装甲少女隊、北へ CODE1940   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ~。
本日は深夜アップのボストークです(^^

さて、今回のエピソードは……サブタイから考えるに、みほの身に大変なことが起こるようですよ?
どうやら平常運転ではいられないほどに……




第29話 ”野戦任官です♪……って、えええっ~~~っ!?”

 

 

 

「驚いたものだな……まさかあのような幼い少女が、ここまで緻密な戦術/戦略計画を立てるとは」

 

「お言葉ですが閣下……ニシズミ中尉は既に××(ピー)歳で、日本では既に成人(Adult)扱いです」

 

ちなみに米国では日本のように全国一律の成人(元服)という風習はなく、選挙権/飲酒/喫煙などは連邦法ではなく州法で規定されるので、州ごとによって各種の年齢制限が違う。

 

「なんとっ!?」

 

コリンズの言葉に、目をむいて驚くスティルウェル。

 

「閣下も経験があるかと思いますが、とかく我々の眼には東洋人は若く見えますからな。ニシズミ中尉は見方によってはローティーンにも見えましょう」

 

もっとも、それは平行世界(げんさく)とほとんど容姿の変わらないみほ達にも原因はありそうだが。

 

蛇足ながら史実でも戦前の徴兵は満20歳からであるが、志願は満17歳から可能であった。

この年齢区分を上手く利用しているのが『婦女子軍志願制度』であり、例えば少女装甲兵には一般的な「女子戦車学校」は受験資格は義務教育を終えていることが条件で、卒業時は普通、満18歳だ。

しかし、17歳と言えば軍人とはなんぞやが叩き込まれる基礎課程を終えていよいよ専門課程に本腰が入り始める頃。

1年間の余裕を持たせているのは、専門課程のカリキュラムについていけずに中途退学(ドロップアウト)した者でも軍に志願できる選択肢を残す、あるいは事例は少ないが飛び級に対応、もしくは誰も口にはしないが止むを得ない事情(主に戦況の悪化)により卒業を前倒しせねばならない場合の時間的余力だろう。

 

 

戦前は今日のような”成人の日”というイベントはなく、その代わり……と言うと語弊があるが、徴兵に耐えうる肉体化を審査する”徴兵審査”制度が存在していた。

そして、この徴兵審査を終えた者を、成人男子とみなすという風潮があったのだ。

 

だが、何度か述べたように”この世界”では史実に比べ極端に国家の近代化/産業の大規模重工業化があったために、兵役よりも労働力の確保が急務とされ1920年代中期以降は安易な徴兵は、国体維持と国力増強の関係で難しくなっている。

 

日進月歩で生産規模を拡張する産業界にとって、戦争も無いのに100万人もの優良な労働力(成人男子)を兵役に着かせるなど言語道断、ましてや現役労働力を軍に徴集されて現場から引き抜かれるなど悪夢もいいところであり、「潤沢な軍備は十分な予算が必須」という動かしがたい現実から、政府や軍部も少なくとも平時であれば強くは出れないのだ。

 

故にいざ戦争が始まるまで……少なくとも国際情勢から戦争が不可避と判断されるまで徴兵は大規模に行われることはなく、より正確には徴兵免除者が大半であり「徴兵検査合格=即軍に徴集」という図式は”この世界”の日本では成立しない。

産業界からの労働力引き抜きの反発もあり、基本的に職についてる者は平時においては免除されることがほとんどであり、その場合は最長徴兵服役期間(三年間)に相当する期間に『徴兵免除税』が発生する。

『徴兵免除税』は収入に応じた5~15%の累進課税で、「兵役につく代わりにお金でお国に貢献する」というお題目である以上、脱税した場合は国民感情の関係から他の脱税とは区別して考えられ、「軍法による規定」でより重い罰則が与えられる。

