本日は深夜アップとなってしまった作者です(^^
さて、今回のエピソードは……一言で言えば「次なる戦いの準備パート」ですね~。
カチューシャ様の興が乗り、米国籍のオッサン達がろくでもないことを決めたようですよ?
そして、日米ソ以外の装甲少女たちの情報も……?
「ふ~ん……うちの偵察中隊が、まるっと丸ごと喰われたんだ?」
在蒙赤軍の巨大拠点”タムサク・ボラグ”、その一室では主であるカチューシャ、エカテリーナ・トハチェフスカヤ大尉が報告書に書かれた内容を面白そうに眺めていた。
(圧倒的多数の敵に囲まれ、奮戦するも全滅。敵の捕虜になるのをよしとせず、最後の一両まで戦った……ねえ)
赤軍の掲げる英雄譚を載せた広報誌のような内容の報告書に、カチューシャは訝しげな顔をした後、
「ノンナ」
「はい」
今日は公務中なのか、軍服姿で紅茶の準備をしていた副官にして専属メイドのノンナ・テレジコーワ中尉にカチューシャは目を向け、
「興が乗ったわ。近いうちにちょっと遠乗りするから付き合いなさい」
(やっぱり気になることは自分で確かめなくちゃね♪)
「わかりました。同行する規模はいかがなさいましょう?」
「そうね……」
カチューシャは少し考え、
「確か
「
「じゃあノンナ、その中から最も経験が浅く技量に劣るものを4両選びなさい」
彼女はクスっと笑い、
「カチューシャ自らが、新兵達に”
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さて一方、こちらは米軍のハイラル・ベース……
「問題だな」
基地の最も大きな会議場で開口一番そう呟いたのは、この地の主……在満米陸軍西部方面軍団司令官のジェファーソン・スティルウェル少将だった。
本日の議題となっているのは……先日、鶴姫率いる独立装甲偵察中隊、通称”百足衆”があっさりとほぼ同規模の敵装甲偵察中隊を仕留めた件であった。
仕留めた事自体に問題はなかった。事実、作戦書に了承の決済印を押したのはスティルウェル自身だ。
敵は全滅し、オマケに捕虜まで確保できた。
しかもその捕虜は、特に拷問された後もないのに不思議と協力的で、もたらす情報はまさに値千金だった。
あまりにも情報の引き出しが順調なために欺瞞情報を疑ってみたが、その少尉という階級で知りうる最大限だと思われる情報を陸軍情報部が洗ってみたところ、彼らの見解とほぼ一致していたのだ。
唯一困ったことがあるとすれば、その捕虜になった装甲中隊長がとある日本人の少女としか話そうとしないことぐらいだろうか?
その少女が香を焚くと、不思議とその捕虜はリラックスした雰囲気でペラペラと喋ったらしい。
あまりに劇的な効果から香に自白効果でもある麻薬成分でも入ってるのかと思い分析してみたところ、、
『特に高いものでも特別なものでもなく、尉官の給料でも普通に買えるありふれた一般的なもの』
とのことらしい。日本文化に精通した詳しいものに聞いたところによれば、彼女……鶴姫しずかの焚く香の効果らしい効果はと言えば、
『リラックス効果は確かに得られますよ?』
だった。
***
なるほど。結果だけで見れば上々だ。
同数の敵を圧倒したという事実に兵達は歓喜し、確かに士気は上がった。
しかし……
「日本人に倒せて、米国人に倒せないという評判はいかがなものかな?」
長年この地を守ってきた在満米軍としてみれば冗談ではないだろう。
38年の”張鼓峰事件(あるいはハサーン湖事件)”からこっち、
特にそれが婦女子部隊というのがまたよくなかった。
人の口に戸は立てられないもので、既に「米国戦車は日本戦車に劣り、米兵は日本の少女に劣る」という噂が広がっていた。
この異常な噂の拡大速度は明らかに工作員の介在によるものだろうが、結果は事実だけに米軍としても否定しにくい。
「こういう事態は予想していなかった。我々はどうするべきかね?」
スティルウェルがジロリと睨んだのは事の元凶、コリンズ大佐だった。
「そうですねぇ……」
腹案は既に在るのだが、一応は考える振りをするコリンズ。
(いっそ「在満米軍が弱いのは小官の責任ではありません」とでも言えたら楽だったんだが……)
