装甲少女隊、北へ CODE1940   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ~。
今回のエピソードは……最初は、カチューシャ様の雄姿を♪
そして血みどろの戦いが続きます(えっ?

果たして、この戦いに終わりはあるのか……?




第37話 ”カチューシャです!”

 

 

 

 

 

カチューシャは小さな女の子

カチューシャには大好きな人がいた

でもその人は征ってしまう

古びた鉄砲を持ち出して

「助けを求めてる人がいるんだ」と言い残して

 

大好きな人は革命に身を投じた

戦いは激しく何年も続いた

やがて革命は成ったけど

大好きな人は戻ってこない

 

「俺が祖国を守らないと」

大好きな人は言った

彼が故郷へは戻ってこない

ならばとカチューシャは決めた

 

小さなカチューシャは鉄砲を握りしめる

大好きな人が祖国を守りたいと願うのなら

いつまでも待ってるだけじゃ駄目だって

カチューシャも祖国を守ろうと

 

カチューシャは鉄砲を握り戦場へ向かう

故郷を背にして戦場に向かう

カチューシャは鉄砲を握り戦場へ向かう

大好きなあの人と一緒に祖国を守ろうと

 

貴女もカチューシャだ

私達はカチューシャだ

大好きな祖国を守るため

大好きなあの人と一緒に

鉄砲を片手に戦場に立つのだから

 

 

 

戦場に、戦場音楽とは別の歌声が響く。

歌っているのは少女達だ。

キューポラから半身を乗り出し自ら先陣を切るカチューシャ……エカテリーナ・トハチェフスカヤ大尉を中心に、”Близзард(ブリザード)”の二つ名に恥じずカチューシャと同じく上半身を吹雪に晒して顔色一つ変えないノンナ、そして古参の部下達が歌い上げていた。

 

無論、このカチューシャは原曲とは全く異なる。

そもそも本来の歌詞は、戦地に行った愛しい人を故郷で待つ少女の歌だ。

 

しかし、彼女達が知るカチューシャは大人しく故郷(モスクワ)で愛しい人を待っていたりなんかしない。

自ら戦車に乗り込み、初陣のスペインから始まり、フィンランドそしてここモンゴルと祖国が戦地と定めた場所に舞い降り、悠然と戦うのだ。

それこそが【プラウダ親衛戦車旅団】の少女達が知るカチューシャだった。

 

もうお気づきだろう。

このカチューシャは、カチューシャを慕う部下達が彼女を想い紡ぎあげた歌詞であり、【Правда(プラウダ) Гвардия(グヴァールヂヤ) Танковая(タンカーヴァ) Бригада(プリガーダ)】と名誉ある名が与えられる前から、カチューシャの率いる部下たちによって歌い継がれた”隊歌”だった。

 

 

 

***

 

 

 

「前方2000m! 敵戦車隊発見! 米国式2個中隊規模! 旅団全車、戦闘用意!」

 

カチューシャの声が歌声から命令に切り替わる。

彼女達の役割は至ってシンプルで重要だった。

ハルハ河東岸の河辺付近で友軍の進軍を邪魔する敵部隊を背後や側面から回りこみ、燃料と砲弾が可能な限り殲滅する……ただそれだけだった。

障害物破壊(バリアブレイカー)と言われればそれまでだが、ハルハ河西岸から渡河する米軍守備隊にとって、吹雪にまぎれて背後や側面から奇襲を喰らうのだからたまったものではない。

 

後の統計でわかったことだが、一連の軍事衝突が始まりカチューシャがモンゴルに姿を現してから【プラウダ親衛戦車旅団】に限らず彼女に率いられた、あるいは彼女の部下達によって撃破された米軍戦闘車両は実に200両を越えることになる。

 

これは後に米軍正式名称【ハルハ河東岸(イーストバンク)戦役】、日本名【ノモンハン紛争】と呼ばれることになる一連の戦闘で米軍が喪失した戦闘車両の約半数が、米国式編成では最大でも増強独立戦車大隊規模に過ぎない”カチューシャ一味”によって齎された……そういうことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

 

 

「全自走砲、砲撃用意……()っ!!」

 

日米混成旅団の副旅団長に抜擢されると同時に旅団直轄砲兵隊(自走砲隊)の指揮を任された蝶野亜美少佐の命により、配下の自走砲隊が有効射程ギリギリの遠距離で発砲を開始する。

この強風では、本来なら散布界を心配せねばならないとこだが……

 

「観測班から入電! 『修正ノ必要ナシ。弾種ソノママ。可能ナ限リノ全力射ヲ望ム』以上です!」

 

「了解よ! 弾種、別命あるまで”対人榴散弾”に固定! 全力射、開始っ!!」

 

亜美の凛とした声と共に、【日米臨時混成独立機甲旅団】麾下にある12門の自走砲が一斉に火を吹いた!!

