装甲少女隊、北へ CODE1940   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ~。

今回のエピソードは……大きな戦いの前のインターバルのような話になっています。
戦いの顛末と次の戦いの準備……でも、西住みほは平常運転です(^^





第28話 ”戦いの顛末です……”

 

 

 

戦いから数日後……その日、西住みほは雲ひとつなく澄み渡る満州の青空を仰ぎ見ていた。

 

もう11月のモンゴル平原は冬に突入している。

おかげであの日降った雪はもう無いが、少々……いや、結構肌寒い。

 

そのせいかレジャーシートに寝転がる彼女の左手には猫田ニア(しろねこ)、右手には秋山優花里(ちゅうけん)が抱かれ、更には上には冷泉麻子(くろねこ)が丸くなっていた。

互いの温もりで温めあう……と言えば聞こえはいいが、みほ的にはきっと肉布団のつもりなのかもしれない。

主人にしっかりと抱きついてる犬1匹と猫2匹は、なんのつもりなのか首にはしっかりチョーカー……ではなく首輪を巻いていた。

しかも御丁寧に軍の制式認識票以外に、表には自分の名前、裏に主の名前が彫られたペット専用ネームプレート入りで。

たしかにこの時代は史実でも”犬の登録票(ドッグダグ)”型の認識票は使われていたようだが、ガチに犬猫用の首輪に付けてるのはこやつらくらいだろう。

 

 

どうやら三人は、自分達が”みほの愛玩動物(ペット)”であることを隠す気は無いらしい。

 

それというのも……

 

「ミ、ミホ中尉! こ、コーヒーをお持ちしました」

 

「ん……Thanks. アリサちゃん」

 

最近、妙にみほの周りをチョロチョロしてるこのヤンキー娘、アリサ・ホイットニーのせいだ。

最近、仕事が忙しいのかあるいは思うところがあるのか、ケイ・サンダースがあまり姿を見せないと思えばこの有様だ。

本妻(あるいは夫か?)気取りのケイとは違って、顔を真っ赤にしながら来るアリサは可愛げあると言えるが、「大洗女子戦車学校」時代からのみほのペットとしては譲れない一線があるのだろう。

 

みほは上半身を起き上がらせ、ステンレス製魔法瓶(サーモス)からホーローのマグカップに注がれるコーヒーで体を少し温める。

 

「あったかい……美味しいよ♪」

 

「ありがとうございます!」

 

小さくガッツポーズを取るアリサ。しかし、その時……

 

”VWvwooooooooooooooooooooooooooooM !!”

 

そして上空から聞こえてきた大排気量エンジン特有の轟音……

低空を飛び着陸態勢に入る”それら”の群れのが太陽を遮り、大きく影を落した。

 

「”空の要塞”に”隼”のコラボレーションか……」

 

 

 

それらが目指すのは、急遽大幅に拡張された在満米軍西部方面軍団、最大の拠点である米陸軍”海拉爾基地(ハイラル・ベース)”の飛行場だった。

みほは思う。

 

「戦いは、いよいよ最終局面に入ったってことかぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

 

米国名称【ノモンハン・オボー遭遇戦】と銘打たれたこの戦いは、奇妙な顛末を迎えた。

指揮を取っていたのは”名目上”、アリサ・ホイットニー少尉であったが……彼女はあくまで”少尉待遇”であり、軍法と厳密に照らし合わせるなら彼女に指揮権はなかったことになる。

軍法とはいえ法は法、ならばその弾力的な解釈はされて然るべきだった。

とはいえ、誰も処罰無しと言うのはさすがに締りが悪い。

 

だが、ここで軍団司令官であるスティルウェル少将にコリンズ大佐はこう囁いたのだ。

 

「そういえば閣下の目である潜伏していた偵察分隊の連絡途絶を握り潰した士官がいるようなんですよ? 彼がまともに報告入れていたら、【ホイットニー臨時装甲偵察中隊】を”あんな危険な場所”に行かせず済んだんじゃないですかね?」