具体的には一切の免責や徴兵期間の短縮や退役や出世や昇給の無い「懲罰的徴兵」に処される。

期間こそ最長徴兵期間と同じ三年間だが、軍隊の最底辺の地位で最低限の給料しか出ずに過ごすのだからかなりきつい。

耐えられずに脱走したら、軍法で裁かれ下手をすれば銃殺(懲罰的徴兵は情状酌量の余地を考慮されないのが一般的)だし、懲罰的徴兵の服役者というのは生涯ついて回る評価だ。

 

こんな重いペナルティーがある以上、「(通常徴兵服役期間の)二年を軍で過ごすぐらいなら、三年間高い税金払ったほうがマシ」という意見が大勢を占めるのも頷ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************************

 

 

 

 

 

 

さて、後に【ニシズミ・タクティカル・プラン】と俗称されるこの計画の詳細は、実行を以て明らかになるとして……

 

「ミホ・ニシズミ大日本(I)帝国(J)陸軍(A)中尉」

 

「はい」

 

在日米軍に日本空軍への”ライセンス生産権の売り込み(ライセンス・セールス)”の為に期間限定配備されていたB-17戦略爆撃機”フライング・フォートレス”と【飛行第64戦隊】で先行量産型の試験運用が行われている”隼”がハイラル・ベースに飛来した翌日、みほは改めて【日米混成”慰問”部隊】の執務室にてコリンズ大佐と机を挟んで対峙していた。

 

「貴官は現時刻より満州コモンウェルスにおける全作戦を終了し、帰国の途に着くまでの間……戦時任官の特例により、大日本帝国陸軍中尉の階級と並列し【合衆国陸軍(U.S.ARMY)”少佐”】への任官を命じる」

 

「ちょっ!?」

 

コリンズ大佐から出たのは衝撃の言葉!

 

「これは日米同盟基本条項に基づく、『緊急時における必要に応じた臨時的昇進/任官の措置』であり、貴官の現階級を永続的に保障するものではない。また、この事案は既に大日本帝国国防総省ならびアメリカ合衆国国防総省が承諾/合意に至った案件であり、また在満米軍西部方面軍団司令官であるスティルウェル少将も了承済みである。ゆえに異論は認められない」

 

「なっ!? ちょっとお待ちくださいっ!!」

 

「異論は認めないと言った筈だが?」

 

コリンズの口調は咎めるようなそれではなく、どちらかと言えば面白そう……いや、愉快そうだ。

まあ、彼に言わせれば限定的にでも”ささやかな計画”の一端は成ったのだから無理はないが。

 

「ではせめて質問させてください……」

 

「よろしい」

 

「一体……何がどうなったらわたしが米国陸軍の少佐になるんですかっ!?」

 

「なに、簡単なことさ」

 

コリンズはにやりと笑い、

 

「スティルウェル閣下は、ニシズミ中尉……失礼。ニシズミ”少佐”に前線装甲指揮官の役割を担って欲しい……我らが【日米混成”慰問”部隊】が保有する大隊規模の独立戦車対の指揮を執り、モンゴル平原を駆け抜けることを御所望でね」

 

「へっ……?」

 

いきなり自分に関わるダイレクトな部分にスティルウェルの名が出たことに、思わず目を白黒させるみほ。

口を出さず同席していた亜美は、

 

(こんな狼狽したみほちゃんは初めて見たかも……)

 

と砲撃は的を外さないのに、思考的には少し的のずれた感心の仕方をしていた。

ただ、この上層部の決定は色々思うことは合っても、その合理性や妥当さは亜美も納得している。

 

 

 

「しかし、合衆国陸軍的に中尉が戦車大隊の指揮を取るのはいかにも座りが悪い。また、今回の戦いはあくまで『合衆国が主役』だ。しかし、ニシズミ少佐、君は言ったな? 『我々の戦車では正面からまともに戦うには分が悪い』と」

 

「確かに言いましたが……」

 

「本来なら、試製一式中戦車試験中隊やサンダース戦車中隊から新型戦車だけを借り受け、米陸軍(我々)自身で動かすべきなのだろうが……」

 

