装甲少女隊、北へ CODE1940   作:ボストーク

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皆様、おはようございま~す。
本日は珍しく午前中アップです(^^

さて今回のエピソードは戦争の中休み♪……なんですけど、やっぱりどこか血腥く硝煙臭いです(笑)




第35話 ”シンキングタイムです!”

 

 

 

「はぁ!? たった二日で2万人以上殺られたって言うの!?」

 

「正確には”死者/未帰還者合わせて2万人以上”ですが」

 

「同じことよ! そんな派手な負け方したら、おめおめと祖国に帰れるわけないじゃない」

 

ここはモンゴルにあるソ連自慢の巨大要塞”タムサク・ボラグ”。

ここで豪奢な椅子から転がり落ちんばかりに驚いているのは、我らが”カチューシャ”様こと、【Правда(プラウダ) Гвардия(グヴァールヂヤ) Танковая(タンカーヴァ) Бригада(プリガーダ)】、【プラウダ親衛戦車旅団】の旅団長、”エカテリーナ・トハチェフスカヤ”大尉だった。

 

「空陸一体のドイツ式機甲戦術に、ソ連式の物量戦術を組み合わせた大規模機甲戦術を正面から打ち破るなんて、連中は一体どんな魔法を使ったのかしら?」

 

「大きな魔法ではないようですよ? 言うなれば順当勝ち……こちらは制空権を最後の最後まで取れなかったのが痛かったようです」

 

と答えるのはプライベートでは専属メイド、軍務では副官を務めるノンナだった。

 

「夜戦は?」

 

「それも試したようですが……敵方は十分な数の照明機材と照明弾を持っていた上、こちらのワイヤートラップを逆利用され、返り討ちにされたようです」

 

ここで言うワイヤートラップとは鋼線(ピアノ線)を2mほどのらせん状に巻いて設置しておくという代物だ。

戦車が踏みつけると起動輪や転輪の軸部に絡みついて隙間に入り込み、機動できなくさせるという仕掛けだった。

史実では日本軍の九七式中戦車がこれの餌食となり、身動き取れなくなったところでソ連野砲の砲撃を浴び、数多く撃破されていた。

 

みほ達は幸いにして遭遇しなかったようだが”この世界”でも使用され、初日の戦闘ではアメリカ戦車隊が対応に難儀したようだ。

 

だが、転んでもただでは起きないのが米軍である。

単純な罠だけに徹夜の突貫作業で、基地にあるありったけの鋼線やワイヤーが集められて同じように加工され、ソ連軍の進撃路になりそうな場所に片っ端からばら撒かれた。

みほ達の前に置かれなかったのは、それをせずとも一度に渡河可能な戦車の数から十分に撃破可能とされたことに加えて、自前の工兵隊により地雷原の設置が完了していたためであった。

 

ただ、二日目の戦闘で地雷もだいぶ消耗したため、敵戦車の残骸を回収車等で必要なだけ撤去した後に臨時名称”スパイラル・ワイヤートラップ”が、防御陣地の補強を兼ねて同じように設置されてはいたが。

 

 

 

「駄目じゃない。それにしても厄介なことになったわ……初日にハルハ河東岸の支配権を握られたのが、こうも響いてくるなんてね」

 

「どういう意味です?」

 

「単純よ。連中が欲しいのは、ハルハ河東岸だけ。そこを手に入れた以上、西岸部まで進軍してくることはまず無いわね。あるとすれば空爆くらいよ」

 

彼女は腕を組みながら思考をまとめ始めた。

 

「今回のアメリカンスキーの攻勢の第一目的は、係争地であるハルハ河東岸部の確保。連中のドクトリンから考えて西岸部への進出はありえない。きっと、ハルハ河東岸の実効支配権を手に入れたまま停戦交渉をして、ハルハ河を国境線とすることを既成事実化してしまうことが目的よね?」

 

それはノンナに答えを求めてるのではなく、あくまで自らの思考をまとめ絞り、結論を導くための通過儀礼のようなものだろう。

それがわかっているからこそ、ノンナも余計な口は挟まない。

 

