拙い文書ですが御付き合いいただければ幸いです。
それでは、ゆっくりして行ってくださいね。
午後五時前-
初夏の今時分、日も高く、いくら人里から離れたこの辺りでも明るい。そんな時間に俺は店の暖簾をかけるために外に出る。ここに店を構えてからもう何年も、客商売を初めてからもう何十年となるがいつまで経っても店の暖簾をかけるのはどうも緊張してしまう。まだまだ自分の腕が未熟な証拠だろう。まぁ考えても仕方が無い。俺は客に飲んでもらう事しか出来ないのだから。
そんな事を思いつつ、今日の仕事を始めるために自分でかけた暖簾をくぐり、店の中に入る。
さぁ…て、今日はどんなお客が来ることやら……
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「こんばんはー、マスター。遅かったわね」
「あぁ、いらっしゃい紫。いつも言ってるんだがな、スキマ広げて店内に居るのはやめてくれないかほんとに。周りにとってはかなり心臓に悪い。」
「あら、それは失礼。でも最近はあんまり驚いてくれないからこっちもあんまりやりがいがないのよ。」
「ならやるな」
彼女ー八雲紫と開口一番にそんなやり取りをしながら、カウンターの内側、自らの仕事場に向かう。
スキマ広げて入ってくるのはもうどうにもならないから、もう注意する事すら無くなってしまった。そのおかげでここの所、紫が来た時は入口から入ってくる所を見ていないような気もするが、気にするような事でも無いだろう。多分
「ご注文はいかがされますか?」
「冷やで、肴は任せるわ。」
「はいよ。」
短く返事をして仕事を始める。
常連とのやり取りなんてこんな物だろう。信頼があるからこんな程度の言葉しか交わさないでも分かることもある。
注文を頭の中で復唱しながら少し目線を回す。その先にあるのは厨房内のビールサーバーだ。
目の前にいるスキマ少女の協力で外から持って来たのはいいが、ここ一年ほど自分でしか飲んでいないような気もする。幻想郷の人々は余り日本酒以外の酒類を好まないようだ。現に、持って来た本人でさえ注文しないのだから。本当にこちらとしては在庫が余って仕方が無いから少しでも注文を入れて欲しいもんだ。
「はい、お待たせしました。冷やと胡瓜の酢の物です」
「ありがと。そういえばあなた今日は偉く真面目な事ばかり言うわね。変なものでも食べた?」
「いーや。たまにはこんなのも良いかと思ってな。変だったか?」
「かなりね。」
「ならやめだ。くすぐったいんだこの口調は。」
そうね、と紫は返事をしてのんびりと晩酌を楽しみ始めた。徳利が一本空いた時に彼女は大きくため息をついていた。その時の彼女の顔はどこか物悲しい雰囲気がしていたのを俺の目は見逃す事が出来なかった。
「どうしたんだ?紫。お前らしくないじゃないか。」
「何が?私はいつもどうりよ。むしろ調子はいいぐらいよ」
腕をオーバーに振って子供のようにアピールする紫。そんな紫と目線がかち合う。
暫くの間互いに目線を外すこと無く相互いにを見続けた。
……なにこれめちゃくちゃ恥ずかしいわ
無言の時間が過ぎていき先に音を上げたのは紫だった。
「そんなにらしくないの今日の私は?」
「あぁ、らしくない。何かあったのか?」
「大して面白くも無い話よ。ただ藍や幽々子達が最近避けられてるような気がする。って悩んでるのよ。」
「ぷっ……ハハハハ……何だそんな事かよ。」
「そんな事とは何よ。」
「何よ。ってお前どうせまたプライベートな事でも覗いたのがバレて口聞いて貰えないだけだろ。」
「最近はした覚えが無いんだけどな〜」
「な〜ってどこのBBAが言ってんだよ。」
「うるさいわよ。最近はしてないわ。」
「認めたな、過去の犯行を。」
「いいじゃない。あんまり過去の事ばかり考えてると年取るわよ。」
「言ってろ。最年長。」
他愛のない話をしながら彼女の顔を見ると、その顔はいつも通りの顔になって行った。幻想郷の、妖怪の賢者と言われる彼女の顔に。
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紫と話をしながら何本かの徳利が空き、紫の顔が赤みを帯びてきた時だった。
「ねぇ、マスター。」
「何だ?」
「もう一つ、猪口出してくれないかしら。」
「ん、あぁいいよ。」