 

この砲撃は、米国兵に言わせれば「針穴を通すほど正確な」日本の砲撃らしからぬアバウトな照準で行われた。

いやそれでいいのだ。

そもそもこの砲撃は「迫り来る赤色戦車を足止めする」ために行われた砲撃でなく、

 

(これでどこまで跨乗兵を排除できるかね……)

 

この戦いにおいて、もっとも遠距離で放たれる砲弾は”対人榴散弾”、つまりソ連名物の戦車跨乗(タンクデサント)兵を駆逐するための砲撃だった。

これは亜美たちの部隊だけではない。

現在、健在な米国砲兵隊は全て同じような砲撃を行っているはずだった。

 

 

 

***

 

 

 

話は先日の会議まで遡る……

 

 

 

「双方が航空機をつかえない以上、我が軍が最も警戒すべきは敵戦車よりもむしろ跨乗(デサント)してくるだろうモンゴル兵かもしれません」

 

「その論拠は?」

 

みほの言葉にスティルウェルが問う。

わからないのではなく、確認しこの場にいる全員に周知したいという意図が明確だった。

 

「まず先ほど挙げた数の多さ。原則、蹂躙と殲滅は戦車の仕事かもしれませんが、制圧と占領は歩兵の仕事です。であるならば数だけで脅威となります」

 

「他には?」

 

「一番、問題となるのがモンゴル兵の性質です」

 

「性質?」

 

怪訝な顔をするスティルウェルに、

 

「閣下、正規赤軍兵ですらハーグ陸戦規定の何たるかを知らないものがほとんどです。数々報告されてる赤軍兵の占領地における蛮行は、彼らが陸戦条約を意図的に破っているのではなく、本当に陸戦条約その物の存在を知らないケースが大半だということですから……その赤軍兵の捨て駒にされるモンゴル兵が、陸戦条約を遵守できると思いますか?」

 

「ニシズミ少佐、それはつまり……」

 

みほは頷き、

 

「降伏した後も撃って来るかも知れませんし、敗残したとしても便衣兵となりゲリラ化するかもしれません。そうなってしまえば手が付けられない……我々日本人は、幸か不幸か『特地』でハーグ条約などどこ吹く風の敵と戦いなれてますから、その危険性も承知してます」

 

実際、みほもかつて『特地』で降伏したはずの魔導師に攻撃魔法を喰らい死に掛けたことがあるのだ。

 

 

 

「しかもモンゴルはつい最近、指導者チョンバルサンと赤軍による大粛清があったばかりです。もしかしたら情況は”帝国”兵より性質(タチ)が悪いかもしれません」

 

「どういう意味だね?」

 

「詳細は不明ながら、大粛清と言っていい組織的な虐殺では、夥しい数の死者が出たでしょう。それこそ今回予想される戦死者と比べ物にならないほどの。戦死だけでなく、きっと彼らは負けて帰れば後はない……戦死より惨たらしい死が待っていると考えても不思議じゃありません」

 

会議場のあちこちから呻くような声が上がった。

みほの言わんとしてることが、誰しもわかってしまったのだ。

 

「ニシズミ少佐、つまり君はモンゴル兵が最初から”死兵”として襲撃してくる可能性があると言いたいのかね?」

 

代表して聞いたのはコリンズだった。

みほは無言で頷いた。

 

 

 

 

死兵とは文字通り、死を覚悟し、死を当然として受け入れた兵だ。

そして退路もなく降伏も選択できないものが最後に行き着く結論であり、一人でも多くの敵を巻き添えにして死ぬことが、戦う目的であり意味となってしまう。

 

「ニシズミ少佐、対策はあるのだろう?」

 

「一応は」

 

そして示したプランの一つが、遠距離からの対人榴散弾の乱れ撃ちだった。

 

 

 

***

 

 

 

戦車と戦うのにまず跨乗歩兵を殺しにかかる……これまでの米国のドクトリンならありえない話ではあるが、

 

「死兵をなめてはいけません。欧米の感覚では『戦死を平然と受け入れる兵』など想像も付かないでしょうが、それは確かに存在します。古来より我が国では『死兵を相手にするのは愚か者の選択』という戦訓があるくらいです」