「となればこちらの勝利条件は? ハルハ河東岸の奪還? Нет(ニェット)。それが出来ればベストだけど、そうするだけの戦力が足りないわ。本国が本気で奪還を命じて大量の増援が来るならそれもありえるかもしれないけど、国家の面子でそこまで戦力を抽出するとは思えないわね……所詮、祖国でなくモンゴルの国境線の話だもの」

 

カチューシャが言ってることは事実であった。

現在、チョンバルサンが独裁するモンゴル人民共和国は表向き、一時期は「ソ連唯一の友好国」と言っていたが所詮は傀儡の治める衛星国であり、満州コモンウェルスへの緩衝地帯というのが最大の価値だ。

ソ連がいかに自国民の出血を無視できる国家だとしても、わざわざ傀儡国家の為にそうまでする理由が思い浮かばない。

 

「今のところ戦力枯渇の可能性は無いけど、これ以上の損害はいくら祖国の動員力が高いと言っても限度があるからね。かといってモンゴル軍……ああ、そうか。その手があったか」

 

彼女はポンと手を打ち、

 

「何もソ連の同志だけで戦争する必要ないじゃない♪ でも、それでも戦力不足なのは間違いないわね……なら勝利条件を変えるしかないわ」

 

カチューシャの恐ろしさの一つは、その柔軟な発想力だ。

異能”バーバヤーガの瞳”により能力的に様々な視点を持てるカチューシャだが、それは彼女の思考にも影響していた。

若さゆえの経験不足から戦略眼を磨くのはまだまだこれからだろうが、思考的視野狭窄に陥りがちな戦術レベルでの視点、その着眼点を自在に変えられるのは本人の気付かぬカチューシャの大きな強みだった。

 

「米国の敗北条件から逆算すれば、現状の在蒙ソ連軍の勝利条件が探れるか……米国の勝利条件は、ハルハ河東岸の継続的制圧と実効支配権を掌握した状態での停戦。それによる暫定支配権の既成事実化と国境線の確定……となれば、ハルハ河東岸の維持に困難をきたすほどの損耗を受ければ、現状維持?」

 

つまり”係争地としてのハルハ河東岸”が残るということだ。

そして、ある程度の結論が出たところで……

 

 

 

「ノンナ、今回はしてやられたわ。米国の輸送力を甘く見ていたわね」

 

「??? カチューシャ様、どの話でしょうか?」

 

基本的にノンナは聡明だが、主の思考の速さは更にその上を行くようだ。

 

「砲弾の話よ。カチューシャが回収した錆弾、あれがブラッフやこちらの誤認させるトラップだったとは思えない。工作員達の報告もそれを裏付けてるわ」

 

カチューシャは少し考え込み、

 

「だとしたら、こちらの被害を考えれば米国はこの短時間で新しい砲弾を用意したとしか思えないわ。米国は確かに大量生産の国だけど、生産した物資を『必要な時、必要な場所に。必要なだけ』用意するにはまた別の技術がいるのよ。米国は生産力だけでなく物流にも優れてる……それは認めないとね」

 

「カチューシャ様は、その打開策をお考えついたのですか?」

 

「決定的な情況打破の手段じゃないけどね。敵が物流に優れるのなら、その物流をパンクさせるほどの損害を強いればいい。本来なら補給路自体を叩いて物流網を寸断したいところだけど、残念ながら今のソ連軍の実力じゃ無理よ。敵の補給路を直接叩ける遠距離打撃力がないわ」

 

カチューシャはちょっとだけ渋い顔をして、

 

「出来るのは満州に潜らせた工作員による鉄道の破壊やトラックの襲撃だけど……米国だって馬鹿じゃないから対策くらいはしてある、あるいはしてくるだろうしね。せっかく潜伏してる連中をここで使い潰すのはさすがに勿体無いもの」

 

「カチューシャ様の深慮、感服します」

 

恭しく改めて敬服の意を伝えるノンナにカチューシャは手を振り、

 