 

それはあまりに甘い言葉だった。

そして、コリンズはこう付け加えた。

 

「もしかしたら”アカ”の妨害工作かもしれませんよ? その士官が”共産主義者(コミュニスト)”であるかどうかを念入りに確かめてみるべきなのでは?」

 

 

 

こうして関係各位の事情聴取が行われ、軍団査問委員会が開催された。

招聘されたのは言うまでも無く「実際に情報を握り潰した」、アンドリュース・フォーク少尉だった。

委員会で、

 

『職務怠慢による連絡義務の放棄により多くの善良なアメリカ人が死んだ』

 

と最初に厳しく叱責し、続いて彼の嫌疑を読み上げ、

 

『君には共産主義者との共謀の嫌疑もかけられている』

 

という言葉がかけられた。

実を言えばスティルウェルは、本気で顔も知らなかった士官であるフォークがソ連と繋がってるなど思っていなかった。

ただスケープゴートに都合よく、口では立場上厳しく言わざるえないが、内心では軍法会議には送らず比較的軽い懲罰で済まそうと思っていたに違いない。

温情というより交換条件のような感情だったろうが……

 

しかし、”それ”は唐突に起きた。

 

「ひぃぃぃぃーーーーーーーっ!!」

 

フォークは絶叫をあげると同時に目を押さえると床に転げ、のた打ち回ったのだ。

駆けつけた憲兵が暴れるフォークを押さえつけ、衛生兵が鎮静剤を打った。

 

ぐったりしたフォークを診断した軍医から、驚くべき病名が明かされたのだ。

 

『”転換性ヒステリー障害”と、それに起因する一時的な失明ですな。治療法はとりあえず彼には逆らわないことです』

 

 

 

***

 

 

 

査問委員会は当然、中止となった。

 

「恐ろしいものですな。キャンディーを欲しがって泣き叫ぶ幼児程度のメンタリティしか持たない男が、我が国の士官にいたなど。彼がそのまま出世し、まかり間違って将官になっていたとしたら……ぞっとしますな。合衆国(ステーツ)はどんな戦争も勝てなくなりそうだ」

 

いつものユーモア溢れる言い回しではなく、真剣に冷や汗交じりの顔で告げるコリンズに、

 

「コリンズ大佐、これは君だけでなく我々全てにとって重大な問題だよ。フォーク少尉は軍を、国防省を、合衆国政府を謀ったのだ。自分の病気をひた隠し士官学校に潜り込んだのだ。今までそれが発覚しなかったのは、本当に彼の能力かね? それとも運が良かったからかね?」

 

「閣下……」

 

「コリンズ大佐、彼の背後を洗いたまえ。いいかね? 彼が共産主義者と繋がってる証拠を『必ず見つけ』るんだ」

 

コリンズは静かに敬礼して足早に去った。

 

 

 

***

 

 

 

これが後の世に言う【フォーク・スキャンダル】の始まりだった。

彼が”鉄格子つきの特別な治療室”に入れられ、拘束服と自殺防止の猿轡をかまされたまま本国陸軍省の軍法会議場に送還される間、あらゆる情報が出回った。

 

【ノモンハン・オボー遭遇戦】は彼が情報を意図的に握り潰し、隠蔽したことにより早期警戒態勢が取れず、敵の罠にはまり敗北に終わったこと。

 

それが彼と接触していた者からの指示だったという証拠。その人物を憲兵隊が逮捕してみればソ連の”国際共産主義組織(コミンテルン)”の諜報員だったこと。

 

士官学校入学時の医療記録の改竄は、共産主義シンパだった医師が行ったこと。

 

彼の幼馴染や知人友人に北米コミンテルン支部、アメリカ共産党に関わりのある人間がいたこと。

 