 

「東洋では一般的だと?」

 

そう聞いてきたのはとある米国高級将校だったが、

 

「少なくとも三国志の時代には”敢死兵”という形で登場してます。それに彼らには死兵になりうる十分な理由がありますから」

 

「理由? 少佐がさっき言った逃げ帰っても懲罰死が待ってるというやつかね?」

 

「下手をすれば本人だけじゃないかもしれません。虐殺に抵抗感のない独裁者というのは怖いものですよ? 彼らにとって戦死した敵味方の兵も粛清した国民も、”死という悲劇”などではなく、ましてや”革命や為政のための尊い犠牲”とも考えていません。独裁者にとって自分以外の死は”統計”……ただの”数字”でしかありません」

 

みほは極めて真面目な顔で続ける。

 

「共産主義国家には”サボタージュ”という名前の便利な罪状がありますからね。下手に逃げ帰ったらサボタージュの嫌疑がかけられるし、これに反革命思想や国家反逆罪が加われば、抗弁の機会もないまま一族郎党が粛清対象になってもおかしくないです」

 

会議場が粘つくような重苦しい空気に支配される。

彼らはソ連という敵国の持つ体制の恐ろしさを、改めて噛み締めてるようだった……

 

だが、スティルウェルとコリンズの思考は少し違っていた。

彼らはみほに”ある違和感”を感じていたのだ。

 

(年端も行かぬ少女が、大量虐殺を独裁国家が起こす普通の行動と捉え、平然と語る……か)

 

(ニシズミ少佐は戦場で狂わされたわけではない。むしろクレバーでクールだ……)

 

「ニシズミ少佐、少々作戦からは離れるがいいかね?」

 

スティルウェルの言葉にみほは小首をかしげながら、

 

「はい? なんでしょう?」

 

「君は一体、どれほどの地獄をトクチで見てきたのかね?」

 

みほは一瞬キョトンとするが、

 

「そんな大層なものは見てませんよ~」

 

クスクスと笑い出し、

 

「ただ、戦争……戦場に立ってるとそれなりに見えてくるものがあって、殺し合いに正直になれただけですよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

米軍の対人榴散弾もさることながら、日本人の拵えた同種の砲弾はその凶悪さでは米国のそれを凌いでいるのかもしれない。

薄弾殻に炸薬と大量の鉄球を仕込んでるのは変わらないが、仕掛けは信管にあった。

日本製の対人榴散弾は着弾時に撃発する触発型信管だけでなく、時限信管を併用してるのだ。

調整可能ではあるがデフォルトで発砲後二分間に設定してあり、もし何らかの理由で触発信管が不発しても時限信管が作動し、ある種の対人地雷として作用するのだ。

 

『特地』で鍛えられたのは何もみほ達軍人ばかりではなく、怪異犇くあの場所で死をばら撒くために兵器体系もまた史実とは異なる方向に、より高度に進化していた。

 

 

 

対人榴散弾の雨で人肉製の増加装甲を剥ぎ取られたT-34を中心とした赤色装甲群に横合いから殴りかかるのは、

 

「弾種APCBC-T/HE! HESE(粘着榴弾)の使用はKV-1の正面を狙うときのみ! 全車、砲撃開始!」

 

火災現場に駆けつけた消防士の如く、”消火活動”を始めるみほ達であった。

火を消す仕事というのはあながち間違いではない。ただ、敵戦車のエンジンの火だったり敵兵の命の火だったりするので火の種類が違うだけだ。

物理的には消火どころかより多くの炎が出るかもしれないが、それは気にしてはいけない。

 

「百足衆は機動力を可能な限り後面に回り込んでT-26の撃破を優先! 一式突撃砲車(いちとつ)はそのまま阻止砲撃を継続! 一式中隊とM4中隊は側面の位置取りを維持しながら半包囲から殲滅開始っ!! 特に一式はKV-1を優先撃破目標に!」

 

「「「「「「了解っ!!」」」」」」

 

アンコウ・リーダー(大隊長)、聞こえる?』

 

バタフライ(蝶野少佐)、こちら感度良好です」

 

沙織から繋がれた旅団本部、亜美からの通信だった。

 

『こちらからの支援砲撃は必要?』

 

「あればありがたいです」

 

『それじゃあ今から撃つわ! 今のうちに観測班を下がらせるから弾着修正お願い!』

 

「了解です!」

 