「よしてよ。そんな大したものじゃないから。それはさておき……幸い、米国の動員力は我が国ほど高くは無いから、兵士の出血は嫌うはず。そこにも付入る隙はあるわ。物流が破綻するより先に、兵士の損耗に耐えかねて……というのもありえるわね? 何しろ無意味なほど過剰にマスコミや民意、有権者ってのを恐れる国だから」

 

「民主主義国家の急所ということですか?」

 

「ええ、そのとおりよ。民主主義の本質は、政治家が民衆に仕えるのよ。だから民意が怖い。大衆を導くべき国家指導者が民の顔色を伺いながら政治をするなんて、カチューシャに言わせれば不合理で、滑稽もいいとこだけどね」

 

「確かにシステム的な脆弱さを感じますね」

 

「そうよ。カチューシャの解釈だけど、国民が全員賢人、ニーチェの定義する”哲人”であるなら民主主義は上手く行くかもしれない。だけど、基本的にこれまでの政治は衆愚政治を基本としてきたの。民が賢しいと為政者が困るもの。そんな政治的土壌で民主主義なんて上手く行くわけないでしょ? だから彼らのかなりの数が民主主義を裏切って、自ら望んで社会主義や共産主義に恭順を誓うのよ」

 

「国家や民族の旧来の価値観ではなく、新しき価値観である国際共産主義に……ですね?」

 

カチューシャは大きく頷く。

 

「彼らが大好きな聖書から引用するなら、『新しい酒は新しい革袋に盛れ』とでもなるのかしらね?」

 

「しかし、カチューシャ様。戦場の制空権は今や完全に敵に握られています。カチューシャ様が望む破壊と流血を得るには、些か情況が悪いと思われますが?」

 

「ノンナ、よく考えなさい」

 

カチューシャはニンマリと笑うと、

 

「いかに敵が圧倒的航空優位を誇っていたとしても、それが無効化される瞬間があるでしょう?」

 

「!?」

 

ノンナの大きく見開かれた目を見ながらカチューシャは満足げに、

 

「ノンナ、これからジェーコフ将軍に提出する作戦草案をまとめるわ。手伝いなさい」

 

Да сэр(かしこまりました). Милорд(我がご主人様)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***********************************

 

 

 

 

 

 

「う~ん……これはどういうことかな?」

 

話は1941年12月2日、その日の戦闘終了後まで遡る。

こちらのバリケードとして使える戦車は残し、回収できる戦車はソ連戦車の資料として保存することになった。

無論、死んだふりをしてたり、瀕死でも撃ってくる者はいるので慎重にだ。

その判別をするべくみほも調査に加わっていたのだが……

 

その時、ふと奇妙な戦車……パッと見た感じ、貫通痕など目立った損傷はないのに擱坐しているT-34を見かけたのだ。

 

トラップの可能性を考えて、みほは肩からスリングで吊るしたトンプソンM1928のグリップを握り安全装置(セイフティ)を解除する。

トンプソン短機関銃は操作系が左側に集中してるので、右利きには非常に使いやすい。

 

キューポラのハッチを開けると銃口を向けながら慎重に中を覗き込む。

無論、乗員が死んだふりをしていていきなり撃ってきた場合に備えてだ。

本来なら手榴弾でも放り込んだほうが手っ取り早いのだが、下手を打てば砲弾が誘爆するのであまりお勧めは出来ない。

カチューシャがやったように破壊するつもりならそれでもいいかもしれないが、できればこの無傷とは言わないまでも自走できそうに見える戦車は状態のいいままで鹵獲したかった。

 

「ありゃま」

 

とりあえずハッチを開いても撃ってこなかったので中に潜ってみると、ズタズタに切り裂かれた死体がいくつも転がっている。

 

「ううっ……」

 

うめき声が聞こえたのでどうやら一人生きているらしいが、みほは躊躇無く銃口を向けると、

 

”Pam! Pam!”