またフォークの騒ぎとアメリカ陸軍の惨敗を聞きつけ、彼を擁護しつつアメリカの敗北を声高に叫ぶキャンペーンを張った新聞社が、実はソ連がアメリカ共産党を含む多くの”迂回路”を通して資金を流していたコミンテルンの出先宣伝機関だったこと……

 

 

 

全てが事実というわけではないだろうが……実際にフォークの周辺人物にコミンテルン要員や共産主義者やそのシンパがいたことは動かしがたい事実であり、事件はスティルウェルやコリンズすらも思いもよらなかった巨大スパイ網摘発事件に発展。

多くの逮捕者を出し、米国初となる大規模【アカ狩り(レッドパージ)】の事例として人々の記憶に残ることになる。

 

また、同時期に英国の【ケンブリッジ大学閥共産主義五人組(ケンブリッジ・ファイブ)】の摘発や、日本でもゾルゲ/尾崎事件が起きたばかりであり、日英米は共産主義が足元から自分達の国家を、民族を、生存域を侵食し脅かしつつあることを嫌が上でも思い知ることになり恐怖に慄いた。

 

日英米は三国共同で国内外を問わない防諜/防共関係を強化することを合意し、本格的な戦争となる前に各国で共産党やそれに類似する政党は”事実上の非合法化”されると同時に、大規模な赤色諜報員/工作員ネットワークの摘発と殲滅に熱を上げることになるのだった……

 

それは血腥く後ろ暗い”暗闘”と呼んで差し支えないものであったが、これもまた戦争の一つの形と言えよう。

そして、これは”半世紀以上続く長い長い暗闘の最初の一幕”だと後年に語る歴史家もいる出来事だった。

 

 

 

***

 

 

 

結局、フォークは軍法会議での証言も非常にまずいものであった。

裁判官を務める軍高官の心象も最悪の自己弁護と他者攻撃の嵐であり、特に在満米軍西部方面軍団司令官であるスティルウェルやその幕僚や上層部を激しく罵り、自分は嵌られたのだと支離滅裂気味に主張した。

 

どうやらフォークの頭の中には「任命責任」という言葉が欠落していたらしい。

例えば、その軍法会議……軍事法廷の判事役にはスティルウェルを軍団司令官に推薦した人間もいた。

また比較的関係が良好な同期もいた。

何より一介のひよっこ士官が、軍法廷で公然と上層部批判などあってはならないのだ。

 

フォークの発言は彼らの心象を更に最悪なものに変え、結果として即日付けで軍刑務所で禁固刑を喰らい釈放と同時に不名誉除隊処分が確定した。

 

かみそりのようなもので裂かれた傷が残る緩み大きく開いた肛門のフォークが、首を吊った姿で発見されたのはそれから半年後のことである。

フォークの交友関係から飛び火して共産主義者達の暗躍が一部とはいえ白日の下に晒されたアメリカ合衆国は、もはや飛び火して延焼した火事の方で大混乱の最中にあり、火元の獄死はひっそりと記事になっただけである。

 

その顛末を満州から配置転換で帰国した、フォークと同期だったとある士官はこう語ったという。

 

『あんにゃろー頭はいいけど性格は最悪だったからな。あれと友達になろうなんて奴は、きっとロクでもない思惑があるに違いないとは思っちゃいたが……その通りになっちまったなあ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***********************************

 

 

 

 

 

アンドリュース・フォークという放置すれば「米軍のガン細胞」になりかねなかった人物をスケープゴートにする……結果から見れば合理的な判断により、「数に勝っていた米軍の敗北は、薄汚い内通者フォークの情報隠蔽があったから」という結論で【ノモンハン・オボー遭遇戦】の最終報告書はまとめられた。

無論、それは建前の話、舞台裏では次の戦い……おそらくは最大規模の戦いになるだろうそれに向けて、西部方面軍団では熱心に将官の討議が進められていた。

 

 

付け加える話があるとすれば、結果的にだがスティルウェル少将に恩を売った形となったコリンズ大佐は、幕僚としてまんまとダスティン・アッテンボロー少尉を引き抜くことに成功していたことぐらいか?

