もっと精進します……
それでは第十一夜お楽しみくださいませ。
午後1時半、
最近だいたいこの時間に人里の甘味屋を訪れている。この店は人里の中でも人気のある店だ。買い出し終わりの休憩ついでに一回寄ってからというもの、今では寄ることがきっちり日課になってしまっている。おかげで甘味屋の主人に顔を覚えられるほどだ。この甘味屋に寄るようになってからよく人里の話題を聞くようになった。最近は風見幽香と寺子屋の慧音先生がよく一緒にいるとか、天狗の文屋が怪我をしたとかいう話もここでゆっくりしている時に小耳に挟んだものだ。今日は竜宮の使いがどうとかいう話で盛り上がっているようだ。まぁ、平和である事には違いが無さそうである。戻って仕込みをしよう。代金を置いて荷物を背負い帰路につく。
さて、今日は誰が来るだろうか……
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「こんばんは、開いてます?」
「いらっしゃい、開いてるよ。」
ゆったりとした様子でドアを開け、入ってきたのは特徴的なぱっつんぱっつんの服を着た竜宮の使い、永江衣玖である。彼女は龍神の話から大事な所を掻い摘んでそれを地上に伝えに行く事を仕事としている。…が、最近ではなし崩し的に総領娘と呼ばれる比那名居天子の世話役をさせられているようである。原因は本人曰く地震の一件の時に一緒にいて懐かれたから、とか言っていたが本当の所は分からないままである。まおおよそ面倒な役回りを押し付けられただけだ、と言っていたが大して嫌がっている素振りも無かった。心のどこかでは気にしているようだ。周りから見てみればいいコンビではある
「マスターさん、強めの物を」
「はいはーい、そう来ると思ってましたよ。ならコイツだ。とにかく強い、その一言に尽きる酒だ。まぁ、衣玖さんなら大丈夫だろ」
ならそれで、と了承を得たのでグラスに酒を注いでいく。衣玖さんはウチに来る度毎回強い酒を好んで飲む。それも普通の物よりも数段強い物をどんどん飲むのだが、ベロベロにはなるが潰れる事が無いのが不思議だ。どこかのすぐ調子上げて潰れるメイドとは大違いである。
「お待ちどうさん、しつこいけどかなり強いからな。」
「私がそんなにすぐ潰れると思います?侮らないで貰いたいですね。毎晩飲み歩いてるのは伊達じゃありませんからね。」
「寂しすぎるだろ、まぁ人肌恋しいのは同じか…」
「…私と飲む人なんて天界では限られてますからね…………私も誰も誘いませんけど」
「ウチなら朝まででも開けといてやる。そうすりゃ、飲み仲間の一人ぐらい出来るだろ。」
「出来ないと思うますよ…私になんて誰も付いてこれないし……」
そう言ってから微妙に沈んだ空気を消すようにしてグラスを傾けた彼女からは寂しいと言うよりも諦めたような感じが漂う。仕事疲れはどうやら人を干からびさせるようだ。特に精神をすり減らすような仕事だからだろう。俺ならお偉方の令嬢の相手なんて断るだろうしな。干からびる理由としても、出会いの無さそうな職場だろうし……いや、幻想郷自体、出会いが少ないかも知れない。
「マスターさんはずっと一緒飲みに行ってる人います?」
「飲みには行かないけど飲み会は稀に誘われるな。」
「やっぱり、私なんてどうせ一人なんですよ……」
「何があったんだよ…やけにやさぐれてるな」
「…………別に 」
「まぁ、詳しくは聞く気も無いけどな。そんな時は飲んで忘れるのが一番だ。体壊さない程度にハメ外せばいい」
そう言いながら彼女の空いたグラスに酒を注ぐ。カウンターに置くよりも早く手を伸ばす彼女にグラスを手渡すとそのまま一息に飲み干す。これほんと強いんだけど大丈夫か?