コリンズは一度言葉を切ると、じっとみほの目を見て、

 

「生憎と新型戦車を君たち以上に操れるものは満州には存在しなく、また君達から操縦を習うにしても慣熟にいたる時間が無いのが実情だ。以前にニシズミ少佐が指摘したとおり、我々もまた赤色勢力の近日の動向を見る限り”決戦”は間近いと結論している」

 

「それは……ええ。残念ながら大規模軍事衝突は既に不可避だと思います。ハルハ河周辺に戦力が集まりすぎました。戦闘は化学の不可逆反応のようなものです。特定のエリアに一定以上の武器や兵力が一度集まれば、それを使わないという選択肢は中々難しいですから……」

 

「中々含蓄深い言葉だね? ともかく我々は来るべき決戦に備えて、最善の手を打ちたいと思ったのだよ。ついでに言うなら、君を少佐に推薦したのは私ではなくスティルウェル少将自身だよ」

 

「えっ!?」

 

「我々が軍団の指揮系統にダイレクトには入らない、”独立旅団”扱いなのは相変わらずだ。となれば求められる役割は……少佐、なんだと思う?」

 

「……”戦場の火消し役”です」

 

コリンズは満足そうに頷き、

 

「その通りだ。君がまさに『イタリカ防衛線』で魅せた働きと同種だよ。それも踏まえて『味方が危機に陥ったときに真っ先に駆けつける働き者の”白馬の騎士(ホワイトナイト)”』役には君が適任だと閣下は判断したのさ」

 

「”それも”と言う事は、他にも判断材料があったということですね?」

 

「公聴会での少佐は、眩いばかりに輝いていたよ?」

 

悪戯っぽく笑うコリンズに、

 

「オブザーバーなんて引き受けるんじゃなかったと、今すごく後悔していますよ。ええ、そりゃあもう」

 

「ヲイヲイ。謙譲と謙遜は確かに日本人にとって美徳かもしれないが、アメリカ人にとって使うべきときにその才覚や能力を使わないのは罪悪だぞ?」

 

みほは深々と溜息を突き、

 

「コリンズ大佐……やはり貴方には口では勝てそうもありません。わたしもケイのことはいえませんね?」

 

コリンズは勝利の笑みを浮かべて、

 

「その言葉を以て了解と受け取るよ。いいじゃないか? 自分が出した作戦案を自らその一翼として実践できるなんて幸運、滅多にないぞ? 世の用兵家が聞いたら泣いて悔しがりそうだ」

 

「……大佐、それってわたし的には結構あります」

 

それというのも今は亡き(いや、死んでないが)角谷杏という名隊長がいればこそなのだが……

 

(杏さん、どうやらわたしは杏さんの苦労を実戦で味わえそうだよ……)

 

なぜか脳裏に浮かんだ杏はサムズアップしてたりするのだが。

その笑顔は、どこかコリンズに似ていた。

 

 

 

***

 

 

 

「これが簡易ではあるが、ニシズミ少佐の”米軍(我々)の階級章”だ。冬季戦車兵戦闘服(タンカース・ジャケット)にでも張っておくといい」

 

と渡されたのは、ワッペンタイプとバッヂタイプの階級章だ。

 

実は、米国では情況が情況なら”野戦任官”で臨時により上級の階級や役職が与えられることはそれほど珍しくはない。

合衆国軍という組織は階級と役職がかなり一致しており、逆に言えばその階級のもつ権限が無ければ与えられない役職や役職に必要な階級がかなり綿密に規定されていた。

 

しかし、戦死やその他の理由でとある役職が空席となり、その役職に相応しい階級のものが部隊にいない、もしくはすぐに要員補充できない場合どうするのか?

