ダンジョンとアイズと斬魄刀   作:もちもちもっちもち

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ものすっごい久しぶりの投稿をしてみました。
投稿できなかった訳とな?
ストックしてたデータが全部吹っ飛んだんですよ。


始解

「久しぶりじゃねぇか、≪弥勒丸≫」

 

 

 旋風が解け、視界の先に広がるのは、最初に訪れた出鱈目な景色。

 上下左右、本来あるべきものがチグハグに配置された、そんな世界の主の声が響き渡る。

 担い手を白黒反転させた姿形、担ぐ未完の大刀。

 アイズより高い位置から、格上の実力者――≪斬月≫もといシロは、格下を見下ろす。

 

 

「だが、どうでもいいんだよ。おめぇの怪我がいつの間にか治ってんのも、おめぇがいつの間にか≪始解≫に至ってるのも、全てが、どうでもいい」

 

 

 砕けた筈の指で、錫杖へと生まれ変わった≪デスぺレート≫を握りしめる。

 呼応するように頬を撫でる風、揺れ鳴る遊環。

 かつて為す術もなかったはずの脅威を前にし、それでもアイズは頬を緩める。

 

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン。おめぇみてぇな雑魚が斬魄刀を使うなよ」

 

 

 振り上げられる大刀。

 噴き出す魔力。

 繰り出されるは、巨大な斬撃。

 

 

「月牙天衝」

 

 

 魔力を喰らい、大刀から射出された破壊の奔流がアイズに迫る。

 だが、不思議と恐怖はなかった。

 

 

目覚めよ(テンペスト)!」

 

 

 詠唱式。生み出される風。

 何度も唱えてきた、唯一無二の魔法≪エアリアル≫。

 しかし、結果は今までとはあまりにもかけ離れたものだった。

 

 

「…………何……だと……!?」

 

 

 シロが瞠目する。

 アイズもまた、呆けた声が漏れた。

 

 

「……すごい」

 

 

 限界まで魔力を燃焼させた、暴走状態の≪エアリアル≫でようやく互角。

 なら、目の前の結果はなんだというのだろうか。

 互角どころか、生み出された旋風は≪月牙天衝≫を掻き消してもなお、アイズの周りを取り巻き続けていた。

 規模も、密度も、威力も。

 何もかもが、今までの≪エアリアル≫とは一線を画す。

 

 

「気ぃ抜いてんじゃねぇ!」

 

 

 ≪閃花≫――。

 掻き消え、見失ったアイズの背後に回り、延ばされる手を屈んでやり過ごす。

 そのまま杖先に生える剣尖で背後を強襲。

 空を切る感触。

 即座に引き戻し、正面に打ち払い。

 シロの衣服を錫杖が掠る感触が手に伝う。

 

 激しい攻防の中、なおもシロの≪瞬歩≫を目で追うことは叶わない。

 でも、不思議と感じるのだ。

 アイズの周囲を行き交う風が、次の行動を教えてくれる。

 いつも以上に、風を身近に感じることができる。

 風を通して広がる感覚が、超速で移動するシロを捉えていた。

 故に、アイズは本能の赴くまま、錫杖を振り続ける。

 

 

「そこ!」

 

「ちっ!」

 

 

 虚空へと突き出した錫杖が、正面へと翳されたシロの大刀を捉えた。

 ここへ来て初めて、始終攻勢だったシロが守勢へ。

 その事実を認識し、シロの表情が怒りに染まる。

 

 

「月牙――!」

 

 

 零距離攻撃。

 回避は間に合わない。

 

 

「風よ!」

 

「――天ッ衝ッッ!」

 

 

 極光。

 均衡は一瞬。

 せめぎ負けたのは、アイズの方だった。

 出鱈目な風景でも重力は正常なのか、真っすぐに落下したアイズは背中から壁面に激突。

 

 

「げほ……か、はっ……!」

 

 

 痛みと戦慄が、アイズの中を渦巻く。

 先の≪月牙天衝≫の威力、今までは全力ではなかったというのか。

 漂泊する意識で、進化した≪エアリアル≫でも防ぎ切れない事実に、愕然としてしまう。

 

 

「……答えろ」

 

 

 咳き込むアイズに問い掛けるシロも、しかし無傷とは言えない。

 纏う衣服は損傷が激しく、無数の裂傷が全身を走る。

 

 

「アイズも≪弥勒丸≫も、テメェらの風は俺より劣っていた。だったらこの様はどういうことだ。なんでテメェら如きが≪斬月≫と渡り合える」

 