そう表情に出さず内心で苦笑して、
「ならば、我々も同じことをするしかないのでは?」
「どういう意味だね?」
先を促すスティルウェルに、
「我々も
とコリンズはまず軽くジャブを放ってみる。
「だが、それでは”
(言葉が違いますよ、少将閣下。回復すべきは威信ではなく面子でしょうに)
コリンズは心中で訂正する。
スティルウェルの物言いは、まるでサンダース戦車中隊が合衆国陸軍の一員ではないかのようだが……
(それを指摘するのは野暮というものだろうな、やっぱり)
スティルウェルのような生粋の、あるいは
そもそも、「守るべき女子供を戦場に出す」こと自体がこれまでの価値観の中では恥ずべき行為であるのだ。
ましてやその「守るべき婦女子」が実戦部隊として最前線で活躍し、自分達ができなかった戦果をいとも簡単に討ち立てた。
あまつさえ、それが満州という舞台の”主役”である米軍ではなく、”脇役”……それどころか飛び入りの端役、語義通りの”エキストラ”であるはずの日本軍だというのだ。
スティルウェルはこの残酷な現実に、耐え難い何かを感じていてもおかしくない。
***
(日本人並みにとは言いませんが、もう少し戦争というものに素直になってくれれば、米軍は取れる
例えば婦女子の参戦だ。
少なくとも”この世界”においては女子の参政より参戦の方が遥かに先行している。
例えば、”
史実のそれとは大分趣が異なり、ドイツの再軍備あるいはナチス第三帝国建国当時から「アーダベルト・ヒットラー個人の私兵であり身辺警護を担当する」という名目で武装組織として存在し、親衛隊の主要戦力と各個たる地位と基盤を築いている。
その中核戦力は結成当時はまだ幼き美少女で、今や見目麗しき美女に成長した女性だ。
ちなみに親衛隊や国防軍はともかく、未だ”ヒットラー・ユーゲント”は女性の方が圧倒的に入隊し易く、入隊上限は18歳だが下限は今は撤廃されてる(かつては下限は10歳)ほどだ。
故に口の悪い者は「幼女趣味独裁者の武装ハーレム」などと呼んでいるが、噂によればメンバーの一部はそれが事実というか……中身はその表現と大差ないらしい。
ただ馬鹿にできないのは、最近のヒットラー・ユーゲントは総統の身辺警護という建前すら放り出し、新たな事業に手を染めていた。
それが何かと言えば、「支配地の婦女子を自国の正規戦闘員として仕立てる」ことだろう。
例えば、併合したオーストリアや占領地としたフランス(ヴィシー・フランス)や西ポーランドなどの東欧支配国の面々だ。
これもまた噂では「祖国の地位向上」や「ドイツ市民権の獲得」など様々な特典を餌に募集してるらしい。
元々、被支配国は経済や産業、政治や治安など社会のあらゆる要素が一時的にせよ何にせよ衰退し、荒廃する。
それを以下に早く復興させるかが新たな支配者の腕の見せ所で、また「荒廃から手早く復興させ夜会秩序を取り戻す」ことは、かつて敵国だった市民に新たな支配体制を積極的に受け入れさせる第一条件と言える。
つまりその一環で、ヒットラー・ユーゲントは敗戦国では特に社会的な弱者になりやすい「婦女子の保護と救済」というお題目で堂々と活動してるのだ。
これは皮肉としか言いようがないのだが……
ヒットラー・ユーゲントのそれは明らかに日本の『婦女子軍志願制度』を参考にしたものであり、また女性の登用にさほど積極的ではない(しかし、米国よりは遥かに積極的)国家の正規軍である”国防軍”や党の武装組織である”
また女性の保護や社会的地位向上を訴える各国女性権利団体からの支持も厚いのだから、この政策を声高に批難するのも少々厳しい現状がある。
無論、ヒットラー本人としては女性の地位向上だの男女同権云々などということに配慮したわけではない。
ただ、筆頭愛人と目される者から、
『女が戦えないと誰が決めた?』
『ふん。我が主様は、人的戦争資源の半分を眠らせたまま戦争に勝てると思ってるのか? いつからチュートン人は、そんな余裕/余力が持てるようになったのだ?』
と諭されたからに過ぎない。
少し脱線してしまうが……
ヒットラーの筆頭愛人と伝わっているのは、”エヴァンジェリン・カーミラ・ミレニアム・ブラウン”という名の幼女(?)だ。
