細く華奢な肢体にやけに目立つ黒髪に巻かれた赤いリボン……
「ははっ……俺はこんな年端も行かぬ少女に負けたのか……」
自嘲する”元”隊長に、リボンと刀の少女……鶴姫は、
「失敬な。既に元服しておるわ」
「なんだとっ!?」
「驚くのそこかよっ! ……ってまあ、東洋人は年齢より幼く見えるらしいから無理ないか」
そう苦笑するのはウェーブがかったセミロングの茶髪がトレードマークの副官、遠藤だ。
「名乗れ」
鶴姫がそう命じれば、
「イサーク・コマロフ。階級は赤軍少尉だ」
「そうか。ならば武器を捨て投降せよ。さすれば
思い切りハーグ陸戦規定を無視した発言だが、隊長改めコマロフは意外そうな顔で、
「随分と慈悲深いな?」
考えてみれば、「ハーグ陸戦規定? 何それ美味しいの?」的なノリで戦争やってるソ連赤軍である。
なら、この返答も納得と言えば納得だろうか?
「お前の部下は最後までよく戦った……誰一人降伏することなく最後まで自陣に帰ることを諦めなかった。敵ながら天晴れなものよ」
鶴姫は真っ直ぐにコマロフを見つめ、
「ならばその散り際に免じ、褒美と思ってくれてかまわぬ」
「……そうか」
コマロフはただ短く返し、
「俺が持ってるのは拳銃とナイフだけだ。捨てたいんだが、首から刃を引いてくれないか? サムライのお嬢さん」
「いいだろう。言い忘れていたが、我が名は鶴姫しずか。お主と同じ少尉だ。ただし所属は大日本帝国陸軍だがな」
「ははっ……そりゃ勝てないわけだ。
そう苦笑しながらコマロフは右手でホルスターから拳銃を抜こうとするが……
”ズキッ”
「あがっ!?」
思わずのた打ち回りたくなるような激痛が背筋を駆け上った!
「無理するでない。気が付かぬようだったので話してなかったが、お主の右腕はポッキリ折れておるぞ?」
「……そういうことは先に言ってくれ」
”すっ”
すると鶴姫は流れように動き、抱きつくような姿勢でコマロフから拳銃とナイフを抜き去る。
「……アンタ、いい匂いがするのな……」
「ああ、
後ろで牝馬がコマロフを今にも蹴り殺しそうな目で見ていたが、それに気付かなかったのは幸いだろう。
***
コマロフは、自分と同じく乗車は破壊されても生き残り、捕虜になった部下達の大半と共に日本に渡ることになる。
戦時特例で亡命/帰化が許された彼は、後に自らの半生を振り返る手記でこう語った。
『小生が本当の意味で降伏を決意したのは、姫君のあの沈香の香りを嗅いだ時だろう。あの時、小生はおかしなくらい感情の荒波が収まり頭が冴え、自分が何をやってるのか……何をすべきなのかを真剣に考えてしまったのだ。故に、小生がこうして今ここで香道を極めんと心静かに佇めるのは、全てはあの日あの時の出会いがあらばこそなのだと思う』
駒炉布伊作著『沈香に魅せられた日』より抜粋、一部改変
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「お手柄だよ♪ 鶴姫さん」
「ありがとうございます」
鶴姫達の小さな凱旋を出迎えてくれたのは、彼女の上役である……そして長い付き合いになるかもしれない西住みほ中尉だった。
「受けた損害は軽微で、10両全車が無事に帰還! おまけに敵指揮官まで捕虜にするなんてね~。うんうん、大したもんだよ」
「過分な評価です。そもそも九八式巡航軽戦車は
謙遜でなく明らかに本気でそう思ってる鶴姫に、みほは「たはは」と苦笑する。
「それより
そう鶴姫が腰から抜いたのは赤鞘の軍刀、先ほどコマロフに突きつけていた軍刀に拵え直した日本刀だった。
「いいよ。それは鶴姫さんにあげる」
「それはできません。天下の名刀”同田貫”など、簡単にいただくわけには……」
”同田貫”とは?