 

 それでも、そんなものは些細な問題だと。

 錫杖を支えに立ち上がるアイズに、シロは一向に攻撃を仕掛けてこない。

 余裕か、それとも問いの答えを知りたいが為か。

 立ち上がったアイズは一息着き、シロの見据えた。

 

 

「≪弥勒丸≫が、教えてくれたから」

 

 

 反転したシロの瞳が、僅かに細まる。

 

 

「自分さえ強ければそれでいいと思ってる私を、シロは認めないって」

 

 

 そうかと、自然と理解した。

 唐突な≪エアリアル≫の強化。

 最初は理由が分からなかったが、簡単なことだった。

 

 

「だから、一緒に強くなろうって思った」

 

 

 ≪弥勒丸≫の能力は、≪エアリアル≫同様、風を生み出し操ること。

 しかし、その力は≪斬月≫に劣ると、シロは評した。

 事実、≪弥勒丸≫は≪エアリアル≫と同程度の力しかない。

 すなわち、≪弥勒丸≫も≪エアリアル≫でも、≪斬月≫には敵わない。

 なら、どうすればいいか。

 

 

「シロに勝って、私がクロの相棒だとあなたに納得してもらうために」

 

 

 アイズと≪弥勒丸≫、両者の風を紡ぎ合わせることができれば。

 ≪エアリアル≫が強くなったわけではない。

 ≪弥勒丸≫の力を十全に発揮できないわけでもない。

 ただ、力を合わせただけ。

 それが、名前を貸し与えてくれた≪弥勒丸≫が望む、たった一つの答えだった。

 

 

「そのために、私は≪弥勒丸≫と一緒に、あなたを超えてみせる」

 

 

 差し出された手を掴むことは、弱さではないのだと。

 ≪弥勒丸≫は、アイズに教えてくれたから。

 

 

「…………そうかい」

 

 

 轟!

 噴出し、天へと昇る、膨大な魔力。

 大気を焼き焦がすほどの魔力の激流全てを、シロの大刀――≪斬月≫が喰らい尽くす。

 それは、これまでのどの≪月牙天衝≫をも超えた、シロの全力だった。

 

 

「これが、最後の≪月牙天衝≫だ。おめぇがクロの相棒を名乗るならよ」

 

 

 内なる魔力の全てを燃焼。

 ≪エアリアル≫の風が、錫杖に纏い、渦巻く。

 猛々しい烈風が、本来なら相いれない嫋やかな旋風と混ざり合う。

 

 

「アイズ! 俺を超えてみせろ!」

 

「超えてみせる! ≪弥勒丸≫と一緒に! 絶対に!」

 

 

 大上段に振りかぶられる≪斬月≫。

 ≪弥勒丸≫と杖先をシロへ突き出し、全力で踏み込み突貫。

 

 

「月牙――!!」

 

「リル――!!」

 

 

 互いの最大最強の攻撃が、解き放たれる。

 

 

「――天衝!!」

 

「――ラファーガ!!」

 

 

 激突。

 そして――

 

 

 

 

 

 ◆  ◇  ◆   ◇

 

 

 

 

 

「慕われてるねぇ、愛されてるねぇ、モッテモテだねぇ」

 

 

 あっちをチョロチョロ、こっちをチョロチョロ。

 頬をつんつん、額をげしげし。

 目の前をウロチョロする少女の言葉責めを、クロは黙って堪え続ける。

 

 

「ぷぷっ、クロはアイズの王子様(笑)」

 

 

 我慢の限界だった。

 

 

「あだだだだ!? ちょっ、痛い痛い!」

 

「喜べ、愛のムチだ」

 

「アイアンクローの間違いでしょ!?」

 

「臣下の働きを王自ら褒め称えてんだ。咽び泣いて感謝しろ」

 

「暴力反対!」

 

「ただのスキンシップです」

 

「あたしこれでも女の子!」

 

「男女平等だ馬鹿野郎」

 

 

 そのまま数十秒。

 頭を抱えて蹲る、黒髪と後ろで一つに結わえた少女の名前は≪弥勒丸≫。

 錫杖というのは仮の姿、本来はアイズとそう変わらぬ少女に過ぎないのだが。

 アイズの相棒兼世話係――後半はアイズがクロから離れなかったため――を務めてきたクロに、男女平等なんてものを求めるのは間違っているのだった。

 

 

「きゃん!?」

 