対人榴弾ではなく通常榴弾の雨が戦場に降り注いだのは、それから僅かに後だった。

そして随伴する在日米軍からコリンズが抽出した機動歩兵部隊が対人掃討戦を開始した……

 

 

 

無論、戦っている戦車はみほが率いてる部隊だけではない。

M4中戦車に匹敵する砲力を持つ米軍名称”TYPE-98”重戦車はダグインさせ対戦車トーチカとしての威力を示し続け、M3中戦車は「戦車ではなく動く対戦車砲台として戦う」という発想で微速後退しながら最低でも2両1組で1両のT-34を狙う戦法や隠避した対戦車砲との連携で地道に撃破スコアを稼ぎ、M2軽戦車は歩兵の火力支援に徹する戦いを見せていた。

 

確かにスチームローラーと比喩されるソ連の怒涛の進撃は恐ろしいが、それでも全く対抗できないわけではない。

濃密な砲弾の雨と「戦車戦で勝つ」というこだわりをあえて捨てた柔軟な戦術により、徐々にではあるがその勢いを削ぐことに成功しつつあった。

 

 

 

***

 

 

 

無論、戦いは砲兵や戦車兵だけで行っているのではない。

陸戦の”古来からの主役”たちも、また戦闘準備に余念がなかった……

 

 

「分隊長、モンゴル人達はこのクソッタレな雪の中、本当に来るんですかね?」

 

愛用の”M1ガーランド”、米陸軍が胸を張り世界に誇る自動小銃に銃剣(バヨネット)を取り付けながら、伍長の階級章を付けた青年が聞くと、

 

「そりゃくるだろうさ。あいつらはここよりもっと北の、更にクソッタレな雪の中で馬を走らせてアーリア人どもを西の果てまで追い散らしたんだからな」

 

と軍曹の階級を付けた中年と呼ばれる歳の男が答えた。

そんな会話が聞かれたのはブルドーザーで急造された塹壕線の中だった。

この米軍歩兵隊の後ろには、対人榴弾あるいは通常榴弾でモンゴル跨乗歩兵達を中心に大量出血を強いている米国自慢の砲兵隊がいるのだ。

 

主力となっているのは野砲や榴弾砲でどちらも牽引式だ。

戦車を相手にするための対戦車砲や対戦車砲弾の備蓄も問題ない。

だが、みほ達が装備してる自走砲のようにドカスカ撃ったらすぐに移動なんて器用な真似は出来ない。というより、この時代では砲兵や歩兵が戦車の機動力に合わせて移動するなんていうのは、まだまだ例外中の例外だ。

 

彼ら米国歩兵の仕事は歩兵の近接攻撃には弱い砲兵隊を守るための用心棒であり、同時に敵の勢いに押され砲兵隊が戦術的配置転換(こうたい)を行う場合は時間稼ぎの駒になる役目をおっていた。

 

「連中、来やがった……戦車もないのに来やがった!」

 

双眼鏡を覗いていたとある一等兵が、理解できない恐怖に顔を引きつらせながら叫んだ!

現れたのは、統一性の取れてない雑多な火器を手にしたモンゴル兵だった。

おそらく如何にソ連でも10万人分の正規装備は用意できなかったと見える。

いや、そもそもまともな装備を渡す気はないのかもしれないが……

 

おそらくソ連とモンゴルの武器庫で半ば埃を被っていた小火器を引っ張り出して、ろくに整備もされないまま手渡されたのかもしれないが……

だからこそ、米兵達は恐怖を覚えた。

 

 

 

『規模が大きいだけで、まるで民兵相手に非正規戦やってる気分だったよ。しかも連中、仲間がどれだけ倒れても見向きもせずに一心不乱に向かってきやがるんだ……』

 

後にとある米陸軍将校は、そう当時を振り返ったという。

 

「全員、既に着剣はしてるな? あいつらは言葉が通じる文明人と思うな! 殺すか殺されるか、二つに一つと思えっ!!」

 

分隊長の檄が飛び、

 

「分隊総員、射撃用意! まだ撃つなよ! もっと引き付けてからだ……」

 

そして、敵が肉眼でもはっきり見えるような距離となり……

 

「ファイア!!」

 

 

 

***

 

 

 

雪が突風に舞う中、ハルハ河東岸のあちこちで血腥い戦闘が頻発していたのだが……

その中でも、こと対人戦において特に目覚しい戦果を上げる部隊があった。

 

(ニシズミ少佐……確かに只者ではないな)

