装甲少女隊、北へ CODE1940   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ~。
今回のエピソードは……いよいよ戦いも激しくなってくるようです。
そしてサブタイ通りにカチューシャ様が大暴れの予感……?




第36話 ”地吹雪の所以です!”

 

 

 

1940年12月7日

 

戦闘開始から1週間、ハルハ河東岸での戦闘は膠着していた。

ソ連は猛攻に継ぐ猛攻をかけるかと思いきや、四日目以降は小規模で散発的な戦闘……小規模勢力による奇襲浸透戦術と航空機による強行偵察に切り替え、大規模な戦闘は控えてるようであった。

 

「まずいですね。このままじゃジリ貧になるのはこちらです」

 

米軍ハルハ・ベースで開かれた首脳部会議でそう発言したのは、いい加減会議の発言に慣れてきた(慣らされてしまった)我らが西住みほ”臨時”少佐だった。

 

「しかし、このまま戦線が膠着し、外交交渉でハルハ河東岸(イーストバンク)が我々の実効支配地域とソ連に認めさせれば、完全勝利ではないかね? 少なくとも当初の目的は達成できる」

 

そう返したのは、在満米軍西部方面軍団司令官スティルウェル中将だ。

 

「それが一番の理想です。そうすればわたし達も余計な出血をせずに済みますが……でも、おそらくそうはならないでしょう」

 

そして彼女は全員に資料を読むように促した。

映っていたのは、小銃を担いだ騎馬兵と歩兵の軍勢だっただった。

航空写真ゆえにそこまで鮮明ではないが、地面に列を成して行軍する人の群れは、なんとなく装備が雑多で服装も統一性に欠けてる様に見えた。

 

「一〇〇式新司偵からの最新の情報ですが、敵はモンゴル人民共和国から大量の歩兵を集結させてます。情報部から太鼓判押されてますが、装備の雑多さやそのほかの論拠からしてソ連赤軍正規部隊ではありません。おそらくモンゴルで臨時徴兵をしたのでしょう。そして、その数は10万人規模に達する可能性があります」

 

会場がざわつく。

その意味は一つしかなかった。

 

「皆さんの想像通り、敵は大規模なイーストバンクへの侵攻を意図してます。最大規模の基地であるタムサク・ボラグでもこれだけの人員は収容できませんので、増援組は”パオ”による野営でしょう。彼らはその生活に慣れてるでしょうから」

 

(パオ)”とは中国語表記で、蒙古では”ゲル”と呼ばれる遊牧民のテントのことだ。

 

「また問題なのは後方の一大補給拠点であるバイン・トゥメン、タムサク・ボラグを支える補給基地であるマタト、ウラン・ツィレクにも10万人規模を長期に支える食糧備蓄はないはずです。であるなら、結論として言えるのは……」

 

「短期における集中した戦力投入における”決戦”。それも『10万人の鉄砲玉を投入した』かな?」

 

と、不謹慎なことにどこか楽しげに告げたのはコリンズ大佐だった。

みほは頷き、

 

「我々は『10万人のモンゴル兵を殺すと同時にロシア人の正規軍を相手にする』必要がある……それだけの戦闘が可能かということです。相手がソ連正規兵だろうとモンゴル民兵だろうと使う弾を変える訳じゃありませんから」

 

みほの言わんとすることは、この場にいる全員が嫌でもわかった。

 

「弾薬庫が空になるかもしれんな……」

 

誰かが呻くように呟いた。

 

「いや、そちらはまだ何とかなるさ。問題は兵力が足りるかだ」

 

「防衛の絶対有利の原則から、3倍までは耐えられると思うが……」

 

「それに敵はこちらの戦力倍化要素を潰しにかかると思いますよ?」

 

みほのやけに通る声に一同が注目する。

 

「天気図と等高線の張り出しから見る限り、今夜半から天候は雪……明日は吹雪くかもしれません」

 

「航空機が……」

 