平時にはあまりないが戦時にはありがちなこのシチュエーションに対する対応策も決まっており、答えは「本来は行うべき役職に足りてない階級のものを野戦任官で臨時にその役職に相応しい階級に一時的に引き上げる」だ。

 

よく似たような”戦地昇進”と混同されるが、実際はまったくの別物で戦地昇進は任官式が戦地での昇進ゆえに略式になるだけで正規の昇進だ。

例えば、戦地昇進での少尉→中尉への昇進は確定で、永続的なものである。

 

”野戦任官”の場合は、「本来は少尉の物に、付けたい役職が中尉以上とされているために臨時に中尉の階級を与える」という一時的処置で、厳密に言えば昇進ではない。

ニュアンスとしては「その役職に”任官”するために形的に昇進する」という具合で、故に昇進という言葉は使われないのだ。

 

有名どころでは、例えば”この世界”でも同じ姓の者が米国陸軍参謀総長をやってる”ジョージ・キャトレット・マーシャル”元帥がそうだ。

史実のマーシャル元帥は、第一次世界大戦時は少佐だったが、欧州戦線で作戦参謀等を務める為に野戦任官で大佐となるが、終戦後には元の階級である少佐に戻っている。

これは昇進の反対語である”降格”処分ではなく、「終戦により野戦任官が解除され、本来の階級に戻った」という解釈になる。

これはマーシャルだけでなく、他にも有名どころの軍人では米陸軍ならパットンがそうだし米海軍ならハルゼーがそれに該当する。

 

もっともみほのように国籍を超えての野戦任官は、さすがに珍しいが。

 

「大佐、まさとは思いますが……最初からそのつもりでタンカース・ジャケットをくれたわけじゃないですよね?」

 

「それこそまさか、さ。神でなき我が身ならばこそ、見通せる未来などありはしない」

 

しかし、口の端を歪め……

 

「ただ、こうなればいいとは思っていたがね」

 

「……本気で食えない人ですね~」

 

「誉め言葉として受け取っておこう」

 

「御随意に」

 

 

 

”ぱちぱちぱち”

 

みほが階級章を受け取ると、途端に場違いに呑気な拍手がおきた。

……亜美だった。

 

(なんでだろう? なんでこんなに裏切られたような残念感があるんだろ?)

 

「みほちゃん、いいえ”西住少佐”。昇進おめでとう♪ 国は違うけど、ついに階級は並ばれちゃったわね?」

 

「亜美さん……お願いですから、いきなり米軍に売り飛ばさないでください」

 

と思わずジト目になるみほである。

 

「まあいいじゃない♪ とりあえず帰国までの期間限定なんだし、米軍士官になるなんて確かに得がたい経験よ?」

 

「個人的には、できれば一生経験したくはなかったんですけどね」

 

たはは……いつもどおりの困ったような笑いを浮かべるみほ。

どうやら、平常運転に戻ってきたようだ。

 

 

 

「ところでニシズミ少佐」

 

言葉を挟んできたのはコリンズで、

 

「なんでしょう?」

 

「君もめでたく佐官に昇進したわけだし、これからはチョーノ少佐同様に私の副官待遇で軍団の幕僚会議にも出席するように」

 

「た、大佐っ!? 正気なんですかっ!?」

 

「いや~。日本軍との連絡将校であるチョーノ少佐を出席させて、”米国正規士官”である君を出席させないわけにはいくまい?」

 

「だ、騙された……」

 

してやったりとドヤ顔のコリンズは、どこまでも楽しそうだったという。

 

 

 

こうして大日本帝国陸軍中尉にして、同時に”アメリカ合衆国陸軍少佐”でもあるミホ・ニシズミ独立装甲大隊長は生まれた。

それが、これからの戦いにいかなる結果を齎すのか……それは誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

さて、みほがコリンズの執務室兼旅団司令部を出て、妙にトボトボした足取り……

具体的にはTVシリーズ1~2話の姿を髣髴させる姿で、コリンズの”用事”が終わった後に来るよう言われていたミーティングルームのドアを開けると、

 

”ぱ~ん! ぱぱぱ~ん!!”