 

 

 

ともかく、迫り来る大規模戦の対策会議の一環として非公式に開かれた公聴会では、なんと我らが西住みほ大日本帝国陸軍中尉殿も招かれていたのだ。

もちろん、【ノモンハン・オボー遭遇戦】の参考人召致的なものではなく「実際にロシア人の戦車と砲火をまじわした装甲将校」としての意見を聞くためにだ。

 

「おそらくですが……トハチェフスカヤ大尉の部隊がノモンハン・オボー近辺にいたのは偶然でしょう。彼女の判明してる性格や戦歴、戦術からして最初から待ち伏せ(アンブッシュ)するつもりなら、あそこまで小勢で来るのは考えにくいです。米陸軍情報部から渡された資料によれば彼女が現在率いる戦力は、我々の基準でいえば1個戦車大隊以上とのことですから」

 

「しかしニシズミ中尉、彼女は”偵察隊狩り(スカウトハント)”の首謀者なのだろう? ならば今回の行動はその延長線上にあったのではないのかね?」

 

そう訊ねてきたのは、スティルウェルの幕僚の一人だった。

 

「であるなら尚更です。これまでのトハチェフスカヤ大尉の戦術行動は、履帯跡から考えて1作戦で最低10両……ソ連式1個戦車中隊の編成で作戦を遂行してました。スカウトハントが目的なら、6両といういかにも中途半端な数で行う積極的理由がありません」

 

「では中尉、何ゆえにトハチェフスカヤ大尉のような新進気鋭の赤い新貴族(ノーメンクラトゥーラ)の大物が、少数の部下を引き連れあのような場所にいたと思うのかね?」

 

「ここから先は多分に確証の乏しい推測が入ってしまいますが……よろしいでしょうか?」

 

無言で頷いたのはスティルウェル本人だった。

 

「では……結論から先に申し上げれば”調査”あるいは”視察”目的だったと思われます」

 

「調査?」

 

今度はみほが頷き、

 

「ええ。こういう言い方は申し訳ないのですが……”先の戦闘”の結果、ソ連の装甲部隊がほぼ同数の敵国装甲部隊に後れを取った……それもこれほど一方的なワンサイド・ゲームは初めての経験でしょう。だから興味を持ち、自分の目で戦闘の現場を確かめに来たのだと思われます」

 

”先の戦闘”とは鶴姫がソ連の装甲偵察隊を全滅させた戦いだった。

米軍が参加した戦いではないのであえて公式名称を言わず、また言い方を「ほぼ同数の日米戦車に」としなかったのは、みほなりの気の使いだった。

現実を辛辣な言葉で表し、日米同盟に不和の火種を巻くのは害悪とみほは考えていた。

 

「そういう物なのかね?」

 

「おそらく。わたしなりのプロファイリングですが……初陣の”スペイン内乱”、主戦域にいたわけではないですが”西ポーランド侵攻”、そして”冬戦争”と、ソ連のプロパガンダという側面もありますが、とかく大胆不敵で派手な活躍が目立つトハチェフスカヤ大尉ですが、それはあくまで繊細で緻密な”戦闘前の下準備”の裏打ちがあればこそだとわたしは推察します。そして、その戦闘前になすべきことに手を抜くタイプではないということも」

 

「なるほど。そうなると、偶然居合わせたトハチェフスカヤ大尉の部隊が何らかの方法で潜伏していた斥候分隊に気づき、通信する間もなくそれを壊滅させ、また同じく【ホイットニー装甲偵察中隊】の接近を察知し残骸をカモフラージュにして待ち伏せをしかけたということかね?」

 