言われた通りに猪口を渡すと、紫は自分の猪口ともう一つの猪口になみなみと徳利から酒を注ぐと、もう一つの方の猪口を俺の方に向けてきた。猪口を出せと言われた時から予感はしてたが見事に当たったようだ。
「ねぇ、あなたも飲みなさいよ。」
「やだよ、だいたい客に飲ます店でこっち側が飲んでどうするんだよ。」
「いいから」
猪口を一層近づけて飲めと言わんばかりに猪口を持ち上げる紫。その顔は多少目が座り始めているような気がする。確かこんなに弱くは無かったはず……と思い数えると、徳利の数は15本を超えている。
どうやら諦めるしかないようだ。
「はぁ……そこまでやるなら飲むよ。」
「最初からそうすればいいのよ。」
紫はそんな事を言いつつも嬉しそうだ。そんな事を言う俺だか内心では喜んでいたりする。常連から飲めと誘われて断る奴は居ないだろう。特にこの幻想郷では。
紫から猪口を受け取りつつ、カウンターから外に出る。 こういうのはやっぱり同じ所に居ないとだめだ。というポリシーが俺にはあるからこうしているんだが、さして口外するべき事でも無いだろう。自分のポリシーなだけなのだから。紫の横の席に座り、猪口を向ける。紫は既に俺の方を向いていた。
その後お互いの声が揃っていた。
「「乾杯」」
猪口を合わせ、互いに一息に飲み干す。良い子と真面目に酒を楽しむ人はやっては行けない一気飲み。誰も注意をする事すらない。たった2人だけの店内。
さぁ……て、今夜は長くなりそうだな。
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どれくらい時間が経っただろうか。
カウンターの上に並んだ、徳利の本数を数えると2人で三升程開けていたようだ。左横にいる少女を見ると、彼女は眠っていて、その寝顔はとてもあどけない寝顔だった。
いつもこんな顔を出来たらどれだけ楽になれるだろうか、
いつもいつも嫌われ役を買って出る彼女を周りに居る大半の奴はただ楽しんでると思っている。どこの誰が嫌われ役なんてわざわざ買って出るだろうか。答えは何を見るよりも明らかだろう。
ぶつくさと頭の中でどうにもならない事を考えつつ、カウンターの中に戻り片付けを始めていく。
かなりの量があった徳利を片付け終わった頃。時間的には開くことがないであろうウチの入口が開き、とある九尾の式神が入って来たのは。
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八雲藍ー 言わずと知れた八雲の式神であり、最強の妖獣。まぁ最近は人里で会う事もあり式と言うよりお母さんに見えて来たのは気のせいだろう。
「よぅ、藍。いつもご苦労だな。今日は何軒回ったんだ? 」
「何軒も何もここしかないだろうからな。初めからここに来たのさ」
「そうなのか?紫が行きそうな所は他にも数があるだろうに。」
「あぁ、紫様が〝飲みに行く〟と言われた時には必ずここで酔い潰れている。」
「大変だな……藍。」
「そうか?あまりそう思った事はないんだが、よくそんな事は言われるな。」
「だろうな。本当に藍が母親に見えてきたよ最近。」
藍は紫を器用に起こさないように背負っていた(従者に背負われる主人って一体……)本当、手慣れてるな……
「ありがとうな、俺が送って行くつもりだったんだが。」
「気にすることでは無いだろう。主人の面倒を見るのも従者の勤めさ。」
「フッ……本当にいい奴を式にしたな紫は。」
「まだまださ……では、帰るとするよ。」
「あぁ、今度は3人で来な。いつでも待ってるぞ。」
「そうさせてもらうよ。」
ドアを開けてやり、藍を見送る。彼女達が見えなくなった頃、暖簾を片付けて店に入る。
あ、そういえば紫を避けているかどうかを聞くのを忘れていた。まぁいいか。
飲んで食べて話して〝和んで〟帰って行って明日の仕事を頑張ってくれればいい。
呑み屋「和み」今日も明日も営業中
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追記
後日、人里に買い出しに行った時だ。
藍と偶然会い話を聞いてみると、紫に新しい扇をあげる計画を立てているんだとか。つい最近に扇が壊れてしまったらしい。その事を知られないように余り話さないようにしているんだとか。
まぁその話はまた別の話だろう。
いかがでしたか?
本当に文才が欲しいです……
誰か分けて頂けないでしょうか…
それではまた次回で