 

セミオートで二度引き金を引き、二発の45口径弾を頭部に叩き込むことでこの世のしがらみから解放した。

ハーグ条約違反と言ってはいけない。

どう見ても助からない敵兵、言うならば死に切れずに苦しんでる敵兵にトドメを刺す行為は十分に人道的な行為として許容されるのだ。

ハーグ陸戦規定は、別に全ての兵士を救うための条約ではない。

 

そして、みほは跪いて丹念に他の死体を調べ始める。

死因は、対人地雷を至近距離から浴びたように破片が突き刺さったことによる失血性ショック死だろう。

 

「これってまさか……」

 

そしてジュラルミン製の軍用懐中電灯を点灯して、内壁を詳しく確認する。

T-34中戦車の中、特に砲塔は貫通された形跡が無いにも関わらず「普通ならありえないほど」激しく損傷していた。

 

「これってもしかしなくても”ホプキンソン効果”かな?」

 

 

 

ホプキンソン効果とは?

金属に起きた場合は特に”スポール破壊”とも呼ぶが、例えば金属板の表面で爆発が起こるとその爆圧が金属板を伝播し、裏面を剥離/飛散させる現象だ。

 

これを最大限に引き出すのが、前作で試験的に実戦使用された”HESH(粘着榴弾)”なわけなのだが……今回の戦いでは、まだ用いられてない筈だった。

 

「おそらくは、誰かが徹甲弾じゃなくて間違えて榴弾を撃った……ってとこかな? それにしても普通の榴弾が当たったにしては、破損が酷いな……」

 

確かに普通の榴弾が直撃したところで、乗員が皆殺しになるほどのスポール破壊が起こるという現象は、日米の戦車では考えにくい。

 

ちょっとした豆知識程度の話だが、圧延均質鋼板の溶接と鋳造ではどちらが硬くしやすいかと言えば、意外なことに鋳造のほうなのだ。

いや、むしろ鋳造の場合は『硬くなりすぎる』ことに問題点がある。

どういう意味かと言えば、当たり前に聞こえるかもしれないが『硬いものほど脆い』を地でいくのだ。

金属の、特に装甲板に使うような物の場合、硬い(硬度が高い)だけでは駄目で靭性(粘り強さ)も高くないと途端に危険な代物に代わる。

要するに割れ易く、あるいは砕け易くなるのだ。

そして鋳造では製法的にこの靭性を高くしにくい。

ただ、ここまで酷い有様になると……

 

「もしかして、ソ連戦車って本来鋳造に向いてない金属を鋳造砲塔に使ってるんじゃ……?」

 

みほの脳裏に閃くものがあった。だが、

 

(こういう結論は急いじゃいけないな。結論を間違えれば、全てが御破算になる)

 

みほはキューポラから顔を出し、

 

「麻子さん、ちょっと来てくれる?」

 

みほの言葉に戦車の中にいたのにも関わらずぴくりと反応し、しなやかな動作で車体から身を抜き出すと、たたっと地面を蹴って駆けてきてぴょんと身軽にT-34に飛び乗る。

やっぱり動きが人間というより猫に近い気がした。

 

「隊長、呼んだか?」

 

「うん。悪いけど、この戦車を動かせるか試してみて欲しいんだ」

 

「わかった」

 

そう二つ返事で返すと、やはりするりと身を滑り込ませた。

中はちょっとしたスプラッタ状態だったが、麻子は気にもしない。

というか死体にも血の臭いにも『特地』で嫌というほど慣れた。

むしろ、温度が低い分腐敗がはじまってないだけマシだとさえ思っていた。

 

 

 

***

 

 

 

数時間後、交替のM3中戦車隊がやってきた。

みほ達とローテーションを組むべく派遣された部隊だろう。

戦闘が継続しているなら仕方ないが、そうでないなら1戦闘ごとに部隊を後方に下げ、車両の整備と補給、人員の休息を取らせるのが米軍の方針らしい。

 

(これは日本も見習うべきとこだね~)

 

誉めるべきは米国合理主義か?