誰かの呟きにみほは頷く。

 

「ええ。航空機が飛べなくなるこの時をソ連軍は待っていたはずです。制空権を確保してきた我々が絶対優位といえなくなる情況を。少なくともわたしなら、このチャンスを逃しません」

 

 

 

「激戦必須だな……雪原は鮮血で染まる、か」

 

そう呻くように呟いたのはスティルウェルだった。

 

「コリンズ大佐」

 

「はっ!」

 

「別命があるまで、現時刻を持って君の独立旅団は軍団司令部……いや、わたしの直轄とする」

 

「はっ! 我々に遊撃任務(ハンターキラー)を行えということですね?」

 

敬礼しながら問うコリンズにスティルウェルは頷く。

 

「その通りだ。水漏れを起こした場所を塞ぐ修理工といったところだ」

 

かすかに笑うと、

 

「諸君、残念ながら航空支援無しに我々に10万……いや赤軍を加えれば15万に達する敵軍をハルハ河をボーダーに押しとどめる力は無い。だとすれば我々が取れる戦略は、戦線の崩壊を防ぎ耐え凌ぐことだ」

 

そして全員を見回した。

 

「だが、同時に勝機はある。今までの統計から鑑みて、吹雪は二日と続かない。そして航空機が飛べる情況になれば……ニシズミ少佐」

 

「はい。我々の好機となります。【オペレーション・バルジ・ブレイク(張り出し破砕作戦)】の第1フェーズはバルジ(張り出し)、イーストバンクからの一時的な敵の殲滅。第2フェーズは敵の誘引による段階的漸滅……現在、この段階で頓挫し無意味なにらみ合いが続いてましたが、敵が大規模侵攻を仕掛けてくるなら、そして”我が軍”がそれに耐え切れることが可能ならば、第2フェーズの条件を満たします」

 

「上出来だ」

 

そう満足そうな表情を浮かべるスティルウェル。

しかし、コリンズは別の意味の笑みを浮かべ、

 

(”我が軍”か……うん。実に良い傾向だ)

 

彼のろくでもない目論みも上手く行ってる様である。

 

「よって敵の誘引がなされ我々が耐え抜き、そして航空機が使用可能となったその時……”ファイナル・フェーズ”を発動させる」

 

 

 

先ほどとは違うざわめきが起きる。

無論、だれしもこの先に起こる戦いが苛烈という言葉では言い表せないほど激しくなるのはわかってはいた。

しかし、「耐えた先には展望がある」と判れば俄然士気が違ってくる。

それは彼らがとある一神教であることも関係しているのかもしれない。

聖書では煉獄の先にあるものが言われているのだから。

もっともピューリタンの中では煉獄の存在を認めてない教派もあるが。

 

「では諸君らの健闘を祈る」

 

具体的な迎撃プランの確認と修正などの詰めの後、スティルウェルの言葉によって会議は締めくくられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

 

1940年12月8日

 

昨晩より降り続いた雪は降り止まず、朝から吹雪く傾向にあった。

こういう天気はむしろカチューシャ、エカテリーナ・トハチェフスカヤにとっては慣れ親しんだものである。

 

「同志諸君! 傾聴せよ!」

 

小さな肢体からどうやってそれだけの声量を出すのか謎だが、カチューシャは自らの配下全ての者に聞こえるように宣言する。

 

「ついに我々が待っていた時が来た! 敵は地上兵力が惰弱である故に航空兵力に頼ってきたが最早そのようなまやかしの手は通じない!!」

 

そして大きく平たい胸を張り、

 

「雪は吹雪は冬将軍は、ナポレオンの時代より我らが民族の味方だ! 凡そこの世において我等以上に雪上での戦いを熟知した民族など、世界のどこにもいはしない! 雪と風を友軍にせよっ!! 今こそ我らが真価が問われるときだっ!!」

 

そして、周囲を見回し……

 

「同志諸君、砲弾の準備は万全かっ!!」

 