「邪魔だ、どけ」

 

 

 蹲る≪弥勒丸≫を蹴っ飛ばし、現れたのは自身を反転させた姿形。

 柄の巻き布を鞘代わりに、未完の大刀を背負った≪斬月≫は、胡坐をかくクロの足を枕にして寝息を立てる少女を見下ろした。

 

 

「なにすんの≪斬月≫!」

 

「おい、声がでけぇ」

 

「邪魔なんだよ≪弥勒丸≫。俺より弱ぇ奴がキャンキャン喚くな、鬱陶しい」

 

「≪斬月≫も煽んな」

 

「へっへーん! あたしはあんたより弱くないもんね! さっきの勝負は引き分けだったし!」

 

「お前もやり返すんじゃねぇ」

 

「おおっし、やったぁ~! いぇいいぇいいえ~い! いい感じ~い!」

 

「……よっぽど死にてぇらしいな」

 

 

 奇妙な踊りを舞い、決めポーズ。

 傍観するクロでさえイラッと来る仕草、キレやすい≪斬月≫の次の行動を想像するのは容易い。

 柄の巻き布を取り除き、ギラリと光る未完の大刀。

 今更のようにやり過ぎに気付いたのか、顔を青褪めさせた≪弥勒丸≫は全力逃走。

 嗜虐的な笑みを顔に刻み、逃げる≪弥勒丸≫を追う≪斬月≫は≪瞬歩≫で掻き消えた。

 

 

「……やっと静かになった」

 

 

 ほっと一息。

 くぅくぅと寝息を立てる少女に、クロは苦笑を零す。

 

 

「なーに笑ってんのよ、クロのくせに」

 

 

 目の前を漂う、蜂を模した衣装を纏う、妖精サイズの少女。

 

 

「ねぇねぇ」

 

「この子がアイズなの?」

 

 

 両肩からひょっこりと顔を覗かせる、平安装束に烏帽子を被った双子の男の子。

 

 

「あちきの主を膝枕とは、随分といいご身分でありんすな」

 

「……私も、してほしい」

 

 

 それぞれが片目を眼帯で隠す、花魁とくノ一。

 

 

「ねークロー! そんな子ほっといてあたしと遊ぼうよー!」

 

「やだやだ、これだから野蛮な獣は」

 

「はっ、清楚ぶってるガキンチョが何言ってんの?」

 

「なんですって!」

 

「なによ!」

 

 

 グラマラスな肢体で背中に枝垂れかかる猫娘と、それを引っぺがし口喧嘩する天女。

 

 

「そなた達、静かになさい」

 

 

 凛と言い止める、純白の着物纏う雪女。

 

 

「そうじゃぞ。全く、お主等は顔を見合わせれば喧嘩ばかり。少しはわしを見習ってだな」

 

「いきなり説教かよ」

 

「なんじゃと! このクソチビ!」

 

「っでぇ!? なんで殴んだよケツデカ女!」

 

 

 爺臭い言葉を放つ猿女と生意気全開の蛇男。

 

 

「クロよ、あれ以来我を使わぬとはどういうことだ」

 

 

 微妙にいじけている、顔に×印の傷を走らせた長髪の青年。

 

 

「げっ」

 

 

 軽装の甲冑を纏った若武者。

 巨大な布で顔を覆う異形。

 口に炎を含んだ、見上げるほど巨大な赤鬼。

 蛾のような翅を羽ばたかせる赤子。

 籠を背負った修験者。

 むしゃむしゃと立ち食いをするデブ。

 長い前髪で片目を隠す、石壁を背負いながら俯く陰険男。

 痩身で肌の黒い戦闘狂。

 灰色の肌の大男。

 孔雀の羽を袖に纏う、華美な印象のナルシスト。

 

 

「……うわぁ」

 

 

 彼等以外にも、それこそ数えるのも億劫になるほどの存在が、見渡す限りに立ち並ぶ。

 彼等こそ、斬魄刀に内包された魂達。

 一人一人が一騎当千の力を有する、至高の存在。

 仮にその全てを≪具象化≫させた場合、例え世界最強の戦力を有するオラリオの全冒険者が相手になろうとも、全く引けを取らないだろう。

 

 

「しっしっ、お前らどっかいってろ」

 

 

 そんな斬魄刀の王、クロは犬猫でも相手にするかのように、鬱陶しそうに顔を歪める。

 

 

「やーだー!」

 

「遊ぶ遊ぶの遊ぶんだー!」

 