 

いきなり響いたのはクラッカーの多重奏。

 

「ほえっ? 今日はクリスマス? 誰かの誕生日? サンクス・ギビング・デイ?」

 

しかし、それはどれも違ってて……

 

「「「「「「「”少佐”! ご昇進おめでとうございまーーーーすっ!!」」」」」」」

 

その瞬間、みほは腰から力が抜けてぺたんと座り込みそうになったという。

 

 

 

***

 

 

 

どうやら彼女が米陸軍少佐への昇進あるいは就任は既に知らされていたらしく、それを聞いた有志一同は大慌てて昇進パーティーの準備をしたらしい。

いくら巨大とはいえ前線基地でよくこれだけの食材を集められたものだが……

 

(”あの確信犯(コリンズ大佐)”の暗躍があるのは間違いないだろうなぁー)

 

というか他に根回ししそうな人物を思いつけない。

 

「西住隊長、このまま米軍に行きませんよねっ!? 行っちゃいませんよねっ!?」

 

と縋りつくのはもちろん秋山優花里(ワン娘)で、

 

「隊長が移籍するのなら付いて行くまで。米国市民権(シチズンシップ)を獲得して再入隊するにはどの方法が早道だ? 米軍との人材トレードを進言してみるか……」

 

と名字とおりに冷静に(いや、あまり冷静じゃないかもしれないが)長考に入る冷泉麻子(ニャン娘)

 

「ふふふ。アメリカにだって戦車研究者の空き席はあるはず。ボク、英語もバッチリだし」

 

と肌の白さに反して腹黒い笑みを浮かべる猫田ニア(しろねこ)

加えて、「みほお嬢様が行くというのならどこまでもお供します」と新たに決意を固める”西住みほ専属メイド(自称)”の赤星小梅に、やけに嬉しそうなアリサ・ホイットニーとバラエティ豊かなリアクションを見せる中、

 

「ミホ、ついにワタシの上官になったね?」

 

「ケイ……」

 

「ミホ・ニシズミ少佐殿!」

 

ケイはビシッと敬礼し、だが確かに笑顔で……

 

「ケイ・ユリシーズ・サンダース大尉以下”サンダース戦車中隊(サンダース・タンクトルーパーズ)”は以後、少佐殿の指揮下に入り、その任を全力で果たしたい所存ですっ!!」

 

”ババッ!”

 

ケイに倣い、その場にいたサンダース中隊の全員がみほに敬礼を捧げた。

みほは静かに返礼し、

 

「ありがとう。皆が生き残れるようにわたしも精一杯努力するよ」

 

そして歓声が上がった!!

 

 

 

***

 

 

 

パーティーがお開きになった後、みほからケイを誘い基地の巡回にかこつけた夜の散歩と洒落込むことにしたようだが……

 

「ケイ、本当にこれでよかったの?」

 

「ん? 何が?」

 

「本来、中尉であるわたしがケイの直接の上官になることが……だよ」

 

「ああ、そのこと」

 

ケイは気にした様子もなく答えた。

 

「ワタシはむしろミホが指揮権を握るのは順当……ううん。当然だと思ってるよ?」

 

「えっ?」

 

彼女はウェーブがかった綺麗な金髪を手で梳きながら、

 

「今までの演習でも思ってたけど、この間の”実戦”でミホを見てて改めて思い知ったんだ……『ああ、ワタシはまだまだ名実共に隊長を名乗るのは経験不足だな』ってネ♪」

 

「ケイ……」

 

「だから今回の戦争、ワタシは部下って立場で特等席からミホの指揮っぷりを見れるチャンスなのよ。そのチャンスをくれた神様に心から感謝してる。それに……」

 

ケイはクスッと微笑み、

 

「ミホならワタシ以上にサンダース中隊を上手く扱えて、なおかつ部下を生き残らせてくれるでしょ?」

 

 

 

(恨みますよ、大佐……ケイ達と日本で合同訓練させたのって、本当に最初からこうするつもりだったからじゃないですよね?)