「「「「「「「Урааааааааーーーーーーー!!」」」」」」」

 

「全員、戦車に乗り込めっ!! 我ら一人一人が吹雪に響く雷となり、薄汚い資本家の鼠共に裁きの鉄槌を与えるわよっ!!」

 

「「「「「「「Наши командиры(我らが偉大な指揮官), Слава Леди Катюша(カチューシャ様に栄光を)!! Мы в победу(我らに勝利を)! !」」」」」」」

 

「【Правда(プラウダ) Гвардия(グヴァールヂヤ) Танковая(タンカーヴァ) Бригада(プリガーダ)、全車出陣するっ!!」

 

「「「「「「「Урааааааааーーーーーーー!!」」」」」」」

 

 

 

そして彼女の率いる【プラウダ親衛戦車旅団】、計70両のソ連製戦車はハルハ河に迫るっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************************************

 

 

 

 

 

「な、なんだありゃ……?」

 

「なんかやばいぞ……」

 

それはハルハ河に面したフロントラインを守る米国将兵にとって、本能的な恐怖を感じる光景だった。

 

航空機が飛ばせないだけじゃない。吹雪は視界と音を阻害する……この地点を守る米軍は致命的に接近に気付くのに遅れてしまったのだ。

 

「全車戦闘用意! 敵もまだこっちの位置には……」

 

「発砲炎、確認! 敵、発砲しました!!」

 

「馬鹿な……」

 

最初のM3中戦車が撃破されたのは、中隊長が唖然と呟いた直後だった!

 

 

 

***

 

 

 

守備の米軍戦車中隊隊長は、ある意味正しかった。

その赤い戦車隊とてこの吹雪の中、正確に米軍戦車が見えていたわけではない。

無論、”ただ一人を除いて”だ。

 

「全車、斉射用意! 10時方向! 距離1000m! 弾種、徹甲! 着弾点はカチューシャに合わせて! Огонь(撃てっ)!」

 

そう、旅団の先鋒に指示を出していたのは言うまでもなくカチューシャだ。

語弊を恐れず言うなら、「見通せないものはあまりない」彼女の固有異能、”Глаз Бабы Яги(バーバヤーガの瞳)”の前では吹雪など物の数ではなかった。

 

彼女にとって夜や悪天候は、以前に見せた上空から見下ろす”鳥の視点(バーズアイ)”のような視点変更に比べればよっぽど精神力消費の少ない能力行使で絶対優位が得られる得意環境だった。

 

簡単に言えば、今のカチューシャは左目だけを「可視光以外の波長が見える」ように異能で調整していた。

具体的に言うなら8~14μm波長の「遠赤外線領域」を見えるようにだ。

普通、赤外線は大気に吸収/拡散され易いと思われがちだが、実は8~14μm波長の赤外線は”大気の窓”と言われる波長領域であり、大気の透過性が例外的に高いのである。

言うならばカチューシャは史実なら数十年後、エレクトロニクスの進化によって実現した”受動型(パッシブ)赤外線装置”を自分の生体機能としてもっているのだ。

もっともカチューシャ自身はそのような小難しい理屈を知るわけもなく、ただ「見えないなら見え易い色を探して合わ(チューニング)している」という感覚であるらしい。

 

欠点があるとすれば遠赤外線は可視光に比べて波長が長いため鮮明度が下がる(つまりぼやけて見える)のだが、それを補強するためにカチューシャは右目は可視光領域のままにしていた。

 

 

 

「今の着弾点に射撃可能な全車、Сальво(斉射開始)!!」

 

直撃こそしなかったものの着弾点に満足し、射撃指示を出す。

無論、一発必中が狙える精密射撃ではないが『その周辺に敵がいる』のは間違いなく、命中率の低さを「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」を地で行き、数で補うのがソ連式だ。

それにこのような撃ち方をすれば……

 

”ZuVoooooooooooooM !!”