加藤清正も寵愛した刀工集団作の日本刀の総称で、生み出された刀の特徴は「身巾尋常ながらも重ね厚く、刃肉豊かにつき、切先伸び、反り浅い」と評されている。
華やかさには欠けて美術品としての評価はイマイチだが、質実剛健という言葉を具現化したような造りはまさに”実戦刀”然とした趣がある。
事実、鋭い切れ味と頑強さを兼ね備えていて、それを証明するエピソードも史実に残っている。
明治19年(1886年)に明治天皇の御前で行われた「天覧兜割り」において、直心影流の剣豪が振るった同田貫が見事に十二間筋の兜を切っている。
そして”この世界”でも振るった人物こそ違うが同年同月に「天覧兜割り」が行われ、こちらは見事に兜を真っ二つにしたようだ。
美術品として床の間に飾るのではなく、腰に下げて武器として振るう者にこそ相応しい名刀……それが同田貫なのかもしれない。
「いいよいいよ。それ倉にまだまだいっぱいあるし」
同田貫の由来は実は地名であり、銘に”肥後州同田抜”とあるように肥後の国、今の熊本県にあたる地域を活動拠点とした刀工集団なのだ。
もうオチが見えた読者諸兄もいるだろうが……熊本県といえばくまもん発祥の地! ではなく、西住家の地元。
現在進行形で地元名士にして代々名門武家の一角であり続けた西住家は、”この世界”において同田貫と関わりが深く……というよりぶっちゃけ代々発注元であったり、あるいはパトロンであったりしてきたのだ。
実際、西住家が隆盛し文明開化を楽々乗り切れるついでに新事業まで投資できるような財貨を築いた一因は、この同田貫の全国武家への寡占販売だったりする。
そして現在、明治に施行された廃刀令で多くの刀工が廃れる中、”この世界”の同田貫一門は刀工としての勢力拡大に成功しているのだ。
機を見るのに長けた当時の西住家当主が維新勢力に参加し持ち前の財力と機微で次々にコネを作り上げ、帝に同田貫を献上するなどしてキャンペーンを実施。
予想は付いたかもしれないが……先にあげた「天覧兜割り」も、”この世界”では西住家が裏で糸を引いた「同田貫プロデュース作戦」の一環として行ったものだ。
これが功を奏して同田貫は天皇家御用達の看板を掲げられるようになり、やんごとなき方々が従軍する際の愛刀を献上する栄誉を賜ったのだった。
となれば”同田貫の軍刀”を帯刀するというのは、陸海空を問わず大日本帝国軍人のステータス・シンボルとなり、高級将校以上ならばこぞって買い求めるようになる。
その刀工集団を現代に見合うように見直し未だ寡占販売……事実上の独占販売権を握るのは西住家だ。
そして西住家の独占販売にも誰も文句を言わない、いや言えないのは代々の実績や現在の権勢のみならず、未だ同田貫を高品質なまま出荷できる体制を維持し、また美術品や骨董的価値を持ってプレミアがついてしまった他の名刀と違い、「ちょっと無理や背伸びすれば高級将校でも手が伸びる」という”適正価格”で出荷し続けてるからである。
そしてみほが言っていた「倉にごろごろしてる」というのは全くの真実で、数百年間パトロンであるのだからその代々の名刀の収蔵数も日本一だ。
ちなみに前作で出てきた『ケイに贈ったナイフ』も、倉に眠っていた
あまりに身近にあったものだから、みほは今一つ価値がピンときてないようだが……
「わたしが持ってるより、きっと鶴姫さんがもっていた方が役に立つよ」
「されど……」
「武具に限らず道具はね、その持ち主に相応しい者の手に渡って初めて真価を発揮するんだよ♪」
みほは無垢に微笑み、
「だから、鶴姫さんにこそその刀を使って欲しいかな?」
「西住中尉……」
「その代わり、鶴姫さんから預かっていた軍刀はわたしが貰っていい?」
「しかし、あれは同田貫とは比べるべくもない無銘の……」
「いいんだよ。わたしは”それがいい”んだから」
この話はこれでおしまいとばかりに手を振って立ち去るみほ。
鶴姫はそれを一礼して見送った。
「家宝にできそうな刀一本をポンとくれるとは、なんとも太っ腹な御仁だねぇ~。さすがは名門”西住の末姫様”ってところかな?」
そうケラケラ笑いながら肩を叩いてくる遠藤だったが、
「……やはり甘い御仁ではない」
鶴姫は、まるで遠藤の言葉を聞いてなかったかのようにグッと刀の柄を握る。
「『この刀に見合う働き』を示せ……おそらくはそういう意味だ」
「はっ?」
「要するに、だ」
鶴姫はシャープな笑いを浮かべ、
「褒美の先払いということであろう?」
***
「フフッ、楽しくなってきたなぁ~♪」
鶴姫と別れた後、みほは上機嫌で基地を歩いていた。
(コリンズ大佐に無理を言って、敵強行偵察隊の迎撃任務に鶴姫ちゃんを行かせた甲斐が合ったよ)
みほは鶴姫との「戦場を用意する」という約束を確かに守った。
(今はまだ、小さな戦場の小さな勝利だけど……)
「刀一振りで一層の奮闘をしてもらえるなら安いもんだよ」
要するにみほが刀を渡したのは、闘気のやり場を持て余していた鶴姫の戦闘意欲に方向を持たせ焚きつけるためだったらしい。
お陰で戦果は上々と言っていい。何より……
(日米同盟が満州で初めて『同数の敵と対峙して圧倒した』……この意味、ちゃんと伝わるかな?)