「てめっ、いい加減に!」

 

「ホント、こんなファッションセンスゼロな子のどこがいいのよ。よし、ここはあたしがこの子の服にイカしたダメージ加工を――」

 

「なに物騒なもんぶっ刺そうとしてんだ!」

 

「我は氷雪系最強だ。そこの雪女の分も我がクロを支えよう」

 

「ほう、忠犬がよう吠える」

 

「主よ。そのような娘っ子ではなく、あちきの膝によからぬか?」

 

「お花おまっ、当たって……!」

 

「……あててんの、よ」

 

「お狂も便乗してねぇで早くこの色ボケ止めろ!」

 

「クロ! あの賞味期限切れに何か言って!」

 

「清楚キャラ被った腹黒が何ほざいてんのよ!」

 

「尻尻とどうでもいいことを! お主はそうやっていつもわしの話の腰を折りおって!」

 

「うっせーな! 尻と腰とどう違うんだよ!」

 

「まだ言うかこのエロガキ!」

 

「うっぜぇえええええええええええ!!」

 

 

 絶叫。それは魂の叫び。

 混沌とする渦中で、クロの膝で眠る少女は寝返りを打ち、そっとクロの袖を握る。

 

 

「……クロ」

 

 

 そう零すアイズの表情は、穏やかだった。

 此処に来る前の鬼気迫るものとは正反対の、憑き物が取れたような。

 久しぶりに見た、幼かったアイズがよく浮かべていた無邪気な笑顔。

 あれだけ騒がしかった周囲が静まり返り、ある者は罰が悪そうに、またある者は毒気を抜かれてしまう。

 安心しきった寝顔、慈しむように髪を梳く武骨な手。

 そんな、どこか神聖な時間が、斬魄刀の精神世界を流れる。

 

 

 

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

 

 

 

 文字通り、空気が砕け散った。

 弾かれたように顔を上げ、敵意を露わにするクロの視線の先に、彼は悠然と佇む。

 周囲を斬魄刀の魂が囲う中、そこだけぽっかりと空いた空間。

 周りから突き刺さる敵意の視線を物ともせず、柔和な笑みを絶やすことはなかった。

 

 

「……≪鏡花水月≫」

 

 

 異端にして最凶最悪の斬魄刀、≪鏡花水月≫。

 

 

「こうして話すのはいつ以来だろうね。息災そうでなによりだ」 

 

「…………」

 

「ははっ、そんなに怖い顔をしないでくれよ。皆も、まるで僕が悪者みたいじゃないか」

 

 

 ギュッと、膝で眠るアイズを搔き抱く。

 興味深げに、観察するような≪鏡花水月≫の視線から隠すように。

 

 

「生きものというのは不思議だね」

 

 

 そんなクロの様を、面白いものを見たと、≪鏡花水月≫は笑みを深めた。

 

 

「彼女――アイズ君はクロ君の隣に居たいと願う。なるほど、実に慎ましやかな願いだ。今のクロ君の隣なら、例えアイズ君でも居座り続けられるだろう。生き物という存在は、その矮小な心で願う程度の事は実現できるようにできているのだから」

 

 

 ≪斬月≫とは異なる、アイズを見下す≪鏡花水月≫の瞳は穏やかだった。

 ただし、まるで実験動物でも見るかのように、そこにぬくもりは存在しない。

 そして、それは斬魄刀の王であるクロにも同様だった。

 

 

「クロ君。今の弱り切った君でさえ、彼女を御すことは簡単だ。彼女は君に憧れている。否、依存しているといっていい。実に使い勝手のいい駒じゃないか。だからクロ君、君達の友情に、アイズ君の君への憧憬を称え、僕から一つ言葉を贈ろう」

 

 

 笑顔という仮面の下に隠された、≪鏡花水月≫の本質。

 非情にして冷酷。

 目的のためには手段を択ばず、他の斬魄刀の魂も、担い手であるクロですら、彼は使い捨ての駒程度でしか思っていない。

 野に咲く花を、気付かぬからと踏み潰すように。

 

 

「憧れは、理解から最も遠い感情だよ」

 

 

 だから、≪鏡花水月≫は笑顔でクロとアイズの絆を踏みにじるのだ。

 

 

「てめっ――」

 

「月牙天衝」

 

 

 降り注ぐ、破壊の奔流。

 

 

「ちっ、外したか」

 

「ちょっ、≪斬月≫! 掠った! 今掠ったよあたしに!」

 