史実に比べれば天と地ほどの差はあれど、日本は機械にも人にも無理をさせがちな傾向がある。

例えば、”この世界”の日本なら交替させないということはありえないが、間隔は無理が利かなくなる手前くらいまでは長いかもしれない。

その間も休息は取れるが、おそらくはこの前線で交替でとなるだろう。

これは最大火力を持つみほ達を前線から下げるリスクを考えた上での判断となるだろう。

最大瞬間戦闘力を考えれば、これはこれで納得はいく。

 

しかし米国が重んじるのは、みほ達がリスクを踏まえた上での継戦能力だ。

米国はいざ大規模戦となった時、みほ達の疲労や戦車の故障で肝心なときに戦闘力を十全に発揮できなくなるリスクを恐れているのだ。

 

どっちが正しいかは戦況によりけりだが、みほは少なからず米国式を好意的に見ていた。

休むべきときはきっちり休む。その原則はこうでもしないと中々守られるものではない。

この寒空の下、窮屈な車内で仮眠を取るのと後方の陣地や基地で柔らかいベッドとは行かず寝袋かもしれないが、ささやかでも暖房と屋根のある場所で体を伸ばして休むのとでは、回復できる疲労に雲泥の差があるだろう。

 

 

 

みほ達は後退するのだが……ハイラル・ベースに付くなり、みほは自走可能状態ではなく半ばスクラップと化したT-34(KV-1は重過ぎて牽引できないので後日解体し、改めて運ぶことになった)数両を、中の遺体ごと演習場に運ぶように命じた。

そして補給係に命じて複数種類の砲弾が用意され……

 

「ファイヤ!」

 

 

 

***

 

 

 

「やっぱり……」

 

砲撃を受けた残骸を調べた結果、彼女の予想が確信に変わる。

試製一式中戦車を整備班に預け、彼女は真っ直ぐにコリンズや亜美の待つ司令部に向かい、

 

「【日米臨時混成独立機甲旅団】の全戦車にありったけのHESH(粘着榴弾)の搭載を許可していただきたく参上しました」

 

開口一番、そう告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

二人の英雄が戦訓によりそれぞれの答えを導き出す。

戦いはどうやら、いよいよ最終局面を迎えようとしていた……

 

無論、相応の苛烈さをもって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、御愛読ありがとうございました。
戦闘もちょっと小休止……と思いきや、破壊と殺戮の増量セールをするための準備に過ぎなかったエピソードは如何だったでしょうか?

いや~、カチューシャ様もみぽりんも怖い怖い(^^
タイプは違っても、本当に戦争の申し子みたいな二人です。

次回からはいよいよ最後の激戦の開幕かな?
ちょっと長丁場の戦いになるかもしれませんが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



九九式軽機関銃

全長:1180mm
重量:10400g
使用弾薬:7.62mm×63(30-06スプリングフィールド)
装弾数:20連発/30連発箱型弾倉(ブローニングM1918BARとマガジン共通化。30連発は九九式と同時開発)
発射方式:フルオートマチック
発射速度:520~550発/分ないし700~800発/分(ガスレギュレーターによる二段階切り替え式)

備考
1939年より大日本帝国陸軍制式軽機関銃として採用されている。
設計元となったのは前作において弾薬補給の混乱を避けるため『特地』専用装備となっているチェコ・ブルノ兵器廠製の”ブルーノZB26軽機関銃”の正規ライセンス生産品となっている”チ26式軽機関銃”。
基本的にはチ26式軽機関銃をベースに、1924年(大正13年)に締結された『日米砲弾/弾薬相互間協定』に従い日米共通の30口径標準小銃弾として定められた30-06スプリングフィールド弾を使用できるように再設計したものだ。
ただ同じZB26軽機関銃をベースにした英国製のブレン軽機関銃の影響も少なからず見受けられ、銃身部を除けば非常に似通った作りになっている。