みほはよく晴れた……透き通るあまりに空虚感さえ抱きそうなモンゴルの冬の空を見上げた。
「ねえ、”まだ見ぬ強敵”さん?」
皆様、御愛読ありがとうございました。
姫様が愛馬と共にモンゴルの草原を駆け、コマロフ君が新たな人生を見つけた(笑)エピソードはいかがだったでしょうか?
それにしても、何百年も同田貫のパトロンやってた西住家って一体……(汗
みほの腹黒な部分はエムロイの影響じゃなくて、むしろ遺伝だったりして(^^
そして松風は完全にしずか姫の愛馬として定着していますね~(棒)
それにしても既に20話……なんとなくですが、ゴールは見えてきた気がします。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
***
設定資料
一〇〇式二十粍対空自走砲
主砲:九八式二十粍高射機関砲×2(
機銃:武1919式車載機関銃(7.62mm)×1(車体前面)
エンジン:統制型九〇式発動機AC型(空冷V型12気筒ディーゼル、240馬力)
車体重量:18t
サスペンション:独立懸架+シーソー式連動懸架装置
変速機:前進4段/後進1段(コンスタントロード型シンクロメッシュ機構タイプ)
操向装置:二重差動式
最高速:42km/h
備考
”九九式七十五粍自走榴弾砲”に続いて、エンジンの過給機による強化をしない「第一期
目的は当然のように年々加速度的に増強され、
基本的なコンセプトはシンプルで、九七式中戦車の車体に
主砲と言えるのは”九八式二十粍高射機関砲”だが、史実と違いフランスのオチキス機関砲ベースではなく、スイス・エリコン社が同社のFFS航空機関砲をベースに車載/艦載を目的に開発した”エリコンSS機関砲”が原型となっている。
これの採用は、当然のように陸海空での銃砲弾の共用化であり海空軍ともにエリコン機関砲のライセンス・モデルは大量導入していた上に、米国が航空機用のイスパノ系機関砲以外にも地対空/艦対空用にエリコンSSをライセンス生産することが決定していたので、この運びとなったようだ。
ちなみにライセンス生産モデルはかつて「漢字もしくはカタカナとアラビア数字の組み合わせでライセンス品を表し識別する」という命名基準があったが、どうにもあやふやになるケースも30年代後半から増えてくるようである。
ただ九八式二十粍高射機関砲に欠点がなかったかといえばそういうわけではなく、特に
実はこの時期、既にエリコンFFS機関砲を改良し装弾数に問題ないベルト給弾を採用し、発射速度を引き上げた”九九式二十粍航空機関砲”という最新モデルの開発/生産が始まっていたのだが、これらは零戦などの海空航空機の搭載が最優先とされ、地対空や艦対空用には当分は回ってこないことが決定されていたのだ。
そこで陸軍は、苦肉の策としてM2ブローニングのライセンスモデルである武2式重機関銃2丁をバックアップとして同じ砲架に搭載することで補うこととしたようだ。
基本的なコンセプトは「武2式で牽制し、九八式で止めを刺す」というところだろうか?
かなり間に合わせ感があるコンポーネントではあるが、対空車両の需要が急増した時期に間に合った車両という意味において戦力的な重要度は高かった戦闘車両と言えよう。