 

”ZuVoooooooooooooM !!”

 

立て続けに場発音が響いた。カチューシャが狙っていただろう1両が集中砲火を浴び成す術もなく吹き飛び、もう1両が巻き添えを喰らい流れ弾の直撃を浴びたのだ。

 

 

 

***

 

 

 

最初に中隊長が思ったのは、

 

戦車跨乗(タンクデサント)兵がいねぇ……?)

 

緒戦により、ケイだけでなく多くの米国戦車兵がソ連のあまりに危険なタンクデサントを目の当たりにしてたので、それが強烈な印象として残っていたのだろう。

確かに「ソ連戦車=タンクデサント」という図式が成立してもおかしくないトラウマ級の光景だったろう。

 

(デサント兵がいないということは、こいつらもしかして……)

 

こちらの想像より遥かに早いタイミング……中隊長が何らかの結論に辿り着く前に発砲され、立て続けに2両が破壊された。

よほどの歴戦でなければ、この戦況で冷静な判断を求めるのは些か酷というものであろう。

 

畜生(ダム)! 相手はどういう理屈かは知らんがこっちが見えてるようだっ!」

 

もし、彼が乗っているのが開発された時代を考えれば強固な装甲を持つTYPE-98(九八式重戦車)で、車体を掩蔽壕に潜り込ませ砲塔のみを突き出したダグイン状態だったら別の判断をしたかもしれない。

しかし、彼……戦車中隊長が乗っていたのは車体に主砲がついてる故にダグインできず、ハルダウン(車体を稜線に隠す)が精々のM3中戦車だったのだ。

 

「中隊全車、後退せよっ!! こいつらおそらく対戦車特化部隊(タンクデストロイヤーズ)だっ!! 戦車狩のエキスパートだ畜生めっ!!」

 

大隊長から死守命令でも出ない限り、それは順当な命令……少なくとも全くの的外れな命令ではなかった。

だが、彼に運がなかったのは相手がカチューシャ率いる【プラウダ親衛戦車旅団】だったことだった……

 

 

 

***

 

 

 

「引いたわね? ウフフ♪ 馬鹿ね~」

 

一つの中隊が後退を始めると、まるで恐怖が伝播したように一帯に守護についていた他の中隊までも一斉に後退を始めた。

キューポラから身を乗り出したままのカチューシャはにんまり笑うと無線機を握り、

 

「鼠が巣穴から飛び出してきたわ! ニーナ、アリーナ! 回りこんで引っ掻き回し、逃げ道を塞ぎなさいっ!!」

 

『『Да(ダー)!!』』

 

最新のT-50軽戦車を10両ずつ与えられた新米上級軍曹コンビが元気のいい返答を返し、その声に負けぬ勢いで飛び出してゆく。

最高速58km/hを誇る快速もそうだが、初陣を飾ったスペイン内乱の頃からの古参の部下である二人の技量は半端ではなかった。

それ以外にも、彼女達の率いる部下もBT(快速戦車)シリーズで腕慣らしをした者が多く、また隊長の二人を筆頭に「(ニーナとアリーナが優秀だったために気をよくした)カチューシャに拾われたコサックの血を引く娘」がメンバーのかなり部分を占めることも異常に高い士気や忠誠、そして死に物狂いで上げてきた高い技量を持つに至った理由と言えるだろう。

ずっと高機動と引き換えの薄い装甲に慣れてきた彼女らに取り、「敵の砲弾など当たらなければどうと言う事はない」程度の代物だった。

 

「ノンナ、クラーラ! 蹂躙戦の準備なさいっ!!」

 

『はい。カチューシャ様』

 

Это нормально(了解いたしました)

 

「【プラウダ親衛戦車旅団】全車に告ぐ! 敵戦車大隊を一気に殲滅するわよっ!!」

 

『『『『『『Урааааааааーーーーーーー!!』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

「そったらへっぴり腰で大砲撃ったところで当たるわけねえべ!」

 