「ヒットラー・ユーゲントの頭目」とされてるが、それも定かではない。
常識的に考えて幼女が頭目ということはありえない。あるとすればプロパガンダの広告塔、マスコット・キャラとかなのだろうが……
このエヴァンジェリン・ブラウンという女性はかなり謎が多い。
目撃証言によると、たしかに見た目は「金色の長い髪が特徴の10歳にも満たなさそうなアーリア系の美幼女」らしいのだが……その存在が公となった1933年から今年に至るまで”一切、容姿が変わっていない”という情報があるのだ。
確かにおかしな話である。見た目どおりの年齢ならいい加減、成長期(二次性徴)に入り少なからず容姿が変わるはずだ。
あるいはたまにいる「
ある情報官によれば「まるである日突然、ヒットラーの前に姿を現した」ような印象があるらしい。
「実はエヴァンジェリンの正体は、”
***
ともかく、国防軍と親衛隊だけでなく、本来は国籍が違った行き場を失くした(行き場を求めた)少女達の受け皿となり休息に規模を拡大させている若年近衛隊を正規戦力として数えるなら、かなりの数の女性将兵がいる計算になる。
(ドイツだけではないか……)
目下の敵であるソ連は日本と並んで婦女子の軍人登用に積極的な国で、軍の女性比率では日本に負けるが、数自体では勝っている。
なりふり構ってられないカナダのケベック州に拠点を構えた亡命フランス政府(自由フランス)は男女を問わず志願を受け付けてるし、またイタリアでは……
(”黒のケッタ”、か……)
ケッタとはイタリアの
(あの”
世に曰く『イタリア人と女房に戦争をやらせる奴は』なんて言い回しもあるようだが、それも今は昔なのかもしれない。
親父以上に有能と評判で、ドゥーチェの右腕として”黒”付く由来になった「冷血といえるほど冷徹さ」で采配を振るい、北部を中心に経済/産業改革を成功させたケッタは特に若手を中心とした軍部と工業界に絶大な人気を誇り、また”改革者”としても内外に知られている(ただし未だ出遅れて農業主体の南部では評判がイマイチという噂もある)。
その改革の一つが、軍をはじめとする戦闘的公共機関への女性の登用である。
その改革もさることながら、夜のような黒髪と黒真珠のような瞳が印象的なかなりの美丈夫で、またまだ世界が平和だと思われた時代、水上機レースの最高峰だったシュナイダー杯のイタリア艇パイロットを務めていたなど華々しい一面もあり、老いも若きもイタリア娘達には絶大な人気があるらしい。
そんな王族でもないのに”
(ならば、合衆国も手付かずの自国戦争資源に手を伸ばさねばならないときがきたということか)
「ならばこういう
滑稽なほど大げさなアメリカン・ゼスチャーを加えながら道化を演じたコリンズに、スティルウェルはニコリともせずに、
「続けたまえ」
コリンズはコリンズで最初から乗ってくれるとは思ってないので軽くスルーし、
「閣下、
偶発的な遭遇戦のみに言及してるということは、逆に言えば鶴姫のように待ち伏せの上に「狩りをさせる」気はないということだろう。
「サンダースから借りる人員は理想的には”名目上”、小隊以上を指揮できるものがいいでしょう。可能なら尉官(尉官待遇)ですな。そして彼女を中心に正規兵の中戦車級を4両護衛につけ、そして随伴に本物の1個ないし2個装甲偵察小隊を同行させる。これで装甲偵察隊の体面は保てるし、中戦車は偵察車両の護衛につけたという言い訳も立つ」
「仮に敵が現れれば4両の中戦車が盾になり、か……」
「そうなれば今度は合衆国陸軍としての体面が保たれます。もっとも『中戦車1個小隊を護衛につけた偵察中隊』と遭遇すれば、通常編成の敵装甲偵察中隊なら交戦を避けるでしょう。特に偵察中隊が丸々食われた後では尚更でしょう。なので警戒すべきは……」
コリンズは一度言葉を切り、
「例の”
「その根拠は?」
「情報部の分析が正解だったというわけです。捕虜の証言で裏づけも取れたました。スカウトハント……米国装甲偵察隊への遊撃任務に動いていたのは、やはり”エカテリーナ・トハチェフスカヤ”大尉に間違いありません。あの機甲戦の申し子、トハチェフスキー赤軍元帥の姪っ子ですよ」
”ざわっ”