「信じられませんが、わたしの結論はまさにおっしゃる通りです。ただ、いかなる手段で斥候部隊の存在や偵察中隊の接近を察知したのかまでは、残念ながら具体的な手段を絞りこめませんでしたが……」

 

 

 

みほの言葉に場が騒然となった。

彼女がいい加減で荒唐無稽なことを言ってるからではない。

論理的に考えて、みほの結論が納得いくからであった。

 

「ニシズミ中尉……」

 

手をかざしてざわつきを鎮めたスティルウェルが重々しく口を開いた。

 

「我々の戦車で勝てるかね? 忌憚の無い意見を言ってくれたまえ」

 

みほは一瞬、考えてから……

 

「それでは遠慮なく……”単純な戦車戦”では、正直勝ち目が薄いです。敵の主力であるT-34は、砲力ではM3中戦車と大きな違いは無いはずです。しかし、旋回砲塔や傾斜装甲の導入、更に高い機動性……『戦車としての素養』はT-34が勝ります。九八式重戦車は、火力や防御力で勝ってる可能性はありますが、足が致命的に遅い。KV-1は運動性は低いですが速度自体は低くなく、防御力はデータどおりなら脅威でしょう」

 

みほの率直な言葉に呻くような声が上がる。

 

「しかも今回新たに確認された長砲身/大型砲塔搭載の新型T-34やKV-1の新型の戦闘力は未知数な部分が多いです。下手をすればM4や試製一式でどの程度太刀打ちできるか……少なくとも火力において互角と考えたほうがいいでしょう」

 

その否定的(ネガティブ)な見解に、誰しもが言うべき言葉を捜し長考に入る中……

 

「ニシズミ中尉、君は今『”単純な戦車戦”ならば勝てない』と言ったのかね?」

 

「Yes Sir」

 

真っ先にみほの真意に気が付いたのはさすがは司令官というべきか?

スティルウェルだった。

 

「わたしはまともに戦って勝てない相手なら、”まともではない戦い方”も選択肢に入るのではと愚考いたします」

 

「続けたまえ」

 

 

 

***

 

 

 

(いいぞ、ニシズミ中尉。その調子だ……)

 

公聴会にオブザーバーとして出席が許されたコリンズは内心でほくそ笑む。

 

(その調子でお偉いさん方に、君が『有能で、合衆国(ステーツ)にとって有益な人材』であることを印象付けてくれ)

 

コリンズはそう願う。

彼のささやかな計画(プラン)を遂行するには、その方が都合がよかったのだから……

 

 

 

「すでにコリンズ大佐より立案計画は出てると思いますが……わたしが示したいのは”米陸軍戦略爆撃機隊による後方基地への爆撃”を補完するための作戦と定義くださればと思います」

 

そして、在満米軍の高級将校や将軍達は、この年端もいかぬ少女が示す計画に驚嘆することになる。

 

後に戦史研究者は語る。

 

『この時のプランニングこそが、米陸軍という巨大組織が西住みほという小さな少女を強く認識する最初の瞬間だった』

 

と……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、御愛読ありがとうございました。
ある意味、戦闘よりえげつない部分が含まれたエピソードでしたが、いかがだったでしょうか?

ある読者様からのご感想でその部分が指摘されて手ドキドキしていたのですが、詰め腹はフォークに切ってもらいました。
というかフォークを出したのは、最初からその予定だったからだったりして(^^

みほは冒頭でペットと睦んでいましたが、B-17と隼の満州到来の原因の一つは、実はみほが原因の一つなのがラストで明かされました。

一体、彼女はどんな戦争を行おうというのか……?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



一式戦闘機”隼”