「そんだら逃げ腰だったら、当たるもんも当たらんべさ!」

 

本来、前線にいた米軍戦車隊の行動はあながち間違ったものではない。

相手の圧力に抗しきれないと判断すれば即座に後退し、敵を誘引しつつ後方で立て直すという戦術が事前に指示されてたからだ。

しかし……

 

「なんて速さだっ!? チッ! 囲まれるぞっ!」

 

「な、なんだあの軽戦車!? こっちの装甲正面を抜いてくるぞっ!? ソ連の軽戦車は化物かっ!?」

 

「軽戦車のクセに生意気なっ! ぎゃぁぁぁーーーっ!!」

 

現出したのは阿鼻叫喚だった。

元々、M3中戦車の最高速は40km/hに届くか届かないで、後進になればさらに速度は下がる。

対して史実よりも随所が強化されたT-50軽戦車の最高速は約1.5倍の58km/hに達する。

オマケに主砲の45mm46口径長砲は徹甲弾を用いるなら、500mで直角に並べられた厚さ60mmの均質圧延鋼板を射抜く。

参考に言っておけば、M3中戦車の最も厚い装甲でも50.8mmしかなく、鋳造の砲塔ならともかく車体で言うならほぼ傾斜してないのだ。

正面装甲で受けられた者はまだ幸運で、ほとんどのM3中戦車は左右から回り込まれたT-50の圧倒的な機動力の前に翻弄され、より薄く無防備な側面や後面を撃ち抜かれて行った。

車体に半固定化された75mm砲じゃ到底追いつかず、車体上の小ぶりな旋回砲塔に据えつけられた37mm砲でなんとか狙おうとするが、所詮は副砲扱いの砲であり、中々命中弾は出せないようだ。

いや、主砲でなく副砲で狙おうと命じた車長はまだ優秀だろう。

狙われた車両の大半は、T-50のスピードと運動性に対応するまもなく撃破されたのだから。

 

その混乱した戦場にカチューシャの号令の下、とどめとばかり一気に主力が飛び込んでくる!

もしも米国戦車隊の中に冷静なものがいれば、集中砲火で対処することも出来たのかもしれない。

M3の主砲は、短砲身とはいえ75mm砲であり、30度の傾斜装甲相手でも徹甲弾を使えば1000mで51mmを貫通できるのだ。

カチューシャの乗るT-34bisならともかく、装甲厚最大45~50mm程度の鋳造砲塔である初期型T-34(ピロシキ)なら、史実のドイツの突撃砲ばりの戦術を取れば十分に対抗できた筈だが……

 

「「「「「ぐわあああああぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

だが、このようなイレギュラーな事態でそのような対応を出来るほど実戦慣れした者はいなかった。

それでも2両のピロシキを撃破し、1両を行動不能にしたのは上出来と言えるだろう。

ただ、その引き換えに……

 

 

 

***

 

 

 

「こちら”プラウダ”。第13地区の敵守備兵力、1個戦車大隊規模の殲滅を終了したわ。罠は雪に埋もれて気にするほどじゃないわ。遠慮なくいらっしゃい」

 

米軍の守備隊は全滅していた……

これがカチューシャの必勝パターンだった。

雪と風に紛れ敵からの発見を遅らせ、「こちらからだけ見える」状態で先制攻撃を行い戦闘主導権(イニシアチブ)を掌握。敵砲兵の支援砲撃が来る前に情況を混交させ一方的に相手を叩き伏せる。

 

「さあ、敵の砲弾が降り注いでくる前に移動するわよっ!!」

 

あれだけ情況が混乱すれば、敵は砲兵支援なんて頼む暇はなかったろう。

仮に頼んだとしても敵味方まとめて吹き飛ばすなんて判断が出来るとは思えない。

そして自分達は、敵砲兵が味方の全滅に気付く……遠慮なく砲弾を放り込める情況になったと気付く前に場所を移動する。

この吹雪の中じゃ、よほど近づかない限りまともに弾着観測など出来はしないだろう。

 