 

みほは天を仰いだ後、

 

「やれやれだよ。望んでないのに責任ばかりが増えてくのは困ったものだよ」

 

「うふふ。ミホがそれだけのSkill&Abilityを持ってるって証拠よ♪」

 

「ここまでケイに言わせたらしょうがないか……」

 

みほはただ優しく微笑み、

 

「ケイ・サンダース大尉」

 

「はっ!」

 

真剣な動きと微笑む瞳でケイは敬礼し、

 

「上官として命じます……目を、つぶりなさい」

 

「Yes Mam」

 

”Chu”

 

重なる二人の影……

そんな姿をモンゴル平原に昇る蒼い月だけが見ていた。

 

 

 

……

………

…………とまあここで終われば珍しく綺麗なエピソードエンドの筈だが、無論世の中そうそう上手くは行かないものだ。

 

「「「むむむ……」」」

 

匍匐前進してケイの察知圏内ギリギリから様子を伺い、介入タイミングを推し量るような犬+猫×2。

何やらその動きは獲物を狙う肉食獣を思わせる。

鶴姫の”愛馬(松風)”もそうだが、段々人間の行動から逸脱し、ガチに動物に近づいてるんじゃないだろうか?

 

「みほお嬢様……立派に成長なさって」

 

何故か目頭にたまった感涙を拭う小梅。

ここは有志諸君に是非とも「お前が育てたんじゃねぇだろっ!」とツッコんで欲しいところだ。

 

「隊長……いいなあ……」

 

妙に子供っぽい仕草で指を舐めるアリサ。

彼女もどうやら順調に毒されてるようである。

 

 

 

とにもかくにもこんな平原に浮かぶ月が綺麗な夜、戦いの前にこんな空気も悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、御愛読ありがとうございました。
みほがいきなり米軍の少佐になってしまったエピソードはいかがだったでしょうか?
皆様の予想の斜め上を行っていたら幸いです(笑)

曲者コリンズ大佐と西住”少佐”の相性がよすぎて怖い(^^
なんだか長い付き合いになりそうですね~(えっ?
というか亜美さんも、知らず知らずの間にコリンズ大佐に大分染まってきたような……?

ラストは久々にみほケイのいいシーンで終わろうとしたら、そうは問屋が卸さなかった(笑)

さて次回はみほも少佐になったことだし、着々と戦闘準備が行われる予定です。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



設定資料



一〇〇式重局地戦闘機(フェンファイア)

製造元:川崎重工
エンジン:川崎マーリン45型(1速2段軸駆動式過給器(スーパーチャージャー)付き液冷V型12気筒SOHC、公称:1450馬力)+推力式単排気管
最高速:605km/h(高度6000m、戦闘重量)
航続距離:1850km(落下式増槽装着時、最大)
実用上昇限度: 11300 m

固定武装
[一〇〇式]:一式十二・七粍固定航空機関銃×6(12.7mm。機首×2+主翼×4、各250発。J-ウイング)
[フェンファイア]:武2式航空機関銃×6(12.7mm。機首×2+主翼×4、各250発。M2ブローニングの航空機搭載型AN/M2のライセンス品。B-ウイング)

プロペラ:定速式3翅(米ハミルトン社製の正規ライセンス生産品)
特殊装備:自動防漏(セルフシーリング)構造防火タンク(30口径級機銃弾対応)、防弾板(30口径級機銃弾対応)、防振処理空中無線機
オプション:空海軍共用落下式増槽、30kg~250kg爆弾1~2発

備考
”九七式重駆逐戦闘機”の正統なる後継機。
ただし、開発元はゼロ戦等の製造に忙しい三菱に代わり、製造力に余力があった川崎重工がメインコントラクターを請け負った。