 

そう感心したのは、M2ブローニング重機関銃2丁ないし4丁をまとめて防盾(シールド)型銃架にのせたハーフトラックの部隊、米陸軍ではまだ物珍しい”防空戦闘車部隊”を指揮していた中尉は、心の中で驚嘆に近い感心をしていた。

 

実は先ほど話題に出た会議において、みほが対人榴弾の全面使用と同時に提案したのが、この「対空自走砲の水平射撃による敵歩兵の掃討」だった。

 

『敵航空機が来れないのが判っている情況で、対空自走砲を遊ばせておくなんて戦力の無駄もいいとこです。我々にはそのような余裕はありません』

 

みほはそう切り出したという。

そして本来は翼竜(ワイバーン)対策の一環として生み出された対空自走砲を、水平射撃による地上掃射に切り替えたときの効果を、『特地』での戦訓を交え、とうとうと説明したのだった。

 

最初、防空隊指揮官は「対空自走砲は、最前線で歩兵と一緒になり敵兵を撃つようには作られていない」と反対したようだが、並々ならぬ熱意をみせたみほの説得でスティルウェルは了承したのだ。

その時、コリンズは満面の笑みを浮かべていたらしいが……

 

 

 

上層部の思惑はともかくとして、対空自走砲達は本来の目的とは異なる使い道で恐るべき戦果を上げていた。

そう、後に友軍にさえ”挽肉製造機(ミートチョッパー)”と恐れられる戦果、あるいは戦禍を50口径弾と共に撒き散らすのだった。

無論、この異名は本来は対物用の50口径弾の直撃を受けた、モンゴル人の「遺体というより残骸」を見た米兵達の素直な感想からだろう。

 

 

 

 

 

1940年12月8日、ハルハ河東岸を巡る太平洋を挟んだ大国同士の激戦は、未だ収まる気配をみせていない。

 

Огонь(アゴーン)!」

 

「ファイヤ!」

 

そして戦場を支配し司る力を持つ二人の少女が邂逅するのにも、まだしばしの時が必要だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、御愛読ありがとうございました。
みほ発案の容赦ない対歩兵戦術が繰り出されるエピソードはいかがだったでしょうか?

冒頭のカチューシャは、設定的に「史実で数え切れないほど作られたカチューシャの替え歌の一つ」という扱いで、「カチューシャを慕う部下達が、彼女をイメージして作った隊歌」という物ですが、雰囲気は出てたでしょうか?(^^

それにしても……この戦いで米国に最もダメージを与えたのも、ソ連軍に最もダメージを与えたのも同じく少女だったというオチ。
真相を知ったら、両群の首脳部は頭を抱えそうです(笑)

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



M1ガーランド自動小銃

全長:1108mm
重量:4300g
使用弾薬:7.62mm×63(30-06スプリングフィールド)
装弾数:8連発(挿弾子(クリップ)式)
発射方式:セミオートマチック

備考
史実では1936年1月9日付で米陸軍により制式化されたが、平時における軍事費削減による予算不足と銃身とガスパイプの接合部に問題が見つかるなどして、、1941年後半になりようやく配備が始まったという小銃。

しかし、”この世界”では米国は満州をコモンウェルスという扱いで準州化しており、新興国家ながら非常に巨大な軍事力を保有するソ連と国境を接してるために歩兵レベルからの火力の向上は声高に叫ばれており、開発も配備も史実より速く進んでいる。
特に”ハサーン湖事件(張鼓峰事件)”での米ソの小規模衝突が刺激となり、「国土防衛の必然性」という理由で工作員(マスコミ)の妨害にあいながらも議会も調達追加予算を認め、配備が加速された。
またガスパイプの接合部の構造欠陥は運よく試作銃のテスト中に見つかったようで、本格的な生産体制が始まる前に是正されている。

徹底的な品質管理と合理主義の下で完成した小銃であり、大量生産に適した優れた基本設計と相まって配備は凄まじい勢いで進み、史実と同じ1936年に制式化されてから物語が始まる1940年後半までには50万丁以上が生産されており、史実と違い最前線である在満米軍に優先的に配備されていた。

ハルハ河東岸(イーストバンク)戦役(ノモンハン紛争)】において米軍が数に勝るモンゴル兵相手に終始互角以上に戦線を維持できた一因は、このガーランドの大量配備にあったとさえいわれている。
そのエピソードを含め、第二次大戦全期に渡る米陸軍の主力兵器の一つと言えよう。








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