徹頭徹尾、戦術の最初から最後まで吹雪を利用しつくす、”吹雪と共にやってくる戦車に乗った魔女”……これこそがエカテリーナ・トハチェフスカヤ大尉の二つ名、

 

Катюша из Метелей(地吹雪のカチューシャ)

 

の本当の所以なのだ。

 

 

 

 

 

プラウダ親衛戦車旅団がイースト・バンクのまた別の戦場に向かってほどなく、米戦車の残骸を押しのけるように現れたのは、モンゴルでかき集められた跨乗(デサント)兵を満載したT-34をはじめとするソ連製装甲戦闘車両の大群だった……

 

戦いは、新たな局面を迎えつつあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、御愛読ありがとうございました。
久しぶりにプラウダ組が大暴れのエピソードはいかがだったでしょうか?

あっ、クラーラが戦闘に参加した描写って今回が初めてかも(^^
実は微妙にニーナ&アリーナのコサック娘コンビがお気に入りだったりします(笑)

前半でみほがモンゴル兵を警戒してましたが、どうやらプラウダ親衛戦車旅団の到来で、戦況は予想以上に悪くなりつつあるようです。

果たして日米はソ連の猛攻を耐え凌げるのか?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



ブローニングM1918A1/A2自動小銃(BAR)(武1918式改分隊機関銃)

全長:1214mm
重量:7700g(A1),、8800g(A2)
使用弾薬:7.62mm×63(30-06スプリングフィールド)
装弾数:20連発
発射方式:セミ/フルオートマチック切替式(A1)、発射速度二段階切替式フルオート(A2)
発射速度:フルオート時500~550発/分(A1)、350~450発/分ないし550~650発/分(A2。ガスレギュレーターによる二段階切り替え式)

備考
第一次大戦末期に開発された自動小火器。よく略称で出てくる”BAR”とは”Browning Automatic Rifle”の略で、意味は”ブローニング自動小銃”なのだが、実際には分隊支援機関銃の元祖という位置づけの銃である。
オリジナルであるM1918は1917年に開発され第一次大戦集結までに5万丁以上生産/配備され、その後も生産が続き米陸軍や海兵隊に配備される。
1937年には既存のM1918を近代化改修したM1918A1が配備(新造はされていない)され、40年からはセミオートをオミットし、発射速度を二段階に切替えられるようにしてより機関銃色を強くしたA2が新たに製造されている。

実は”この世界”の日本とこの銃の付き合いは古く、1924年(大正13年)の『日米砲弾/弾薬相互間協定』締結直後にM1919機関銃と共に早々と”武1918式分隊機関銃”としてライセンス契約が行われている。
理由は言うまでもなく、後に『特地』勢力と総称される『門』外勢力の怪異に対する火力不足に悩み、その解決法を求めたからだ。ただ、米国と異なり最初から”分隊に配備できる簡便な機関銃扱い”として納品された。
ある意味、日本の火力偏重主義の走りといえる機関銃なのかもしれない。

基本的には同じ代物だが、米軍がA1への改修し始めた翌年の1938年から日本でもA1準拠の武1918式改分隊機関銃への改修が始まっている。
現在、A2型の製造は日本では行われてないが、九九式軽機関銃などに比べ軽量であるため、空挺部隊や海軍陸戦隊など重装備を持ちにくい歩兵主体の部隊に人気がある銃であり、近々日本なりの改修を加えたモデルが生産されると噂されている。

いずれにせよ九九式軽機関銃や九九式自動小銃などはM1918の弾倉(マガジン)を使えることを前提に設計されており、日本の自動小火器開発に多大な影響を与えた銃の一つと言える。
蛇足ながら”BAR(バー)”という呼び名は日本軍の中でも一般化していて、ライセンス生産版の正式名称で呼ばれるより、BARと呼ばれることの方が多いようである。







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