製造元:中島飛行機
エンジン:栄21型(1速2段軸駆動式過給器(スーパーチャージャー)付き空冷複列星型14気筒OHV、1150馬力)+推力式単排気管
最高速:548km/h(高度6000m)
降下制限速度:700km
航続距離:3000km(落下式増槽装着時、最大)
上昇力:5,000mまで4分48秒、8,000mまで11分9秒
固定武装:一式十二・七粍固定航空機関銃×4(12.7mm。機首×2+主翼×2、各250発)
プロペラ:定速式3翅(米ハミルトン社製の正規ライセンス生産品)
特殊装備:自動防漏(セルフシーリング)構造防火タンク(13mm厚積層ゴム。50口径級機銃弾対応)、防弾板(50口径級機銃弾対応)、防振処理空中無線機、蝶型フラップ(空戦フラップ)
オプション:空海軍共用落下式増槽、30kg~250kg爆弾1~2発

備考
史実で言う隼Ⅱ型とⅢ型の特徴を併せ持つ”この世界”ならではの隼。史実とはことなり大日本帝国空軍の大戦初期における主力戦闘機として活躍予定。
先ず目に付くのはオリジナルより倍加した武装だろう。そして次は最高速はⅡ型後期モデルと変わらないが、100km/h以上上昇した降下制限速度だろうか?

第27話のあとがき、”一式十二・七粍固定航空機関銃”の設定資料で詳しく触れたが、”この世界”の日本戦闘機、特に『特地』への配備を前提にしなければならない空軍機は、考えようによっては敵戦闘機より遥かに手強い翼竜(ワイバーン)との戦闘を考慮せねばならず、そのため優れた運動性はもちろんのこと「短時間での火力集中」と「一撃離脱を繰り返せる優れた加速/上昇&下降性能」が要求されているのだ。

そのため史実より武装と機体構造が強化され、重量も幾分増してるはずなのだが、史実のⅡ型と同等の空中性能を誇るのは、まずスパークプラグなどの電装系やキャブレターやロケット式排気管などの給排気系のリファイン、史実より高オクタンな航空燃料や高品質な潤滑油、そして”この世界”のゼロ戦と共通の定速式3翅プロペラの採用による史実より高い推進効率など様々な要素によるものだろう。

その長い航続距離や優れた空中戦能力から、日本空軍初の”制空戦闘機”と呼べる機体であり、ゼロ戦と並び以後の日本のレシプロ戦闘機のベンチマークとなった名機である。

1940年の東京オリンピックの開会式で”一〇〇式トリオ(一〇〇式重爆、一〇〇式新司偵、一〇〇式重局戦)”やゼロ戦と共にスモークを引きながら会場上空をフライパスし、華々しいデビューを飾ったが、実は40年11月の時点では先行量産型が”加藤武雄(かとう・たけお)”空軍少佐を戦隊長とする【飛行第64戦隊】においてまだ試験運用を行ってる段階だったようだ。



蛇足ながら、この”隼”より空軍は公式に戦闘機にペットネームをつけるようになり、また戦闘機の系番に年号を使わなくなった。
例えば九七式重局地戦闘機やその後継である一〇〇式トリオの一角、一〇〇式重局地戦闘機は皇紀2597年の下二桁を取ったものだし、一〇〇式は皇紀2600年を記念し「海軍機は(0)、空軍機は一〇〇をつける」と取り決めがあったからだ。

だが、一式戦闘機の一は皇紀2601年の下一桁をとったわけではなく、一〇〇式を最後にキリがいいので系番をリセットし「一から仕切りなおす」という決定が為されたのである。
判り易いのが英文資料で、一〇〇式重局地戦闘機は『TYPE-100 Heavy Interceptor』と記されているのに対し、一式戦闘機”隼”は『Fighter-1”Falcon”』と記されていることが多い。
ちなみに史実では連合軍は隼に”Oscar(オスカー)”というコードネームをふっていたが、”この世界”においては日米英共通の暗号識別符丁として使われている。

「ジョージ、”オスカー”が二人、ボギーを出迎えに行ったぜ。誘導を頼む」

「了解。”オスカー”が二人もいれば客人(ボギー)をもてなすには十分だな」







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