元々川崎重工は、日本における複葉機時代最後の主力戦闘機である”九五式戦闘機(史実のキ10-II改相当)”を製造していて、そのエンジンは”マーリン”エンジンの一つ前の型と言える英ロールスロイス社の”ケストレル”エンジンを選択、川崎重工はケストレルのライセンス生産と出力強化型の開発も同時に請け負っていた。(ただし史実の九五式戦闘機のエンジンはBMW Ⅵのライセンス生産品の発展改良型エンジン)

そのような経緯もあり、九七式重局地戦闘機は本来、ロールスロイス系の液冷航空エンジンになれた川崎重工が行う予定だったが、当時の川崎は九五式戦闘機の生産に加え、後に”九八式軽爆撃機”として採用される単発小型爆撃機の開発や急降下爆撃が可能という後の”九九式双発軽爆撃機”の開発が重なり、非常に多忙であり九七式重局地戦闘機まで手が回らない有様だった。
そこで白羽の矢が立ったのが三菱重工で、液冷エンジン製造のノウハウを習得させるという意味も兼ねて九七式のメインコントラクターとなったのだった。

しかし、三菱ではマーリン・エンジンのライセンス生産は難航し、需要に供給が追いつかない日々が続いた。
そこでサポートに入ったのが九五式戦闘機の生産を終了させ、九八式軽爆撃機の生産が軌道に乗り、九九式双発軽爆撃機が少数生産で終わることが決定した川崎だった。
当時の川崎は、九八式軽爆撃機と九九式双発軽爆撃機を統合した「新対地攻撃機(後の二式双発復座戦闘爆撃機”屠龍”)」の開発しかバックオーダーを抱えておらず、液冷エンジンの製造ノウハウを失いたくない川崎は九七式のエンジンと機体製造の協力を三菱と空軍に申し出た。
これはスムーズに決まり、ゼロ戦や一〇〇式重爆撃機 / 一式陸上攻撃機の全規模開発と大規模生産が規定路線だった三菱は、九七式の機体/エンジンのライセンス製造権と製造設備一式を川崎に売却、その流れで川崎は九七式の後継である一〇〇式のメインコントラクターとなった。

さて機体特性としては、初期型スピットファイアの日本版というべき九七式の後継に相応しくほぼ”スピットファイアMk-V”準拠という仕様だった。
しかし、例えばMk-Vの記述で「補助翼の効きを良くするために羽布張りから金属製に改めただけで、エンジン以外はMk-Ⅱと代わらなかった」とあるが、九七式は最初から全金属製だったために細かい部分の差異は多々あり、またインテグラル・タンク構造の機内タンクなど日本独自の構造も多い。
むしろ『特地』への逆侵攻に対応するため、海軍が”試験導入”名目で購入した”ハインケル He112”戦闘機の改良やエンジン換装を承った経験やノウハウが生かされているようだ。
エンジンは同じマーリンでも改良出力向上型のマーリン45をベースとしているが、過給機を扱いなれた三菱/ギャレットの1速2段軸駆動式過給器(スーパーチャージャー)型に変更している。
結果として、日本戦闘機として初めて600km/hを越えた戦闘機となった。


そして一〇〇式重局地戦闘機として忘れてはならないのは、「英国支援モデル」……”フェンファイア”の存在だろう。
これは英独戦勃発とイタリアの英国への宣戦布告により日英同盟発動の条件が揃ったために生産が開始されたもので、大きな違いは武装が最新の一式十二・七粍固定航空機関銃から先祖返りともいえるAN/M2のライセンス生産品の武2式航空機関銃に変更されている。
これは英国がAN/M2を使用しているために補給やメンテナンスを考えた結果だろう。
ペットネームの「フェンファイア(”狐火”の意味)」は、スピットファイアにちなんで英国空軍が名づけたもので、日本空軍の公式なものではない。

この一〇〇式の開発ノウハウは、後に「日本最高の高高度防空戦闘機」の一つである”三式戦闘機”に繋がることになる。






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