既に報告書は回っているはずだが、だとしてもやはりその名が出ると会議の場がざわめく。
「”
呻くようなスティルウェルの声に、
「赤軍でのオフィシャルな二つ名は、”
コリンズはそう情報を追加してから、
「ですがその地吹雪のお嬢さんは、アメリカ人を大量に戦車ごと殺した褒美に、部隊が”親衛隊”に格上げされ戦力が増強されたそうです。おそらく、”ソ連型戦車旅団(アメリカ基準なら戦車大隊規模)”より大規模な部隊になると思われますが……その規模の大きさゆえに今頃はその再編と掌握に忙しいでしょうな? 常識的に考えて。ここ数日、スカウトハントが発生してない理由もそこでしょう」
「なるほど部隊再編中というわけか? 魔女の戦力増強はありがたくない話だが、確かにそれではハンティングをしてる場合ではないだろうな」
スティルウェルは納得したような表情で頷き、
「いいだろう。コリンズ大佐、早急に草案を纏めて提出したまえ」
「アイアイサー」
「嘆かわしいことだとは思わないか? 大佐」
「? 何がです?」
聞き返すコリンズに、スティルウェルは苦虫を噛み潰したような顔で告げた。
「栄えある合衆国陸軍が、ドイツ人やロシア人、それに日本人と同じく女子供を戦場に出さねばならないということが、だ」
「きっと今はそういう時代なのですよ、少将閣下」
こうして一部、一両ではあるものの
たった1両の戦車を守るために4両の中戦車が用意され、更にはソ連の一般的な戦車中隊と同規模の10両のM2/M3軽戦車も同行させるという。
まさにこと物量戦に関しては天下一品の米国らしい万全の布陣だった。
だが、同時にこうとも言えるだろう。
彼らは結局、カチューシャという装甲少女をよく判っていなかったのだと……
皆様、御愛読ありがとうございました。
何やら色々とあからさまな伏線が混入しまくったエピソードはいかがだったでしょうか?(^^
誰とは言いませんが……米国籍のオッサン達の決定で、貧乏くじ引きそうな娘がいそうですね~(汗
そして、初めて言及されたこれまで出てこなかった他国の装甲少女隊の存在。
どうやら”この世界”は、やむにやまれずとはいえ日本が婦女子の戦力化に先鞭をつけてしまったせいで、形振り構わなくなった国家の行動前例として装甲少女が徐々に特異ではなくなってきてるようです。
さて、次回はいよいよ戦いの第2ラウンドが幕開けそうです。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
***
設定資料
トンプソンM1928短機関銃
全長:876mm
重量:5210g
使用弾薬:
装弾数:50連発/100連発ドラム・マガジン、20連発/30連発ボックス・マガジン
発射方式:セミ/フルオートマチック切替式
発射速度:600発/分
備考
1928年に米国陸軍ではなく米国海軍に制式採用された短機関銃。
実は米国陸軍は当初、トンプソン短機関銃の調達は消極的で騎兵科の偵察車両や戦車の乗員向けに限定調達していただけだった。
しかし、久方ぶりの実戦となった1938年の”張鼓峰事件(あるいはハサーン湖事件)”において機甲兵力の不足と同時に歩兵の火力不足を米陸軍は再認識し、限定調達から全面調達に切り替えられた。
ちなみに限定調達時代のものがM1928、全面調達時代のものがM1928A1と呼ばれるが基本的には同じモデルと考えていい。
特徴は、銃身下部に付くフォアグリップと銃口についた反動抑制器の一種であるカッツコンペサイター。
これに約5kgの短機関銃でも重い部類に入る本体重量やさほど早くない発射レートとあいまって、45ACPという強力な弾丸を使うわりには反動を小さく感じ、フルオートでも制御し易い。
軍に採用される前はシカゴ・マフィアに愛用され、これに発射音の特徴を組み合わせた”シカゴ・タイプライター”、あるいは”トミーガン”という俗称が知られている。
コリンズよりみほに贈られたのはM1928の方で、2種のドラム・マガジンと2種のボックス・マガジンが同梱されたフルキットだった。
みほ的には嵩張るが火力(持続射撃力)に優れる100連発ドラム・マガジンがお気に入りのようである。