逆に言えば九九式軽機関銃の外観的特長は銃身部に集中してると言ってよく、銃口部には日本人の体格からすればかなり強力な実包を使うので消炎器を兼ねた大型の反動抑制器(マズルブレーキ)が装着され、日本の軽機関銃らしく銃剣(バヨネット)用の着剣装置が標準装備され、銃身には砲身冷却用のリブとキャリングハンドルが取り付けられている。
実は、この九九式でもっとも工夫が凝らされたのはこの銃身交換システムで、ドイツ製の各種機関銃を参考に、基部にある原型となった試製九六式軽機関銃のそれを更に改良したラッチレバー式の止め具をワンタッチで解除し銃身を回転させれば簡単に交換できるように作られており、またその際にはキャリングハンドルを握って回転させれば熱された銃身に触れる必要は無く耐熱手袋なども不要となっている。

内部はクロームメッキ処理がなされて極めて耐久性が高く、また排莢方向はブレンとは逆に右側となっており、右利きの射手には使いやすいだろう。
二脚は銃身ではなく銃身下に沿うように延長したフレーム部分に取り付けられ、照準機(メタルサイト)は対空照準が可能なタンジェントサイトが左側にオフセット搭載されるが、オプションでプリズム式の光学照準機(スコープ)を取り付けられた。
また、従来の削り出し加工部分を極力減らし、シートメタル・プレス加工を多用することを前提に設計されるなど生産性の向上も考えられている。
また、安全装置は日本独自設計のものである。

全体として言えるのは、30-06スプリングフィールド弾という日本人としてこれまでにない強装弾を使うため、やりすぎ(オーバースペック)とも取れるぐらいに耐久性や強度を考えて設計されており、銃身などは設計当初銃身命数に自信が無かったために銃身のクイック・チェンジ・システムが採用されたという経緯がある。
その代償として重量が嵩んでしまったが、史実より体格の良い者が多い”この世界”の日本人ならなんとかなる重量ではあり、むしろ信頼性が高く量産性もよかったために1939年(皇紀2599年)から小改良を受けながら1945年まで15万丁近くが生産され、分隊に1丁ずつ配備されることになった。
『特地』の人外に苦しんだ成れの果ての「火力馬鹿の日本人」を代名詞の一つとして、第二次世界大戦を代表する機関銃として活躍した。

特筆すべきはが九九式軽機は射撃持続性を考慮され標準弾倉(マガジン)が新たに開発された30連発とされたが、ブローニングM1918BARや同時期に制式化された”九九式自動小銃”と共用化(しかし双方とも標準は20連発)されており、そういう意味においても分隊支援機関銃として相応しい素性を持っていたといえる。



***



試製九六式軽機関銃


全長:1075mm
重量:9900g
使用弾薬:6.5mm×51(6.5mmアリサカ)
装弾数:30連発箱型弾倉
発射方式:フルオートマチック
発射速度:520~550発/分

備考
史実では九六式軽機関銃として制式化されたが、”この世界”では少数生産の試験採用(それでも1万丁近く生産されたらしいが)で終わっている。
というのも『特地』の怪異との戦いで6.5mm弾の威力不足は既に露呈しており、また6.5mm弾の採用の論拠となった「小柄な日本人にとってフルサイズの30口径小銃弾の反動は強すぎる」という論拠も、四半世紀の間に栄養状態の改善などにより体格が大きくなった”この世界”の日本人には既に過去のものとなっていたことが大きい。
前出の『日米砲弾/弾薬相互間協定』により、既に30-06スプリングフィールド弾を使う新型機関銃の開発はスタートしていたのだった。

では、この機関銃の存在意義とは?
無論、6.5mm弾の在庫処分という意味もあるが、もう一つは九九式軽機関銃開発の叩き台(ケーススタディ)という側面だった。
ZB26軽機関銃を参考に開発された試製九六式は、単純なコピーではなく日本独自のエポックメイキングな新機軸がいくつも導入され、素性のいい機関銃だった。
おそらく試製九六式が無ければ九九式軽機はあそこまでの完成度はなかったとさえ言われている。
またその持ち前の軽さと6.5mm弾の特性から正規部隊ではなく、特殊部隊などの非正規部隊には好まれ、大戦中は現役武装として使われていた。







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