「……ふぁ…っ、効くなぁ……これ」
「今ウチにある酒で一番効くかもな。味よりも強さを選んで買った酒だし、俺もストレスを感じた時にしか飲まないようにしてる。」
「え?マスターさんそんなにストレスは感じにくいタイプだって言って無かった?」
「そんな俺がストレス感じた時に飲むとっておきの酒だ。強すぎて酔う暇なんて無くなるしな。」
「そんなお酒よく客に出しますね……」
衣玖さんが来た時はだいたいこんな感じでゆるーく話している。普段会った時はもう少し真面目に見える。幻想郷で数少ない常識人なのだが、酒が入るとどうやら気が抜けて本性が出るようだ。話し方も曖昧になってくるし。そういえば、そんな奴は沢山いるような気もする。普段は真面目に仕事しているタイプだが、酒が入るとボロが出たり、気が抜けきったり、やたらテンション上がったり……言い出せばキリがない。まぁ、今はもう一人来た客の相手をするか。
「だからな、音させずに入って来るなよ。ドアぐらい普通に開けろ……」
「そんな事ばかり言ってたら老けるわよ?少しぐらい寛容に見てくれてもいいんじゃない?」
「まぁ、まずこの状況じゃあ寛容には見てくれないでしょうね……」
「そうかしら?普通女には優しくするものでしょ?あ、というか宜しくね。竜宮の使いさん。えーっと……」
「これは失礼しました。永江衣玖です。宜しく」
「私は十六夜咲夜、御見知りおきを。」
「何にする?というかもう一杯飲んで来てんだろ?さっきからテンション高いし」
「キツいの」
「なら、私のと同じの飲みません?かなり強いんですよこれ」
「そうさせてもらうわ。マスター」
「はいはい。」
オーダーを受けてグラスに注いでいく。カウンターに出された衣玖さんのグラスにも注ぐのも忘れない。あれ、もう4杯目だよな……やっぱり強いな衣玖さん。
「はい、お待ち。」
「ありがと、じゃ永江さん。」
「そんなに堅苦しく無くていいですよ?そもそも、初めて会う訳でもないし……」
「じゃあ衣玖さんで。」
「なら私も咲夜さんって呼びますよ、それでは…乾杯」
「乾杯っ」
グラスをぶつけ合い、並々と注いでいた酒を二人して飲み干す。…………いやだから強いんだってコレ。
「…っく………キツ過ぎるわコレ……一気なんてするんじゃなかった……。」
「強いけど、美味しいですよ。確かによく回りますけど」
「なんでマスターはこんなに強い酒ばっかり置いてるの?自分が飲んで楽しめる酒を置いてるんじゃなかった?」
「そうだよ、俺が好きな酒を置いてるのがウチの店だ。」
「マスターさんも人なはずですよね。それならこれだけ強いと飲めないんじゃ無いです?」
「私もそう思うわ。こんなに強い酒はちょっとしんどいんじゃないの?」
「飲めるよ全然。これぐらいじゃ大して効かないしな。」
「飲み過ぎて肝臓でもおかしくなったのかしら?」
「飲み慣れはしますけど酒自体に大して強くなる事は無いですよ。ベースからおかしくないと。」
「なんか酷いよね二人共、まぁベースがおかしいのは認めるけどな。」
「私じゃあるまいし、おかしくなんてないでしょ。」
「言わずもがな私は妖怪ですし、マスターさんは何がおかしいんです?」
「俺半妖だよ?そりゃベースがおかしくて当然でしょ。というか完全に忘れてたろ」
「何との半妖なの?マスターから聞いた事無いわ」
「というかマスターさん半妖だったんですね」
「言ってないしな。まぁ、俺の妖の部分なんて大して面白くも無いけどな。」
「まぁ、鬼とかでもない限り驚きもしないわね。」
「鬼だけどな。」
「やっぱり鬼なんですね。なんとなく分かってましたが。」
衣玖さんがそう言ってから少しの間だけ店の中が凍ったように話が止まる。そんな状態で一番に話し出したのは咲夜だった。
「それ冗談じゃないわよね。」
「うん、冗談じゃないぞ。ただ、嘘もつくし、正直じゃ無いけどな。」
「というか気付きません?」
「お嬢様と戦って平気な顔してた時点で気付くべきだったわ……」
なんだかんだでこの二人は気が合ってるような気がする。強い酒飲みたがるのも同じだし、他に何か共通点でもあるだろうか……
「……なんか知らない事聞けて得した気分……。」
「……そうね、いいお土産話になりそう…………。」
「なんか枯れてるな……お前ら」
「よし、飲み直しましょ衣玖さん。」
「いいですね。お付き合いしますよ」
分かった、類は友を呼ぶって奴だろう。この二人が引き合うのは。まぁ、楽しく飲んでくれるなら俺はそれに越したことは無い。今日は騒がしい夜になりそうである。
飲んで、食べて、愚痴って、
「和んで」いってくれればいい。
呑み屋「和み」今日も明日も営業中……。
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追記
最近、衣玖さんと咲夜が一緒に飲むことが多くなっている。というか、最近は小町まで来て一緒に飲んでいる事が多い。類は友を呼ぶようだ。また今度人を集めて飲み会をするらしい。話を聞いていると自分達の事を従者組とか言っているそうだ。そのおかげで衣玖さんが一人飲みをする事が少なくなったのが幸いか。まぁ飲み仲間が増えたせいでよく店に来るようになったのは気にする事でも無いだろう。
いかがでしたか?
もっとわかりやすい文章に出来ればいいんですが……
ではでは、次回お会い出来ると幸いです。