「……外したか」

 

「≪鏡花水月≫を狙ったんじゃなかったの!?」

 

 

 もうやだー! と泣き喚く≪弥勒丸≫に遅れ、≪斬月≫はクロ達の前に降り立つ。

 ≪月牙天衝≫の着弾点、≪鏡花水月≫がいた場所には目もくれず、虚空を睨み付ける。

 

 

「どうやら、邪魔が入ってしまったようだね」

 

 

 姿は見えず、声だけが出鱈目な精神世界に響く。

 

 

「久しぶりに君の顔が見られて楽しかったよ。では、続きはまたの機会に。その時までには、昔の君に戻ってくれると嬉しいな」

 

 

 それでも、クロは≪鏡花水月≫が笑っていることが分かった。

 どれだけ時が経とうが、拭い去ることは敵わない。

 全斬魄刀中、最も使用した時間の長い(・・・・・・・・・・・)≪鏡花水月≫の本質を、クロは誰よりも理解しているから。

 

 

「うっせーな、ばーか!」

 

 

 俯きかけたクロは、はっきりと宣言する声に顔を上げる。

 先程の泣き顔は何処へやら、不敵な笑みを携え、≪弥勒丸≫は最凶の斬魄刀に啖呵を切る。

 

 

「なに間の抜けた面してやがる」

 

 

 クロの正面に屈み込み、≪斬月≫は顔を合わせる。

 反転した両者が、寝息を立てるアイズを挟んで向き合う。

 

 

「こいつといいおめぇといい、相棒ってのは似るのか。マグレとはいえ、俺の本気の≪月牙天衝≫に打ち勝ったってのに、アイズの寝顔の憎たらしいときたら」

 

「ツンデレ乙」

 

「殺されてぇのか≪弥勒丸≫」

 

 

 からかう≪弥勒丸≫に殺気を飛ばす≪斬月≫には、アイズへ険はとれていた。

 

 

「アイズの奴、強くなるぜ。だから大事に育ててやりな」

 

「……≪斬月≫」

 

「仮にもし、またふざけたこと抜かしやがったら、次は命はねぇがな」

 

 

 訂正。

 ≪斬月≫の険がとれるとか有り得ない。

 げんなりするクロの瞳を、反転した≪斬月≫の双眸が射抜く。

 

 

「オメェもだ、クロ。オメェは何時まで不抜けてるつもりだ。何時まで理性で戦い、理性で敵を倒そうとする。≪鏡花水月≫の言うことに乗るのは癪だが、昔のように本能の赴くままに相手を喰らい尽くせよ。剣に鞘つけたままじゃ、守れるもんも護り抜けねぇぜ」

 

 

 そう言って、≪斬月≫と一度アイズを見下ろし。

 直後に、彼の体が少しずつ崩れていく。

 ≪斬月≫だけではない、≪弥勒丸≫も、他の斬魄刀の魂達も。

 長く精神世界に潜り続けた影響か、終わりは唐突に訪れた。

 

 

「それと、最後にオメェに警告だ」

 

 

 薄れゆく意識の中、消えかける≪斬月≫の腕が伸び、胸倉を掴まれ、引き寄せ。

 常に浮かんでいた嗜虐的な表情は鳴りを潜め、淡々とした、押し殺す声音で囁く。

 

 

「さっさと俺達を≪屈服≫しろ。何時までも腑抜けた面しやがって、苛々すんだよ」

 

 

 返す言葉は、なにも浮かばなかった。

 

 

 

 

 




後書きという名の作者の懺悔コーナーっす。
本作を呼んでくださった皆さん、本当にお久しぶりです。
何故本作の続きが投稿できなかったのかは前書きの通り。
そして中途半端どころではない本話だけど、これでとりあえず本作は終了となります。
どこぞの週刊誌の打ち切りレベルで色々と謎が多過ぎだと読者の方も思うでしょう、作者も思いますもん。
でも、このまま何も告げずに放置っていうのもなと。
曲がりなりにも初投稿作品なので、こういう形となりましたが終わらせてもらいます。


あと、この場を借りての報告。
リハビリとして新しい作品を投稿させてもらいました。

原作:≪遊戯王≫
タイトル:≪ワン娘と俺氏と紫キャベ娘≫

暇潰し程度の気持ちでご覧あれ。


それでは、最後になりますが、此処まで本作に目を通してくれた読者の皆さん、感謝感激。
ご愛読ありがとうございました。
では、また何時か何処かで。
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